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第三話 この幼馴染どうしてくれようか

第四話から毎日投稿へと移ります。


 朝。春先独特な寒さで目が覚め顔を洗うために下に降りた。

 洗面所の扉を開けると海原も顔を洗っていたところだった。


「おはよう......」

「おはようございます! 先輩朝弱いんですねー。可愛いなぁもう」

「昔っからな。朝は頭が回らない」

「じゃあ、き、キスしてください!」

「知能が無くなるわけじゃないってことを学んだか?」


 歯磨き粉をつけた歯ブラシを突っ込んでやると不満そうに歯を磨きだした。

 朝はゆっくりしたい。こいつのマシンガンボケに構う頭はないんだ。


 うがいをしリビングに行くといつもより豪華な朝食が並んでいた。


「張り切っちゃった!」

「おお! 先輩、フレンチトーストですよ! しかも焼き色とか染み具合とか綺麗です!」

「あら、ありがとう」


 母さんは昔から料理担当として民宿を支えてきた。因みに父さんは物資担当。買い出しに出かけたり必要なものが出てきたら出動する。つまり雑用。


「いいですねー。先輩は毎朝朝食が出てきて」

「海原の実家はそうじゃないのか?」

「わたしの両親は共働きなので、朝は自分で作るか食べないで行ってましたねー。まあ、中学校なんで給食出ますけど」


 俺は今まで朝食を自分で作ったことないな。母さんが体調崩した時には食べないで登校してたし。


「お弁当も作ったから持って行ってね」

「女神様だ!」


 朝から元気な後輩だ。俺は朝から声すら出したくないレベルなのに。

 海原を自転車の後ろに乗せて学校へ。

 昨日と違い生徒が大勢いる中で後輩を乗せて登校って結構注目集めるな。

 まあ、それは海原がアルビノの美少女だからというのもあるんだろうけど。


「凄い注目ですね」

「そうだな」

「ふふん。いい気味です」

「なにがいい気味なんだ?」

「普段私を馬鹿にする女達よりリードしてるんですよ? 女子高生にとって彼氏がいるというのは一種のステータスです。優位になれるんですよ」

「おいおい、お前彼氏いたのか」


 そこにまず驚きだ。いるなら俺の所じゃなくて彼氏の所に行けばいいのに。


「やだもう先輩ったら昨日はあんなに愛し合ったじゃないですか~」

「記憶改ざんが甚だしい。あと学校で言うな? 下手すれば生徒指導室直行だぞ」

「例え先輩が彼氏じゃなくても周りからどう見えるかなんですよ」


 嬉しそうに腕に力を込める海原。ゾンビを彼氏にして嬉しいもんかね。

 だったら人形でも同じ気がするが。

 駐輪場に自転車を置き、海原と一緒に昇降口まで向かった。


「じゃ。俺この上だから」

「はい。またお昼伺いますね」

「来てもいいが上級生の教室だぞ? 居づらくないか?」

「ああ、他の人には興味ないので。先輩さえ居てくれたらいいです」


 そのマジな顔で二年生男子全員の希望を打ち砕かないであげて。

 海原と別れて教室に向かった。

 特定の面子がいない俺の席の周りはとても寂しい。


「おっはよう!」

「おう。おはよう」


 前から元気な声で挨拶をされ俺も目も合わせずに答えていく。

 声の主は武内柚子(たけうち ゆず)。茶髪ショートボブに希望に満ちたようなビー玉のような青い瞳。

 彼女もまた友達いない系女子ではあるが、俺とは明らかに違う点がある。


「よー龍輝」

「雅樹もおはよう」

「相変わらず眠そうだな!」


 柚子が俺と違う点だ。舘林雅樹(たてばやし まさき)。柚子と同じ茶髪に制服越しじゃ分からないほどに筋肉質な身体。その上イケメンというゾンビの俺とは人種どころか生物種そのものが違うのかと勘違いさせる超人。......ゾンビも人類に入るよね?

 そして武内柚子が想いを寄せる相手でもある。雅樹の気持ちはまだ確認してないが、柚子の気持ちは俺は知ってる。

 生まれた時からの幼馴染である。


「ねね! さっき一緒に居た子って誰?」

「後輩」

「なんで一緒?」

「家出してきて俺の家泊ってる」

「おお!? お前にも春が来たか!?」

「さあな」

「なんだよ明るくねぇな」

「悩み事? なになに。頼れる数少ないお友達に言ってごらん?」


 暑苦しい。冷やすついでに皮肉でもぶち込んでやろう。絶対零度の言の葉をくらえ。


「じゃあ聞くが、小学、中学で俺に声かける女は大量にいた。でも俺は年齢=彼女いない歴です。なぜでしょう? 正解は......目的が全員雅樹だからだよ」

「いやいや、中にはお前のこと好きだって奴もいただろ」

「すくなくとも俺は聞いたこと無い」

「取り敢えず涙拭く?」

「ありがどう」


 そりゃ泣きたくもなる。どんなに海原が俺のこと好きだと言ってくれても建前に感じてしまう。

 確かに海原と雅樹が面識ないとは思うけど確認したら俺は暗黒面に落ちそうな気がする。恋する乙女の靴全てに偽のラブレター入れて全員体育館裏に呼び出すという最低行為をしそうになる。


「以上見解から可能性のある事項をまとめ上げただけだ」

「でもオレはあんなアルビノの子知らないぞ。流石に街で見かければ覚えてるし」

「お前は今までお前に声をかけた女の数を覚えているのか」

「覚えてんのかてめぇ! あ! おい!?」


 やだもう柚子さんこわーい。変な虫がつかないように殺虫剤と称して威圧を振りまいてたのは楽しい思い出だけども。

 だからって女を忘れすぎじゃ?


「覚えてないけど......そんなことより今は龍輝に近づく女の子についてだろ。オレだって幼馴染を利用して近づいてくる女の子に好感的な印象は持たないよ」

「さっすが。イケメン様はいう事が違うぜ。俺ならことごとくを飛び越して恋心をボロボロにするけどな」

「そこでしょ。龍輝がモテない理由」

「人の心が無さすぎるだろ。お前」

「幼馴染を傷つけてまで彼女を作りたいとは思わないだけだ」


 幼馴染と朝の目覚まし会話をしていると教室にチャイムが鳴り響いた。

 雅樹は先に席に戻ったが柚子は俺の耳元で囁いてきた。


「アタシは応援するから。あんたの恋。失敗したらお姉さんがよしよししてあげるー」

「お前俺より誕生日後だろ」

「細かい事気にすると髪の毛毟るけど」


 反射的に俺は頭を両手で隠し柚子はニコリと笑うと自席に戻った。

 柚子......後ろに好きな人がいるってどんな気持ちなんだろ。

 席をくっつける系で二人はよく一緒になる。だが俺は? 舘林と武内と山田。見事に一人切り離されている。ま、例えどちらかと苗字を入れ替えた所で変わらんよな。

 俺は俺だし。雅樹は雅樹だし柚子は柚子だ。 


また明日。お楽しみに!

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