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第百二十九話 総評、海原が一番強い。

海原が湯気が立つお粥をレンゲにすくって差し出してきた。

 朝よりもだいぶ楽になったし自分でご飯を食べるくらい出来る。


「自分で食べる」

「ダメです。先輩は病人なんですから」


 さっきからこれの繰り返しだ。

 朝からなにも食べてないから少し腹も減っている。


「あ、あーん......」

「はい」


 俺が口を開けると少し梅味がするお粥が口に入った。

 ほんのりと味がするだけで味があるとは言い難いくらいの味付けが今の俺には丁度いい。


「先輩。このお粥。誰が作ったと思います?」

「母さんだと思ったけど聞くってことは海原か」

「はい。わたしが作りました。それを踏まえて味はどうですか?」


 正直俺の好みど真ん中に加え、風邪を引いているという状況でも美味いと思えるくらいには俺好み。


「俺好み」

「そうでしょうとも! 先輩に肉じゃがを作って以来、先輩の好みについて研究に研究を重ね! 今やお義母様にも引けを取りません!」


 俺をこの歳まで育てた母さんと同等に食の好みを理解していると海原は言い切った。

 その言葉に嘘偽り、誇張は一切含まれていないだろう。

 その証拠がこのお粥だ。


「先輩が反論の気力がないことをいいことにわたしは好き勝手いいます」


 なんだろう。無理でも反論した方がいい気がするのは俺だけか。


「わたし、結構尽くすタイプです。先輩の食の好みを把握して胃袋を握り潰してわたしから離れられなくします。先輩はそんなことしないと思いますけど、身体だっていくら求められてもわたしは応えます。もっと清純な子がいいと先輩が言うのなら頑張って清純になります」


 海原の言葉に俺は相槌も打たずにお粥をもぐもぐしていた。


「そしてわたしは強欲なので、もう彼女という立場では満足出来なくなっています」


 そういうと海原は空になった小鍋を床に置いた。

 そして言った。


「こんな尽くしてくれる可愛い後輩を手放すのは惜しいですよね?」

「......どういう意味だ」

「いえ。最近先輩の周りには女の人が増えたなーと思ったので改めてわたしという存在を脳みそに刻みつけておこうかと」

「別に増えてなんか」

「既に彼氏がいる柚子先輩は除外するとして、市川鈴音、アメリア・ライア、伊吹環先輩、卜部琴葉先輩、鬼島さん......少なくとも五人の女と関わりを持っているわけですよ」


 鈴音さんから卜部先輩までは知っているが鬼島ってのは知らないぞ。

 誰だその女。


「ちなみに鬼島は春頃にわたしを椅子に縛り付けた人です」

「パワーワードが過ぎる。ああ、あの可愛げのない後輩か」


 鬼島って名前だったのか。

 てか、俺の周りの女がいるのは俺からすればいつものことだ。

 ただ全員が全員目的が違うだけの話。


「いいですか? 先輩にはわたししかいないんです。わたし以外と浮気するのは罪です。死刑に値する重罪です」

「洗脳しようとすんな」

「洗脳ではありません。この世の常識です」


 そんな常識あってたまるか。


「俺にだって意思がある。簡単には流されない」

「その言葉、信じますよ?」


 「流されてはいけない」と海原は言うが、海原以上に押せ押せで男の俺を押し倒そうとしてくる女を俺は知らない。

 鈴音さんも時々ブレーキが壊れるがあの人の場合、物理的な力で破ることが出来る。

 総評、海原が一番強い。


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