第八話『首脳会談』
マグナード・レリックからの依頼で『ペルーニャ村』の攻略部隊の指揮を任された俺、冒険者レイヴンこと魔王ベリアルは圧倒的戦力差で突撃しようとしてたが、ギーラとアルタイルの連携で先手を打たれ、こっちの部隊は壊滅寸前まで追い込まれた。俺達は騒ぎに紛れて本陣を脱出して村へ行き、ギーラの多大なる戦果を褒めた所でセレーナが参上し、自らその正体を明かして俺達に接触してきた。と言うのが前回のお話しである。
レイヴン
「これはこれは、ようこそお越し頂きました。セレーナ・レリック姫。」
セレーナ
「驚かないのね?」
レイヴン
「何を驚く事がありますか。私が丹精込めて認めた招待状を送ったのです。その内容を見て来ない貴女ではない。」
セレーナ
「全て貴方の手の内だったのね。」
レイヴン
「その通りです。さあ!そちらの護衛の方々も素顔を明かして貰いましょうか!」
彼等は俺の言われるままに、ローブを脱いでその素顔を明かした。その正体は、さっきまで一緒に本陣にいた戦国大名『織田信長』と新撰組副長の『土方歳三』に源頼朝の弟『源義経』に、フランスの聖女『ジャンヌ・ダルク』とキリスト教信者の『天草四郎』の異神達、それからセレーナが雇ったのか、冒険者からは『エルザ・フォルテ』と『シラヌイ・カズマ』にスケープゴートの『キララ』と未だ俺達に正体を明かさずローブを羽織っていた『フォス』と、俺達に冒険者についていろいろ教えてくれたエルフ族の『レイ・ラナフォード』とグリーンエルフの・・・・コーイチさん!?なんでコーイチさんまで!?
信長
「薄々感付いていたがまさか全部計画通りだったとはな。差し詰めさっきの戦闘もテメーが仕組んだんだろ?『神速』使うとは舐めた真似をしてくれる。」
レイヴン
「ギーラよ!!かの軍略科である織田信長さんからもお褒めの言葉を授かったぞ!!凄いじゃないか!!」
ギーラ
「え?この人そんなにすごいんですか!?」
信長
「ちょっと待てぇ!!あれお前の作戦じゃなかったのか!?まさかそのガキの仕業なの!?」
レイヴン
「いや〜私もビックリしましたよ!『ペルーニャ村』の防備を確認するだけだったのにまさかあんな返り討ちに合うとはお互い思いもしませんでしたな!!」
信長
「何喜んでるの!?」
セレーナ
「それはいいから!貴方も正体を現しなさい!!」
おっと忘れてた。
レイヴン
「では皆さん改めまして。」
このタイミングで!!換装!!いつもの衣装にチェンジ!!
ベリアル
「我が名はベリアル!魔王ベリアル!!『ガイロス帝国』皇帝陛下である!!」
決まった!!
コーイチ
「レイヴンさん・・・・。」
土方
「狸か狐かと思ったが落ち武者が化けてやがったか。」
ベリアル
「あのお宅リッチってアンデット知ってる?」
信長
「知るか!お前なんざ白骨死体で十分だ。」
は・・・・白骨死体!?
