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6話:今昔…昔と今

多分今までの話どころか書いた作品の中で1番重い話になってしまったと思います、注意して読んで下さい、真面目に終盤からギャグ0どころかシリアスパートです。

 街中を走り抜けている訳だが……この人工島の街並みは(前世)の世界とそう変わらないな、ただ、生徒手帳がスマホだったり、新鮮な部分も多くある、と言うかこれが俺の高校デビューになるのか?

 だけど、髪染める云々の前に(ガム君)白髪なんだけど……どんな苦労したらそうなるのさ。

 ガム君なら「現在進行形で貴様に苦労している」とか言ってきそうだな……


 それにしても……今日だけで色々あったな、転生した瞬間のてんやわんや、氷室さん(未知)との遭遇、大和撫子系ヤンキーなポニテの風使い、魅了使いの男の娘に、よっしー先生に幽霊の方々、そしてガム君……あとテロリストか、テロリストが薄味に感じるレベルだよ、濃いわ、ここの面子。


 ……考え事してる内にモノレールの線路が見えてきた、線路は高架になっていて、その下に目線を移せば、例の看板が見える。


「『喫茶珈琲太郎』……あれか‼︎ 」


 店の前まで走って来れば、名前の尖り具合に反して、外装はシックでモダンな赤煉瓦、お洒落、その一言がぴったりな店だ。

 扉の窓から覗くと、手前のテーブルに2人の姿が確認出来た。


 まだ手は出していないか……良かった……流石に俺たちと出会ったせいで貞操失いましたは笑えん。


 扉を開けば、これまたお決まりな、ドアチャイムの音、2人が気付いた様だ。


「会長、待っていました」

「は、初めまして‼︎ 生徒会長、さ、さ、さ」


 さ……?


「様‼︎ 」


 ゴフッ……いきなり様呼びとか何があった、氷室さんが何か吹き込んだか……?


「せ、生徒会長の噂は……かねがねお伺いに……」


 いやいや待って待って、幾らなんでもそこまで露骨に距離感取られたらお兄さん悲しくなるから‼︎


「か、堅苦しい口調は無しにしよう、よ? 」


「了解しまし……「無しにしよう? 」はひっ‼︎ 」


 そう言って氷室さん側の席に着けば、話が始まった。


「先ずは……今日、会場まで案内してくれた事、本当に感謝しています、ありがとうございました‼︎ 」


 そう言った彼は座ったまま頭を下げた訳だが、案の定頭を机にぶつけた、あざといな、これはあざとい、魅了の異能を持つだけあって、中々本人も仕上がってる。


 こうして対面から見れば、長めの髪、綺麗なまつ毛、くりっとした目、女の子である、どう見ても。


「改めて自己紹介を、僕の名前は、衆徒(しゅうと) 恵魅(めぐみ)、1年生です」


「よろしくね、メグミ君、私の名前は、白山 餓無、2年生、役職は……生徒会長だよ、そして、こちらが」


「氷室 涼子です、会長と同じ2年生です。また、副会長として会長の業務をサポートしております、以後お見知り置きをを」


「あわわ、あわわわわ、よろしくお願いします……やっぱり、あの生徒会長なんだ……」


 ……まぁ、そうなるだろうなぁ、俺的には、そうなる訳を知りたいのだが……


「……メグミ君、折り入って話があるんだ」


「話……ですか……? 」


「この学園の生徒会長として、評判が気になってね、私の噂や評価を、まだここに来たばかりのお客さんな君の目から語って欲しいんだ、何を言ってくれても構わない、おべっかは結構だ」


 と言っても、目の前で言うのはやっぱり勇気がいるよなぁ、こちらは無理に言わせる気もないし、無理なら無理でいいのだが……


「じ、実は……ここに来て、こうして生徒会長さんが白山さんと知るまでは、生徒会長は怖いイメージしかなかったんです。学園に来る前に、この学園の生徒会長は1年で学園をあっと言う間に変えてしまったと、そう言う噂が出回っていたんです」


