少年の思考
こんばんは、前、書き子と申します。
この物語はフィクションなので、実在する人物や団体とは関係ないです。
セブンイレブンに置いてある鯛焼きも美味しいですよ!
最近この付近で起きる怪事件のせいもあり、バイト先が休業する事が多く、つきっきりで看病する事が出来ていたのは幸いだった
テレビに目を向ける
「速報です、奈良県宇陀市にて魔憑による被害が発生しました。直ぐに現場の自衛隊が対応し、被害は最小限に抑えられたとのことです。先日未明の東京で発生した魔族の痕跡は未だ調査中、今年に入り、魔憑による被害は三件、もし現場に遭遇した場合は速やかに避難、自衛隊166番に通報してください」
画面の綺麗なお姉さんが、真剣に、正確に情報を伝える
「この人好きなんだよなぁ、大人な女性ってやっぱ憧れるよなぁ」
少年が微かに動いた
とりあえずテレビは消しておく
「よぉ、大丈夫か?」
「!!」
急に上体を起こしたかと思えば、痛みで静止していた
「待て待て、無茶すんな」
「貴様は何者だ」
(こっちの質問なんだけどなぁ…)
「俺は藤波飛鳥、ただのフリーター」
「我をどうするつもりだ」
赤い綺麗な瞳は発光していなかった
「特にどうもしないよ、名前聞いてもいいか?」
「……」
かなり睨まれた後、気づけば素直に答えてくれた
「樋口だ、先程の無礼を詫びたい」
そっと頭を下げた
「いや別に良いけど、もう一つ聞いていい?」
「何なりと申せ」
「君は…魔族…」
(!)
「なのか?」
少し驚いた後、俯いた
「…、何処かで聞いたことはあるが、我がそうなのかは知らぬ」
(嘘をついてるとは思えねぇな…)
「とりあえず飯でも食うか」
「いや腹は空いてな…」
(くぅ〜〜)
お腹が鳴る
(ベタいな)
「今までどうやって飯食ってたんだ?」
「えっと、虫…」
「よし!じゃあ、待ってろ」
部屋は1DK、洋室に彼を置いてキッチンに行き、簡単にお雑煮の準備をする
(最近の事件に魔族が脱走した!…なんてのは無かったと思うし、まだ政府が公に出来ない何か陰謀説が、もしかしてタイムスリップ?…いや、発想が飛躍しすぎだな…いずれにせよ、この子は…)
「なぁ、うちに泊まるか?怪我が治るまでは安静だけどな」
取り敢えず現在を鑑みて提案する
(この農民は我が追われていることを知らないのか…なら好都合だ…この見知らぬ土地で安全な拠点を確保できるなら…)
「すまない、暫く居させてもらおう」
車の事や、日付や時間の事など色々と聞きかれたが、全部丁寧に教えてくれた
(文明の発達していない集落も日本にはあるんだな、和歌山とかかな?)
問答が終わるとすぐにお風呂に案内された
「飯はもう少しかかるし、お風呂の準備してくる」
「いや、気にし…」
「最近お風呂入ってないだろ?」
高速で遮る、臭かった
「え?」
「これも一つのお礼だ、なんせ命救われてんだからな」
「…」
「あーえっと、汚れた服はこのカゴに入れて…パンツはこっちが前で…」
淡々と説明だけして、ご飯の支度をする
「あいつ本当に現代人か?」
そんな疑問を抱きながら卵を溶く
――。
樋口は水に打たれながらこれまでの事を整理していた。
(まず分かっているのは、この世界は夢ではない?…そしてあすかとやらは我に親切であるが、差し金である可能性がまだある。完全に信用しては寝首をかき切られん…あの男に、この世界の基礎を学んで置こう、服装は変だが)
しゃんぷーのノズルを勢いよく押す、そして大量のシャンプーを髪の毛に付け、洗う。すると、大量の泡が立った…とても気持ちが良かった。
鏡を見て過去を思い出す
「…、お腹すいたな…」
どらいやーは反応がなかったので、自身の周囲の温度を上げて無理やり乾燥させた
(コンセントが抜いてあった)
多量のトイレタリー用品のおかげで樋口の髪の毛は凄まじく艶々であった
飛鳥は入れ替わる様にお風呂へ行く。部屋を見渡せばそこそこ広い部屋だった、炬燵の上に置いていた本にふと視線を送る
「面白いか?」
そう飛鳥は此方を覗き込みながら言った
「うわ‼︎」
目の前にあったあすかの顔に驚き少し距離を取る。
「うわって…」
「すっすまない…気づかなかった」
「どうだった?」
「正直あまりよく分からぬ、この文字は知っている様で知らぬものばかりで…」
「そうか…明日教科書借りてみる、あぁ往来物?」
「…かたじけない」
「飯だ飯、嫌いなもんはねぇよな?」
「口に入ればなんでも食うぞ」
「赤ちゃんかよ」
おかゆを口に入れて一言
「味が濃い…」
「ん、あー…」
