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現代女子高生が異世界でバトル&ゲットする物語


太陽がさんさんと降り注ぐ、まさに絶好の洗濯日和。

大きな屋敷の中庭で、水を張ったタライの前に座り込んだ少女は、ひとつのシャツを目の前に掲げて大声を上げた。


「ちょっと、イスタ!!また魔物の血こんなにつけて!!洗うのあーしなんだけど〜!?」


本来真っ白であるはずのそのシャツには、緑色の汚れがべったりと着いていた。

右肩から左の脇腹あたりまで飛び散ったその液体は、紛れもなく魔物の血液だろう。

いつものように大声で叫べば、数秒で走ってくる音が聞こえた。


「すまない、リンネ……」


今しがた起きたばかりなのだろう、頭の右側がぴょこんと跳ねている。

白い髪なのも相まって、なんだかうさぎのように見えてしまう。

表情もいつもと同じ無表情のはずなのに、その切れ長の青い瞳が許しを乞うように潤んでいる気がして――思わず許しそうになる。


(……ダメダメ!あーしがしっかり怒んないと!ここの人達みーんなこいつに甘いんだから!!)



日本の東京に生まれ落ちて17年。

まつ毛はツケマでばさばさに、茶色に染めた髪はふわふわに盛るのが鉄板。

胸元は緩めのリボンで、足元は頑張って育てたルーズソックス。


異世界にトリップして3ヶ月。

メイク直しの道具しかないから前よりは控えめだけど、ヘアセットは怠らない。

服装はとにかくミニでかわいいやつ。


平成ギャルに憧れるごく普通の一般女子高生――本谷 りんねは、現在冒険者ギルドにて家政婦をしていた。



――――――――――――――――――――



「……へ?」


気づけば、だだっ広い草原に倒れ込んでいた。

空には2つの月と、それを取り囲むようにちらちらと輝く数え切れない程の星。

頬を撫でる風は少し冷たくて、どことなく春の匂いを感じた。


「あーし、さっきまでガッコにいた……よね?」


記憶の最後にあるのは、学校の階段だ。

授業が終わり、友達と話しながら帰ろうと階段を下っている最中、ずるりと滑った嫌な感覚。

一瞬でひっくり返る世界と、ジェットコースターでしか体験したことの無いような浮遊感を思い出して、思わず身震いする。


「……え、夢だよね、マジありえないもん、なにここ」


夢にしてはリアルすぎる世界と、肌に当たる少し冷たい風。

体のあちこちが痛むような気もしてくるし、逆に全ての感覚が遠いようにも感じる。

急に心細くなったりんねは、近くに転がっていた鞄を漁りスマホを取り出した。

しかし、電源を押しても画面をタップしても、その真っ黒な画面が明るくなることはない。


(マジ……?夢なら早く覚めて欲しいんですケド!!)


他に使えそうなものは、ない。

宿題で出ていた数学のプリントと、飲みきった空のペットボトル、食べ終わったキャンディの包み紙、ふわふわでぶさかわいいペンケース、メイク直しが入った大きなポーチ。

せめてキャンディだけでも残しておけばよかった、と後悔したところでお腹の虫が主張を始める。


「……お腹空いたぁ」


夢が覚めるまでここで待とうかとも思ったが、見慣れない景色にどことなく恐怖心を覚えたりんねは、荷物を全て鞄へとしまい立ち上がった。

歩いていれば誰かに会えるかもしれない。

先程から狼のような動物の遠吠えも聞こえてくるので、一刻も早く人工の明かりの元へ行きたかった。

と、足を一歩踏み出したところで。


「……ひぃっ!!」


近くの茂みががさりと音を立て、そこに眩いほどの光が立ち上った。


「なになになになに、マジありえないって!」


せっかく立ち上がったのに、足腰の力が抜けて再び地面へ。

打ち付けた尻の痛みすら気にならず、真正面に見える光からとにかく遠ざかろうとする。

その間にも光が段々と形を作り上げていき、やがて人影がひとつ、ふたつ、みっつ……。


「……あら、ごめんなさい。座標が少しずれてしまったわ」

「問題ない。ありがとう」


最終的に六つの人影を作り上げた光は急速に勢いを失い、そのまま溶けるように消えていった。

そして残ったのは、なんだか不思議な格好をした男女たち。

暗くてあまり顔は分からないが、服には緑色の液体がべったりついていたり、なんだか生臭いような変な匂いもする。


(……な、なになに、コスプレとかいうやつ!?え、わ、まってまって、コッチ来る!?)


