昼の会議
秋也は、みんな自分を相方を吊ってしまったと怒っていた。
つまりは、朝陽のことだ。
だが、昨日は秋也だって投票しているだろう、と拓海に指摘されて、ぐ、と黙ってからはこちらが聞くことにボソボソと答えるだけで、どうも拗ねているようだった。
もう36だと聞いているのに、子供っぽい反応だなと拓海は思った。
それでも、秋也目線では皆が理不尽に見えるだろうし、昨日は誰が自分の相方なのか分からなかった中でも投票だったのでああしたが、今日結果を見て分かった、という事なのだから、拗ねるのも仕方がない、と拓海は理解しようとした。
そして、秋也との面談も終わり、これで生き残っている全員と、拓海は話したことになった。
昼ご飯は立派な普通の食事で、それでも米はやはり八分粥だった。
皆がしっかりと食事を摂って、そうしてそのまま、お昼の会議をすることになった。
それぞれの色が見えて、対抗するようになった者同士は複雑な顔をしていたが、しかし何も言わずに皆、円形に並ぶ椅子へと腰かける。
椅子は、もう四つ空いていた。
瑠香、朝陽、宏夢、理央の分だった。
拓海は、ホワイトボードにあらかじめ占い師の結果と霊媒師の結果を書いていたので、その隣りに立って、言った。
「じゃあ、二日目の会議をしよう。昨日1縄消費して、でも今日二人犠牲になってたから16人で7縄だ。確定で処理できたのは狐で、縄余裕がまだ最低でも1縄ある。もし朝陽さんで狼が吊れていたら更に1縄だけど、確定ではないからそこは1縄だと思って進めようか。」と、ホワイトボードを見た。「占い結果、史郎さんが明さん黒、明さんが史郎さん黒、霊媒結果は一真と将生が黒、秋也が白。狩人の話は聞いて来たよ。連続護衛はありだけど、念のため昨日どこを護衛したかは言わない。ってことで、霊能者は狼の噛みに任せて今日はグレー吊りグレー占いで行くかって思ってるんだけど、どうだろう?それとも、確実に一人外が落ちるように、黒結果を出した二人のうち一人を吊っておくって手もあるけど。」
浩人が、言った。
「それもありだと思うけどね。確実に1人外落とせるんだし、どっちが真なのか分かってないんだ。ローラーする縄は無いから、とりあえず結果が違う両方から一人ずつ吊っておくってのも手だよ。」
幸喜が言った。
「そうかな。狼ならそのうち噛んで来るだろうから、それからでもいいかもとは思うけど。」
しかし、千晶が、言った。
「でも、もし二人の方が偽だったら間に合わなくならない?狼狼ではないと思うけど、狼狂って可能性はあるよね。一人だけでも処理して置いた方が、後々困らないと思うわ。狼が、こちらを助ける噛みをして来ると思う?」
確かにそうかも。
拓海が迷っていると、史郎が言った。
「ま、オレもそれは思う。霊能者は一真と将生、秋也と朝陽さんがペアセットだから、昨日朝陽さんを吊ったなら、今日は一真と将生から一人吊って置いた方が一人外落ちたのが分かるから安心だ。その場合、一真には宏夢から白が出ているから、色が着いてない将生から吊るのが妥当だと思うがね。」
しかし、それには将生が言った。
「待ってくれ、オレは真だぞ?昨日人狼が吊れてるのに、なんでオレが吊られないといけないんだよ。」
一真も、頷いた。
「そうだ!昨日宏夢が真っぽかったのは占い先を決める時にみんな思ってただろ?だからきっと、宏夢が噛まれて理央さんが解けたんだ。真占い師の宏夢がオレに白を打ってるのに、なんでオレの相方の将生が吊られるんだよ!縄の無駄使いだ!」
幸喜が、言った。
「でも、村目線じゃ君が狂信者も充分あり得るんだ。だから、朝陽さんと秋也が真の可能性もまだある。最後に君達が偽だと分かっても間に合わないから、片一方を吊ったならもう片一方も吊っておくべき、というのは村目線で間違ってはいないんだ。」
一真は、首を振った。
「オレは狂信者じゃない!」
だが、それが村目線では分からない。
史郎と明の精査が着かないように。
拓海は、ため息をついた。
「…じゃあ、どうする?みんなの意見を尊重するけど。オレはグレーを詰めておきたいと思ってるけど、みんなは霊能をもう一人は処理しておきたいって感じ?霊能はいつでも吊れるとは思うけどね。」
