表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隻腕少女の存在証明 ~わが手に魔法あり~  作者: 折紙
序章 導かれた少女
2/4

10歳の王女様、レティシアの日常①

序章部分?です。当該箇所はどれくらいになるか考え付いていないですが、長くはならないと思ってます(計画なし)

 リーン、と鈴のような音が室内に2,3度響く。窓からは日が差し込み、読みかけの本と天蓋の付いたベッドを照らす。十字の窓枠が木漏れ日代わりになっており程よい日差しがそのベッドの主へと当たっていた。


「ん…う~…。もうちょっと」


 タオルケットを掴むと顔に当たる日を鬱陶しがるようにガバリと隠してしまう。足元がお留守になったのは別に気にならない。そんなことよりも微睡みの続きに入りたかった。

 しかしそれを妨げるように今度は一際大きく音が響き渡る。その音を聞くと反射的にびくりと体が動き仰向けの体を起こした。


「え!違う違う!今日はなんにもないよね…!?」


 慌てながらに床に足をつけてバタバタと机に向かいここ1ヵ月程度の予定がざっくりと書かれたカレンダーをのぞき込む。


「今日は、えっと17日だから…なんにも…ないっ!ねっ!よしっ!」


 焦りが一転、安堵するようにふらふらとベッドの方へと戻っていくとばたりと倒れこむと昨日の夜のことを思い出す。そういえばベッド横の魔道具の時間を設定し直すのを忘れていたなと思い出すと休日の朝早々に憂鬱になってしまう。顔の向きをその魔道具の方へと向け何に向ければよいか分からない怒りを一息ついて抑えると日の光の温かさにまた眠気が増してくる。


「(はしたないけれど、このまま2度寝しても…いいかな…)」


 そんな風に考えていると急に空腹を自覚する。突発に入った休日なこともあり体のリズムがそれに対応できていないようであった。しばしの間食欲と睡眠欲で戦っていたが、キュウと可愛くなったお腹の音が試合終了のゴングを鳴らす。


 グッと体をベッドから起こすとこの部屋で唯一の扉の方へと向かっていく。そのまま扉に手をかける―――


 ことはなく、その隣の壁に描かれている魔術陣に左手で触れる。魔術陣が立体的に浮かび上が、空気のように透明な図形と文字が黄色一色に染まると同時に仄かに光りだして指先が僅かに染め上がる。


「ごめんなさい、早くに起きてしまいまして。申し訳ないのですが、朝食を用意していただくことはできますか?」

「かしこまりましたレティシア様。只今お部屋へお持ちいたしますので少々お待ちください」


 返事が魔術陣から聞こえると少女、レティシア・オールローゼは魔術陣から手を放し窓際の机の上にある本やら羽ペンやらを片付け始める。左手を突き出して魔術陣を作り出すと緑色に輝く。風の鳴くような音と同時に机の上の本がしおりに挟まれて閉じ、本棚へと向かっていく。雑に触れられたカレンダーも綺麗に整えられる。閉じられていた窓も軽やかな音を鳴らして外の空気を室内に流し込んでいった。



 喜劇が悲劇へと転じてしまった日から早10年、レティシアはそれなりに平和に生きてきた。父と母と同じ金色の髪をふんわりと肩上まで伸ばし、子供らしく幼い顔からは薄い緑色の瞳が見る物を覗く。女の子らしく可愛い物や綺麗な物に興味を示し、母ディアナの髪型を真似してみたりなんてこともした。王族らしく気品を求められ、勉学に精通し、魔術へと励み、日に1度は甘いものを食べる。これがレティシアにとっての普通の日々であった。


 ちょうど片付けが終わったタイミングで扉から小気味よいノックの音が3回響いた。返事をするとドアノブの付いていない扉が開かれ茶色の髪をした侍女軽く一礼して中へと入っていく。