未だに足腰には力が入らず、こちらに近づく人影をただ見つめることしかできない。

しかしりんねがいることには気づいていないようで、気づかれる前に夢から覚めることができれば――。


「あれ?おねーさん、こんな所でどうしたの?」

「わ、なんか傷だらけだよ、大丈夫?」

「いやぁあああ!!」


突然両隣から聞こえてきた声に、おもわず飛び跳ねる。

目の前まで迫っていた集団はいつの間にか4人に減っていて、そのうち2人がそっと近づいてきたようだった。

まだ14、5歳ほどに見える2人は、驚くほど顔がそっくりだ。


「うわ!びっくりした」

「レスが驚かせるからだろ?」

「ラスだって驚かせたじゃん」


(な、な、な……!!マジありえない!)


こんな夢なら早く覚めて欲しいと太腿を抓ってみたが、夢から覚めることなどなかった。

手に持っていた鞄を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。

せめて教科書さえ入っていれば攻撃手段になったのに、残念ながら可愛さを強化するための道具がほとんどだった。


「こら、2人とも。この子が驚いているわ」

「ごめんなさーい!」

「ごめんなさーい!」


6人の中でとびきり美しい顔をした女が、両隣にいた子供を優しく叱る。

そしてぴゃっと逃げ出した2人を見送り、りんねの目の前にそっと膝を着いた。


「驚かせてしまってごめんなさい。あたしはレイア……あなたは、なぜこんなところに?」

「……えと、気づいたらここにいたってゆーか、あーしにもよく分かんなくて」

「そう……ここは危険だわ。安全なところでゆっくり思い出しましょう。イスタ、この子を街に送ってあげるわ、いい?」


悪い人だったらどうしよう。

ふと、そんな思いが過ぎったが、右も左も分からないままでは何も出来ない。

女が差し出した手にそっと自分の手を重ね、ゆっくりと立ち上がる。

少しまだふらつくが、女が腰を支えてくれたので倒れることはなかった。

そして女が問いかけた方に視線を向けると、そこには。


「……あぁ、問題ない。いこう」


この世のものとは思えないほど整った顔をした男と、そして――。


「ば、ばけもっ…………!!!!!」


その男に担がれている恐ろしい形相をした、化け物がいた。



――――――――――――――――――――



「……リンネ、怒っているか?」

「怒ってはないけどさァ〜、もちっとどうにかなんんない?」

「極力、気をつけてはいるんだが……」


洗濯物を終えた午後13時、リンネは少し遅めの昼食をとっていた。

あれからしゅんとしてしまったイスタも一緒だ。

リンネの方を気にしながら、カボチャのスープを下手くそに飲む男を可愛いと思いかけて――慌てて思考を引き戻す。


(危ない!ま〜たやられるところだった。この男、ホントは自分の顔の良さ分かってんじゃないの……?)