レイ
「レイヴンさん・・・・いやベリアル!貴方は私達を騙していたのか!?」
ベリアル
「まあ最初は正体知られたくないからそのつもりだったけど、後々聞いたら亜人族の入国禁止令が出されていたから、人間として冒険者やるしかなくね?」
レイ
「まあ、そうだけど。私は元々レリックの住人だからいいとして。」
信長
「なに言い包められてんだ嬢ちゃん。」
実はレリックには『亜人族入国禁止令』と言うのがある。昔の先代国王は亜人族を受け入れていたが、マグナードが王になってからその法律が決定された。まあどうしてそうなったのかその経緯は後でセレーナに聞くとするか。
レイ
「ならアイネとミオも・・・・。」
彼女に名指しされたかのように二人は俺の側に来た。
ベリアル
「彼女達は双子悪魔と言って二人で一体の悪魔で私の部下だ。二人は人間に非常に近かったから潜入するには打って付けだったぞ。」
レイ
「そうか・・・・なら二人から聞いた話も全部作り話だったのか!!」
アイネ
「待ってレイさん!!違うの!!」
レイ
「何がだ!モンスターに村を襲われて両親を亡くしたなんて全部嘘だったんじゃないか!!」
ベリアル
「異議あり!!」
レイ
「なんだ!?」
ベリアル
「確かに話は少し盛っているが!これにはちゃんと実話が存在するのだよ!!」
そう。双子悪魔にはちゃんとしたエピソードが存在する。
その昔、『アークエイル』の各エリアの一つ『大都市』のエリアに双子の姉妹とその母親が暮らしていた。その親子は、裕福な家庭で幸せな毎日を送っていたがそんな時間は長くは続かなかった。
その日の夜は、外食した帰り道に近道をして人気の無い路地裏を歩いてしまい、そこで事件は起きた。『アークエイル』の最恐の魔人にして『十傑魔人』の一人『ジャック・ザ・リッパー』に目をつけられ、親子はその路地裏で無残な死を遂げた。母親は姉妹を守るようにして横たわっていたが、その願いは叶わず姉妹も殺されていた。
あれから長い年月が経ちその路地裏である連続殺人が起きていた。路地裏に逃げ込んだ殺人犯が殺される事件が起きていたのだ。そしてある日の夜、一人の殺人犯が逃走中にその路地裏に逃げ込み、数人の警官が追い込んだ次の瞬間、その殺人犯はいつのまにか殺されていた。殺したのは二人の女の子だったと言う。だがその女の子は異形な姿をしていて見た目は人間だが悪魔のような羽根と尻尾が生えていたのだ。すると彼女達は警官達にこう問いかけた。
アイネ、ミオ
「お前がジャック・ザ・リッパーか。」
彼女達は悪魔となってもジャック・ザ・リッパーに復讐する為さ迷い続けていた。そしてここから始まった『最恐!さ迷い続ける双子の悪魔!!』が『アークエイル』最後のイベントとなった。まあこれはいいとして、俺は二人のエピソードを語った後にその場にいた全員の顔が青ざめていた。
リリィ
「十傑魔人!?」
コーイチ
「しかもジャック・ザ・リッパーってあの『斬り裂きジャック』ですか!?」
ローラン
「私も聞いた事がある!!この世界で危険視された十人の魔族がいる伝説を!!あれって本当に実在したの!?」
ルシファー
「実在するも何も、現に貴方の目の前にいますよ?」
ローラン
「え?あのルシファーさん?何怖い事言ってるの?」
『十傑魔人』は『アークエイル』で言うところの違反モンスターで、攻略出来ないほど無茶苦茶な設定を加えた所為で、ユーザーから苦情を受けたモンスターの事だ。いつしか『十傑魔人』なんて呼ばれるようになり、彼等は極稀に出現するようになった。そしてここにも元十傑の四天将がいた。
アイネ
「あのベリアル様!四天将の方に十傑所属がいるのですか!!」
ベリアル
「いるぞ。直ぐそこに。」
輝夜
「ふふふ・・・・なんとも懐かしい響きよの。まあ当時は第十席だったがな。」
すると輝夜が突然前に出た。やっぱり昔を懐かしんでたのか、いつもより不気味な笑みを浮かべながら笑っていた。
輝夜
「そこの侍の小僧。」
カズマ
「なんだ?」
輝夜
「『倭の国』の遥か南に『筑前』の国があるじゃろ?」
カズマ
「それがどうし・・・・っ!?まさか・・・・『犬鳴村』か!?」
輝夜
「如何にも。『輝夜姫』は我が君から頂いた真名。種族名は『鬼姫』と言う。」
『鬼姫』は『悪鬼』の最終進化形態で、自分より下の『悪鬼』『怨霊』『悪霊』を率いる事が出来る統率力の取れた妖怪だ。特に俺と出会う前の輝夜は『犬鳴村』の長にして、十傑魔人第十席の地位に就いていた。その為『輝夜』の百鬼夜行は『アークエイル』ではこう呼ばれていた。『犬鳴百鬼夜行』と。
カズマ
「『犬鳴村』の長で『十傑魔人』の第十席とはな。そんでおまけにベリアル配下の四天将か!」
輝夜
「ほう?やはり『犬鳴村』のおとぎ話はお主のような小童にも伝わっておったか。だが安心せい。既にレリックは妾が率いる百鬼の住む都と化した。もはや民の住む家々には、妾の『犬鳴百鬼夜行』が取り憑いておる。我が君の命があれば一斉に瞬殺できるぞ。」
セレーナ
「もう喉元を向けられてたのね。」
セレーナ達は『犬鳴』がどういうものかわからなかったが、危険な存在という事は認識していたのか身の毛のよだつ寒気に襲われていた。
フォス
「あの気配はお前の部下達だったのか。だけど妖怪と言えど人目に付かず隠れるのは無理だ。」
輝夜
「それが我等『悪霊』の能力『霊体化』じゃ。悪魔祓いと陰陽師以外は感知出来ぬ筈だが、お主だけは僅かな気配を感じ取った。」
言われてみれば、霊体化を感知する能力や魔法は『アークエイル』には無かったけど、こっちの世界じゃどうなんだろ?国家直属の宗教団体組織『サリン』の悪魔祓いの件もある。『シャガの大森林』の悪魔達を全滅させたのもそいつらだろうし、もしそんな能力があるなら今後の百鬼夜行の行動を制限しなきゃいけないな。
エルザ
「話は終わったかしら?」
エルザ?
