1話:転生…転生は転生でも
何で他の作品あるのに思いついたら直ぐに出しちゃうんですかね、エタったら切腹もんですね。
「貴方は死んでしまったのです」
は? どう言う事なのだよ、などと困惑するのはまだまだ未熟、多分これはアレだ、異世界転生と言うヤツだ、間違いない、目の前にいる光に包まれた何かが言った台詞でほぼ確信した、とくれば次の台詞は…
「貴方に異世界へ転生して貰いたいのです」
ほら来た、親の顔より見た光景とはこの事だろうか、だが俺は何故死んでしまったんだろうか、やはりトラックか? それとも他の事故か?
「貴方は母親に刺されて死んでしまったのです」
はぇ〜テンションどん底になりましたわ、ごめんあそばせ (精神崩壊) ………ア゜ッ゜‼︎ (精神蘇生)…思い出した、確かバイトから帰って来た俺にお母さんが「もう楽になって良いからね」って言った後、刺されたんだった、いくら霞食って生きながらえる様な生活してるからってそこまでしなくて良いだろう、と言うかこれは一家心中なのでは…?
「お母さんは、どう…なったんですか? 」
「貴方の母は死に切れず、獄中で罪を償っています」
…死んでしまった以上、仕方ない事だと思うが、不思議と殺された事に対して腹立たしさは感じなかった、どうせならそうなる前に相談して欲しかったが。
「元の世界に転生は…「無理です」でしょうね」
余りにも予想通り過ぎる、夢落ちか、もしかして死の間際の幻想だったりしないかと少し不安になる。
「もう時間がありません、転生する際の特典を選んで下さい」
えっ、自由度低くない? 行列の中マッ◯のハッ◯ー◯ット選ぶ位猶予無くない?
「えぇ、じゃあ、食べ物に困らない能力で‼︎」
「分かりました、それでは、良き未来を」
光に包まれ、意識が薄れて行く…
その時の彼は手を組み、祈る様にしていた、何故?
……………
…と言う訳で俺は異世界転生して生後0歳からスタート、な筈だが…だが…親の顔なんぞどこにもない、見えるのはコンクリ色したやたら硬そうな天井だ。
「あ…あ…」
声は俺よりやや高い位だろうか、背は180cm以上、視線の高さの違いから何となく察しはついた、俺はチビ寄りな方だったからこの視線の高さは新鮮だ。
さぞ良い物を食べているのだろう、ベッドから身体を起こせばこの部屋の異質さがよく分かった、この部屋、窓が一つもない、建築基準法はどこ行った。
だがまぁこの内装を見るにこの世界が中世ヨーロッパなんて事はないだろう。
床が冷たい、肌寒い、今は冬だろうか、白い息すら出てくる、どこぞの極限環境な牢獄に比べれば遥かにマシだろうと想像の上でなら言えるが、並の人間がここに居ればストレスで口内炎が量産される事だろう。
唯一の鉄扉はあっさりと開き、フローリングの床がお見えになる、ざっと他の部屋を見たが、至って普通の1LDKの様で、この部屋だけが異常な様だ、部屋を周るついでに洗面所で鏡を覗いた訳だが……これがびっくり、俺は白髪だった、白髪なのに目は黒目、肌が真っ白でない為アルビノと言う事はないだろうが…日に当たったら皮膚爛れたりしないよね? しないよね?
