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軋轢

「明さんの目は、嘘をついている人の目じゃないんです。」明が目を丸くするのに構わず、拓海は続けた。「オレ、そういうの自信があるんです。それだけで世の中渡って来たんで。両親が早くに亡くなったから、高校卒業してから妹を養って働いたんですよ。上手くやってたんです、これでも。」

明は、目を丸くしたまま驚いていたが、そのうちにぷ、と噴き出した。

「…何を言い出すかと思えば」と、声を立てて笑った。「私の目が嘘をついていないと。もっと具体的な何かを聞けるのかと思ったのに。」

笑い転げる明に、拓海は恥ずかしくなって顔を赤くした。

「え、ちょっと、失礼ですよ?ほんとなんです、目が変わるんです、人って。その証拠に明さんが黒を見ている史郎さんは、なかなか目が合いませんからね。あんまり話しませんし。信用できません。」

明は、それを聞いて少し、笑いの発作から立ち直って、言った。

「…言われてみたらそうだな。さっき私を詰める時には私を見ていたが、あまり長く目を合わせていられなかったのは確か。そうか、行動心理学か?私はそちらの分野はノータッチだったからなあ。」

拓海は、困って行った。

「いえ、経験から蓄積したもので。オレが勝手に習得したんです。でも、行動心理学的に何かあるのかもしれませんけど。でも、とにかくオレは、明さんが真だと思うんです。今日の発言を聞いていて確信しました。だから、話を聞きたいと思いました。今夜は、どうしたらいいと思いますか?」

明は、ため息をついた。

「私が言う事ではないが、私のグレーはまだ6人も居るのだ。なので、グレーから吊って欲しいのだが、恐らく今日は皆、納得できないだろうから一真に入れるだろう。あれはいつでも吊れるので、できたらさっさとグレーを詰めて行きたいのだがね。今14人6縄だろう。昨日までで人外は3人処理できている計算になるし、残りは狐を入れて4人外。まだ間違えられる。いつまでもグレーを残しておくことはできない。」

拓海は、占い師目線だとそうなるのだろう、と思った。

本当なら史朗だって同じように考えるものだろうが、史朗は一真を吊る事を考えているようだ。

「…明さんは、どこか怪しいと思う所はあります?今日占いたい所は。」

明は、顎に手を置いた。

「…吊りたいのは引き続き千晶さんだが、占いたいのはあまり発言の無い優斗、礼二、桔平、圭斗。礼二は今日、史朗に占われているが、私から見たらあれは偽なので、狐に白を打っている事も考えられる。現に礼二は今日、あからさまに史朗を擁護するような発言になった。昨日はとりあえずグレー吊りを回避したいような霊能吊りの方向へと意見を出していたが、あそこまで史朗寄りではなかったのだ。狐だからこそ、狼に擦り寄って黒を打たれないようにして、共存して勝とうとしているのではないかと思っていてね。狐からしたら、どちらが勝っても良いのだ。狼であろうが、村人であろうが、自分さえ生き残っていればその勝利を横取りすることができる。もし礼二が狐なら、今日史朗の偽が透けたはずだから、擦り寄るのも分かるなと思って占いたいと思った。優斗、圭斗、桔平は単純にあまりにも発言が無さ過ぎて、存在を消そうとしている人外にも見えていて占いたいと思った。今のところ、この四人が狐目があると思っている。隆をどう見るかなのだが…狼だと思っていたが、いくら白先でも発言をしなさすぎるんだ。なので、狼だとは思っていたが、違うのかもしれないと今は思っている。」

拓海は、顔をしかめた。

「数が多すぎますよね。まだ完全グレーも多いのに、相手の白先を占うように指定するのは村の同意を得るのが難しそうですし…。」

明は、頷いた。

「だが、縄は今日一真に使えば残り5縄になる。明日以降が難しい事になりそうだ。この調子だと明日史朗から黒が出たらそこを吊ろうとするだろうし、そうしたら縄余裕がなくなる。私は結果を言うしかないが、史朗は結果を偽装できるからな。今日はお互いに、好きな所を2指定してくれと言えばどうか?そうしたら私は選ぶことができるし、史朗も囲うなり、黒を打つなりする場所を考えて指定してくるだろう。それでどうか?」

拓海は、真剣な顔で頷いた。

「分かりました。じゃあ、今夜はグレーが多すぎるので占い師が怪しいと思う場所をそれぞれ指定してくださいと言います。どこを占うか、考えておいて下さい。」

明は、頷いたがまた不思議そうに拓海を見た。

「…君は、おかしな男だな。私を頭から信じようとするのは、本当に私を理解している人か、本当に愚かなのかのどちらかだった。君はどちらだろうな。」

皮肉というよりは、本当にそう思っているような言い方だ。

拓海は、わざと拗ねた顔をした。

「愚かでないのを祈りますよ。というかオレは、オレを信じてるので。ここまで生き抜いて来たのは伊達じゃない。これでも世間の荒波に揉まれて来たんです。誰を信じたら良いのかぐらい、判断できるつもりです。」