エルザ
「ファイヤーボール!!」
え!?なんでこっちにいきなりファイヤーボール!?
エルザ
「なに!?」
ファイヤーボールを打ち払ってくれたのはテレサだった。けど何故いきなり攻撃なんかしてきたんだ?やっぱり冒険者としての信頼を俺が裏切ったからか?それとも『ペルーニャ村』を占拠したからか?いや!それはエルザ自身も納得していたから問題はない筈だ。なら何が原因だ?
セレーナ
「エルザ・フォルテ!何をしているの!!私達は戦いに来た訳じゃないのよ!!」
エルザ
「ごめんなさい。貴女の依頼を受けたのは私もこの村に用があったから。でも正確には・・・・ベリアルに用があったのよね!!」
え?俺に?何かしたか?
テレサ
「あまり騒ぐようでしたらこちらも手段を選びません。ベリアル様に刃を向けた報いは償ってもらいます。もし暴れるようでしたらこの場にいる全員で貴方方を殲滅しますがよろしいですよね。」
え?テレサさん!?なんで戦う気になっているの!?
バフォメット
「構いませんよ。このスケープゴートには今すぐ消えて貰いたいくらいですから。」
キララ
「ヤギなんかボコボコにしてやるもんね!!」
レイアース
「お前も覚悟は出来てるよな?エロ侍!」
カズマ
「げっ!お前は!!」
レイアース
「見物料はその体で払って貰うからな!!」
カズマ
「待て待て!!あれは事故!!てかお前から見せてきたんだろうが!!」
え!?何?なんでこっちも戦う気になってるの!?ストップ!!ストップ!!本日の戦闘終了でしょ!!日も暮れてるし!やめ!やめ!
ベリアル
「静まれぇ!!」
俺の一声で全員殺気立った闘志が一気に引いていった。全くどいつもこいつも直ぐ暴力で解決する!これは友達になる必要があるようだな!
ベリアル
「全軍に告ぐ!向こうが無礼な振る舞いをしてもこちらから反撃はするな!!」
バフォメット
「ですがベリアル様!この状況下では無理があるかと思われます!!現に汚らしいスケープゴートがいるのですよ!!」
ベリアル
「それお前の私情だよな!?」
こっちも向こうも話し合いで済ませようとしてるのに!?しかもバフォメットとレイアースは完璧私事だし!!頼むから大人しくして!!
フォス
「安心してくれ。僕達はお前に奪われた物を取り返しに来ただけだ。」
フォスがまで出しゃばって来たけど何をどう安心しろって!?そっちもお願いだから大人しくして!!
するとフォスはローブを突然脱いで正体を明かした。人間?いや石像ぽいけど?ゴーレムか?でも髪とか爪とか緑色に光ってる・・・・嫌な予感が。
フォス
「僕は『フォスフォフィライト』。『ジュエリーゴーレム』の魔術師だ。」
いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
と俺の中でトラウマスイッチがONになった。忘れもしないあの悪夢のような徹夜地獄を。
ルシファー
「ベリアル様!お下がりを!!」
ルシファーも気づいたのか俺の盾になるように前へ出て来た。
ベリアル
「第一警戒態勢!!いいか絶対にこっちから攻撃するなよ!!間違ってもな!!」
言われるがままに、ガイロスの兵達は慌てて配置に付いた。
ローラン
「ジュエリーゴーレムって何?」
リリィ
「石像族の中で唯一魔法に特化した一族です。ですが人前に姿を現わす事はなく、幻のゴーレムと呼ばれていましたが、こんなところでお目にかかれるとは思いませんでした。」
アコ
「それはわかりましたけどあの人達なんであんなに怯えてますの?」
そりゃビビりますとも!!何せジュエリーゴーレムにはトラウマがあるので!!
