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第百四十三話 たこ焼きを食べれば「超活性」してしまう

柚子がやりずらそうにたこ焼きをひっくり返していく。

 ま、初めてじゃやりずらいよな、竹串でひっくり返すの。


「腕が痛い! むずい!」

「上面を下にしたら竹串でちょっと押し込めばちゃんと丸くなる」


 柚子にアドバイスしながらも俺は横の後輩の動きに注意を払っていた。

 海原の手にはあの「超活性」が握られている。

 しかも海原ママから見えない位置で。


「先輩? どうかしましたか?」

「別に」


 流石に海原ママの前で「精力剤入れるな」とは言えない。

 この場はなんとかあれを引かないようにしなければ。


 だいたい焼きあがってきたら男は目隠しをした。

 目隠しを外すともうどれになにが入ってるのか俺には分からない。

 とりあえず一番手前にあるやつを食べた。


「ん。じゃがバタ?」

「ああ、それウチが入れた奴。お酒に合うかなーって。どう?」

「普通のたこ焼きなら美味しいと思いますよ。今回のはぱさぱさなんで口の水分持ってかれますけど」

「ごめんてば」

「女の子をイジメるのはよくないよ」


 会長からやんわり怒られてしまった。


「では先輩。これを」

「なに入ってんの?」


 いやもう聞かなくても予想がつくけど。

 これか、海原が言ってた「ルーレットでも一人を狙う撃ち出来る方法」か。

 大胆だな。

 

「おいおい後輩くん? ロシアンたこ焼きの中身を先に聞くのはご法度だろう? それに、女の子からのあーんを断るのかい? パーティーという盛り上がった場で? 主催者が?」


 テーブルとタコ焼き器がなかったら顔面を殴って今すぐに黙らせたい。

 からかってる声をしているしなによりウザイ。

 だが海原が持つたこ焼きを食べれば「超活性」してしまうのは食べなくても分かる。


「俺もうお腹いっぱい」

「食べてください」

「おお、ごり押しかよ」

「龍輝お前、まだ二回目だぞ? 二個しか食ってねぇだろ」


 極度の拒食症じゃない限りたこ焼き二個じゃ満腹にはならない。

 どうする。考えろ。退路なんて無限に近いほどある。


「先輩......?」

「その顔やめろ。反則すぎる」


 首をこてんと傾げ、目を潤ませられたら無限に近い退路は一気に塞がれる。

 どうせこの後海原は帰るんだ。部屋に籠ればなんとかなるだろう。


「ん」


 俺が口を開けるとそのままたこ焼きが入ってきた。

 噛んだ瞬間に広がる形容しがたい味。

 エナジードリンクとはまた違うえぐみと漢方のような苦さ。

 それが生地じたいに染み込んで今にも吐き出しそう。


「どうですか? わたし特製たこ焼きは」

「控えめに言って最悪」

「なんでそんなこと言うんですか!」

「お前なに入れたか考えてみやがれ!」


 なにをどう考えたらたこ焼きと精力剤の組み合わせが合うと思ったんだよ。


「えっと......超か......」

「読まなくていい。それが合うかどうかだ」

「合います」

「なら食ってみろ」


 海原から小瓶を受け取ってたこ焼きに振りかけた。

 串でたこ焼きに刺して海原に差し出した。


「あーん♡」


 海原が口を閉じると数回租借した後眉をひそめた。


「味は微妙ですね」

「最悪だろ?」

「でも美味しいです」

「嘘だろお前」


 まあ、味覚は人それぞれだからおかしくはない。

 自分が美味しいからと言って他の人が美味しいとは限らない。

 だからまた俺に差し出すのを今すぐやめろ。


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