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2日目夜と3日目の朝

今回は、余裕もあってさっさとシャワーも浴びて10時に間に合った拓海は、自分から幸喜に連絡することにした。

幸喜とは、投票場所が違ったので不安だったが、それでもお互い避けるわけにも行かない。

拓海が頑張って腕輪から幸喜に連絡を入れると、幸喜はすぐに出てくれた。

『…拓海。連絡してくれたんだ。』

拓海は、頷いた。

「うん。今日は点滴も無しで行けたから、身軽なんだ。それで…今日の吊りで、人外が2落ちた事になるね。村目線。」

幸喜は、答えた。

『そうだね。それだけでも収穫だと思うけど…正直、どう思う?オレは、表推理だったら明さんが真で史郎さんが黒だって思うし、そうなって来ると限りなく隆さんが囲われてるんだろうなあって思う。でも、裏推理だとあの人なら真目取るなんて造作ないんだろうなって思ってしまって、そうなったら美鶴さんが囲われてるのかも…とか思ってしまう。複雑なんだよ。あの人の頭の良さを知ってるだけに。君から見たらどう?』

拓海は、答えた。

「そうだろうなって思ったよ。今日の票は、ほとんどが脅威票だろうなって。明さんが真であって欲しいけど、真でなかった時のために明さんが言う千晶さんじゃなく、村目線安定の将生吊りに行ったんだろうってね。そういえば、今日は占い指定どう思った?急いでたから深く考えずに指定したけど。」

幸喜は、答えた。

『番号上からグレーで残ってる人を振り分けただけだったよね。明さんに浩人さんと圭斗さん、史郎さんに優斗さんと礼二さん。千晶さんを指定しなかったのは、吊り先だと思ってるからだと思ったけど。』

拓海は、下を向いた。

あの時は、あの重い空気にどうしたらいいのか分からなくて、たださっさと指定だけしたいと思っただけだった。

だが、そうなるのかもしれない。

「…うん。千晶さんは今日将生を吊ってるんだし吊りたい候補筆頭だよ。だから、占わなくてもいいと思う。怪しい位置が黒っていうよりも、白い位置が黒の方がまずいもんな。オレ、もう明さんを信用しようかと思って。」

幸喜が、戸惑ったような声を出した。

『えっ?ちょっと待って、決め打ちするの?』

拓海は、首を振った。

「いや、決め打ちはまだ早いけど、オレにはどうしても明さんが嘘を言ってるようには見えないんだ。こっちを騙そうとする意思は全く感じられないんだよ。でも、史郎さんはなかなか目が合わないし、あんまり発言しないし…信じろっていう方が難しい。だから、今のところは。」

幸喜は、ため息をついた。

『それは理由にならないよ。しっかり考えて精査しないと、噛まれず残って利用されるぞ。ミスリードしてる確定村人は都合がいいし。』

拓海は、ムッとして言った。

「え、それって幸喜は、明さんが偽物だって思ってるってこと?じゃあ、誰が狼?美鶴さん?」

幸喜は、少し声が荒くなった。

恐らく同じようにムッとしたのだろう。

『…分かるはずないじゃないか。だって、まだどっちが真とか分かってない。』

拓海は、イライラして言った。

「だったら、両方フラットに見るべきだろう?君の言い方だと、明さんが真っぽいけどだからこそ明さんが怪しいって言うんじゃないか。じゃあ、明さんからしたらどうしたらいいんだってなるよ。占い先だってこっちの指定だし、呪殺を出したくても出せないし。グレーの狐の位置も分からないのに。霊能結果は確定しないでしょ?だったらどうしろって言うんだよ。真だったらこうして欲しいって、明さんに言わないと明さんにしたら村のためにやってる事なのに、疑われていたら堪らないと思う。オレ、素直に真だって信じた方が良いって思うんだ。」

幸喜は、痛い所を突かれたのか、声を更に荒げて行った。

『君は知らないんだよ!あの人がどれだけいとも簡単に人を騙してしまえる処理能力を持ってるのか!左手で聖書を開いて黙読しながら、スラスラ円周率を暗唱して右手で複雑な数式を解いて見せるほど、普通じゃないんだよ、あの人は!きっと君には、想像もつかないほど一気にいろんな処理を頭の中でしてしまえるんだ!オレは君達に勝って欲しいんだ!』