明は、そんな拓海を目を細めて見た。

そして、微笑んだ。

「…そうか。君のような生き方をしている人もいる。勉強になるよ。」

拓海は、こんなに頭の良い人が勉強になるってなんだろうと思ったが、立ち上がって階下へと、降りて行ったのだった。


リビングでは、場所はソファの方に移っていたが、皆がまだ何か話し合っていた。

拓海が入って行くと、それに気付いた二千翔が振り返って言った。

「あ、戻って来た。ちょうど良かった、みんなで君のことを話してたんだ。」

拓海は、頷いて皆に合流してソファの一つに座った。

そして、言った。

「どうせヤバい奴だとか言うんじゃないの?だったら、相方に出てもらってもいいよ。オレの進行が嫌なら相方に進めてもらおう。出ようと思うなら出ていいよ。」

だが、誰も出ない。

幸喜は、出るつもりがないのだ。

「それなんだ。だったら君から説得してよ。みんなで相方が居るなら出てくれって言ってるのに出て来ないんだ。」

拓海は、首を振った。

「出る出ないは相方に任せる。というか、二千翔はグレーなのに場を回そうとし過ぎだぞ。本当に狼に見えて来たけど?」

二千翔は、顔を赤くした。

「え?僕は…そんなつもりじゃないよ。」

拓海は、ため息をついた。

「あのさ、」と、皆を見回す。「もう二千翔の話は嫌になるほど聞いたし、完全グレーの人がそれで全く発言せずに済んでるんだよね。誰かを庇うために発言しまくってグレーの色を透かせないように妨害してるみたいに見えるんだ。そんな二千翔に同調してる礼二さんとか、黙ってる人達は怪しい。そもそも明さんが狼だったら、ここまで村の総意みたいに叩かれるの?仲間が居るんだよ。なのに誰も庇わないじゃないか。対して史朗さんは、初日から大した発言もしてないのに庇う人が居る。そもそも史朗さん目線じゃ、まだ占ってない千晶さんの色は見えてないはずなのに霊能吊り一択でしょ?あなたのグレーはまだ6人居るんだよ。間に合うと思ってるの?真占い師の思考とは思えないし、仲間が明さんを陥れようとしてるみたいに見える。明さんには何のラインもないんだよ。真占い師だからじゃないのか?みんな、人の意見に流されないでしっかり考えろ。明さんが頭が切れるって言うのなら、3日目で自分を追い詰めるような噛みをすると思うのか?みんなおかしいぞ。矛盾してる。」

二千翔は、言った。

「だからあの人ならそれを逆手に…、」

「あの人の何を知ってるんだ。」拓海は二千翔を睨んだ。「昨日今日で。あの人が太刀打ちできないぐらい頭が良いから嫉妬してるのか?だから排除しようって?それで負けたらオレ達は命を失うんだよ。君が村陣営だったらだけどね。狼なら思うつぼかな。オレはここまで味方の居ない明さんは、狼ではあり得ないと思う!」

皆が、黙り込んだ。

確かに狼陣営なら誰かが反論するだろう。

だが、今朝の噛みで全員が明偽だと言い出している。

その中には狼も混じっているはずなので、どう考えても流されているのだ。

浩人が、言った。

「…あのさ、みんなに怪しまれるから言えなかったけど。」皆が浩人を見る。浩人は続けた。「今日秋也さんを噛んだら、一真が吊られるよね。それは許容範囲だとしても、とりあえず回避するために明さんが人外なら、黒を打つと思うんだ。オレか、圭斗に。指定先だったからね。でも、明さんはオレに白を出した。囲いとか言わないでよ?こんな風になるのが分かってるのに、偽置きされる占い師の白先なんて意味がないからね。むしろ疑われる。だから、みんなさ、頭が良いからとか言うけど、そもそも頭が良かったら真を噛まずに偽の方を噛まない?だって疑われるんだから。こんな風に。むしろ、一真を噛んで秋也が偽だと言った方が明さんには有利だったよ。まるで史朗さんのための噛みみたいに見えるんだ。一真は残せないのは同意だけど、むしろいつでも吊れるんだから、グレーを詰めてった方が村のためなんじゃないか?オレ達狼に誘導されてないか。」

美鶴も、言った。

「…私は明さんの白先だから疑われるんじゃないかって言えなかったけど、私もそう思う。今日は明さんに狐っぽい所を占ってもらったらどうかな。こうなった以上、呪殺以外には真証明できないでしょ?史朗さんも、真なら狐も残ってるだろうしグレーを詰めたくなるはずなのに、霊能ばかりに固執してるのは怪しい。昨日千晶さんを吊っておいたら、グレーは狭まったはずでしょ?まだ白でも何とかなるのに。とりあえず、今夜は狐らしい所をお互いに占ってくれないかな。それでハッキリすると思うけど。」

史朗は、言った。

「オレ目線じゃ黒の明さんが吊りたいと言う場所を吊るのはおかしいんだ!だから昨日は霊能者に入れた。結果的に間違ってなかったと思う。秋也が噛まれる事で結果が見えなくなったからな。白白結果になるところだったんじゃないのか?将生が狂信者で。狐はあり得ない、何しろ結果がピタリと合ってた。だから一真が狼だと知られないための噛みなんじゃないかと思う。そうだ、初日に噛めてるじゃないか。狼にはどっちが偽なのか透けてたんだ。一真が黒なのに、宏夢が白を打って来たから。理央さんが真で、宏夢が狐だったんだ!狼は理央さんを噛んでるんだよ!」

皆が、息を飲む。

そう言われたらそうだからだ。

ピンポイントに真を噛めたのは初日の結果で透けていたから…。

「…ほら、ボロが出た。」二千翔がフンと鼻を鳴らした。「やっぱり明さんが偽じゃないか。一真を吊らない選択肢はないよ。これ以上グレーの村人を犠牲にしないためにもね。」

拓海は、今の話でふと、揺らいだ。

だが、それも偶然なのではないか。

しかしそれを証明する術がない。

場の空気が、どうしても明偽、一真吊りから動きそうになかった。

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