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第一話 ボケ過多でツッコミ不在という地獄

 桜が散る遊歩道を海原を後ろに乗っけて走る。


「お前なんでわざわざ都会から田舎のこっち来たの?」

「先輩がいるからですよ~。決まってるじゃないですか」

「理由がさっぱりなんだが」


 この海原海老名という少女とは俺は一度会っている。

 特別な約束とか幼い頃に婚約したーとかそんなことはない。客と従業員として実家の民宿を利用しただけ。

 ま、当時は人見知りも激しくこんなビッチではなかったけど。


「まあいいや。家出の原因は」

「ひ・み・つです」

「降りろ。いや、降りなくてもいいから放せ。自転車こかす」

「もー嘘ですよ~。ちょっと進学の時に色々ありまして......」

「どうせ地元の高校に行けばいいのに遠いこっちの高校に来たからだろ」

「正解です。先輩がいるのでどうしてもこっちの学校に行きたかった私は家を出てお母さんの知り合いだった小畑先生に助けを求めたのです」

「てことは数週間は小畑先生の所いたのか」

「はい。でもあの人タバコ吸うし同性とはいえ生徒が先生の家に泊まるのは色々面倒だからと先輩の家を紹介して貰いました」


 泊る場所もないのに家を飛び出して進学先を決める決断力と行動力は認めるが計画性はクソだな。

 小学生でももっとマシな計画を練るだろうよ。


「でも! そのおかげで先輩に会えて一つ屋根の下に泊まれることになったのでわたしとしては満足でーす!」

「俺は不満でーす」

「そういうと思ってわたしなりに考えてきました!」

「絶対ろくなことじゃない」

「朝はわたしの添い寝で起こしてあげちゃいます! お昼は一緒に食べて、夜は......い、一緒にお、お風呂入って一緒に寝ます!」


 そんなみっちり手錠生活なの嫌なんだけど。

 顔は見えないが腕の力加減で照れてるのが分かってしまう。


「未来の旦那様にしてやれよ」

「未来の旦那様」

「断る」

「何も言ってないし見えてないでしょ!」

「悪寒がした」

「どーゆー意味ですか!」

「俺は未来の旦那様になりたくないというごく一般的な常識。願望。しかるべき権利だな」


 いくら彼女のこと好き好きでも一日中一緒でそれが一生続くのなら百年の恋も冷めるだろうよ。

 それでもアツアツなら今すぐ爆破しろ。地球温暖化が進む。

 自転車をこぐこと三〇分。青い屋根の実家が見えてきた。


「ほら、着いた」

「ありがとうございます」

「人乗せるのはごめんだ。ペダルが重い」

「そんなこと言ってー。女の子は皆リンゴ三個分しかないんですよ」

「......きっしょ」

「なにがですか!?」

「その思考、発言、海原海老名という女全て」


 今時「体重はリンゴ三個分」とかいう見えてる地雷を置く馬鹿がいるとは。

 しっかり踏みぬいたうえで文句を言ってやる。


「ただいま」

「お邪魔しまーす!」

「おかえ......」

「なに」


 俺の家の構造は家に入ってすぐにリビングがある。一応道筋的なのはあるが廊下かと言われるとちょっと違うような。そんな空間。

 壁などの遮るものがまったくなくキッチンとリビングが一体化し広々とした空間が広がっている。

 目が合った母さんが口を手で塞ぎ驚いているように見える。


「お父さん! 龍輝が彼女連れて来た! ちょっとお父さん!」

「なんだって!.....いった! 父さんにも見せてくれ! 彼女を!」

「そんな彼女だなんて......末永くよろしくおねが」

「そいうのいいから。小畑先生から聞いてるだろうが」

「相変わらず流れをぶった切るな~龍輝は」

「疲れるだけだからな」


 ツッコミ不在で良ければ続けてくれ。ただし俺を巻き込むな。

 いやどんな展開になるか分かったもんじゃない。二度とやらないでほしい。


「母さん。部屋の案内を頼む」

「先輩の隣がいいです!」

「三階には俺の部屋しかないんだよ。二階の客室で我慢しろ」

「じゃあ、先輩と同じ部屋で寝ます」

「元々物置だから狭いから」

「一緒のベットで寝れば部屋の広さなんて関係ないですよ」

「ベットはもっと狭いから」


 部屋と同じ広さのベッドとかそれはもう雑魚寝だろ。

 海原は渋々二階の客室を使うことになった。


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