第九話『作戦前夜』
路地裏で『サリン』の悪魔払いに敢えて捕まった俺魔王ベリアルは、レリックの居城に入り、そのまま玉座の間に連れて来られた。そこにはマグナードと数名の神官達に彼等を守る護衛兵がいた。
この結界は浮遊するのでここまで来るのに大通りで見世物にされながら来たけどなんか恥ずかしかったな。
マグナード
「ようこそお越し頂きました!レイヴン殿!いや今は魔王ベリアルと呼んだ方がいいかな。」
ベリアル
「これはマグナード殿下。よく私の正体がわかりましたな。いつからお気付きで?」
マグナード
「勿論君と面会する前だよ。神父殿がレイヴンという冒険者が人間の皮を被った魔族だと聞いて招待したが・・・・君の提案を聞いた時は人間のする事じゃないと恐怖したよ。」
ベリアル
「だが理解出来ない。それだけの危険視をしていたにも関わらず、何故私の部下やこの私自身を今まで見逃していた。お前達や『サリン』の悪魔払い達なら対処は出来たはずだが。」
いくらでも奇襲できるチャンスや、会談を阻止出来たはずなのに、それを敢えて見逃していたマグナードのこの余裕の表情は何処から湧いてくる?
マグナード
「こちらからは下手に動くなと神父殿から言われていたのでね。彼等に任せていたがこんなにあっさり捕まるとは流石は『サリン』だ。」
なるほどな。なんかこの王様『サリン』と神父の言いなりだ。それにしてもこちらの情報を掴んでいるとはその神父只者じゃないな。
マグナード
「それと妹と企てていた計画も阻止させて貰ったよ。」
まあ気付いて当たり前か。つまりセレーナ達も捕まった訳でして、彼女達からの手引きは潰された事になる。
セレーナ
「ベリアル!!」
彼女の声がする方を振り向くと、縄で縛られ衛兵に引っ張られていたセレーナが泣きながら俺に頭を下げていた。
セレーナ
「ごめんなさい。私の失態でこんな事に。」
ベリアル
「信長さん達は。」
セレーナ
「この城の北側にある牢屋に閉じ込められているわ。」
そうなると当初の計画通り、最終フェイズは俺達ガイロスだけでやる事になるか。
マグナード
「セレーナを牢屋に閉じ込めて置け!!」
衛兵達に連れられてセレーナは不安そうにその場を去った。
マグナード
「では愚かな魔王よ。君もしばらくは入って貰うよ。」
そして俺も結界を張られたまま移動した。その道中監獄らしきものを見たけど・・・・あれあの扇の形って『網走監獄』に似てるけど!?ここレリックだよね!?え!?まさかここに入るの!?と驚きながら牢屋に入れられた。
ベリアル
「てか結界張ってるのに牢屋に入れなくても良くないか?」
なんてツッコミ入れたりしてるけど暇だな。そうだ!せっかくだし皆んなの様子を見てみるとしますか。
ベリアル
「バカな連中だ。結界を張っていようとアイテムが取り出せない訳じゃないんだよ。」
と俺は雑魚丸出しのセリフを吐きながら宝物殿を解放して『魔天外鏡』と呼ばれるB5サイズの四角い鏡を取り出した。操作はいたって簡単だ。場所をスクロールしてズームしてタッチすると、その場所の状況を見る事が出来る。さて先ずは集会所からだけど・・・・アイネとミオ、それに人間の姿だけど桃央もいるな。それとエルザにカズマ、キララにフォス?さらに他の冒険者の皆んなも・・・・てか全員いる!?しかも緊迫した空気だけど何があった?よし!サイレント解除して音声入れて聞こう。結界で外には音も漏れないし見張りはいないしな。と言うわけでスイッチオン!
アイネ
「エルザさん何とかならないんですか!!」
あれ?なんか揉めてる?
エルザ
「無理言わないで。捕まった以上何を訴えても聞いてくれないわ。」
スウェン
「とはいえ放っとけないだろ。相手が王様だろうが貴族だろうがレイを取り戻す!!」
アイネとエルザの話に入って来たブリーチカラーの立髪の男は槍使いの『スウェン・ボールド』。荒っぽい性格だが正義感が強く真っ直ぐな青年だ。彼の槍捌きは鋭く切れがある。
シャル
「私も助けに行きます!!レイさんいつも私の事助けてくれました!!今度は私がレイさんを助ける番なんです!!」
小柄で杖を持った眼鏡っ娘は回復術師の『シャルルホルストン・エンヴァーニャ・クリストン』。皆んなからは『シャル』と呼ばれている。優しくて臆病な性格だがここぞと言う時に立ち上がる勇敢な所がある。
リリアナ
「まあこっちはダハードとバックの仮も返さないと行けないし。あーしは全然問題ないよ。」
ギャル語で喋っている褐色の女性は『リリアナ・アンダーソン』。こんないい加減な態度だけど『魔女』と呼ばれる魔術師の上位に属する職業の持ち主だ。普段は支援魔法を使っているけど俺の見立てじゃそれが本命では無いと確信している。
リチャード
「俺も賛成!レイちゃん助けに行かなきゃ集会所の名が廃るっしょ!」
陽気なこの男性は弓兵の『リチャード・ネルソン』。その弓の命中率はエルフにも引けを取らない百発百中とされている。だが女遊びが酷くて問題になる事もある。
ライド
「皆んな落ち着け。」
体格のでかい男性が急に立ち上がった。彼は剣士の『ライド・オプティマスプライム』だ。リーダーシップがあり律儀で義理堅い性格だ。要は家のヘラクレスと同じだと言う事だ。でも『オプティマスプライム』なんて名字どっかのロボットアニメで聞いた事があるぞ!?