『フォスフォフィライト』。属性は『光』。種族は『宝石』。職業は『魔術師』。
その名の通り、白い肌以外は、髪も瞳、まつ毛や眉毛、更には口の中や爪の色迄もが、フォスフォフィライト特有の薄緑色をしている。衣装は冒険者が着るような皮鎧だ。
本来『アークエイル』の宝石は、ひし形の形をした結晶体が浮遊しているモンスターだが、こっちの世界じゃ人型の彫刻が動き出したような形をしていた。
そして何故俺達が彼に怯えてるかと言うと、『魔法石の指輪』の素材集めでフォスフォフィライトの欠片が必要だったので、『アークエイル』の『グランド山脈』にある隠れマップで『宝石の国』と言う所まで行きフォスフォフィライトを討伐のため早速戦闘を開始した俺達だったが、宝石の魔法と再生能力さらにMPが高すぎて対抗できなかった。当然俺達は城まで撤退して対策を立て直そうとしたがこれで終わりではなかった。宝石達が『ガルバトロス城』まで攻めて来てそこからは地獄の始まりだった。長時間の戦闘の末、フォスフォフィライトの欠片は手に入ったがその代償はデカ過ぎた。
フォスフォフィライトを倒すのに、こちらの備蓄していた回復薬は僅か数分で底を尽き、課金して回復薬を購入していたが、その被害総額はボーナスとその月の給料全部と貯金していた約120万円を回して約200万円近くも損失を出してしまった。
さらに掛かった時間は徹夜込みで丸二日も使ってしまった。しかも平日のど真ん中だったから当然会社は無断欠勤してしまいクビは免れたものの、しばらくは雑用の仕事しか回して貰えなかった。
普通なら諦めて中断すれば良いと考えるが、当時の『アークエイル』でそれは違反なので、規則を破れば運営側からアカウントを強制削除されてしまい、さらに再度のアカウント作成も禁止されているため、もしやってしまえば規則違反として罰金が課せられてしまうのだ。俺もこのゲームには課金していたので今までの努力を無駄にしたくなかったから引けなかったのも理由の一つだ。ならゲームオーバーって考える人もいるけど、それはそれで二度とログインする事が出来なくなる。だからユーザーから行き過ぎと言う苦情が殺到したため、その後の改正から安心してゲームを楽しめた。
だが俺にとっては最悪の黒歴史とも言っていい暗黒時代だった。
エルザ
「なーんか知ら無いけど今が叩き込みね♪」
何ラッキーチャンスみたいに悪巧みな顔してんだあいつ!!
エルザ
「さあ!フォスが暴れる前に渡した方がいいわよ!!」
汚ねー!!フォスフォフィライトを脅しの道具に使いやがった!!それにしても、俺エルザから何を取った?全く思い出せないのだが・・・・あっ!『テポドンの遺跡』で双子悪魔が見つけたあの竜のエンブレムか!?
ベリアル
「なるほどな。やはりあのエンブレムはそれ程までに大事なものか。それも世界の命運を左右する代物か。」
エルザ
「それをわかっているなら返しなさい!!あれは貴方が扱える物ではないわ!!」
ベリアル
「なら尚更返す訳にはいかないな。それにあれは我が居城の科学班に預けて鑑定してもらっている。もしあれが私の為に役立ってくれるなら・・・・大いに活用させて貰うぞ。」
エルザ
「悪魔め。」
ベリアル
「褒め言葉として受け取っとくよ。ククク・・・ハハハハハ!!」
クリスティーナ
「何変な笑い方してるんですか?気持ち悪い。」
すると突然城にいるはずのクリスティーナが現れた。多分門を使って村にきたのだろう。人が気持ちよく高笑いしてるのに邪魔しやがって!!
ベリアル
「何か用かクリスティーナ。」
クリスティーナ
「例のエンブレムの鑑定が終わったので、その結果報告をしに馳せ参じました。」
ベリアル
「そうか・・・・それは丁度いい。」
よし!一気にエルザを追い詰めるぞ!!