 まぁ、悲劇的ビフォーアフターって所だろう、中身はどんなものやら。


「その、噂の中身は? 」


「生徒会長は、異能の強度や貴重性から生徒達1人1人にランク付けして、下のランクの人間を排斥しようとしたとか……」


 いや待ってそれ絶対下のランクにヤバい奴居るパターンじゃん、めちゃくちゃ恨まれてたらどうするんすかガム君。


「他には、学園内に懲罰部隊を作って意向に従わない生徒を片っ端から処罰したり……」


 それ絶対反乱軍の原因だよね、間違いなくそれに反抗する為のレジスタンスだよね?


「他にも、副会長の弱みを握って好き勝手しているとか……」


 流石にガム君もしないし否定すると思うよ、それは、絶対に‼︎ 氷室さん相手は無い‼︎ (絶対的な信頼)


「でも……そんな噂と、今日会った白山さんのイメージが、どうしても合わないんです……まるで別人みたいで」


 うん、別人だからね、そりゃもう違うわ、ガム君凄い事してるね、本当に。


「少なくとも、今の私は、私を偽っているつもりは無いね」


 これを聞いた上でガム君になり切れと言われても無理だわ、気合入れたらこれ以上の事をやらかせるかもしれないけど。


「そう、ですよね、安心しました、きっと噂もデタラメな物ばかりなんですよね‼︎ 」


 ごめんさっきの噂2/3は本当だと思うわ。


「氷室さん、氷室さんも何か喋る事はあるかな? 」


「私は、謝罪はもう既に済ませましたから……」


「謝罪って、あの襲った……」


「はい……まさか魅了にかかっていたとは言え、あの様な事をしてしまうなんて」


 確かに、誘い受けアピールが酷い氷室さんが攻めに回るなんて、驚きだったな。


「そう言えば……今はまだ魅了にかかっていない気がするのだが……」


「この店は、この学園でも知る人ぞ知る店なんですよ、会長」


 先程までとは一転し、眼鏡をくいっと持ち上げ、ドヤ顔、確かに可愛くはあるのだがその内の深淵を覗いてしまえばそんな事を言う余裕はたちまちに消え去るだろう。

 そして、この言い回しだと、会長はまだ行った事の無い店なのだろうか?


「この喫茶珈琲太郎の店主は、範囲内の異能を無効化する異能を持っているんです」




 待て、なんだその主人公級の異能は? 怖すぎるだろう。この空間異能使用不可の状態になってるのか?




「ココア一つに、コーヒー一つ、カフェラテ一つです、こちらが砂糖とミルクになっております」


 お、もう注文はしていたのか、流石に店に入って何も注文せずに駄弁るのは不味いからな、店員さんに礼を……


「えっ? 」


「ゑ? 」


 なんで、なんで……


「何であの風使いの子が⁈ 」


 ウェイトレスの格好をしていたのは、朝、校門で出会った風の異能使いの少女だった。


「なぜ腹黒女に悪代官がここに⁉︎ 」


「客に対して腹黒女とは、まぁ万歩譲って許すとして会長を悪代官呼ばわりとは、身の程を弁えたらどうですか黒豚? 」


 出会ってそうそう火花散らしてるんですけど⁉︎ この子らライバル的な関係なの⁈

 と言うか悪代官って何だよ……


「さては貴様ら……そのの幼気な少女を誑かし、悪の道へと誘う気だな⁉︎ 」


「アナタの目はガラス製の義眼なのでしょうか? 黒豚にはいささか分不相応な代物ですね」


「問答無用‼︎ ここで貴様らを成敗いたす‼︎ 」


「僕は別に誑かされてる訳じゃ……」


「いや、店の中で喧嘩する気ですか⁈ 」


 すると、バン‼︎ と音がして、次の瞬間には少女が頭を押さえて呻いていた。


「その少年の言う通りだよ、店ん中で喧嘩おっ始める気かい? 」


 少女の後ろにはウェイターの格好をしたモノクルがイケてる初老位の女性が居た。


「て、店長…「マスター」はい……マスター‼︎ 」


 マスターの一言で蹲っていた少女が一瞬にして直立した、ここは軍隊か何か?