ライド
「エルザの言う通り真面に行っても相手にされない。作戦を立てる必要がある。」
なんか話を聞いてるとレイも捕まってるみたいだな。となるとこの網走監獄もどきにいるのかな?しばらくしたら様子でも見に行くか。
アナベル、ロバート
「アイネちゃん!ミオちゃん!」
突然ドアから二体のぬいぐるみの人形がアイネとミオを呼びながら入って来た。てかこいつ等、輝夜の百鬼夜行の所の『アナベル』と『ロバート』の呪いの人形コンビじゃないか!?何人前で正体バラしてるんだ!?
アイネ
「アナベル様にロバート様!?」
ミオ
「お二人共何してるんですか!?人前に正体を明かすなんて!!」
ロバート
「こっちのセリフだよ!!二人がいながら何してるのさ!!」
アナベル
「ベリアル様が誘拐されたんだよ!!怪しいローブを着た人達に結界に閉じ込められて連れていかれたんだ!!」
アイネ
「先生が・・・・。」
ミオ
「先生が・・・・ベリアル様が連れて行かれた!?」
待て待て!それ以上は言うな!!俺がベリアルだってバレちゃう!!
ライド
「アイネ。ミオ。どう言う事か説明しろ。」
あー・・・・・言わんこっちゃない。集会所の方はアイネとミオに任せて、とりあえずレイの様子を見に行くか。
ベリアル
「錬成魔法『アンデットトークン』作成。『スカルゴブリン』。」
死霊系の魔法『アンデットトークン』は、作成に必要な材料を使用してモンスタートークンを召喚する事が出来る。主に魂は入っておらず、召喚者の命令だけで動くが、ある魔法とのコンボでこんな事も出来る。
ベリアル
「次に黒魔法『スピリットディヴィジョン』。」
黒魔法『スピリットディヴィジョン』は、瀕死のモンスターに自分の魂の一部を乗り移らせる事で、そのモンスターの行動を本体から動かす事が出来る。つまり今の俺の魂の一部は魔王ベリアルからスカルゴブリンを通じて操って動かす事が出来るのだ。
スカルゴブリン
「さて行くとするか。」
結界を出て檻から出たのはいいけど何処から探すかな。
中央見張りを中心に扇型に第一通路から第五通路まで別れていて、無数の牢屋が設置されている。『網走監獄』自体見た事がないからわからないけど多分こんな感じなんだろうな。見張りがいないのも納得がいった。中央見張りの部屋の中に各通路を五人で別れて担当すれば複数人で一つの牢屋に立つ必要もない。しかも通路は見晴らしが良く、何かあれば直ぐに対応出来る。確かにこれは一筋縄では行かないようだ・・・・なんて言うと思ったか!!俺にはこの『ミラージュマント』あるから関係ない!!マントを羽織って姿を消して探すが最初に入った第三通路の奥の牢屋でレイを見つけた。体育座りして座ってるが暗い顔をしているな。
レイ
「ん?なんだ?」
あっ!こっちに気づいた。
スカルゴブリン
「ヤッホー!レイちゃん遊びに来たよ!!」
レイ
「いや・・・・誰ですか?」
スカルゴブリン
「私だ!私!」
レイ
「ベリアル!?」
やっと気付いたレイの顔は目にクマが出来ていて、酷い顔はしていたがまだ何もかも諦めた感じではなかった。
レイ
「まさか貴方も捕まったのですか!?」
スカルゴブリン
「まあそんな所だ。牢屋に居ても暇だし君の様子を見に来たのだが、どうやら心配なさそうだな。」
レイ
「そうですか!暇つぶしですか!貴方ならこんな所簡単に出られるのでしょうね!」
何拗ねてるのこの子は?
スカルゴブリン
「確かに私なら結界や牢屋は簡単に破って出られるがまだやる事がある。だから今はここを出る事が出来ない。すまないが君を助け出せない。」
エルフ
「貴方に助けて貰おうなんて思ってない!!アイネとミオはともかく貴方を認めた訳じゃない!!」
なに!?何怒ってるのさっきから!?そんなに怒鳴らなくてもいいでしょ!?
スカルゴブリン
「今の私に出来る事は僅かな間だけ君の側にいる事だ。」
俺は然りげ無くレイの所に行き、そのまま彼女の隣に座った。これが現実世界ならセクハラか痴漢扱いだけど異世界なら別に良いよね。
スカルゴブリン
「さあ!おじさんに何でも話してみなさい!愚痴でも不満でも何でも聞くよ!」
とは言ったが彼女は不満そうな顔でこっちを睨み付けた。多分レイが怒ってるのは、彼女を騙して冒険者になりすました事だと思うけどそれは俺にも事情があったし、それに正体がバレたとしてもその覚悟はしていた。まあセレーナが原因で早まったけど、これはこれで良かったのかもしれないな。
てかさっきからレイが黙ったままだけどなんか喋ってくれない!?