顔はと言えば優しみを感じる少し垂れた目尻に切れ長な目、シャープな顔のラインに目鼻立ちくっきり、外国人に見間違えられてもおかしくない。
だが、分かる、分かるぞこの顔、きっとこの甘いマスクで釣り上げた豚さんを一転し鬼畜に痛めつけるタイプだ、間違いない (偏見)、俺は鬼畜系イケメンに詳しいんだ (節穴)
……さて、現実逃避はここまでにしよう、確かに転生だ、間違いはない。
だがこの転生は、転生でも…
憑依転生の方じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁ‼︎⁉︎
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叫んだら落ちついた…訳がないだるぉ⁈、憑依転生、転生の中でも取り分け異質な存在、性転換よりもヤバい。
憑依転生とは、つまり憑依なのだ、元ある人格の上に被さる様に転生するパターンもあれば、元ある人格を上書き削除して転生するパターンもある、後者は記憶と言う自己と言う存在に欠かせない物を消しているのだから実質人殺しである、生後0歳の殺人者とはたまげた、乗っ取っていると言う自覚が遅れてやってきた為に気分はさながら物体◯である。
……とにかく周りの確認だ、先程の部屋に戻り、私物を漁る、ひとのものとったら どろぼー 何て言葉が頭をよぎるが、今は自分の物だと言い聞かせて他人の物を漁っていた。
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…他人の名前が分かった、名前は、「白山 餓無」餓えが無いと書いて餓無…名前に餓を入れるセンスはアレだが、ええ名前やん (上から目線)
勝手知ったる他人の家…を家主が実行する奇天烈な光景を無心で流し、ポットに水を入れ、湯を沸かす、水道費と光熱費は問題ナシ‼︎
通帳や印鑑もあっさり見つかった、どうやらガム君は整理整頓が大好きな様だ、おまけに几帳面、ありとあらゆる家具と雑貨が綺麗に綺麗に並べられている。
だから謝っておく、ガム君に。
俺整理整頓出来ないの…ユルシテ…
今度こそ大分落ちついた、寝台の頭元にあったデジタル時計を見ると今は朝の6時、4月1日…新学期、夢と希望に溢れた朝日がやって来る…不味いわコレ。
彼のものであろうスマホらしき物を手に取り、パスワードの迫真のブロックにより10分浪費したものの、彼がパスワードを収めた手帳を用意していた為に事なきを得た。
ガム君、もし俺が居なくなって、彼女作って家に上げるようになったら、この手帳絶対に見つからない様にした方が良いよ…
後、どうやらこのスマホらしき物、生徒手帳の役割を果たしてくれる様だ、中々ハイテクノロジーな世界の様だが、まだ外を見ていない為にピンと来ない。
取り敢えず朝からシャワーを浴び、真っ白な髪を整えてから制服に袖を通す、4月1日だしブレザーで大丈夫だよな…?
丁度湯が沸き上がったのでやたらと多いインスタント食品から味噌汁を取り、湯を注ぐ、インスタント山盛りとか贅沢っすね(霞食ってる奴の感想)
「ふぅ…あったかい」
この声帯でこの台詞を吐くと妙に艶めいて聞こえる。
その気はないので対して気にすることも無いが。
さて、大体の準備は終わった、生徒手帳スマホで学園までの経路を見ると約15分と出た、数字のマジックに引っかかる可能性も考慮し、30分かかると考えて行動する、現時点で6時40分、7時30分までに到着すれば良いと考えて出て行くのは15分後、さぁ準備だ。
朝飯ヨシ‼︎
身嗜みヨシ‼︎
持ち物ヨシ‼︎
……思ったより早く終わってしまったが後は何かあっただろうか…無いな、もしもあったらそれはこんな時期のこんな時間に転生させた神様サイドに問題があると考えよう。
さて、いよいよパンドラの箱を開く訳だ、たかが玄関、されど玄関、出るのは希望か絶望か…
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まぁ綺麗な青空…何て事はなく凄まじい土砂降り、何もかもが俺を手酷く歓迎してくれている様だ、はっはっは、乾いた笑いしか出ない。
どうやらこの部屋はマンションの一室の様だ、出来ることならご近所に挨拶したい所だが、彼の学年は今年で二年、部屋から見受けられた性格的に既に挨拶回りは済ませているだろうと諦める。
玄関の傘立てから傘を一本取り、行事日特有のスカスカの学生鞄を持ち、見慣れぬ通学路に柄でもなくワクワクし始めた矢先。
──エレベーター使用不可──
ここ何階だっけ、え? 15階? マジ?