(昔って薄味なのか)
樋口の言動は、大体タイムスリップで辻褄は合う
歯を磨き、離れた位置に布団を用意し飛鳥は眠りについた
――
朝、目覚めると、用意した布団に樋口はいなかった。
キッチンへ出ると、部屋の隅で膝を抱え、頭を揺らしながら眠る樋口の姿があった。
樋口は、飛鳥に気がつくと顔をあげ
「あ、おはようございます…でしたっけ」
と、まだ眠そうな顔をして、昨日教えた挨拶をしながら、飛鳥の方を向いた、
「おはよう、そんなとこに寝てると風邪ひくぞ」
「心配は無用、我は己の体温を上げることができる故、病にはかからんし、すぐ治る」
「そっか、すぐに朝ごはん作るから」
「かたじ…ありがとう」
「……毒は入ってないから、大丈夫だよ」
「…あぁ……」
テーブルに座る飛鳥は、スープを眺め、警戒している樋口に告げた
(すっかり元気だな…)
「?」
視線に気づいた樋口は、不思議そうに視線を返した
「いや、なんでもない」
「まさか!毒!?」
「違う違う!そんな疑うなら俺が全部食うぞ!」
「んな!?やらんぞ!これは我の飯じゃ!」
「…フッ、ハハハ」
自然と笑みが溢れた
「な、なんだ!何がおかしい!」
「なんか、樋口を見ていると、思い出すんだ…」
樋口と同い年くらいの妹がいたが、十年前、謎の生物に襲われて、現在も意識不明の重傷を負い、入院していることを伝えた
「そうだったのか…」
「取り敢えず一個質問」
そっと頷いた
「樋口は、どっから来たんだ?」
「……我はこの時代のものではない、遠い昔から来たんだと思う。」
正直に答えていた
本人もそう主張し、状況で説明がつく
「だよなぁ…」
(樋口は新撰組の羽織してたから、最初は田舎ハイクオリティコスプレイヤーの類かと思っていたが、あの身のこなしと剣捌きを見ればと思っていた。となれば、大体幕末が1869年で…戊辰戦争かな?)
自分でも驚く程の適応力、実際見て仕舞えば、信じざるを得ないと言う奴だ
大まかな推測を終え次の質問を投げかける
「樋口はこれからどうすんだ?」
「え?」
しばらく沈黙が続いた
味が濃いと罵られたチャーハンを無言で口に運んでいく
(いくら善人といえど、いや、善人だからこそ迷惑は…我の個人的な問題に巻き込むわけにはいかぬ)
「…陽が沈むまでに、ここから去ろうと思う」
「いく当てはあるのか?」
「…無い、ただ!…」
「過去には戻れるのか?」
「わからない」
「戻りたいのか?」
「…わからない」
「もう少しだけうちに泊まっていけば?」
「それだけは出来ない、」
「君はこの世界では魔族って呼ばれ方をしてるんだ」
「そうなのか」
「うん、恐ろしい悪魔って」
「そんな…」
「多分政治家のプロパガンダの一種思ってるからし、千差万別だろって思ってる」
「えっと、つまり?」
「どうすりゃあいいんだろ?取り敢えず慈善活動で好感度上げる作戦を思いついてるけど?やるか?」
「じぜんかつどう?」
「そ、それと…一応聞くけど、男だよね?」
全身を一通り見る
中性的に整った顔立ちに長い髪、だが胸に張りはなく…ない可能性もあったが、自分の服が似合っていた
「まぁ女でも俺は黒髪巨乳の年上にしかし興味ねぇから安心しろ」
「我は男だ」
(セーーーーフ)
予想通りというか、何というか、とにかく一つ気がきでならないことが解決し、少し身が軽くなった。
「まずはあの黒い影をぶっ飛ばす」
「おう!」
「じゃあ俺は教科書借りてくっから、着替えはここに置いていくけど、夜まで外でないなら寝てていいぞ」
と言い颯爽と何処かへ行った
「…それだけなのか?」
もう少し色々聞かれると思っていた、自分が何者なのかとか
(…我を一人にしていいのか?逃げたりするとは思わないのか?)
と思うと少し恥ずかしくなった。
あれだけの好意を無碍にする自分は、かなり臆病になっていると痛感した
(ここの居心地は悪くないし、あの農民が敵であればもうこの世界に…取り敢えず楽しんでみようかな?夢のような…現実を…)
少しサイズの大きいダボダボの服に着替えて、長い髪の毛を後ろにまとめ、紐で括る
(まずは拠点周りの地形把握が最優先)
あたりを見回ることにした
樋口の小噺
165㎝
戦闘センスはピカイチ
魔力を有していますが、使いこなせてません
炎を燕の形にしてを放ちますが、元からかなり不細工です。
ぶつかるまで爆発しません。
剣術、天然理心流・紅化を使いこなせますが勘です
不器用さを器用さでカバーしてる脳筋です。?
他にも属性によって化ける色が変わったりしますがまた別のお話