レイ
「私は子供の頃、孤児で修道院に暮らしていました。」
あれ!?いきなりレイの過去編突入!?
レイ
「私が赤ん坊だった頃から居たらしく、本当の両親すらどんな人だったか覚えていません。」
あら捨て子だったのね。レイも苦労してたんだな。
レイ
「ですが不思議な事に悲しくはありませんでした。修道院には私と同じ歳の子供もいましたし、シスターもとても親切で優しい人でした。あの頃がとても楽しかったです。」
なるほど、逆に両親の顔を知らなければ思入れがないから寂しくないか。だが本当の親が気になってるのは確かな筈だ。彼女が冒険者になったのも心の何処かで両親に会える事を願って旅をしているのかもしれないな。
レイ
「でもそんな幸せな日々は長くは続きませんでした。」
おっと!この流れだと修道院に何かあった的な出来事か!
レイ
「私が8歳の頃にシスターが老衰で亡くなり修道院は潰れてしまいました。他の仲間達も私より先にすっかり年老いて亡くなりました。身寄りが無かった私は修道院を独り立ちした唯一仲間の一人の『ガルド家』に引き取られました。その頃からでした。私がエルフ族と知ったのは。」
あ〜エルフ族って人間より長生きだから彼等の方が先に寿命で亡くなってもおかしくないよね?
レイ
「ですがそんな彼もこの世を去り私は10歳で『ガルド家』を離れました。まだ小さな子供だったリッターは寂しがり屋で私の服を離そうとしなかったけど、それでも『ガルド家』には迷惑をかける訳にはいかないと家を離れて冒険者となりました。」
と言う事は、レイはそれからずっと集会所にいたって事か!?だとしたらかなりの古株じゃないか!ギルド長になってもおかしくないぞ!
レイ
「それから私はずっと一人で戦って来ました。集会所の為、仲間の為に我武者羅にこの剣を振るって来ました。それでもまだ170歳の子供のままだ。」
あのすいません!!エルフの年齢基準がよくわからないのですが!?
それにレイの過去はわかったが?
スカルゴブリン
「君の話はわかったが要は何が言いたいの?」
レイ
「今の私には身寄りがいませんし知り合いもいない。どうやらここまでのようです。シスターやかつての仲間の所に行く時が来たのかもしれません。悔いがあるとすれば最後に話したのが貴方だったと言うくらいでしょうか。」
なんかそれはそれで腹立つな!てかレイの奴死刑を受け入れてる気じゃないだろうな!!
レイ
「ベリアル。私は今までいろんなモンスターと戦って来ましたが、貴方みたいなリッチは初めて見ました。貴方は魔王と呼べる生易しい生き物ではない。『巨人』だ。」
スカルゴブリン
「それは違うぞレイ。私は『阪神』が好きだ。」
レイ
「あの何言ってるのかわかりませんが人の話聞いてください。貴方みたいな化物見た事ねーって言ってるの!」
やれやれ、冗談は受け入れるけど覚悟は出来てるか。てかエルフ族の170歳って人間で言う所の17歳か?とんだ反抗期だな。なら大人の俺がしっかりと教えてやらないとな。
俺はその場で立ち上がりレイに一旦別れを告げた。
スカルゴブリン
「君の話と覚悟は理解した。だがルーベンスの二枚の絵を見てシスターやかつての仲間達のいる遠い国に行くにはまだ早過ぎるぞ!」
レイ
「何故ですか!?言った筈です!私には頼れる人なんていないんだ!!だからこのまま行かせて欲しい!!」
スカルゴブリン
「例え君に拒絶されようと私は君を諦めない。私は非常に我儘なのだよ。」
そう言ってスカルゴブリンはレイの前で崩れていき砂となって消えた。『アンデットトークン』は長時間活動出来ない為、一定時間過ぎるとその場で消滅するし、発動していた『スピリットディヴィジョン』も同時に無効になる。さてレイも元気そうだし、大幅な変更はあるけど早速計画を実行しますか。
ベリアル
「さてと、セレーナ達は第一通路の真ん中の牢屋か。ならその牢屋と集会所と『ペルーニャ村』に座標を設定してと。」
俺が今からやろうとしてるのは、宝具、能力、魔法のコンボ技を使って特定の場所に映像通信を送る荒技をやろうとしていた。この世界で成功するかわからないけど、これも実験だと思えばやらない訳にはいかない。その力に記された効果に限らず、ストーリー設定も考慮して可能性があるテキスト内容は全て使う!