「ウチの子が迷惑かけたねぇ、接客態度はおいおい叩き込むとして……少年らは、今日は客として来たんだね、珍しい」


 マスターの顔は、明らかにこちらを疑うものだ、ガム君さぁ……ここでもやらかしたの?


「……はい、手頃な喫茶店でこの子と話そうと」


「ほぉ、あの生徒会長が話を聞くとはねぇ……」


「……ははは……」


 ねぇ、どう誤魔化せば良いのこれ、なんかより胡乱な物を見る目つきになってるんだけど。




「そうです、会長は、変わりましたから」


「氷室さん……」


「……少なくとも今は、何も事を荒立てる気はありませんよ? 」




「……ふふ、そうかい、疑って悪かったねぇ、お詫びにミルフィーユをサービスするから、少し待ってな」



 そう言うとマスターは店の奥へ戻って行った。

 いや、このサムライガールも連れて行って欲しいんだけど……


「……この雪辱は、次の機会に必ずや果たす‼︎ 覚悟しておけ‼︎ 」


 そう言った彼女も店の奥へ戻って行った……暫くすると店の奥から「また喧嘩売ろうとしたねアンタ‼︎ 」と言う怒声と「マスター‼︎ お許しを‼︎ 」と言う命乞い染みた声が聞こえた、いやまた喧嘩売ろうとしたって本当かよ、喧嘩をサービスで売ってるの? あの子。


 ……って店長って事は、あの人が異能を無効化する異能使いか、そりゃあの子も頭が上がらない訳だ。


「凄い、お店ですね……」


「私もこうして対面するのは初めてでしたが、普段からあの黒豚が客に喧嘩を売って痛めつけられるのを見るために、通っているんです」


 屈託のない笑顔でそんな事を言うな、メグミ君が引いてるぞ。


「さぁ、冷める前に飲んでしまいましょう」


 そう言うと俺はカフェラテ、氷室さんはコーヒー、メグミ君はココアを取ると、各々飲み始める。


 鼻を抜ける珈琲の香ばしい匂いと、ミルクに包まれた柔らかな味わい、この一杯が確かな代物と分かるのは、ガム君の身体だからだろう、俺の身体なら貧乏舌が過ぎて何でもかんでも美味いの一言で片付けてしまうだろうから。


