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5日目の投票

そのまま、投票時間まで特に何もやることはなかった。

明と史朗、どちらの視点からでももうかなり詰まっていて、明日の占い結果を待つよりなかったからだ。

夕食の席で、明は言った。

「今日は私から占い先を指定させてくれないか。常に史朗に譲って来たが、そろそろ良いだろう。」

史朗は、抗議しようとしたが、口をつぐんだ。

思えばいつも、史朗から指定していたからだ。

幸喜は、頷いた。

「そうですね。じゃあ、明さんはどこを指定します?」

明は、頷いた。

「桔平と二千翔。狐の可能性がありそうな場所だ。桔平はあまり発言に内容があるように思えない潜伏位置だし、二千翔は狼を気取ってすり寄っている狐にも見える。仮に白であって生き残ってもそれで私にとっての人外位置が完全に透ける。まあ、潜伏している狩人だとも考えられるから、狩人で無さげな方を占う事にするよ。」

明は、暗に桔平を占うと言っている。

だが、村目線では二千翔の方が狩人ではないように見えているはずで、明は恐らく二千翔を占うと思っているだろう。

二千翔が、苦々しく笑った。

「僕が狐?あり得ないけどね。桔平にした方が良いんじゃないの?狼目線でもし桔平が狐らしかったら、また噛み合わせてくれるよ。分かりやすいじゃないか。」

明は、フフンと笑った。

「なんだ、私に占われたくないのか?怪しいな。」

二千翔は、怒ったように言った。

「僕を占っても白しか出ないよ!完全グレーの桔平が居るのにおかしいじゃないか!」

明は、クックと笑った。

「まあ、いい。別にまだ君を占うとは言っていない。そんなに焦ることはないじゃないか。」

二千翔は、皆が自分を見ているのに気付いて、ストンと椅子へと座った。

「別に…焦ってなんかない。」

史朗が、言った。

「じゃあ、私は呪殺を出すしかないし、残ってるのが圭斗だけだから圭斗を占う。噛み合わせて来るんじゃないかと不安だがな。私のグレーばかりを取るなど、噛みたいからに思えて来る。」

明は、言った。

「君に呪殺が出せないのは私は知っているよ。君には私真が分かっているから狐位置が今日の占いで透けて来て助かるのではないのかね?もしかしたら、君の白先に居るのか?そうなったらその狐をどうやって処理するのか見物だよ。真を取ったら取ったで、吊るための言い訳が立たないからな。私が思うに、君はさっさと私を噛むべきだった。そして吊られて残りの狼達に後を託すべきだったのだ。村にここまで詰められてからでは、偽だと知られるわけにもいかない。間違えたな。」