ベリアル
「では始めよう。罠魔法『サーチブレイカー』!」
『サーチブレイカー』は相手の感知魔法を無力化する魔法で、主にプレイヤー同士でのバトルに使われる。先ずは俺の周辺に広範囲で設置する。
ベリアル
「召喚!『デビルアイ』連続召喚!!」
魔法陣から眼球の形をして悪魔の羽が生えたモンスターが三体召喚された。『デビルアイ』は偵察や探索に特化したモンスターだ。会話がバレないよう見張りを送るために召喚したのだ。
ベリアル
「門。」
そして『門』を開いてデビルアイをそれぞれ指定した場所に送り込んだ。
ベリアル
「補助黒魔法!『ミラーオペレートコミュニケーション』!!」
俺の目の前に六つの縦長の円形をした鏡が現れた『ミラーオペレートコミュニケーション』は複数のプレイヤーと直接会話が出来る魔法で、どちらかと言うとコミュニケーションツールに近いものだ。『アークエイル』じゃプレイヤーのみにしか発動できなかったが、この世界でプレイヤー以外に繋がる事ができる筈だ。何故ならストーリー設定にプレイヤーなんて文字は書かれていない、つまりNPCであるガイロスの皆んなにも繋がる筈だからだ。
ベリアル
「上手くいくといいが。」
しばらくすると三枚の鏡に何らかの映像が映し出されようとしていた。更に誰かの声も同時に聞こえ始めてきた。
アイネ
[ねえ!鏡に何か映ってるよ!]
アイネとミオだ!二人が映っているって事は集会所だな!
セレーナ
[何か映ったわ!]
信長
[やっぱり白骨死体の仕業だったか!]
セレーナに信長さんだ!どうやら元気そうだな。かなり驚いてるけど。
テレサ
[ベリアル様!聞こえますか!!]
ルシファー
[返事をして下さい!何故『ミラーオペレートコミュニケーション』を発動させたのですか!!」
バフォメット
[お二人共落ち着いて下さい。]
テレサにルシファーにバフォメットも映ってる!さて後は音声確認だけだな。
ベリアル
「全員私や他の者の声が聞こえるな。」
アイネ
[はい!ベリアル様の声も皆さんの声も聞こえますし、鏡に映っています!」
ベリアル
「集会所は問題ないな。セレーナ達の方は聞こえるか。」
セレーナ
[こっちも声が聞こえるし、鏡にも貴方の不気味な顔が映っているわ。]
ベリアル
「え?ハンサムって言った?」
セレーナ
[言ってないわよ!!白骨死体の顔なんて誰が良いと思うのよ!!]
ベリアル
「元気だね〜、さっきまでお兄さんの前で泣きべそかいてたのに。」
セレーナ
[貴方だってその兄様に捕まってるじゃないの!!]
あー・・・・それ俺から伝えたかったのに。
バフォメット
[ベリアル様が囚われの身に!?直ぐに全軍を率いてお救い致します!!]
ベリアル
「待て待て!先ずは私の話を聞いてからにしてくれない!?」
『ペルーニャ村』の方も問題は無いけど大騒ぎしているし、こっちの現状を伝える必要があるな。
ベリアル
「私からの朗報だが『サリン』との接触に成功した。そんでついでに捕まった。」
信長
[自分をエサにして食いつかせたがそのザマか。]
ベリアル
「その通りですが、マグナードと『ウロボロス』は結託していました。それだけでも大いに収穫はありましたよ。」
バフォメット
[ですがベリアル様!セレーナ殿も捕まっていては作戦続行は不可能かと!?」
ベリアル
「それは問題ない。当初の計画に戻ったまでだ。」
バフォメット
[では!]
ベリアル
「最初の計画通り、我がガイロス軍で強行突入する。」
セレーナ
[待って!兵士達に手荒な真似はやめて!彼等は兄様の言いなりになってるだけなの!!]
ベリアル
「最小限の被害は避けるが、負傷者は出る事は覚悟して欲しい。」
それに兵士達もそうだけど問題は一般人だ。騒ぎを聞きつけて野次馬が現場に来られても迷惑だからな。百鬼夜行の霊体化を解いて対処してもらうか。大騒ぎにならなきゃいいけど。
ベリアル
「輝夜!百鬼夜行全員に通達せよ!作戦開始と同時に霊体化を解除し、市民を絶対誰一人家から出すなとな!」
輝夜
[御意。]
これで一般人は何とかなるとして、後は集会所だな。
ベリアル
「さてアイネ、ミオ。」
アイネ、ミオ
[はっ!]
ベリアル
「この私とガイロスについて色々正体を話したそうだな。全ての説明は終わっているか。」
ミオ
[はい・・・・申し訳ありません!ガイロスの情報を喋ってしまって。]
ベリアル
「構わん。エルザ達に既に知られている時点で正体が明かされるのも時間の問題だったからな。」
ミオ
[ベリアル様・・・・。]
ベリアル
「それにそこのバカ人形共の所為でバレたのだからな!!」
アナベル、ロバート
[すいませんでした。]
それに信じてもらえるかどうか分からないし。
ライド
[アイネとミオを責めないでやってくれないか。問い詰めたのは私の方だ。]
ライドさんが出てきたか。この人なら話を聞いてもらえそうだな。
ライド
[それでお前がレイヴンでは無くベリアルとして何が目的だ。何をやろうとしている。]
ベリアル
「亜人族とガイロスの平和を取り戻す為!マグナードを・・・・撃つ!!」
なんてカッコ良くガッツポーズしたけど端折り過ぎて多分伝わってない!!