 ……喫茶店なんて何年ぶりだろうか、バイト以外で入る店の方が少ない俺は、喫茶店に限らず、レストランやチェーン店の中で時間を潰すのが二重の意味で贅沢な行為に思える。

 時間と金の消費、随分と恵まれた生まれになってしまった物だと自身を嗤ってしまう、母親はあの世界で今も牢の中にいるのに。


 親より先に逝った息子なら、母親が行くであろう先に行けるのだろうか。

 そこにはきっと父親もいるだろうが。


「会長、どうかしましたか? 」


「ん? いや、少し考え事をしてたんだ」


「考え事……? 」


「前の話だよ、両親の事さ」


 ポロリと口から出てしまい、不味いと取り繕おうとしたが


「白山さんの両親って、どんな方なんですか? 」


 以外にもメグミ君が食いついた。


「ぁあ……『よく分かんない』かな」


 俺を刺したお母さんや、僕を虐めたお父さんは、何を思っていたのだろう。


「僕も、同じです、分からないんです」


 ……これは……茶化し様も無いな。


「僕の異能は……知ってますよね」


「えぇ、魅了、ですね? 」


「だから、僕は分からないんです、両親が本当に僕を愛してくれているのか、魅了で操られているだけなのか……本当の顔が、分からないんです」


「なるほど……」


「だから、この学園に来たんです、他の学園よりも、異能研究が盛んと言われている、この学園に」


 ……やっぱり、他にも能力者を集めた学園は存在しているのか。


「僕は……女の子が欲しかったお母さんに、男の子として産まれました、だから、お母さんは僕を女の子として育てたんです」


 この世界でもそんな事があるのか……


「そして、僕は、小学生の頃、お父さんに乱暴されたんです、そのおかげで、今もまだ少し、大人の男の人が怖いんです」


 いや……予想以上に重いぞ、だが、なるほど、見えてきた。


「その親の行為が、魅了の所為だと思って……? 」


「はい、だから……ここに来て、異能を制御する術を学んで、両親の、本当の心を知りたいんです」


 無粋な話だが、異能を無効化する異能の力を借りる手段もあるだろう、だけど、本人も分かっている上でそう言っているのだろう、彼だって、男の子なんだから。


「そう……か、でも、どうして今日あったばかりの私達にそんな大事な話を? 」


何故か、嫌な予感がした。


「……白山さんが、()()だと思ったからです」


 その言葉に、ドキッとさせられる。

 精神を司る異能故か、彼の心を見る目は尋常な物ではないようだ。


「白山さんの悩みはきっと、最後は白山さんが解決するしかないと、思います、でも、そのお手伝いなら……他の人を頼っても良いと思うんです」


 …………いや、この悩みはガム君の物じゃあない、俺の物だ。


 別の世界から態々持ち込んでしまった物を、この世界の人に肩代わりさせる訳にはいかない、俺の事よりも、ガム君の事をすべき筈だ、俺はこの世界の中に割り込んだ人間だ、世界の庇護を受ける道理は無い。



「分かったよ」



 俺の悩みなんて些細な事だ、笑顔を崩すな。


 見抜かれてしまえば、きっと彼らに俺の荷物まで背負わせてしまうから。



「白山さん、貴方は何故、そこまで……」



 その言葉の先に、聞きたくない何かが、ある気がした。



「…………すまない、先に帰るよ」


「か、会長‼︎ 」


「大丈夫、君はメグミ君の面倒を見てくれ」


「白山さん‼︎ 」


 テーブルに金を置き、メグミ君を口実に氷室さんを縛り、そそくさと店を出た。




 ────────────




 結局、私は会長を追う事が出来なかった、追った所で、何も出来るとは思えなかったから。


 目の前に座る恵魅さんも、同じ心持ちなようだ。


 1年前からそうだった、ずっと、会長が抱えていた何かは、きっと今の会長に繋がっている筈なのに、どうしても話が見えてこない、そんな自分自身が情けない。


「お待たせ、ミルフィーユだよ、……あの少年は? 」


「会長は……先に帰りました」


「待っといてって、そう言ったのに、忙しい奴だねぇ」


「僕の所為で……」


「まぁ、何があったかは聞かないよ、これでも食って元気出しな」


 皿の上には一切れのミルフィーユが載っていた。

 一見シンプルなミルフィーユに見えたが、横あいから見れば、チョコクリームと生クリームの層を交互に重ねた物だった。


「会長の分は、あの店員に渡しておいてください……」


 そう言うとマスターは黙って皿を一つ取り、奥へ向かった。


「マ、マスター⁉︎ そのミルフィーユは、まさか⁉︎ 」


「食いな、客からの差し入れだよ」


「か、感謝の極みです、マスター‼︎ 」


 店の奥から聞こえる能天気な叫びも、この雰囲気にとっては救いに思えた。


 会長のカップの底には、何も残っていなかった。

主人公の1人の俺君は基本的にもう1人の主人公のガム君の問題やその他の問題にあたってる時は脳内ツッコミやらでギャグに出来ますけど、俺君自身の問題になると脳内ツッコミしてる暇が無くなるのでほぼほぼシリアスになっちゃいます。

必要性があれば、ポニテ少女が完全なシリアスブレイカーになる可能性が……?

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