「失礼致します、レティシア様。お食事をお持ちいたしました。」

「ありがとうございます、そちらの机に置いていただけますか?」


 そういうと侍女は返事をして食事を机まで持っていき静かにトレーから食器を降ろすとまた呼ぶようにレティシアに伝えて部屋から出ていった。


 侍女が部屋を出ていったところでレティシアは我慢していた鬱屈とした息を吐きだす。いつからだったかは正確には覚えていないがある日レティシア自身が感じ出したものがあった。

 普段からあまり多くの人に会うことはないが皆一様にしてレティシアのある部分を見ていることに気づいた。食事を持ってくる侍女、文字の読み書きの先生にマナー講師、果てには父も、母も。


 右肩から先のなにもないところ。その虚無へと皆が必ず視線を向ける。それに気づいてしばらくすると向けられる感情の違いも次第に分かるようになる。


 驚くような、不思議なものを見たような、不気味がるような、怖がるような、憐れむような、悲しむような。痛ましい、可哀そうとだなんて思っている。驚嘆、悲観、憐憫、侮蔑、悦楽。


 そんな薄暗い感情を10歳にしてレティシアは機敏に感じられるようになっていた。なってしまったというのが正しいかもしれないが。


 レティシアにとってはそんな風に直接感情を出された方がまだましだった。平然と普通がり、いかにも何も思っていませんよみたいな態度を取られる方が嫌であった。そんな態度を取られては悪態の一つ平然とすることが出来ないからだ。


 しかし慣れというのは恐ろしいものである、齢10にして大人たちの持つ複雑な感情に晒され続けていると嫌でも慣れてきてしまっていた。もう一度深くため息をつくと先ほどと同じ魔術で椅子をひいて座り食事を食べ始める。今朝は白パンにしょうと鈴のような音が室内に2,3度響く。窓からは日が差し込み、読みかけの本と天蓋の付いたベッドを照らす。十字の窓枠が木漏れ日代わりになっており程よい日差しがそのベッドの主へと当たっていた。


「ん…う~…。もうちょっと」


 タオルケットを掴むと顔に当たる日を鬱陶しがるようにガバリと隠してしまう。足元がお留守になったのは別に気にならない。そんなことよりも微睡みの続きに入りたかった。

 しかしそれを妨げるように今度は一際大きく音が響き渡る。その音を聞くと反射的にびくりと体が動き仰向けの体を起こした。


「え!違う違う!今日はなんにもないよね…!?」


 慌てながらに床に足をつけてバタバタと机に向かいここ1ヵ月程度の予定がざっくりと書かれたカレンダーをのぞき込む。


「今日は、えっと17日だから…なんにも…ないっ!ねっ!よしっ!」


 焦りが一転、安堵するようにふらふらとベッドの方へと戻っていくとばたりと倒れこむと昨日の夜のことを思い出す。そういえばベッド横の魔道具の時間を設定し直すのを忘れていたなと思い出すと休日の朝早々に憂鬱になってしまう。顔の向きをその魔道具の方へと向け何に向ければよいか分からない怒りを一息ついて抑えると日の光の温かさにまた眠気が増してくる。


「(はしたないけれど、このまま2度寝しても…いいかな…)」


 そんな風に考えていると急に空腹を自覚する。突発に入った休日なこともあり体のリズムがそれに対応できていないようであった。しばしの間食欲と睡眠欲で戦っていたが、キュウと可愛くなったお腹の音が試合終了のゴングを鳴らす。


 グッと体をベッドから起こすとこの部屋で唯一の扉の方へと向かっていく。そのまま扉に手をかける―――


 ことはなく、その隣の壁に描かれている魔術陣に左手で触れる。魔術陣が立体的に浮かび上が、空気のように透明な図形と文字が黄色一色に染まると同時に仄かに光りだして指先が僅かに染め上がる。