ライド
[なるほど話は読めた!]
え!?今ので全て理解したの!?
ライド
[南方にまで領土を侵略する計画は噂で聞いた事があったが、こうも早く進行していたとはな。]
うわぁ・・・・この人何者だよ。話が早くて助かるけど。まあいいや。早速本題に入らせて貰うか。
ベリアル
「では早速だが、今回は冒険者レイヴンとしてではなく、魔王ベリアルとして貴方方冒険者に依頼を申請する。」
ライド
[依頼だと?]
ベリアル
「そうです。報酬だが金銭は少し難しいですが、貴方方一人一人の望みを叶えてあげましょう。」
ライド
[なんだと!?]
ベリアル
「私の知識、時間、宝具など提供できるものであるならなんでも提供しましょう。」
『アークエイル』の金銭はこっちの通貨じゃ使えないから無理だし、これなら最低限の願いを聞き入れてやれるから問題ないな。
ライド
[それに見合う依頼と言う事か。内容を聞かせて欲しい。]
なるほど、それで決めると言う事か。それならライドさん、貴方達に託します。
ベリアル
「依頼内容は『冒険者レイ・ラナフォードとセレーナ・マグナード姫一行の救出』です。」
今のレイを助けられるのは他でもない集会所の仲間達だ。知り合いがいないって言っていたけど、ちゃんと仲間がいる事を伝えてあげれば彼女の心を解放してあげることが出来るかもしれない。
ライド
「君の救出はどうなる。」
ベリアル
「私なら気にしないでください。自分で脱出出来ます。」
ライド
[そうか。とは言え冒険者組合の許可無く動くのは我々にとって危険を伴う。下手をすればこの場にいる全員冒険者の称号を剥奪されてしまう。問題は彼等に気付かれずどう動くかだ。]
しまったぁぁぁぁ!!急な変更だったからすっかり忘れてたけどそうだったぁぁぁぁ!!正式な手続きが無きゃ冒険者は依頼を受けられないんだったぁぁぁぁ!!どうする!?ガイロスから戦力を削ぐ訳にもいかないし!だけどカッコつけといて今更引くってのもどうかと思うけどな。
受付係
[わかりました。ではその依頼を受理しますね。]
え!?いいの!?助かるけど大丈夫なのか!?確かこの国のギルド組合ってギルド連盟の組織下に入っているから、不正行為が見つかって監査が入るんじゃいか。
受付係
[組合の方からは私からお話を通して置きます。]
ライド
[ですが連盟から監査が入るのでは。]
受付係
[今回は非常事態ですし、監査が入るとしても軽い取り調べくらいでしょう。きっとこちらの事情をわかってくれる筈です。]
この受付係はそう言っていたが、この監査が切っ掛けで俺はこの世界で全てを捨てて国外に追放されるまでの状況に追い込まれた。だがこれはまだ先の話である。
ライド
[だそうだ。そこでベリアル。君に頼みがある。報酬の前払いを頼めるか。]
ベリアル
「構いませんが何が望みですか。」
ライド
[君達ガイロス軍の兵士をお借りしたい。俺達冒険者だけとなると、戦地に飛び込む危険な依頼だからな。その手に長けたプロが必要だ。]
なるほどな。冒険者って言わば義勇兵みたいなものだから、彼等を指揮できる者が必要だな。ならルシファー達に聞いてみるか。
ベリアル
「ルシファー、バフォメット。問題ないと思うが軍の戦力を多少削ぐ事になる。作戦に支障はあるか。」
バフォメット
[それは問題ありません。ですが四天将を含め、優良な人材から選抜するのはよろしくありません。三体魔神やガンダイラーのような者達は出来れば残したいです。]
ベリアル
「そうか。」
誰を向かわせるか吟味していた頃、『ペルーニャ村』ではある人物が名乗りを上げた。
カブト
「その役目、某に任せて頂けないでしょうか。」
昆虫軍団副大将にして七本槍が一人カブトだった。確かにガイロスの中じゃ俺やアイネとミオ、桃央の次にレイと接点があるとすれば、彼女と一戦交えたカブトぐらいだもんな。
ルシファー
「ですがカブト。貴方は獣人族や恐竜人を率いる役目がある筈です。それを放棄してまでエルフの冒険者を助けるのにはそれ相応の理由があるのでしょうね。」
いや誰でもいいんだけど!?そこまで厳しくしなくても良くない!?