ベリアル
「ではクリスティーナよ。この場にいる全員に伝えよ!」
クリスティーナ
「えーでは報告させてもらいます。鑑定の結果この宝具は。」
ドキドキ!ワクワク!
クリスティーナ
「カオスブレイカードラゴンの封印を開ける鍵と判明しました。」
ベリアル
「そうかカオスブレイカードラゴンの・・・・えっ!?」
え?カオスブレイカードラゴン?俺が唯一『アークエイル』のイベントで取り逃がしたあのカオスブレイカードラゴン!?
ベリアル
「カオスブレイカードラゴンって?あのカオスブレイカードラゴン?」
クリスティーナ
「ええ。『混沌竜王カオスブレイカードラゴン』。その封印を開けるための鍵です。」
よっしゃぁぁぁぁ!!ここに来てカオスブレイカードラゴンの復刻イベント来たぁぁぁぁ!!
ベリアル
「エルザ・フォルテよ。ごめん!やっぱ返すの無理!!」
エルザ
「はぁ!?」
なんか皆んな俺の発言にびっくりしてるけど、まさかカオスブレイカードラゴンが世界を滅ぼす竜王とか勘違いしてるのか?
六角
「ちょっと待った頭!!あんたカオスブレイカードラゴンをどうするつもりだ!?」
ベリアル
「どうするって?ゲットしに行くけど?」
リリィ
「無礼を承知で意見具申します!カオスブレイカードラゴンを手なづけるのはお辞めになった方がよろしいかと!!」
ベリアル
「え!?なんで!?折角のチャンスなのに!?」
リリィ
「あれは世界を滅ぼす竜王です!!ベリアル皇帝陛下の野望を妨げる敵とも言えるでしょう!!」
ベリアル
「君達さっきから聞いてるとそれ偏見だよ!!」
六角
「はぁ!?」
リリィ
「はい!?」
エルザ
「貴方はカオスブレイカードラゴンがそうでないと言うの!?」
ベリアル
「カオスブレイカードラゴンを含む『七第竜王』は世界の崩壊や生命の絶滅を告げる事でも、自ら手を下す事でも無い。」
少なくても『アークエイル』では『七第竜王』のドラゴン達は世界のバランスを保つ為にそれぞれ使命がある。そして彼等には規則とも言うべきある掟があったからだ。
ベリアル
「『破壊による創造と再生』だ。彼等は崩れた世界バランスを修正する為、一度破壊し再生する言わば災害そのものなのだ。因みにカオスブレイカードラゴンは国の政治経済が原因で生まれた人間の負の感情を浄化する為、国そのものを破壊する使命がある。」
エルザ
「そんなのどう信じろと!?」
ベリアル
「確かにこれはあくまで『アークエイル』の話だ。リリィの話が本当なら直ぐに対処しなければならない。エルザよ、私がお前の無念を晴らしてやろう。カオスブレイカードラゴンの問題解決に協力してくれ。」
エルザ
「貴方があの魔竜をどうにか出来るとでも。」
ベリアル
「私も昔、『ギルド連合』の妨害でカオスブレイカードラゴンを逃してしまってな。どうだろう、ここはお互いリベンジマッチと行かないか。」
エルザ
「いいわよ。貴方を存分に利用させてもらうわ!」
ベリアル
「それで構わない。だがら矛を収めてくれ。」
エルザ自身納得していないみたいだけど、カオスブレイカードラゴンを捨て置く訳にはいかない。さて、そろそろセレーナとの会談を始めるか。
ベリアル
「ここでの立ち話が長過ぎました。ではセレーナ姫!首脳会談を始めましょう!!」
やっと俺達はギーラの家に入る事が出来た。なんで前座だけでこんなに時間が掛かるんだ?向こうも俺の正体に驚いてたけど、こっちはカオスブレイカードラゴンにフォスフォフィライトだもんな。もう驚きの連発だったよ。そこでまたしても俺は驚きの光景を見た。ヘラクレスが鎖で縛られた状態で剥製になってたからだ。
ベリアル
「ヘラクレス・・・・お前何してるの?」
ヘラクレス
「詳しくはルシファー様からお聞きください。」
ベリアル
「説明して貰おうかルシファー。」
ルシファーの話によると、俺が主人と気付かずヘラクレスが斬りかかってしまい、その事をルシファーに報告したらこの惨事になっていたと言う。まさかあの不審な亜人族の正体がヘラクレス達とは俺も予想外だったけど、あれはあれで怪しまれずに済んだから良しとしたんだけどな。
ベリアル
「ルシファー。ヘラクレスの謀反は今回の計画に含まれるものであるから問題はない。よってヘラクレスは無罪釈放とする。」
ルシファー
「それはご無礼を致しました。至急ヘラクレスの釈放処置に取り掛かります。」
