1日目の会議
とりあえず、ボリュームはあるがやっと固形に見える療養食を食べ終えた一同は、リビングへと移った。
そこに、きちんと円形に並べられている椅子へと座り、昨日ジョアンが説明する時に使っていたホワイトボードを引っ張って来て、置いた。
そこには、昨日のまま大きな紙に書かれた名簿が貼ってあって、会議をするには好都合だ。
拓海は、その隣りに自分の椅子を持って行って、座った。
立っていても良かったが、途中で疲れて来たら困るからだ。
拓海は、皆を見回して、言った。
「えーっと、じゃあ役職だな。占い師には結果があるだろうから、出て欲しいな。今日はグレーから吊る事になるんじゃないかなとも思うし。まあ、進行決めるのは盤面固まってからになるけど。」
明が、いち早く手を上げた。
「私が占い師だ。白先も言うか?」
あまりに早かったので、拓海は面食らった。
「ええ?!あ、はいお願いします。」
「待って!」幸喜が叫ぶ。「他に占い師は?二人居るよね。とにかくみんな出てから結果は一斉に出した方が良いんじゃないかな。どうせ騙りもあるし。」
拓海は、そうか、思わず頷いてしまったが、そこから考えないといけなかった。
「そうだな、ごめん。他に占い師は?少なくとももう一人は居るはずだし。」
すると、1番の史朗が手を上げた。
「オレだ。」
「私です。」
「え?オレだけど。」
三人の声がする。
拓海は、立ち上がってホワイトボードに明、史朗と書いてから、言った。
「今史朗さんの他に二人出たよね。誰かな?」
「オレ。」宏夢が困惑した顔をした。「オレが占い師。」
すると、理央が言った。
「私も占い師。」
つまり、明、史朗、宏夢、理央が出て来た。
「この中に真占い師が二人。」一真が言う。「狂信者には狼が分かるから話してるはずだし、占い師には狼陣営からは一人と考えるから、もう一人は狐だな。背徳者もいないし、ここは占い師同士の相互占いで、真占い師を確定させて狩人に鉄板守りさせるってどうだ?」
幸喜が、パッと明るい顔をした。
「お、良いねぇ。一真白いねぇ。オレもそう思うな。」
拓海は、言った。
「じゃあ、とりあえず白先を聞こうかな。明さんは?」
明は、頷く。
「私は14白。美鶴さんだな。」
拓海は、うんうんと頷いてそれを書いた。
「史朗さんは?」
史朗は答えた。
「オレは、10。隆が白。」
拓海は、それも書いた。
「宏夢は?」
「オレは2。一真白。」
拓海はホワイトボードから目を離さずに頷いた。
「じゃあ理央さんは?」
理央は、おずおずと答えた。
「私は4。幸喜さん白よ。」
拓海は、それを聞いて書き記しながら、理央が真占い師の一人だったら無駄な白になったなあと思っていた。
全員の結果を書き終えて、拓海は言った。
「…じゃあ、この結果を踏まえてなんだけど。今日はグレーからかなと思うんだ。囲われてたとしても狼四人、狂信者一人狐二人のうち二人、プラス騙りの二人で四人だろ?残り三人はグレーの中に居るんだし。囲われてなかったとしたらもっと居る。間違えられるのは何回だっけ?」
明は、答えた。
「20人なので吊り縄は9。人外は7。二回は間違えても何とか。」
縄計算が速いなあ。
拓海は、思った。
多分明が真なら最強だ。
だが、偽ならかなりまずい気がする。
拓海は、頷いた。
「だったら初日はダメ元でグレーに行きたい。だから、できたら霊能者も出て来て欲しいんだけどな。任せるけど。」
すると、秋也が手を上げた。
「はいはい!オレが霊能者だよ。」
すると、一真と将生が同時に手を上げた。
「オレも!」と、お互いに顔を見合わせた。「え?」
霊能者が三人。
拓海は、それもホワイトボードに書きながらため息をついた。
「あー、霊能者にも出たなあ。普通に考えたら狂信者だな。」
千晶が言った。
「どうするの?こうなると人外は囲われていたらグレーに二人なのに。霊能から吊らないの?」