カブト
「「ガイロスの中で昆虫軍団の某が最も戦場に長けている。」「兵は総大将に兵を任せておけばいい。」「帝のお役に立ちたい。」など理由なら幾らでも上げられましょう。しかし一言で表すなら『縁』でございましょうか。」
ルシファー
「縁?」
カブト
「さよう。我等昆虫軍団はこの村に向かう途中、冒険者に化を潜めたベリアル様達と遭遇し、某はその時ベリアル様と同行していたエルフの娘と、一太刀刃を交えた仲でございます。これも御仏の導きでしょう。それに何分小柄ゆえ忍び込むには打って付けかと思われます。」
ルシファー
「わかりました。なら貴方達のその『縁』大事にして下さい。」
カブト
「出過ぎた真似をして申し訳ございません。そして某の願いを聞き入れて下さったありがたき慈悲に感謝致します。」
てな事があって決まったらしい。カブトの縁って奴は見習わないといけないな。他人とコミュニケーションが取れなかった俺とは偉い違いだ。
ルシファー
[ではカブトをそちらに派遣します。]
ベリアル
「わかった。では早速だがカブト。直ぐに集会所に向かい、双子悪魔と合流してくれ。」
カブト
[お受けしました。ですが門は使わず、自らの足で向かいます。」
ベリアル
「その方がいいかもな。サリンが動いている今、迂闊な行動は控えた方が良さそうだ。だがわかっているな。」
カブト
「日の出前には到着しましょう。」
カブトの提案は中々良かったな。申し訳ないが魔法を使わずに向かって貰おう。
ベリアル
「ではライドさん。私の部下一名がそちらに合流します。後は彼の指示に従って下さい。」
ライド
[忝ない。]
これでレイ達の救出の手筈は済んだし、後はルシファーだな。
ベリアル
「ルシファー。私の代わりにお前が反乱軍の指揮を取れ。今度は断る事は許さんぞ。」
流石に今回は俺が不在だからルシファーに頼まないと無理だしな。
ルシファー
[以前の私なら断っていたかもしれません。ですが今なら断る理由がありません。自分への自信と支えてくれる仲間達がいますから。]
そうか・・・・。ローラン達と出会ったのが大きいな。この短期間で成長したなルシファー。ヤベ・・・・泣きそう。
バフォメット
[ですがベリアル様はどうなさるおつもりですか。]
そう、俺にはやらなければならない事がある。これは予想だが、マグナードが再び俺との謁見を求めてくるからだ。そしてその時間帯は最も人が少ない頃だ。
ベリアル
「それに関してだが、先ず作戦決行は明日の夜、その時に突入だ。救出部隊はその騒ぎに乗じて行動開始だ。恐らくその時間帯ならら私はマグナードと再び謁見する筈だから、居るとしたらこの城の『玉座の間』だろうな。」
ルシファー
[ではマグナードと同行するのですね。]
ベリアル
「なるべく奴の足止めをしとく。それまでに辿り着け。」
ルシファー
[受けたまわりました。必ずや成功させてみせます。]
ベリアル
「セレーナ達は冒険者達と一緒に戦闘終了まで安全な場所で避難しててくれ。」
セレーナ
[待って!私も兄さんの所に行くわ!]
ベリアル
「やめておけ。私達はマグナードを生かして置くつもりはない。残酷な光景を目の当たりにするぞ。」
いくら悪逆非道でも血の繋がった兄妹だからせめてマグナードの死に際だけは合わせないようにしよう。
ベリアル
「では皆さん、油断せずに行きましょう。」
これでやる事は全て終わったし、伝える事は全て伝えた。後は作戦開始の夜まで待つとするか。
受付係
[ベリアル様。こちらの呪いの人形ちゃん達はどうします?]
アナベルとロバートの事はすっかり忘れてた。
ベリアル
「集会所の置物として飾っといて下さい。」
アナベル、ロバート
[なんで!?]
輝夜
[戯け、我が君の正体を明かした罰じゃ。]
全くだよ!俺の安定な情報源が目立った所為で動きづらくなったよ!!
受付係
[では誰かが誤って触らないよう注意書きを添えて置きますね。万が一冒険者の方が不幸な事故に会ったら大変ですから。]
ベリアル
「よろしくお願いします。」
こうして俺は『ミラーオペレートコミュニケーション』を切ったと同時に鏡はその場で破れてしまった。上手い事作戦を伝えられたし、アナベルとロバートの件も済んだ事だ。俺も大人しくしてますか・・・・・あれ?
ベリアル
「何故彼女はアナベルとロバートが呪いの人形だと知っていたのだ?」
普通に考えたらアナベルとロバートの元ネタは俺達の世界にしか存在しない筈だ。何故彼女がその事を知っている。全部終わったら問い詰めてみるか。
ベリアル
「それにしてもまた暇になってしまった。」
それからしばらくして一夜が明けたが、日の出が登る前にカブトが集会所に到着した。
カブト
「ふんっ!」
だがカブトは何故か地面から出て来たのだ。まさか城壁の前から穴を掘って侵入したのか!?
