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第十一話 思考が不安定でどうにかなりそうだ。

「先輩! この制服どうですか!?」

「違和感はない」

「このメイド服は!?」

「全体的に白いからもっと暗めでもいいと思う」

「このナースは!」

「それも同じ。白い」


 試着のカーテンが開かれる度に海原は違う衣装に変わる。

 何着持ち込んだのか知らないが悩み具合からまだあるようだ。俺は言いたい。

 あいつに羞恥心はないのか! メイドやらセーラーやら男に見せるにはちょっと躊躇われるような服も容易に着る。そしてこの行動には心当たりがある。


俺への好感度をあげるために多少の羞恥心は我慢する行為。なんでこう、『海原は他の女とは違う』という否定が強くなった瞬間に同じようなことをするんだろうか。思考が不安定でどうにかなりそうだ。


「先輩?」

「ん。ああ、なんだ」


 顔を上げると最初の探偵服を着た海原が心配そうな顔をして俺の顔を覗き込んできた。


「顔色悪いですよ?」

「そりゃ、三〇分以上立ちっぱなしだからな」

「すいません。楽しくてつい......」


 試着した衣装に再びビニールをかける海原はどこか楽しそうでその横顔は少し笑っていた。


「海原は外でそういうの着たりしないのか?」

「外ではちょっと恥ずかしいですね。それに街中にメイドとかナースがいたら変じゃないですか?」


 探偵服は、一ファッションとしてカウントされるらしい。俺には今の海原も十分コスプレだと思うけどな。


「先輩はなにか興味はありませんか?」

「んー。特には。男が着る物って結構限られるよな」


 男はメイドもナースもバニーも巫女服も基本着ない。勿論本気で女装して着る人はいるし本当に尊敬する。だが俺はそこまでの覚悟も方法もない。となると俺が出来るコスプレというのは男のものをそのまま着るだけなんだ。


「そうですね。でも先輩も女装すれば!」

「そこまでしたくない」


 いや、ほんの少し興味があるがそれで「やりましょう!」という展開にならないとも限らない。覚悟がないなら断るのがいい。


「でもわたしが見るアニメとかって男はほとんど着物か制服なんですよね」

「まあ、戦闘物とか戦記、SFを見ないならそうなるだろうな」

「でもこのスーツは知ってます!」

「放送当時は社会現象にはなったしカラオケじゃ今もアニソントップレベルの人気だからな」


 海原が興奮気味に見つめるマネキンはアニメで使われる戦闘服。質感や重量感などがしっかりと再現され、これで文句があるアニオタはいないだろうと言われるレベルの再現度だった。


「海原が着るにはちょっとばかしサイズが......」

「サイズなんて偽れるんです。武内先輩だって二枚ほどパッド入れてますし......」

「お前それ本人の前で言うなよ。俺が死ぬ」

「言いませんよ。先輩分からなかったですよね?」


 まあ、高校生にもなれば服の下を見ることなんてまずないし見たとしたら俺の目はなくなるだろう。

 柚子の場合は物理的な距離が近いから時々胸が当たったりするが、パッドだとは流石に分からない。


「いつか先輩とコスプレで写真撮りたいですねー」

「勘弁してくれ」


 俺がコスプレして似合う服なんてない。せいぜいハロウィンでゾンビの変装をする程度だろうか。デフォルト装備で特殊メイクも必要なしにゾンビだからな。


「先輩ってウィンドウショッピングとかって出来るタイプですか?」

「長時間じゃなければ」

「具体的な数字は?」

「二時間が限度だ。それ以上は飽きる」

「じゃあ、行きましょうか」


 海原に手を取られ俺は引っ張られながら店を出た。さっきからズボンのスマホが着信を知らせていて数回無視してるから怖いです。助けて。


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