「ごめんなさい、早くに起きてしまいまして。申し訳ないのですが、朝食を用意していただくことはできますか?」

「かしこまりましたレティシア様。只今お部屋へお持ちいたしますので少々お待ちください」


 返事が魔術陣から聞こえると少女、レティシアは魔術陣から手を放し窓際の机の上にある本やら羽ペンやらを片付け始める。左手を突き出して魔術陣を作り出すと緑色に輝く。風の鳴くような音と同時に机の上の本がしおりに挟まれて閉じ、本棚へと向かっていく。雑に触れられたカレンダーも綺麗に整えられる。閉じられていた窓も軽やかな音を鳴らして外の空気を室内に流し込んでいった。



 喜劇が悲劇へと転じてしまった日から早10年、レティシアはそれなりに平和に生きてきた。父と母と同じ金色の髪をふんわりと肩上まで伸ばし、子供らしく幼い顔からは薄い緑色の瞳が見る物を覗く。女の子らしく可愛い物や綺麗な物に興味を示し、母ディアナの髪型を真似してみたりなんてこともした。王族らしく気品を求められ、勉学に精通し、魔術へと励み、日に1度は甘いものを食べる。これがレティシアにとっての普通の日々であった。


 ちょうど片付けが終わったタイミングで扉から小気味よいノックの音が3回響いた。返事をするとドアノブの付いていない扉が開かれ茶色の髪をした侍女軽く一礼して中へと入っていく。


「失礼致します、レティシア様。お食事をお持ちいたしました。」

「ありがとうございます、そちらの机に置いていただけますか?」


 そういうと侍女は返事をして食事を机まで持っていき静かにトレーから食器を降ろすとまた呼ぶようにレティシアに伝えて部屋から出ていった。


 侍女が部屋を出ていったところでレティシアは我慢していた鬱屈とした息を吐きだす。いつからだったかは正確には覚えていないがある日レティシア自身が感じ出したものがあった。

 普段からあまり多くの人に会うことはないが皆一様にしてレティシアのある部分を見ていることに気づいた。食事を持ってくる侍女、文字の読み書きの先生にマナー講師、果てには父も、母も。


 右肩から先のなにもないところ。その虚無へと皆が必ず視線を向ける。それに気づいてしばらくすると向けられる感情の違いも次第に分かるようになる。


 驚くような、不思議なものを見たような、不気味がるような、怖がるような、憐れむような、悲しむような。痛ましい、可哀そうとだなんて思っている。驚嘆、悲観、憐憫、侮蔑、悦楽。


 そんな薄暗い感情を10歳にしてレティシアは機敏に感じられるようになっていた。なってしまったというのが正しいかもしれないが。


 レティシアにとってはそんな風に直接感情を出された方がまだましだった。平然と普通がり、いかにも何も思っていませんよみたいな態度を取られる方が嫌であった。そんな態度を取られては悪態の一つ平然とすることが出来ないからだ。


 しかし慣れというのは恐ろしいものである、齢10にして大人たちの持つ複雑な感情に晒され続けていると嫌でも慣れてきてしまっていた。もう一度深くため息をつくと先ほどと同じ魔術で椅子をひいて座り食事を食べ始める。今朝は白パンに野菜のスープ、それと色とりどりの果物を少しずつ。


 誰も居ないのをいいことに肘をついてパンを口に入れながら今日の予定を考える。少し早めに起きたことだし本の続きを読もうか、それとも魔術の勉強でもしようか。そんな風に物思いにふけりながら朝食は進んでいった。




読了感謝です。


何かと表現の練習をしていますのでアドバイス(見辛い、わかりにくい等)がありましたら助かります。誤字脱字もあると助かります。


好意のコメントがあると多分モチベが上がります。


***


レティシア・オールローゼ

年齢:10歳

出身国:オールローゼ王国

魔術系統:???

概略:大陸南西部にあるオールローゼ王国の第1王女。父母譲りの肩上まで辺りまで伸びたふわりとした金髪と、薄い緑色の瞳が特徴。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