それにこんなのが有ったんじゃ落ち着いて会談も出来ないしな。
エルザ
「その件なんだけど貴方そこの虫に殺されそうになってなかったっけ?」
レイ
「それに貴方の剣を見て激昂して必殺技まで出していませんでしたっけ?」
アコ
「誰がどう見ても殺しに掛かってましたわね。」
ジュラシック
「確かにな。」
キング
「あれは本気だったな。」
そういや敵味方問わずここに当事者がいたんだっけ?ヘラクレスはあの鎧で俺だって気付かなかったしな。あれは傷ついたな。
ベリアル
「だがヘラクレスはあの時私だって気付いてくれなかったから、訂正して作戦開始までしばらくはそのままだ。」
ヘラクレス
「なんと無慈悲!!」
すまんヘラクレス。俺の顔を立てると思ってもうしばらくそうしてくれ。
ベリアル
「では皆さん席について下さい。」
お互い向かい合うようにして座った。席についたのは、セレーナとエルザと異神達だった。
エルザ
「私がこの席に座る理由がないのだけど?」
ベリアル
「そんな事はない。君はその席に座る権利があるのだ。」
そして対する俺達は、俺とギーラ、四天将の三人と剥製にされているヘラクレスだった。
信長
「なあ、あの虫やっぱ降ろしてくれんか?気が散る。」
ルシファー
「それは出来ません。うっかり飛んで逃げられたら困りますし。」
そして会談が、始まろうとしていた。
ベリアル
「けどその前に!!」
セレーナ
「まだ何かあるの!?いい加減前置きが長過ぎるんだけど!?」
ベリアル
「気持ちはわかるけどあれ放っといて会談なんて出来ないでしょ!?」
もう一つ片付けなければならない問題があった。
アレイン
「おかわり!」
クリスティーナ
「はいはいそんなに慌てないの、誰も取らないんだから。もっとよく噛んで煮付けもしっかり食べなさい。」
何故か会談の席の近くで畳敷いてちゃぶ台置いて子供達にご飯を食べさせるクリスティーナの姿があった。
ベリアル
「何子供に餌付けしてんだゾンビ母ちゃん!!」
クリスティーナ
「何ってもう夕飯の時間ですよ?ベリアル様はこんなかわいい子供達を飢え死にさせろとでも言うのですか!?」
ベリアル
「いや会談の席でやらなくてもいいっすよね!?てかロリコンも大概にして下さいっす先輩!!」
クリスティーナ
「ロリコンではありませんフェミニストです。私は幼気な少女に手を出しているのではない、手を差し伸べているのです。」
ベリアル
「いやもう何言ってもロリコンにしか聞こえないっす!キメーっす先輩!!」
クリスティーナ
「そう言いますけど、彼女達の食事場所取ってるのベリアル様達なんですよ?」
え!?そうだったの!?
ベリアル
「アルタイル。出来れば、会談の場を設ける施設の建設も頼む。」
アルタイル
「了解しました。」
ベリアル
「クリスティーナは子供達を連れて、ギーラの部屋で食べてくれ。ギーラもそれでいいな?」
ギーラ
「俺は構いません。」
クリスティーナ達はギーラの部屋に移動し、やっと会談を始められるようになった。
ベリアル
「さて、お待たせしました。セレーナ姫。」
セレーナ
「本当よ。デートの約束に遅れてきた彼氏を待つ心境だったわ!」
ベリアル
「なんかすいません。」
デートの時間に遅れてきた彼氏の心境ってこんな感じなのかな。まあそれはいいとして早速始めるか。だけどその前に俺達の事を知って貰わないとな。
ベリアル
「さて、お話を始める前にまず我々の事について説明しましょう。」
俺はセレーナ達に『アークエイル』の事やこの世界にやって来た経緯、そして今後の目的については全て話した。それと俺個人の事も話したいけど・・・・ゲームの説明をしても理解してくれないしどうするかな。
ルシファー
「ですがベリアル様は『アークエイル』の住人ではありません。」
セレーナ
「どう言う事?」
ルシファー
「ベリアル様は『アークエイル』とは別の世界から転移した異世界人なのです。ですがそれは本来の世界の姿では無く、私達の世界のモンスターや人間に変換され召喚されるのです。その異世界人を私達はこう呼んでいます。『アークエイルプレイヤー』と。」
さすがルシファー!!ゲームの説明をこの世界の言葉に置き換えて説明すればいいのか!!いちいちゲーム用語の詳細を説明しながら話すと時間かかるけど、無理に教える必要ないもんね!
