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メイドと書いて王子と読む!!  作者: E/MA
ふたりの早朝
1/3

あるメイドの日記

ぜひ読んでいってください。

 (わたくし)の名はアイリーン・フェザーノート、セーナ・レイノーツ嬢の御付き。三大貴族家レイノーツ家に代々仕えるフェザーノート家の長女。


 母はアイネ、父はローグ。妹にアイーシャとアイラ


 我が主セーナより譲り受けた代筆機(ライター)なるものを用いてこれを記す。


 白月歴706年


 4月21日、屋敷に盗人が入る。領外から来た男三人、女二人の無謀な犯行。私が制圧と警団への引き渡しを行う。目的はセーナ様の身柄、もとい身代金であった。さすがに最上位貴族を侮りすぎではないのだろうか。それともレイノーツ領の平和が領主を貧弱だと勘違いさせるのだろうか。



              中略



 5月29日、再び盗人が入る。同時に他の三家の一つにも盗人が入ったそうだ。その全てが領外の者たち。私とお母様が制圧。出所を聞くとアーバスが最近支配した国があるとのことで、その国からの亡命者だった。この頃、国内でも不穏な噂が立っている。用心するに越したことはない。私も普段から武具の一つでも持つようにする。



              中略




 7月7日、レピュナ王国が隣国から奇襲を受ける。我らがレイノーツ領に被害は無かったが、王都には死者も出たらしい。隣国のアーバス王国の隠密部隊が無慈悲な無差別攻撃を行ったとの報告。当主様は戦争が起きるかもしれないので領を完全に結界で覆うと判断された。妹のアイーシャは服を買いに行けないと文句を言っている。確かに領内には娯楽が少ない。セーナ様もそうなるだろう。交通の便は悪くなるが、安全のためにやらねばなるまい。幸い、食料は領内で完全に回っている。



              中略



 8月9日、当主様の仰ったとおりに戦争は起きた。未だその戦火はここまで届いていない。呼んでおいた娯楽師や服屋もこの地に馴染んできた。三家の一つが色々と苦労しているらしいが、他の貴族は大丈夫そうだ。三家が残ればこの国は何があろうと絶えない。何があろうと。



              中略




 8月14日、戦争は一応終わった。この戦争がもたらしたのは、敵国への直接的被害や二国間の主導権でなく、両国軍の尊い命の喪失だった。国のために、王のために戦った者たちはその悉くが焼かれ、その実何の利益も無い戦争となった。領に呼んだ者たちは居心地が良かったらしく、希望する者はそのまま住まわせることにした。



              中略




 9月1日、セーナ様が水浴びをしたいと仰った。この季節のルーイ川は冷たく気持ちが良い。川には小魚もいた。セーナ様はご満悦で私もとても生きがいを感じる良い日となった。エリヒ様とアイラも一緒に来て水を掛け合って遊んでいた。タオルを余分に持ってきておいて良かった。セーナ様がエリヒ様を愛おしそうに拭いて差し上げるのを見て、少し寂しくなった。



              中略




 10月18日、セーナ様が一八歳になられた。私に感謝をしてくださった。この国ではもう結婚できる歳だ。これからセーナ様が婚約の事を考えるようになると思うと、寂


かしまいたんんかんうあごそ


あえ



これこれからあの方はもっと美しくなる。今までは女の子として、これからは女として…色んな事が変わるだろうが私のセーナ様への気持ちは決して変わらない。




代筆機の難点は文字を直せないことだ。




              中略




 11月11日、セーナ様が自己魔法に目覚めた。天性の魔法使いは希少な資質。セーナ様も大層御喜びだった。なんでも魔力を生命エネルギーに変換できるらしい。治癒魔法と呼ばれる類だ。レイノーツとフェザーノートは代々魔法が得意な家系だが、治癒は記録でもあまり見ない。それどころか、人類史でも稀な魔法らしい。セーナ様は人の役に立てるかとお聞きになった。私はあの方が他者のために力を使う御積もりでいることを、嬉しく思った。




              中略





 12月30日、隣国からの亡命者が増えたと聞いた。以前のように盗人が来ても困る。鞭と魔法の鍛練もより精を出すことにする。  そういえばアイーシャは帰ってくるのかしら。




              中略




 白月暦707年


 1月1日、707年のスープは私とアイーシャで作った。宮廷の味を覚えて帰ってくるかと思えば、ルミドラ王子が好きな味だと言う。私は妹に結婚の早さで負けるかもしれない。その上私の結婚については、お母様とお父様には期待薄だと言われる始末。私にはセーナ様がいるからいいのよ。別に。




              中略




 2月7日、降りしきる雪の中、所々氷の張ったルーイ川を棺桶が流れて来た。私はそこで双子を拾った。

三、四年前くらいから考えてた物です。暇つぶしにでもなれば幸いです。

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