分かっている。

幸喜は、自分と同じ確定村人なのだ。

村を勝たせたいからこそ言っているのは、拓海には分かっていた。

だが、幸喜は明を恐れ、拓海は明を信じようとしている。

幸喜は経験による恐れから、信じようとしないのだ。

拓海は経験による感覚で、信じようとしている。

お互いにそこは譲れないのかもしれない。

「…幸喜がどう考えてるのかは分かった。でも、オレは明日からも明さんの話はよく聞いて納得したらその通りにする。オレは信じるよ。」

幸喜は、もう諦めたのか、言った。

『…オレは無理だよ。確信が持てるまで。』

拓海は、吐き捨てるように言った。

「その時には終わってる。」と、指をエンターキーに置いた。「じゃあね。」

『拓海…、』

拓海は、エンターキーを押して通話を一方的に切った。

明日から、もっと明と話してみよう、と思った。


次の日、3日目の朝だ。

拓海は、早く寝たのもあって5時過ぎにはもう目が覚めていて、ゆっくりと顔を洗って準備を整えた。

昨日脱いてかごに入れていた衣服はなくなっており、代わりに洗濯された新しいジャージが置いてあった。

ここでの入院衣は、このジャージなのだ。

色は決まっておらず、毎回違う色が来るが、今日は紺色だった。

ちなみに下着もきちんと置いてあるので、何かする必要もなかった。

そんな至れり尽くせりの様子を見ると、改めて入院しているんだな、と思わされてしまう。

ここに、遊びに来ているわけではないのだ。

落ち着いて準備を済ませて扉の前で待機していると、静かな部屋の中にガツン!という音が響き渡った。

…開いた!

拓海は、外へと飛び出した。

思えば初日はこんなに体が軽くなかった。

部屋を飛び出すなんて、自分の行動に驚いていると、隣りの桔平も同じように出て来ていて、拓海と目があった。

「…ええっと、朝だぞ?拓海は無事か。」

拓海は、頷いた。

「オレは生きてる。」

すると、向こう側の二千翔が言った。

「…隣りだ。」え、とそちらを見ると、20の部屋の扉が少し開いている。「秋也だ。」

え、霊能者…?

拓海は、混乱した。

狼が霊能者を噛んで来るって?

「そんなはずは…!」

だが、急いで駆け出した拓海につられて桔平もそちらへ走ったが、先に入っていた二千翔は、ベッドの上で眠る秋也の横に立っていた。

点滴はしておらず、ただベッド脇に「追放されました」と書いた札が置いてあった。

そんな…!

秋也が、真だったのか。

拓海は、まとまらない考えの中でそこに呆然と立ち尽くした。

では一真は…一真は偽なのか。狂信者?

何しろこうなると、一真まで吊ろうとなるだろうからだ。

二千翔が、苦々しげに言った。

「…まさか狂信者を捨てて霊能者を噛んで来るなんて。ということは、朝陽さんは白で昨日は黒が吊れてるってことになるね。」

拓海は、何と言えばいいのかわからない。

すると、二階から上がって来た幸喜が言った。

「…秋也さん?」

拓海は、ハッとした。

振り返ると、皆がそこに上がって来ていた。

「今日は秋也さんだった。」と、黙って見ている後ろの史朗と明に言った。「結果を聞いていいですか。」

明が、頷いた。

「浩人白。」

史朗は、言った。

「礼二白。」

拓海が首を回してそちらを見ると、その二人はそこに立ってこちらを見ていた。

呪殺は、起こらなかった。

一真が人垣を掻き分けて前に出て来て、言った。

「…なんで秋也だよ!」と、拓海を見た。「オレは真なんだ、昨日の将生は白だった!狼は狂信者を噛んだんだ!やっぱり朝陽さん狼、秋也は狂信者だったんだ!」

一真目線ではそうだろうが、こうなってしまった以上その言葉は皆に響かなかった。

二千翔が、皆の心を代弁するかのように言った。

「朝陽さんが狼で吊られてるのに、狂信者まで噛むの?おかしくない?狼は自分で自分の首を絞めてるんだよ?だってそうなったら、五人の狼陣営の内二人が消えちゃうんだ。占い師の狼が露出してるのに、残りの二人はよっぽど潜伏できてるって事になるけど。だったら君目線、共有に怪しまれてる千晶さんは白くなるんじゃない?SG位置にされてる事になる。だって、捕捉されてたらラストウルフがたった一人であと6縄回避しなきゃならなくなるからね。」

千晶は、明が怪しんで投票していた位置だ。

拓海は、どこまでも村が明を怪しむ方向へ行くのかと頭を抱えたい気持ちだった。

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