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占い師

理央は、震えながら言った。

「…あの、最初に聞きたいんだけど。」皆が、何だろうと不思議な顔をする。理央は続けた。「SG位置って何?」

拓海は、そうか、と思った。

理央には、話の内容がわからないのだ。

ここに来た人達が、皆人狼ゲームに詳しいわけではない。

初めての人も居るだろうことを、すっかり忘れていたのだ。

「SGっていうのはね、スケープゴートってことだよ。」幸喜が、優しく言った。「狼とか、人外が寡黙な村人とか、怪しく見える人を吊り縄消費に使うために黒く塗る事を言うんだ。人外が逃げ切るための、スケープゴートってこと。」

理央は、ホッとしたように頷いた。

「そうだったの。私、人狼ゲームって初めてで、夜にしっかりルールブックを読んで来たけどみんなが言う事が全然理解できなくて。このままじゃ怪しまれるって分かってるのに、わからないから口を挟めなかったの。」

二千翔が言った。

「じゃあ、呪殺は分かる?狐はね、狼に襲撃されても死なないけど、占われたら溶けるんだ。偽の占い師にはそれが出来ない。だから、真占い師を村人に分かるように、狐を占うようにってみんな言ってるの。で、それに反対してグレー…は分かるかな?」

理央は、頷く。

「色がついてない人?」

二千翔は、頷き返した。

「そう。そのグレーを占って色を付けてくほうが良いんじゃないかって人も居るんだよ。理央ちゃんはどう思う?」

理央は、首を傾げた。

「どっちが良いのかわからないけど、確かに占い師は偽物は偽物なんだから色をつける必要はないと思うけど、色がついてない人が怖いなあと思うわ。占わなかったらいつまでもグレーでしょ?私にとっては幸喜さん以外はみんなグレーなんだもの、誰を信じたら良いのかわからない。あ、拓海さんも確定村人なのよね?もう一人はどうして出て来ないの?」

そこから説明するのか。

拓海がどうしたものかと思っていると、史朗が言った。

「…確定村人の共有者は、襲撃される可能性が高いからだ。」皆が史朗を見る。「二人共出ていたら、狩人が守り切れないかもだろう?狩人は一人しか居ないからな。一晩に一人しか守れないんだ。」

理央は、目を丸くした。

「じゃあ、私も噛まれるかもしれないの?嫌よ、だってまだお告げ先しか知らないのに!狩人は占い師を守ってくれないの?」

幸喜は、困った顔をして拓海を見た。

拓海も、何から説明したら良いのか分からなくて、困惑した顔をした。

すると史郎が、ため息をついた。

「それは、今説明することじゃない。君がもしオレの相方だったら、しっかりして欲しいとは思うな。確かに初めてで話について行けないのかもしれないが、状況を見て狩人が今、占い師を守る必要が無いのが分かるはずだ。」

理央は、困った顔をした。

「え?狼に襲撃されても構わないってこと?」

それには、礼二が言った。

「だから、君目線では君が真占い師だと知っているのだろうが、他の者達からは君が偽か真かなんか分からないんだよ。占い師に一緒に出ている人外は、それを村人に分からせることになるから今の状況じゃ占い師を噛まないだろうってことだ。占い師が噛まれるのは、その人が真だと確定した時、もう盤面が詰まって来た時とかぐらいじゃないかな。それも、占い師に出ている仲間の人外を切り捨てる覚悟でやるって感じだろう。だから、君は噛まれる心配は今のところ無いし、狩人もそれを知っているから君を噛むこともない。ということだ。」

理央は、皆がうんざりし始めているのを感じたのか、黙って頷いた。

理解できたのかどうかは、その様子からは分からなかった。

桔平が、言った。

「困ったな。こういうのってメタっていうんだろうけど、理央さんが真に見えて来たぞ。でも、惑わされたら駄目なんだよな。もしかしたら、演技かもしれないし。」

それには、隣りの二千翔が頷いた。

「そうだねえ。僕も、なんだか分からないけど、ちょっと嘘臭いような気もして来たかなあ。それこそ、SG位置になりそうだから、もし今日占い師からだったら、理央ちゃんに入れるかなって思った。もし真だったとしても、確実にもう一人真が居るからさ。」

拓海が、慌てて言った。

「いや、それはちょっと早計だよ。ま、今日はグレーからだから。」と、黙っている宏夢を見た。「宏夢は?どう思った?」

宏夢は、顔を上げた。

「分からないよ。でも、明さんが相方だったらいいなって思ってる。理央ちゃんだったら頼りなさ過ぎて、占い結果でラインが出来た時、別のラインの方との対決になって勝てない気がするから。村が納得しないだろ?だから、信頼できるしっかりした相方が欲しいなって思った。でも、オレからしたら占い結果しか確実じゃないから、おかしなことを村に言ってミスリードしたくないって思ってる。明さんがめっちゃ村のための発言しているみたいに見えるから、今は信じて任せておいたらいいかなって。オレは、指定された所を占うだけだよ。」

礼二が、顔をしかめた。

「おい、真だったらしっかりしないと。今言ったように、もし理央さんが相方だったら議論で負けるぞ。君がしっかり発言で真を取って行かないとな。」

宏夢は、うーんと渋い顔をした。

「オレ、あんまり人狼ゲームに詳しくないから。だからミスリードが怖いって言ったんだ。村を変な方向に持って行きたくないだろ?結果だけはもらえるから、それだけは絶対に落とすよ。オレができるのはそれだと思ってるから。」

難しい。

拓海は、思った。

占い師達がどういう内訳なのかが、全く見えないのだ。

明だけが突出して発言して白く見えるのだが、それがまた自信があるから騙りに出た人外に見えなくもない。

とはいえ、今日は相互占いで色を付け合って見えて来るものもあるだろう。

なので、拓海は言った。

「…まあ、今日は占い師吊りでもないし、どうせ明日には色を付け合うから関係性が見えて来るだろう。グレー吊りは確定で。」

そこで、千晶が言った。

「あの」皆が振り返る。千晶は、申し訳なさそうに言った。「ごめんなさい、私お腹の調子がなんだか。多分、療養食とはいえお腹が空いてたからガンガン食べ過ぎたのかも。」

それには、優斗も何度も頷いた。

「実はオレも。ちょっと部屋に帰ってトイレに籠って来ていいかな。」

言われてみたら、拓海もなんだかモヤモヤとお腹がおかしい感じだ。

「…じゃあ、次はお昼ご飯の後にしよう。オレもなんだか、さっきからモヤモヤしている感じで…、」

そう言った瞬間、バンとリビングの扉が開いて、三人の白衣の医師が入って来た。

その中には、昨日拓海を診察してくれたマルコムも居た。

「あ、先生…、」

拓海が話し掛けようとすると、マルコムではない他の医師が言った。

「胃腸がおかしいですか。とりあえず部屋に戻って、トイレに向かってください。楽になったら処方した薬を置いておきますので、それを飲んで。さあ、早く!」

本当に、全部見ているのだ。

拓海は、それを見て思った。

カメラで見ていて全部チェックしているので、無理はできないようになっているのだろう。

こうして普通に話しているが、まだみんな余命宣告を受けた時と同じ病状のはずだ。

体が楽になっているだけなのだ。

医師たちに早く早くと追われて、特に問題がない人達も皆、自室へと追い立てられて行ったのだった。

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