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辺境伯令嬢は王子の婚約者になりたくない  作者: 藤夜
第二章

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11 捜索を開始します

「ギル、王都の中にレーヴァテインがあるかどうかわかる?」

魔剣(グラム)以外の聖物を見つけるのは私には無理ですが、神獣の魔力の気配はかすかに感じます」

 

 やっぱり私のカンは正しい。

 ジークフリート王子が私の言葉にぴくりと反応した。

 

「クリムヒルト、レーヴァテインとはもしかして」

「はい。私はラグナルがこの件に関与しているのではないかと思っています」

「ラグナルとは、昨年王都で問題を起こした邪教の司祭か」

 

 王太子も驚いたように言う。

 

「彼は外国に逃亡していたのですが、密かに戻ってきているのではないでしょうか」

「しかし、教団は解体し、信者もいなくなっている。本当に奴が一人でこの事件を起こしたのか?」

「個人ではないと思います。彼の目的にそぐわないので」

「目的とは?」

「それは……」

 

 彼が関わっているとなると、私にも責任の一端がある。

 彼の目的は世界の終末だ。その為に必要としているのは終焉の神の器。


 それは最終の目的だとして、国外に出たラグナルはクロヴィス王子と関係があるのではないだろうか。もしくはシュゼーレ王国と? 体調不良だという大臣はもしや毒で? 全ては想像でしかなく、今は言葉に出せる段階ではない。

 私が言いよどむと、ジークフリート王子が間に割って入った。

 

「兄上、いずれ相手は何らかの動きを見せてくるでしょう。それまでは騎士団と黒霧で捜索します。なあ、ローザリンデ」

「はい、ジークお兄様」

 

 弟妹のとりなしに王太子も少しは納得できたようだ。

 しかし、相手の出方をただ待つだけでは、もし人質等に危険が及んでいるようなら間に合わない。相手がラグナルならなおさらよ。どんな薬や毒を使ってくるかもわからないわ。

 

「殿下、ガルザ教団の神殿は今はどうなっていますか?」

「教団が解体して、今は誰もいない。建物は封鎖したままだ」

「中で働いていた人達もですか?」

「ああ。処罰対象者の裁判も行われて、全員が保護か追放になっている」

 

 ふむ、だとすれば捜索するならそこから始めるのが妥当かしら。隣のギルをちろっと見ると、またかよという顔だ。うんざりしている場合じゃないのよ、と私は睨みつける。

 

「まさか、クリムヒルト、神殿に行く気か」

「前に王女様がおっしゃっていたではありませんか。精霊は神の領域には入れないと」

「ヴェロニカ妃とクロヴィス王子はそこにいるということか?」

「わかりません。しかし、王都の門は封鎖していますし、可能性としては一番に挙げられます」

「危険だ。騎士団(おれたち)で入る」

「いいえ、最少人数で。もし本当にそこに囚われていた場合、気付かれると人質が危険です。今回はギルも連れて行くのでご心配なく」

 

 にっこり微笑んでギルを見ると、彼は飄々とした顔で知らんぷりをしている。アンタ、嫌がっても絶対連れて行くからね。


 王子は何も言わないギルを見て、ふうとため息をついた。

 ギルの強さは実際に見て知っている王子だ。少しだけ考える様子を見せたけれど、結局それが一番いいと判断したようだった。

 

「頼む。見てくるだけでいい。もしそこにいれば、すぐに戻って知らせるんだ」

「わかっています。ですが、ヴェロニカ妃を最優先で動きますね。クロヴィス王子が帰国しないとなるとシュゼーレ王国も動くでしょう。殿下達はそっちをお願いします」

 

 私としてはクロヴィス王子がいなくなれば万々歳だけど、悲しいかな、奴は異国の王太子。うちの国で行方不明になったとあれば、下手をすればせっかく休戦していたのにまた戦争になってしまう。

 どういうつもりで誘拐したのか、幾つかのパターンは予想はしているんだけれど、まだカードが出そろっていないから事態がどう動くかわからない。

 ジークフリート王子ならどういう出方をしてきても、国王陛下と話をしてすぐに対応するだろう。

 

「潜入の準備をします。外出許可を」

「わかった」

 

 身をひるがえして部屋を出ようとする私の後ろで、王太子が弟に尋ねているのが聞こえる。

 

「ジーク、お前の婚約者は一体何者だ?」

「ラウリッツ辺境伯の令嬢です。……ただ、あまり知られてはいませんが、彼女はただの治癒魔法師ではなく騎士団に所属する歴とした軍人です」

 

 何となく歯切れの悪い説明だけれど仕方ない。私が騎士叙勲されたヒルデ本人ですとは言えないものね。

 

「そうか、私は令嬢をみくびっていたわけだな」

 

 その声を背中で聞いて私は扉をバタンと閉めた。

 廊下に出て、私はギルに改めて尋ねる。

 

「ギルもラグナルが出てきていると思う?」

「まず間違いなく」

 

 ギルが言うならそうなのだろう。神獣は仲間の魔力を感知できるらしいから、フレイスベルクが王都にいるのは確実なのだ。

 

「久しぶりに運動できそうね。グラムも退屈しているだろうし」


 最近は私の中でずっと寝たままで、たまに起きては不満そうなモヤモヤを訴えていた。大人しくしているけれど、基本的には肉食獣並みに狩りを好む性格だから、定期的に魔物狩りしている方が落ち着いてくれるのだ。

 なにより魔剣(グラム)はラグナルに色々と怨みがあるので、今私の胸の中がなんだかウキウキしている。()る気満々だわよ、この()

 

「私の婚約破棄のためにも、今度こそ捕まえてやらないとね」

「王子の呪いが解ければ、この茶番も終わりですね。今回の件、クリムヒルト様にとっては願ったりでは?」

 

 まあ、故郷に帰りたい私としては、それもそうなのだけれど。

 

「チビ竜が消えちゃうのはちょっと悲しいわね」

「前から思っていましたが、案外鬼畜ですよね」

「あん? なにか言った?」

「いえ、何も。竜より鳥の方が可愛くないです?」

「アンタはデカすぎて可愛いどころじゃないじゃない。まあ大きい鷲も格好いいけど」

 

 そう言うとギルはふふと笑って、ありがとうございますと呟いた。

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