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64 エピローグ・2

「ストレイガからの連絡が途絶えた」


 その言葉を口にした途端、ざわついた空気が流れた。誰かが口を開いたわけではなく、むしろ全員が押し黙っているが、殺気のこもった魔力が肌を刺すように飛ばされている。


 長机に座っているのは私を含めて四人。上座には主が不在の椅子がある。そこにはもう誰も、長いこと腰かけていない。


「ァんでだよ、順調だったんじゃねェのかァ?」


 向かいに座っていた一人が威嚇するようにそう言った。どんっ、と机に両足が置かれる。


「足を下ろせ、イグニセンド」


「俺らの王サマとやらァどうなったんだよ、あァ?」


 私の隣のバルドアが諫めたが、イグニセンドは無視して続けた。


「不明だ」


「不明っておま」


 迷宮の発生と迷宮主の誕生は報告を受けている。迷宮主が単独で迷宮を出てきて、人族にさとられず街へ入り込んだというイレギュラーも。その件に関してはこの場の面々にも報告している。


 だが昨夜の時点で定時連絡は途絶えた。街にいる以上、邪魔な結界のせいでこちらからの連絡も難しい。


「不明で済む話じゃあねェだろうが! お前のワガママに何使ったか分かってんのか!?」


 言われずとも分かっている。用いたのは初代魔王の魔核に、数万規模の都市一つ分の魔力を注いだものだ。二度目はない。


 それに相応する迷宮と迷宮主は生まれたはずだ。だが……。


「ワガママではない。提案はグリュークスなれど、これは我らの総意であろうが」


 腕を組んだままバルドアが言った。かばうような発言だが、仲間意識など我々には存在しないのであり得ない。


 分かった上で、揶揄するようにイグニセンドは言う。


「ァんだよ、かばうのか?」


「真実を言っているまでだ。我とていたずらに秘宝を無駄遣いしたとなれば、容赦はせん」


 顔は動かさず、目だけを横に向けてこちらを睨む。私の言葉次第では、瞬く間に首をはねようと腰の剣を抜くだろう。


「無駄遣いではない。だが、何かが起きた。想定していない何かが」


 ストレイガはアンデッドという性質ゆえに、死の恐怖に鈍く油断しがちだ。だが並の人間にやられるはずはなく、天敵である光術師を擁する神殿もこちらと繋がっている。


 それなのに連絡が途絶えた。デミリッチを、逃げるどころか最後の伝言すら残す隙も与えずに殺せる何者かが、人族の街にいる。


「何かってなんだよ。考えてねェことが起きたから許してくださァーいってか?」


「そういう物言いはよせ。貴様ががなりたてたところで解決するまい」


 粗野で粗暴なイグニセンドと、武人のように振る舞うバルドアはひたすらに相性がよくない。


 言い返されて睨みつけるイグニセンドに「それよりも」とバルドアは言った。


「もう一度だけ言う。足を、下ろせ」


「下ろさせてみろよ」


 挑発的に言い返すイグニセンドに、殺気を込めた視線を向けるバルドア。


 熱まで生みそうな殺気のぶつけ合いの中、もう一人の四将は微動だにしない。最初からずっと、机に突っ伏してすうすうと寝息を立てている。


 目を伏せて、誰にともなく口を開く。


「この上は、私自身が出向く他にないか」

ここまで読んでくださってありがとうございました。

一章完結となりますが、続きを書き次第また投稿したいと思っています。

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