――3ヶ月前、この世界に迷い込んでしまったリンネを拾ってくれたのが、目の前にいる男、イスタだった。

「ギルド・リベルタ」という冒険者ギルドに所属しており、近くにあるダンジョン踏破を目指して毎日潜っているのだとか。


「そもそもダンジョンって……よくわかんないけど、そんなに面白いもんなの?」

「面白いというか、誰もが一度は憧れるんじゃないか?」

「ふ〜ん、あーしには分かんないや……」


無表情のはずなのに、なんだか目がキラキラして見える。

イスタに限らず、このギルドに所属するメンバーは皆ダンジョン踏破に憧れているという。


100年前に突如として現れたダンジョンは、世界各地に数え切れないほどあるらしい。

その中でも踏破出来ているものはかなり少なく、片方の手で数えられるのだそうだ。

100年経っても踏破できないダンジョンが大量にある中、なぜ人々はダンジョン踏破を目指すのか――。


「金銀財宝、かァ……もし手に入れたら、あーしにもわけてよね?」

「あぁ、もちろんだ。リンネだってもう立派な家族だからな」

「……ア、ソウ」


ふ、と優しい笑顔を浮かべ、頬を撫でてくる美男子。

うっかりトキメキかけるが騙されてはいけない、この男は無自覚にこういうことをやってのけるのだ。

一見クールで無愛想に見えるが、叱られてしょんぼりと落ち込んでしまったり、金銀財宝を求めて冒険者になったり、少年のように無邪気なところもあるのだ。


「じゃあ、俺はそろそろダンジョンに向かう」

「ほいほーい、いてら〜」


食べ終わった食器を持って立ち去るイスタを見送ってから、リンネも重い腰を持ち上げる。


このギルドのお世話になってから、洗濯や掃除や料理の手伝いなど、家政婦のような生活を送っていた。

その事に文句などないし、むしろ素性のしれない怪しい娘を入れてくれたことだけでも感謝している。

最初は信じてくれたなかった異世界人だということも、あまりに違いすぎる服装やプリントの文字、スマホなどの近大道具を見せ、なんとか信じてもらうことができた。

最初は懐疑的なメンバーもいたが、3ヶ月も経てばほとんどが顔見知りになり、気安く声をかけてくれるまでになった。


「リンネちゃん、悪いんだけど街までお使い行ってもらってもいい?」

「おけぴ〜!!何買ってくる?」


さぁ、午後の仕事が始まる。




――――――――――――――――――――




(な、な、なんで……!?魔物ってダンジョンの中にしか出ないんじゃないの!?!?)