そこで、明が口を開いた。
「…確かに、霊能はいつでも吊れる。」と、ホワイトボードを見上げた。「が、完全グレーはまだ七人。この中から一人吊って一人占うと、村目線でグレーの数が三人減って残り四人になる。それでもまだ四人だ…今日グレーを減らしておかないと、完全グレーが減らない事になるがね。グレーの話を聞いて、どうしても疑わしい場所が無いようだったら霊能という形でもいいのではないか?グレーを占って呪殺を出したい気持ちではあるが…吊ってしまったら私か史郎のどちらが真なのか、確定する術が無くなるので、狐にはグレーに居るなら吊り先に入らないように気を付けろと言っておこう。」
拓海は、ハアとため息をついて、皆を見回した。
「全員の話を聞いたオレとしては、霊能の真は昨日の朝陽さんの様子から、一真と将生じゃないかってのが多かったと思うんだけど、いざこうして吊り先を決める時になったら、なんだかみんなやっぱり霊能のもう片方とか言い出すんだよねえ。どうしようか…グレーに吊られたくない人外が確実に居るってのは分かったけど、確かに間に合わなくなってから二人残ってる方が偽だと分かったら慌てるんだよな。」
明が、言った。
「ならば自由投票にしてはどうか?」皆が明を見る。明は続けた。「投票先で色が見えて来るかもしれないだろう。グレーから行きたい人はグレーに、霊能を落としておきたい人は霊能から入れたらいいのでは。何もかも共有に決めさせるのは酷だ。見えているものが他の素村と変わらないのだからな。ちなみに私は、グレーを狭めてくれた方が助かるがね。狼らしいところを吊って、もう一匹の狐らしいところを占って呪殺を出したいのだ。拓海が言ったようにまだ村目線ではまだ最大6人外が居る。私目線は4狼のうち一人を補足したので後5人外。だが、私目線のグレーが、まだ9人も居るのだ。この中に共有と狩人が居るとしたら7人に減るが、このグレーをこのままにはできない。減らしていきたいと思っている。」
まだそんなに居るのか。
拓海は愕然とした。
だとしたら史郎目線でも同じだ。
霊能はいつでも吊れるし、最悪明日でもいいからできたらグレーを狭めたい明も気持ちも分かる。
だが、自由投票で票がばらけたら狼陣営に票を合わせられて無駄な縄を消費することにならないだろうか。
すると、二千翔が、言った。
「…確かにグレーを狭めた方が良いのは確かだけど、そもそもグレーにはもう人外が居ない可能性もあるよね。」皆が二千翔を見ると、二千翔は続けた。「だって、宏夢が狐だったら一真が、理央さんが狐だったら幸喜が怪しいわけでしょ?囲われてる可能性もあるし。同じように、史郎さんが狼なら隆さん、明さんが狼なら美鶴さんが怪しくなるじゃないか。村目線で占い師に2人、霊能者に2人の人外が出ていてそれで4人でしょ?で、囲われていたとしたら更に2人で6人だ。残ってたとしても1人かもしれないって思ったら、グレーより役職の方が良いんじゃないの?グレーの色は、段々噛み先とかで分かって来ると思うけどね。人外かもしれない場所を残したまま進行するのは危険だよ。確実に一人ずつ処理できたって分かって進んだ方がいいと僕は思う。」
明さんがグレー吊りを勧めるからか。
拓海は、険しい顔で二千翔を見た。
言っていることは間違っていないだろうが、明の言っている事も間違ってはいない。
囲われているかどうかは、まだ分からないからだ。
だからといって、どちらが正しいかは拓海には決められなかった。
「…オレには分からないよ。村人達に任せる。霊能者からなら真かもしれない宏夢から白が出ている一真ではなく、将生からだな。グレーからなら誰にするかはこれから決めよう。票がぶれたら面倒だし。で、二人に絞り込んで、どちらかに投票するってことにするよ。それでどうかな?」
両方に可能性を残した形になる。
二千翔は少し不満そうだったが頷いて、明はそんな二千翔を目を細めて見ていたが頷いた。
そうして、またグレーから話を聞くことになった。




