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3 戦闘と迷路

 階段を上がっていく。山か何かの洞窟かと思っていたが、もしかして地下にいるのだろうか。


 また広い空間に出た。先ほどのこともあるので、慎重に部屋をのぞく。


 上半身が牛、下半身が人間の化け物がいた。三メートル以上の大きさで、手には身の丈ほどもある斧を持っている。胴は白い鎧に覆われており、手足は筋骨隆々としていた。皮膚は赤黒く、威圧感が凄い。


「ミノタウロス、だっけ、あれ……」


 ゲームやアニメの知識を引っ張り出して呟く。創作であればある意味お馴染みのモンスターだが、目の当たりにすると言葉もない。どう頑張っても太刀打ちできない迫力を感じる。


 それが四体もいた。全員が斧で武装している。


 階段の出口で身を屈めている俺にはまだ気づいていない。このまま引き返したくなってくるが、引き返したところで行き止まりだ。進むしかない。


 階段を出たところで四体ともが一気に振り向いた。上ってきた階段の入り口が、音もなく消えていく。


 ずしん、ずしんと足音を鳴らしながらこちらへ向かってきた。覚悟を決める。


 一体のミノタウロスに駆け寄り、足元で斜めに跳ねた。顔面に向けて拳を振り抜く。


 相手は反応すらできないないようだった。パン、と頭が弾け飛ぶ。


 血と脳漿が飛び散るのを見てグロっ、と思うが、呆けている暇はない。着地してすぐ方向を変え二体目へ向かう。


 咄嗟の行動なのか、斧を持っていない腕を上げ顔を守った。胴体は頑丈そうな鎧に覆われているため、転ばせようと足を蹴った。


 ミノタウロスの、脛の部分が消し飛んだ。


 格闘技の経験なんてもちろんない、技術もへったくれもない、そんな俺の力任せの蹴り一発で。


 バランスを失って倒れたところへ、顔面を蹴り上げる。そのまま息絶えた。


 ブモオオオオオオオッ!


 仲間を殺されて激昂したミノタウロスが、俺へ向けて斧を振り下ろしてくる。ぺしゃんこどころかミンチになりそうな肉厚の刃を、腕を上げて受ける。


 ギン、と金属同士がぶつかるような音を立てて斧は止まった。牛の顔で分かりづらいが、多分困惑の表情を浮かべた。


 ただ、残る一体の動きを把握していなかった。後ろから、銅を袈裟懸けに切られる。


 斧の通った箇所が霧化した。危ねえ!


 腕を跳ね上げて、受けていた斧を弾き飛ばす。がら空きの胴体に体ごとぶつかっていった。倒して頭を狙うつもりだったが、壁まで吹っ飛んでそのまま動かなくなった。


 先ほど後ろから切りかかってきたミノタウロスが、斧を大きく振りかぶるのが見えた。


 振り下ろされた斧をかわし、懐へ潜り込む。ジャンプし、その勢いのまま顎にアッパーを入れた。


 最後の一体が倒れ、入り口と宝箱が現れる。


 戦闘はあっさりと終わった。全員、ほぼ一発。ドラゴンも一撃だったし、見た目ほど強くはないのか。


 あるいは俺が化け物すぎるのか。


 体当たりしたミノタウロスは、鎧が割れて胸がえぐれていた。これが致命傷らしい。


 ……ドラゴンの時もそうだったが、命を奪ったのにそれほど心が動かない。頭が吹き飛んだ遺体はずっと見ていたくないが、飽くまでグロテスクな物への不快感しかない。


「心まで化け物になったってことなんかね」


 考えないことにして、ミノタウロスの死体に触れ、影の中に沈めていく。大きすぎる斧も一応持っていくことにした。何が役に立つかは分からない。


【ギガントエンペラーミノタウロスの死体 4】


【ギガントエンペラーミノタウロスの斧 4】


「またエンペラー!」


 ドラゴンにしてもそうだが、名前が立派すぎる。倒していいヤツだったのか? 後で怒られたりしないだろうな。


「まあ、倒さなきゃ出られなかったし……しょうがないよな、うん」


 宝箱はドラゴンの階より大きかった。期待が高まる。


 入っていたのは一振りの剣だった。


 剣……剣かあ。ファンタジーの代名詞だし、憧れが無いと言えば嘘になる。でも剣なんて使ったことないし、現状、パンチやキック一発でなんとかなっている。必要かと言われるとそうでもない。


 何より、今の力じゃ素振りしただけで壊れそうだ。


 箱から取り出して手に取る。派手すぎない装飾の、西洋の剣だ。影収納では【神剣クリュスエス】と出た。


 また仰々しい名前だ。



 ミノタウロス戦後の入り口は、階段ではなかった。岩の通路で、広さは二車線道路くらいか。突き当たりは左右に別れている。


 突き当たりまで向かうと、左右の道の先もまた分岐路となっていた。


 今までずっとただの洞窟かと思っていたが、これはもしかして。


「ダンジョンとか、迷宮とかいうやつなのでは……?」


 誰かがここに俺を連れ込んだと思っていたが、これってひょっとして。


「っ!」


 呆然と突っ立っていると、曲がり角から犬が数頭現れた。真っ黒な毛並みで、額には立派な一本角が生えている。一頭一頭が牛並みに大きい。


 喉を唸らせ、歯を剥き出しにしてこちらを威嚇している。


 身構えていると一頭が飛びかかってきた。角を掴んで壁に叩きつける。


 奥で一頭が火の玉を吐いた。バスケットボール大のそれを伏せてかわし、接近して頭を殴る。他の一頭が口を開けて噛みついてきたが、膝蹴りをいれて迎撃した。


 視界を外れたところを角で突かれるが、自動で霧化してすり抜けた。壁にぶつかった犬を、そのまま蹴り潰す。


 残りは二頭。じりじりとこちらを窺っているが、逃げる様子はない。


 二頭ともが数個の火の玉を吐いた。通路一杯に飛び交うため、かわせない。腕を上げて顔を守る。


 着弾。やっぱり熱い! でも死ぬほどではないし、傷はすぐ治る。


 こちらから飛びかかり、一頭は殴って一頭は蹴る。その場に現れた犬は全て動かなくなった。


 ……やっぱりとんでもないなこの体。物理攻撃は無効で、火は熱いけどすぐ治る。力任せに叩きつけて、殴って、蹴ったら終わった。


 犬の死体は【フレイムヘルハウンド】だった。全て収納しておく。


 見渡してみるが、宝箱はない。宝が貰えるのは大部屋の敵だけなのか?


「とりあえず、先に進むしかないか」


 異世界の迷宮でも、左手の法則は有効だろう、多分。

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