料理長から買い出しを頼まれたリンネは、行きつけの店から帰る途中だった。

余ったお金で好きなおやつを買っていいどのことだったので、有り難く使わせてもらった。

甘くて美味しそうなリンゴ3つ入りを3袋、帰ったら料理長含めた料理番の皆で食べる用だ。

ひとつはこっそり持って帰って、レイアと食べるのもいいかもしれない。

ギルドメンバーとは全員顔見知りだが、あの時拾ってくれたメンバーは特に仲良しなのだ。


そんな思いを胸に、うきうき気分で帰路に着いたところで事件は起きた。


「ぎゃああっ!!!」

「お前ら!魔物がきたぞ!!」

「店のことはあとだ!とにかく逃げろおお!!」


ギルド・リベルタはこの街の中心にギルドハウスを構えている。

他にもちいさなギルドはたくさんあるが、その中でもギルド・リベルタはとりわけ大きな組織であった。

メンバーの数も多く、その分屋敷もでかい。

ギルドハウスから少し遠くの、どちらかというと街の出入口に近い方に、行きつけの八百屋はあった。

その出口から出て、まっすぐ進めばそこにダンジョンがある。


つまり。


「マジやばいんだけどぉ〜〜!!!!」


ごくごくたまにだが、ダンジョンから出てきた魔物が街まで迷い込んでくることがあるらしい。

特に昼間なんかは、屋台からの食べものの匂いがふるため、その確立があがるんだとか。

今回も例外ではなく、匂いにつられてきたらしい魔物だった。

イノシシのような見た目で、牙なのか角なのかわからないがとにかく大きくて、あと足がめちゃくちゃ早い。


「おじょーちゃんも気をつけてな!俺は家族のところに行くからよ!」

「ありがとぉ〜!!おっちゃんも気をつけてね!!」


一緒に逃げてきた八百屋の親父と別れ、ひたすら走る。

周りにも青い顔をして走る住人たちがおり、目指すはこの街一番のギルド、リベルタだ。

ギルド・リベルタにメンバーとして所属しているものの、リンネは家政婦のようなう立ち位置である。

悔しいが、戦うことはおろか魔物の足止めすらできないだろう。


「イスタ〜!レイア〜!みんな〜!!へるぷみ〜!!!!……ぎゃっ!!!!」


ワンチャン誰かギルドメンバーいないかななどと思いながら叫んでいれば、見事に躓いて地面へと飛び込んでしまった。

膝を強打して痛いし、手のひらや肘、膝に沢山できたであろう擦り傷がヒリヒリする。


「〜〜〜〜〜〜もー!!ガチでありえないんだけど!!!ってやば!魔物は!?」


ありえないありえない、本当にありえない。

やるせない怒りが胸を覆い尽くすが、はっと気づいた時にはもう遅かった。

自分の影に大きな影が被り、冷や汗が止まらなくなる。

遠くから街の人たちの必死な声が聞こえてくるがもうどうすることもできない。


「……っ!!」


「――"テイム"」


覚悟をしてぎゅっと目をつぶった時。

高くて可愛らしい声が響き渡った。

少年のような、少女のような、よく通るその声に合わせて、魔物がぱっと輝き出す。


「……え?」


段々と光が収まっていき、リンネが目を開けた時、そこにいたのは……。


「よしよし、いい子だね」


10歳ほどのちいさな男の子と、そんな男の子にメロメロになって甘える魔物の姿だった。


「なにごと!?ってか危なくないの!?」


思わず転んだ痛みも忘れて、男の子に向かって声をかける。

もしかしたら、今にでもまた襲いかかって来るかもしれない。

だとしたら、男の子が危ない……はずなのだが。


「危なくないよ、もうこの子は僕がテイムしたから。あんたこそ、派手に転んでたみたいだけど……」

「あ、あはは、見られてた?ちと躓いちゃってさぁ〜」

「ふーん。……じゃあ、僕いくから」


街の人たちは皆男の子のことを知っているのか、ありがとよ!なんて声をかけながら戻っていく。

少なからず魔物に荒らされてしまった店もあるので、これから復旧作業に入るのだろう。

別に、なんて素っ気なく返して帰ろうとする男の子に、街の人たちは笑顔で頭を撫でる。


「ま、まって!」

「……なに?」

「えーと、あーしはリンネっていうんだけど、君の名前は?」

「……タオ」


タオと名乗った男の子は、そのままリンネの顔をじっと見つめる。

話すことが好きでは無いように見えるが、こうしてリンネの話を待っているというところに胸がきゅーんとなる。

これはアレだ、親戚の子供が可愛く見えてしまうやつだ。


「さっきのさ、テイムってどんなやつ?」

「……知らないの?その名前の通りだよ、簡単に言えば魔物をペットにできる」

「そんなことできんだ……」

「僕はテイマーだから」

「でた!職業とかいうやつっしょ!いいなー、かっこいいなぁ」


こんなちいさな子供でも、そういう職業を活かすことが出来るのか。

生まれた世界が違えど、タオの方が何倍も大人に見えて思わず感嘆の声を漏らす。

すごいねタオは、なんて言ってみれば、別に、とまた冷静な反応。


「……てか、なんかそれってパカモンみたい!」

「ぱ、……なに?」

「バトル&ゲットってやつっしょ?あーしあのゲームめっちゃハマってたんだよねー!」

「げーむ?はま……え?」


元の世界で大人気だった子供向けゲームのことを思い出して、なんだか懐かしくなってしまう。