カブト
「うむ。間違いない。双子悪魔の気配がする。ここが集会所だな。」
カブトが集会所に入ると、皆んな驚いて彼の方を振り向いた。まるで昆虫族を初めて見るような反応だった。椅子に座っていたアイネとミオは直ぐに立ち上がってカブトを迎えた。
アイネ、ミオ
「お待ちしておりました。カブト様。」
カブト
「うむ。出迎えご苦労。」
そしてライドさんが代表として挨拶しに来た。
ライド
「お初にお目にかかる。貴殿がカブト殿ですな。」
カブト
「お主が我等の依頼をお受けした冒険者とその皆々様ですな。帝の我儘を聞き入れて下さり礼を申す。」
ライド
「礼なら依頼を達成してからにしてくれ。それに私の我儘も聞いてもらった。だからお相子だ。」
カブト
「では遠慮無く其方等と共に歩む所存。宜しくお頼み申す。」
何か通じ合う所でもあったのか、二人は握手を交わした。そんな二人の間にエルザも混ざって来た。
エルザ
「久しぶりね。昆虫軍団の副将さん。」
カブト
「久方ぶりだエルザ・フォルテ殿。会談の席では不在の無礼をお詫びしたい。何分夜間の巡回だったのでな。」
アイネ
「カブト様とエルザさんってもうお会いしてたんですか!?」
カブト
「『ペルーニャ村』に向かう途中、冒険者に変装した帝と同行していた時に一戦交えた。だが彼女のお相手はコーカサスだったがな。」
リチャード
「じゃあ虫のダンナがレイちゃんの美しい髪を切ったのかい?」
カブト
「首ごと刎ねるつもりだったが見事に避けられてしまったよ。」
あれなんか不穏な空気になってるんだけど大丈夫なのこれ!?
カブト
「それはそうとお主等さっきから某を犬猫みたいに物珍しそうに見る出ない。見世物ではないぞ。」
と思ったらカブトが別の話題に切り替えた!?けど言われてみれば皆んな珍しそうにカブトを見ているな。こっちの世界では昆虫族っていないのかな。
ライド
「すまなかった。昆虫族は滅多に人前に姿を現さない為、皆んな見るのは初めてなんだ。だからしばらく我慢してくれ。」
カブト
「承った。では早速軍議に入ろう。」
カブトはそのままライドさん達と打ち合わせに入った。その後で皆んなで会話して集会所で寝てしまった。その日は集会所は定休日となったけど、皆んな夜まで待機していたと言う。
そして作戦当日の昼間、『ペルーニャ村』では部隊の編成を行っていた。そこに獣人族のキング・レオンカイザーがルシファーに頼み事をしていた。
ルシファー
「アコーディウスを私の配下に?」
アコ
「お父様何故ですの!?」
なんでもキングの娘である『アコーディウス・レオンカイザー』をルシファー直属の配下に移動させたいそうだ。その理由がキングから語られた。
キング
「俺達の村はアコの様な同世代の子供がいない。その所為かここに来てこの子は前より笑うようになった。俺達の様なむさ苦しい所にいるより、ルシファー様の元で使ってあげて下さい。」
ルシファー
「わかりました。部隊の編成はこちらで任せてますし、何より私から願い出たい所でした。アコはとても優秀ですし、何より馴染みやすい女性です。」
アコ
「ちょっ!?そんなに煽てても私ヘラクレス総大将の部隊から離れませんわよ!!」
ヘラクレス
「ワシは一向に構わん。寧ろ強硬な昆虫軍団よりルシファー様の元の方が彼女の為になる。」
なるほどヘラクレスはそう言う意見か。てかまた剥製に戻ってるし!?
キング
「アコ、お前もいい歳だ。そろそろ独り立ちしても良いだろう。」
アコ
「けどお父様!!」
キング
「見苦しい!!いつまで父におんぶと抱っこを繰り返す!!我がレオンカイザーはそんな甘ったれな一族では無いぞ!!」
アコ
「ですが・・・・。」
キング
「それにだ。俺の心配なら要らぬお節介だ。これからはお前の好きなように生きたらいい。」
ああ、娘さんはお父さんに甘えてたんじゃなくて、心配で一緒に居たかっただけなのか。いい娘さんじゃないの。
キング
「ルシファー様!家の娘を宜しくお願い致します。」
ルシファー
「はい。お預かりします。」
アコ
「勘違いしないで下さい!私まだ貴女を認めた訳じゃありませんわ!お父様立ってのお願いですの!」
やっぱりこの子ツンデレだな〜。アコはルシファーに任せるとして後は外の様子だな。どうなっているんだ?
ウィンダム
「今回の出陣、エルザ達も関わってるんだったよな。今度こそあの侍にパンツ見られた恨み晴らせるじゃん。」
レイアース
「それは言うな!恥ずかしいから!!」
セレス
「まああんな体制でカッコつけてたら見えない方がおかしいしね。もしかして誘ってた?」
レイアース
「違うわ!!」
広場のベンチに座っていたウィンダムとセレスがレイアースを揶揄っていた。てかエルザが関わってるって・・・・カズマの事か!?レイアースに何したんだアイツ!?下着が見えるかって話してたけど・・・・見たのか!?まさか見たのか!?俺ですら見た事ないのに!!
セレス
「まあどうせ子供向けの動物柄なんでしょうけど。」
レイアース
「なんで魔神の私がそんなかわいい下着履かなきゃいけないんだ!!その日はピンクの紐だったぞ!!」
ウィンダム
「紐ってお前・・・・見た目に似合わず大胆なの履いてるな。」
レイアース
「当たり前だ!赤やピンクは白よりも色気があるし紐はより大人っぽく見せられる!」
なんか段々女性の下着談義が始まったんだけど!?てか・・・・俺こんな話聞いてるけどこれって犯罪だよな!?