通学路に入る前に既に疲労困憊の人間がここに居た。
「そう言えば…転生特典に食い物に困らない能力ってお願いしたけど…あれはどうなったんだ…? 」
「どうかしましたか、会長」
ヒェッ……背後に急に現れないで…ってクールビューティーと言う言葉が似合いそうな、スマートな眼鏡をかけた美人さん。
赤と白のやたらに目立つブレザーをお互いに着ているおかげで流石に人違いの可能性は無い、って会長…ってまさか…
「私の顔に何かついていますか? 会長」
おっと、自然と視線が彼女の顔に吸われていた…恐るべしクールビューティー。
しかし無感情である、だがそれも良い。
…また現実逃避してたな、反省だ。
会長ってのはまぁ…
「すまない、会長とは、何のことだっただろうか」
「まだ寝ぼけているのですか? 貴方は国立湊谷学園の生徒会長、ありとあらゆる異能を支配する唯一無二のお方なのですよ」
待って待って待って、生徒会長までは予想してたけど後半何、ナニコレ、異世界じゃなくて学園能力バトルの世界に来たのか…と言うか地味にこの子狂信者オーラ出てるんだけど、怖いんだけど、クールビューティーにしては妙に熱持ってるんだけど。
お方とかヤバいよコレ、中身偽物ってバレたら色々終了するんじゃないかこれ、と言うかガム君ここまで知ってるって事はこの子同級生? この子と一年間生徒会の仕事してたの? 凄いね (率直)
「あぁ、そ、そうなんだ、寝起きで頭が回らなくてね、その…君の名前は…? 」
「私の名前は氷室涼子です、本当に大丈夫ですか? 今日は新入生にこの学園の王が誰であるかを知らしめるスピーチも待っているのですが」
いかにも涼しげな名前…って怖いわ、学園の王って何、俺普通の生徒会長だよね? 何知らしめるスピーチって、ただの挨拶だよね?
いや待てよ、ここが異世界、しかも学園能力バトル物な世界だとするとだな…
生徒会長のポジションってのは……謎の生徒会の権力により生徒に圧政を敷き、その体制を砕かんとする主人公に何やかんやあって最後にはボッコボコにされる役柄じゃないのか、今の話を聞くに多分俺そのタイプだぞオイ、何やってるのガム君、やっぱり鬼畜イケメンじゃないか…
「早く行きましょう、遅れてしまいます」
「わ、分かったよ、氷室さん…」
「氷室さん? 」
まさか呼び間違いやらかしたか…?
いや避けようがない、人の呼び方なんて…だからコレは必然、どうにかして突破せねば…
「ま、間違えて呼んじゃったかな? 」
下手くそォォォォォ‼︎ 何だこの影の住人の様なリカバリーは‼︎
「…い、いぇ、その、初めて名字で呼ばれたので…」
……初めて名前で呼ばれてならまだ分かる、初めて名字で呼ばれたって何? あぁ、そうか君とかって呼んでたんだな、きっとそうだ。
「…去年までは私の事を冷や豚と呼ばれていたのに…どうして今になって名字を……前の呼び方も好きでしたが…」
ガム君、出てきて、お願い、目の前に広がる現実に耐えきれない、女の子1人調教済みとか君本当鬼畜イケメンだね、流石にお兄さん手の施しようがないよ?
「いやぁ、あの、心変わりと言うか…」
「確かに、雰囲気が変わりました、いつもより柔らかな雰囲気です、いつもの射殺す様な瞳も素敵ですが…」
そんなこんなで、校門へ辿り着くだけでメンタルは既にボロ雑巾となっていた。
波乱の異能学園生活は始まったばかりだ……マジで?
この話は悪役令嬢物を見て思いつきました、それ以外にも負けフラグポジションから始まる物語とか面白そうですよね、幼馴染みポジションとか噛ませキャラポジションとか(書けるとは言ってない)