史朗は、顔を赤くした。

「君が偽で私を噛まなかったくせに!圭斗で呪殺が出て吠え面かくのは君の方だ!」

明は、笑った。

「そうかも知れないな。楽しみだよ。」

二千翔は、そんなやり取りをじっと黙って見ている。

幸喜は、明がわざと史朗を煽ったのだと思った。

それがなぜかはわからない。

だが、何か意味があるのは確かだった。

時計は、容赦なく7時に近付いている。

美鶴が、言った。

「行きましょう。村のためには、私吊りでしょう?明日からのことは任せるわ。」

そうして、皆はリビングに出て行き、美鶴は投票で選ばれてローレンスと共に四階へと上がって行ったのだった。


1 畑山 史郎(しろう)→14

3 阿尾 浩人(ひろと)→1

4 中井 幸喜(こうき)→14

5 新田 圭斗(けいと)→1

8 町田 礼二(れいじ)→14

9 羽田 (あきら)→1

10赤坂 (りゅう)→1

14平野 美鶴(みつる)→14

18三田 桔平(きっぺい)→14

19阿木 二千翔(にちか)→14


結果的に、村は二分していた。

美鶴が自分投票していなければ、恐らく同票で決戦投票になっていただろう。

こうして見ると、色が透けて来るような気がする。

美鶴が黒なら、万が一にも生き残る事に賭けて、自分投票などしなかっただろう。

明が真だとして、そのグレーの中の礼二、桔平は美鶴に入れている。

だが、隆は史朗に入れているのだ。

これが殺しかねない票なのは結果を見ても明らかで、隆が限りなく白に見えた。

だとすると、今夜桔平で黒が出るのか。

幸喜が悶々としていると、いきなり扉が開いて、二千翔が飛び込んで来た。

驚いていると、二千翔は言った。

「もうすぐ部屋に入らないといけないから、急いで来たよ。みんなに見られないようにしようと思ったら、今しかなくて。幸喜、話しがあるんだけど。」

みんなが部屋に入っている時間を狙ったのだろう。

幸喜は、二千翔の方から来るなんてと驚いた顔をしていると、二千翔は急いで言った。

「ほら、あの、僕今夜噛まれるかもしれないから。明さんのあの言い方だと僕占いするって狼は思うでしょ?多分、桔平じゃなく僕を噛むよ。桔平が狐だったらそれで2死体になって明さん真が確定する。あの人の話聞いてなかったの?」

幸喜は、驚いた。

そういう意味だったのか。

「…そうか、だからか。」と、首を傾げた。「でも、それならどうして史朗さんを煽ってたんだ?」

二千翔は、イライラと言った。

「だから!どうしても呪殺したいと思わせるためだよ。僕で呪殺が出ても、圭斗も死んでたらどっちを呪殺したのか分からなくなるだろう?だから僕じゃなくてワンチャン圭斗を噛ませるために明さんはああ言ったんだ。だから今夜は圭斗を守る。君は守らないから。」

幸喜は、そうだったのかと目を開かれるようだった。

何か意味があるとは思っていたが、まさかそんなことだったとは思わなかった。

「…でも、それじゃあ桔平で呪殺が出ててもわからないんじゃ。」

二千翔は、顔をしかめた。

「じゃあどうする?やっぱり君守り?」

幸喜は、頷いた。

「うん。というか二千翔、明さんを真だと思ったのか?史朗さんが真だって、ずっと言ってたのに。」

二千翔は、顔をしかめた。

「…悪かったよ。」と、ブスッとして言った。「今朝、拓海が噛まれて。明さんなら拓海は噛まない。君を噛むよ。何しろ共有も狩人もあの人には透けてるんだ。君たちの一昨日の猿芝居なんかお見通しだからね。だから、ずっと君を守ってた。でも、僕も君も生きてる。護衛成功は見たところ出てない。拓海が襲撃されたのを見て、明さんが真だと悟ったんだ。その目線で見ていたら、あの人のやりたい事が見えて来た。僕を守る動きもしてる。急に意見を変えたらおかしいから今夜は美鶴さんに入れた。それだけだよ。」

二千翔は、考えを変えたのだ。

幸喜は、逆に怖くなった。

二千翔すら信じさせるために、こうして動いているのだとしたら…?

何しろ、史朗目線の白である、隆は史朗偽と見ているのが投票で分かる。

後は、二千翔の票さえ自分が取り込めば、明日の二択はしのげる…。

幸喜は、二千翔を見た。

「…それでも、明さんの手の平の上かもしれないから。」幸喜は、険しい顔で言った。「明日は、フラットに見てしっかり考えよう。事実だけを繋いで。」

二千翔は、呆れたような顔をした。

「え?君はどっちなんだよ。拓海の遺志を受け継ぐとか言ってなかった?僕が考えを変えたら明さんを怪しむの?いったいどうしたいんだよ。明日の決め打ちを間違ったら村がヤバイんじゃないの?」

幸喜は、言われて確かにそうだが、俄かに不安になって来たのにと首を振った。

「分からないんだ!もう、信じたいのに信じて良いのか迷うんだよ。明さんがどんな人なのか知ってるから余計に!」

二千翔は、フンと踵を返した。

「もういい。とにかく僕はもう行くよ。もう5分しかない。絶対に勝ちたいんだ。僕だって明日はしっかり考える。じゃあね。」

二千翔は、扉を開いて廊下を確認してから、サッと駆け出して行った。

幸喜は、その背中を見送って、二千翔まで信じさせた明という存在に、どう判断していいのか分からなくなっていた。

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