明が言った。
「初日に役職に手を掛けるのはどうだろうな。霊能者は3分の2が真だ。霊能者をローラーしてしまうと、それだけで2本の縄を無駄に使う事になるので、狼の噛みに任せておいた方が良いと思う。狩人の護衛は、この場合共有ぐらいにしか入らないので、霊能者を噛んで来ると思われる。占い師はまだ噛めない。グレーや白先は噛まない。占い先や吊り先が狭まるからな。霊能者は噛まれてから処理しても遅くはない。やはりここはグレーだろう。」
拓海は、名簿を見た。
「オレもそう思います。ええっと、そうなるとグレーは誰だろう。」
明が、すらすらと答えた。
「今のグレー、3浩人、5圭斗、7優斗、8礼二、11千晶、12朝陽、18桔平、19二千翔。八人だ。ここに最低二人、囲われていないとして最高四人。」
便利だなあ。
拓海は、言われるままにグレーの番号を書いた。
「…じゃあ、一人一人話を聞く?」
朝陽が言った。
「ちょっと待って、なんだか明さんに流されてない?真占い師じゃないかもしれないのよ。言う通りにして大丈夫?八人の内二人しか居ないかもしれないのに、そうなって来ると四分の一の確率なのよ?私は千晶ちゃんが言うように、三分の一で人外に当たる霊能者からの方が良いと思うけど。」
明が言った。
「だから霊能者は二人居るので、結果はその二人は絶対に揃うのだ。だから真二人が生存しているうちは絶対に偽の霊能者は結果を騙れない。つまり狼は霊能者を噛むしかないのだ。狐が出ている確率は限りなく低いと見ているので、出ているのは狼陣営、恐らく狂信者だろう。占い師に狂信者が出ている可能性もあるが、どちらにしろ狼は霊能者の中の仲間を知っているのでそこは噛まない。霊能者が二人になった時点で結果が割れて来るだろうから、その時に精査をしたら良いのだ。無駄に吊り縄を使う必要はない。少なくとも初日はな。」
そうなのだ。
真霊能者が二人居る時点では、人外は結果を騙れない。
だったら初日にグレーを吊って、お茶を濁している間に霊能者が噛まれたら、分かりやすくなるだろう。
すると、二千翔が言った。
「僕もグレーからで良いと思うけどなあ。なんか怪しいねー、なんでそんなに霊能者に行きたがるの?だってさあ、まだ囲われてるとは限らないんだよ?そしたら一気に確率は上がるのに。もしかしたら霊能者には狂信者が居て、そこなら吊られてオッケーだからとかなんじゃない?朝陽ちゃん、怪しい~。吊っちゃおうかなあ。」
朝陽は、顔を赤くした。
「な…!!違うわよ!」
二千翔は、フフフと笑った。
「冗談だよ?なんでそんなに怒るんだろう。顔、真っ赤だよ?もしかして、図星~?」
千晶が、横から朝陽を庇って言った。
「ちょっと、言い過ぎよ?そんな風に煽る事ないじゃない。そんな言い方するからむきになったんだと思うわ。すごく意地悪なのね、二千翔さんって。」
二千翔は、肩をすくめた。
「そりゃ、絶対勝ちたいからね。一度は諦めたのに、希望が見えたんだもん、どんな手を使っても人外を見つけて勝って治療してもらいたいって思ってるよ。みんなそうなんじゃない?村人だったら、しっかり考えて話さなきゃ僕は攻撃するよ。命が懸かってるんだからさ。」
それには、千晶も黙り込んだ。
確かに命が懸かっているのだ…同じ陣営なら、疑い合うことが無いように、お互い頑張って白くならなければならない。
村人同士で争っている暇はないのだ。
拓海は、言った。
「…じゃあ、今日はグレーから吊る。霊能者はもしかしたら二人とも生き残るかもしれないし、そうなったら色がハッキリ分かるから、明日から精査しやすくなるだろう。グレーから話してもらおう。誰でもいいよ、話す準備ができた人からどうぞ。」
皆が顔を見合わせる。
すると、浩人が言った。
「じゃあ、番号早いしオレから話すかな。」
拓海は、浩人を見た。
浩人は、話し始めた。