第百九十二話 第三勢力の出現?
バレンタインと引き継ぎ作業が終わり新生徒会が本格的に始動した。
「さて、またまた集まってもらったわけだが」
「待ってこのお菓子おいしい! どこで売ってる奴?」
「西急ハンズで売ってるわよ~」
「人の話を聞け」
メンバーがメンバーだけに生徒会室ではなく俺の家に集まったはいいが、この様である。
個性重視の連携必須面子で連携が取れないとかそれはもう異端児なんよ。
「生徒会で風紀委員とは別枠で取り締まる部を設立したいと思ってる。完全独断決行だからボランティアにはなる。そしてその部を金谷に任せたいと思う」
「あら? いいんですか?」
「ああ、生徒会選挙で恋愛禁止云々言ってただろ。まあ、本音を暴露したからあれだけど。つまりだな、本当はやる気ありました的な筋は通しておけってことだ」
実際に、ここ数日で金谷に対するヘイトは少し高まり気味にある。
生徒会選挙という全校生徒の時間を使ってまですることなのかと。
そのヘイトを解消するには、仕事をするのが一番早い。
「取り締まるって具体的にはなにするんだ?」
「イベント事の警備強化、バレンタイン直後の過度なスキンシップ防止、屋上の監視とかだな」
「結構しっかり考えてありますねー先輩」
「本当なら、選挙の場で言うつもりだったんだが、あれじゃ言えないだろ」
海原のふくれっ面に回答になってない回答をして目をそらした。
「そのメンバーなんだが、金谷になにか心当たりは?」
「そうですね......なくはないですけど、声をかけてみないことには」
「おそらく俺はイベントごとに進行や指示出しで動けない。出来るだけ参加はするが期待はするな」
「はい。折角挽回の猶予をいただけたというのであれば、精一杯頑張ります」
これで伝えることは終わった。
あとやることといえば、卒業式での在校生代表で俺だけの仕事だ。
「でも、考えてくださっていたんですね」
「まあ」
「てっきり正論ばっかでやられるしかないのかと思いました」
「俺は必要とあらば敵の手を借りる。それに、金谷にもプラスになるなら断りはしないだろ?」
まあ、それでもかなりのプラスがなければ難しいとは思うが。
「嬉しいです」
染み込ませるように金谷は呟いた。
「嫌い嫌いと口ではいいますが、あれですか? 嫌よ嫌よも好きのうちってやつですか?」
「やめろそういうこというの。海原からの視線と爪が痛いから」
「今からどうですか?」
胸元のリボンを解き鎖骨がチラ見え。
なんでこう、攻撃力極振り系女子共は誘い方がドストレートなんだろうか。
賢さにも少しばかりあげてはどうだろうか。
「黙って聞いていれば! 誘惑はやめてください。先輩はわたしの彼氏です!」
頭を海原に抱きかかえられほんの少し柔らかい感触が伝わってくる。
「喧嘩はやめて」
「先輩は黙っててください。これは女同士の愛の戦いなんです」
「愛と言いますが、その愛は本当に伝わっているのですか?」
「当然です! なら、その愛というのを試しても構いませんよね?」
なんかRPGの中ボスみたいなこと言い出した。
「あ、じゃあウチも参加していい?」
「え?」
「これでも龍輝くんと長いのはウチだからね! 愛も少しならあるし!」
「つまり、市川さんに負けるとその少しの以下の愛ってことでおけ?」
「雅樹。煽るな」
二人の目がガチすぎて逃げだしたいから。