リンネもちいさな時からお世話になっているゲームで、親もパカモンが大好きだったためにその影響でずっとプレイしていたのだ。

そのほかのゲームはやったことはないが、パカモンだけはだいぶやり込んでいた記憶が蘇る。


「ね、あーしにもさ、それできないかな?」

「……なに、テイマーになりたいの?」

「そ!魔物って倒すしかないんだと思ってたけど、捕まえれんのちょーオモロいじゃん!」

「あんたが思ってるより危険だよ」

「モチのロン!ちゃんと分かってる!……でもあーしさ、さっきのタオ見て、めっちゃくちゃカッコイイ!って思ったんだよね」


日本人ならではのコレクター気質が疼いたのは嘘ではない。

だがそれと同時に、魔物を傷つけることなく、大切なものを守れるなら、それはどんなに素晴らしいことかと思ってしまったのだ。

今のリンネには、力も知識もなにもかもが圧倒的に足りていない。

それでも、"テイマー"というものに憧れたのだった。


「……さぁ、職業適性もあるし、なれるとは限らないけど。いいんじゃない?」

「………………」

「……なに?」

「タオ〜!!あんためっちゃ優しいんだね〜!!」

「は、はぁ!?ちょっと、くっつかないでよ!」


なんだかんだ面倒見が良いようで、タオはなんとそのまま占い師の元へ連れて行ってくれるという。

この世界の人は生まれた時に占い師の元へ連れていき、そこで職業適性を見てもらうんだとか。

職業適性すら知らないリンネのことを不思議に思いながらも、深く突っ込むことをしなかったタオはだいぶ大人びているのだろう。



――――――――――――――――――



「なんだ、タオに会ったのか」

「え、イスタ、タオのこと知ってんの?」

「あぁ。何度かギルドに誘っているんだが、いつも断られてしまう」


心做しかしゅんとしてしまったイスタを宥めながら、今日の出来事を話す。

あれから占い師のところへいき、職業適性を見終わって貰ったことにはだいぶ日が傾いていた。

そのまま家に帰るというタオと別れ、ギルドハウスに向かっているところでイスタと出会ったのだ。

普段使っている剣が壊れてしまったので、鍛冶屋に寄ってきたのだという。



「タオってめっちゃカッコイイね!子供だと思って舐めたらいかんわ〜」

「そうか」

「あーし転んじゃってさ、もうダメ〜!って思ったとこに颯爽と現れんの!ガチヒーローかと思ったね」

「やはりリンネもそう思うか」


タオの真似をして見せると、イスタ穏やかな笑顔を浮かべながら相槌を打つ。

その笑顔がなんだか、親や兄のようで、こちらまで微笑ましくなってくる。


「あ!それでさ、それでさ!」

「ん?どうしたんだ」

「あーし、タオと一緒に占い師さんとこ行ってきたの!」

「ほう、職業適性か」

「そそ!あーしもテイマーなりたい!って言ったら、タオが連れてってくれてさ!」


水晶の前に手をかざすだけの簡単な作業だったが、本当にあれで職業適性が分かるのだろうか。

現代に慣れすぎたリンネにとって、少々胡散臭さを感じるものではあったが、これからは皆と同じように魔物とやり合えると思えば、なんだかワクワクしてきた。


「それで、どうだったんだ?」

「なんと……!」


どぅるるるる、ドラムロールの真似をしてイスタの正面に躍り出る。

足を止めてしっかりと聞く体勢を取ってくれるイスタも、タオに負けず劣らず優しい男だ。


「……あーし、テイマーの素質あるってさ!!」

「そうか、良かったな」

「んっふっふ〜!これからはあーしも、魔物バンバンテイムしてくからね〜!」

「中には危険なものもいるからな。気をつけるんだぞ」

「分かってるって!でも安心して、タオがシショーになってくれんの!」


そう、無理を承知でお願いしてみたのだが、なんとタオが師匠となってくれるらしいのだ。

何を思ったのかはわからないが、ああ見えて本当に優しい男の子だ。


「それなら安心だ。……早く帰ってみんなに伝えよう、今日はお祝いだ」

「やった〜!ケーキも食べたい……あぁぁあ!!!」

「な、なんだ!?」


お祝いという言葉に嬉しくなって、イスタの手を取り駆け出そうとして3秒。

リンネはとても大切なことに気づいてしまった。


「……おつかい、出来てないじゃ〜ん!!」





日本の東京に生まれ落ちて17年。

まつ毛はツケマでばさばさに、茶色に染めた髪はふわふわに盛るのが鉄板。

胸元は緩めのリボンで、足元は頑張って育てたルーズソックス。


異世界にトリップして3ヶ月とちょっと。

メイク直しの道具しかないから前よりは控えめだけど、ヘアセットは怠らない。

服装はとにかくミニでかわいいやつ。


平成ギャルに憧れるごく普通の一般女子高生――本谷 りんねは、これから冒険者ギルドにて、最強のテイマーになる予定だ。




しかし今は、ワンチャン狙ってこれから八百屋に戻るか、大人しく白状して怒られるか、究極の2択に迫られるのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

書いてて楽しかったです。

いつか連載版で書きたいお話の序章部分になります。


誤字脱字などがありましたら、報告して下さると嬉しいです。

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