レイアース
「そう言う二人はどうなんだ?特にセレスは私を馬鹿にするくらいだから自信はあるんだろうな!」
セレス
「あら?私は普段自分のイメージカラーに合わせて水色よ。偶に白も着けるけど。」
レイアース
「じゃあウィンダムは?なんとなく緑か紫っぽいけど。」
セレス
「しかもTなら尚更ピッタリね。」
ウィンダム
「・・・・・。」
え?ウィンダムさん?顔赤くして黙ってるけどまさか図星なの!?
ウィンダム
「なんで・・・・わかったんだ。」
当たってたぁぁぁぁ!!顔を赤くしてたぁぁぁぁ!!
もうやめよう!!なんか盗撮、盗聴してるようで自分が犯罪者になって来た!!てかこれ完全にセクハラだよな!?よし!やめよう!今すぐやめよう!!そしてターシャの方を見てみよう!!
ギーラ
「あの・・・・・すみません。そう言う話は夜自室でしてくれませんか。」
レイアース、セレス、ウィンダム
「!?」
ちなみに余談だが彼女達の後ろに顔を赤くしたギーラがいたらしく、もちろん三人共顔を赤くして振り返ったそうだ。でそのギーラがどうなったかは想像に任せる。
その頃ターシャは、クトリとアルタイルと一緒にギーラの家の前にいた。ターシャは少し元気が無かったみたいだが何かあったのか?
ターシャ
「ベリアル様捕まったって聞いたけど大丈夫なんですか。」
俺の事心配してたのか!!なんていい子なんだ!!
クトリ
「全然心配しなくても大丈夫よ!ベリアル様が人間如きに簡単にやられる訳ないじゃない!」
え?クトリさん?
アルタイル
「その通りだ。ベリアル様は『アークエイル』最強のプレイヤーだぞ!そのお方が低レベルな魔術師風情に負ける訳がない。」
ドヤ顔でアルタイルまで!?いや確かにそうだけど責めてもう少し心配してよ!?バフォメットまでとは言わないからさ!!
クトリ
「あら?何かしら?」
ターシャ
「ギーラ?なんか急いでいるみたいだけど?」
アルタイル
「いやあれは追われているな。後ろに三体魔神が怒り狂ってギーラを追っかけている。何をしたんだアイツは?」
余談で済ませるつもりがこっちに流れてきた!?アイツ等何してるの!?
カオスブレイカードラゴン
「こんな所にいましたか。お嬢さん方。」
するとカオスブレイカードラゴンも混じって来た。様子を見るとみんなと馴染めてるみたいだな。
ターシャ
「カオスさん!どうかしましたか?」
カオスブレイカードラゴン
「実は新作のケーキが完成したので、お茶にお誘いしたんですが。」
は?新作ケーキ?
ターシャ
「そう言えばカオスさんの趣味ってお菓子作りでしたっけ!私もいいんですか?」
カオスブレイカードラゴン
「構わないですよ。作り過ぎたんで寧ろ食べて貰いたいくらいです。」
え!?『混沌竜王カオスブレイカードラゴン』の趣味がお菓子作りって!?そういや初めて会った時買い物袋を抱えてたけど・・・・中身ってお菓子の材料だったの!?
カオスブレイカードラゴン
「で、あそこの三体魔神の姉さん達はギーラの兄さんを追いかけ回して何してるんですか?」
やっぱりそこにツッコむよな。
カオスブレイカードラゴン
「三体魔神の姉さん方!ケーキが出来上がったんで一緒にどうですか!!」
レイアース
「食べる!!」
怒り狂ってたレイアースが一瞬で子供みたいな満面の笑みを浮かべてるんだけど!?心変わり早いな!?
レイアース
「と言う訳だギーラ!!食べ終わったらまた続き始めるからな!!」
ギーラ
「いいえ結構です!!そのままゆっくり
お茶を楽しんで下さい!!」
レイアース、セレス、ウィンダムはターシャ達と一緒に行ってしまった。ギーラも安心してその場を離れたが、その後ルシファーに呼び出されて女性陣全員にお説教を食らったと言う。あれ?ギーラが悪いのか?
ベリアル
「作戦前なのになんか緊張感がない奴等だな。」
ちなみになんで俺が皆んなの状況を把握出来たかと言うと、再び魔天外鏡を使って覗き見していたのだ。
ベリアル
「それにしてもまた暇になってしまった。」
まだ夜まで時間はあるし、とりあえず宝具や魔法の整理をする事にした。するとあっと言う間に作戦開始の時刻が迫った。
ルシファー
「では皆さん準備はよろしいですね。」
ルシファー達は既にレリックの国境前に来ていた。
カブト
「ではいざ!出陣の時!!」
カブト達集会所も出発した。
信長
「このまま白骨死体に任せたままでいいのか。」
セレーナ
「いいえ。大人しくしている訳にはいかないわ。」
セレーナ達の企ても動き出そうとしていた。
護衛兵
「おい出ろ!陛下がお呼びだ!」
ベリアル
「わかりました。」
そして俺も、予想が当たりマグナードの所に案内された。それぞれの思いを胸に遂に決着の時が訪れようとしていた。
次の話で最終話です。ベリアル達は無事にマグナードを倒し、平穏な地を取り戻す。その物語もフィナーレです。つまらなくても最後まで応援して下さい!