0場面 プロローグ
ネットの文章を読んで気づいた真実。
ゲーム好きが解離を克服するために取った方法は…?
全部で7部を予定しております。
明日、新しい朝がくる。
何故かというと、今日から私、新見イコは変わるからだ。
1人の人間になるために。
私の頭の中には、2人の男の子がいます。
事の発端は些細なものだった。
少しネットを見ただけ。
ただそれだけで、当たり前だと思っていたことが異質であると気づかされる。
『自身の中に別の人格がいるように感じることを内在性解離という。これは後に多重人格に繋がる可能性がある。』
『特に脳内会議を繰り広げる人は内在性解離の可能性が高い。』
え、そうなの。
意外性も衝撃も受けたけれど、とりあえず過ったのはそんな素っ頓狂な言葉。
五体満足骨折なし手術なし、あえて言うなら低身長肥満体型。
そんな私はどうやら、心の病気に近しいものを持っていたようです。
この病気の治療法としてタッピングやカウンセリングがある。しかし、私は内にいる2人をどうにも忘れたくなかったためか、踏み出すことができなかった。
そんな折に友人から勧められたのが、最近考案された『ゲーム感覚で克服できる治療法』。昔からゲームが好きだった私は思わず飛びついたのだけど、詳しい内容はまだ聞かされていない。
"今日で2人ともお別れかあ。"
(ねえアンタ、本当に治るの?)
こちらはライ。私の中にいる男の子の1人。一人称はオイラで、私のことをアンタと呼んでいることが多い。
"他のも失敗というか、試せなかったし、治らない気もするよね。"
(てかそもそもお前の心が弱いのが原因なんだろ。)
"何その言い草酷くない!?"
そしてこのムカつく方がコウである。一人称はオレで、私のことはお前と呼んでいる。
(そんなこと言って、本当はアンタのことが心配なだけでしょ。)
(どう解釈したらそんな理論になるんだよ。)
ライは優しいから心配してくれると思う。けれど、コウに心配されていたら逆に怖い。
「新見さん、どうぞ。」
「あ、はい!」
1人でボーっとしている内に、ゲームの準備が整ったらしい。施設の優しそうな役員さんが来てくれた。
それにしても、丸一日かけてやるゲームと聞いたけど、どんなものなんだろうか。
通されたのは、何もない殺風景な部屋。白っぽい灰色の壁で囲まれた、10×10×5㎥くらいの、だだっ広い空間。
その端の方へと案内された。
「こちらではシューティングゲームをしていただきます。」
「え。」
シューティングゲーム?別に嫌いとかではないが、的とか武器とか足りないものが多いのでは……?
「ゲームが始まったら私は席を外します。」
「はあ……。」
まだあまり理解できていないけれど、とりあえず生返事くらいはしておく。
「ゲームの最中にはこちらのCGゴーグルを着用していただきます。」
なるほど。今の言葉でようやくピンときましたお姉さん。
「ここまで大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。」
それにしてもゴーグル……たぶんお姉さんが持ってるやつだよね。ヘルメットみたいになってるけど。
「ゴーグルを装着していただくと、新見さんの中にいる人格が実際の人物となって現れる仕組みです。」
え、頭の中にしかいない人が出てくるってこと?
「すごいですね。」
そんなことまでできるようになったのか最近の技術は……。
「すごいですよね。実際の人物は新見さんのイメージに近いものになるので、違和感も少ないと思います。」
……。
いや頷きましたけど、ライとコウの具体的なイメージとかないんですが……。
むしろ黒い靄レベルなんですが!?
(ちょ、靄ってアンタ……。)
(本当に靄だったら、視界が真っ暗になるな。)
"そんなこと言われても、イメージしたことないもん!"
ちなみにこの間、注意点諸々お姉さんが言っていたけれど、それとなく聞いているだけで、ほとんど頭には入っていない。
「それでは準備の方問題ないですか?」
「あ、はい!お願いします!」
まあいいや。なんとかなるでしょ。
そうして私は、渡されたゴーグルに手をかけた。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
まだまだ物書き初心者レベルですが、気ままに頑張ります。
1時間に100字程度なことがあるくらい遅筆なので、気長にお待ちいただける方がいたら本当に嬉しいです。