映画
※表題作「映画」の他2篇収録
人生、というのは1本の映画だと思う
主演も監督も脚本も演出も全部俺の1本の映画
助演や子役が増えるかは俺自身の努力によるかもしれない
スタッフロールには出会った人の名前が流れるだろう
今まで勤めた会社がスポンサーとして付いてくれる
カメラなんてずっと回りっぱなし
カチンコを使う時は多分最初だけかもしれない
最初は大根役者かもしれないが、だんだん千両役者になっていくだろう
気になるそんな映画のキャッチコピーはこうだ
[一生に一度の晴れ舞台とくとご覧あれ]
『視力』
夢を見すぎたら目が霞む
未来を見すぎたら目が曇る
明日を見続けたら目が眩む
現実を見すぎたら目が潰れる
過去を見続けたら目に染みる
画面を見すぎたら目が悪くなる
『読書』
今日も俺は活字でぎっしり詰まった
紙の束を読む
新しい知識
新しい表現方法
新しい出会い
新しい自分の感情
新しい世界
読むたびにそういったことを知れる
そして自分はその世界の「主人公」なのだと錯覚してしまう
読み始めるといつの間にか時間がたっていた
まるで俺だけが周りの時間に
取り残されているかのように
そこで俺は一息をつき
キリの良いところで長方形の紙をページの間に挟むのだ