ルシファー
「『アークエイルプレイヤー』が私達の世界に召喚するには『アークエイル』に存在する天界の『ウンエイ』と呼ばれる組織の許可が必要なのです。それが承諾された際『アークエイル』に召喚されるのです。それが『アークエイルプレイヤー』だけが持つ固有召喚魔法『ログイン召喚』なのです。」
ルシファーさん!?説明自体は大体そんな感じだけどログインは魔法じゃなくてシステムだからね!!俺達そんな万能な人間じゃないから!!そもそも現実世界に魔法は存在しません!!
ルシファー
「ちなみに彼等が元の世界に戻る際、帰還魔法『ログアウト召喚』も持ち合わせています。」
ログアウトも魔法じゃなくてシステムなんだけど!?
セレーナ
「なるほど、貴方達の事は何となくわかったわ。」
納得するんだ!?まあ今はそれで良しとするか。話を進めなきゃいけないし。
ベリアル
「では私達の詳細な説明は以上ですが、それを踏まえてここに来た目的を説明して頂きたい。」
輝夜達の情報が確かなら、セレーナ達の目的は一つだ。
セレーナ
「私がここに来たのはただ一つ、我が兄マグナードから王位の座を奪う為、貴方達と同盟を結ぶ事よ。」
やはり同盟が目的だったか。
セレーナ
「先程の話を聞いた限り、貴方方はこの地に平穏をもたらす事が望み。そして私達はマグナードから王の権利を剥奪するのが目的よ。利害は一致するわ。」
ベリアル
「君が反逆を企てている情報はこちらでも掴んでいたから同盟の話を持ち込んでくる事は読んでいた。」
セレーナ
「全部お見通しって訳ね。なら話は早いわね。それで返事は。」
ベリアル
「異論はない。だが条件がある。」
セレーナ
「レリックが欲しいなら貴方が王になっても構わないわ。」
は?
セレーナ
「ただし!国民には悪いようにしない事!」
やっぱり魔王ってそう言うイメージなの?いやいや!!それが目的じゃないし!!早とちりしすぎだって!!
ベリアル
「待て待て!!何か勘違いしてるようだが、私はレリックを支配するつもりは無い!」
セレーナ
「はぁ!?魔王なのに!?」
ベリアル
「いや魔王だからってなんでもかんでも侵略すると思ったら大間違いだよ!?」
セレーナ
「おかしな魔王ね。人間の国を支配したがるのは魔王の特権じゃ無いの?」
ベリアル
「後先考えずただ国を手に入れるのは愚か者の考えだ。私はそんな間抜けでは無い。」
セレーナ
「貴方変わってるわね。」
ベリアル
「それと君の発言はそこの先代女王の無礼に等しい言葉だぞ。」
セレーナ
「何を言っているの貴方は?」
ああ・・・・この様子だと気付いてないな。まあ無理もないか。今まで子孫に隠して冒険者を続けてきたもんな。俺からネタばらしするしかないか。
ベリアル
「先程の次期女王の話を聞いてどう思ったエルザ・フォルテ。いや・・・・三代目レリック女王『マリア・カデンツァ・レリック』。」
エルザ
「貴方の方がよっぽど不愉快な発言よ。」
もちろんネタばらししたら全員エルザの方を振り向きました。そりゃ驚くよな。
レイ
「エルザ・・・・。」
キララ
「エルザ様って女王様だったの!?」
カズマ
「おいフォス。お前エルザの事知っていやがったな!」
フォス
「まあ500年前からの長い付き合いだからね。」
やっぱりフォスとは昔ながらの古い付き合いだったか。まあそれでもみんな驚いてるけど。
エルザ
「よく調べたわね。」
輝夜
「フォスに関してはわからなかったが、お主は色々面白い経歴が出てきたぞ。」
輝夜からエルザの事が語られた。今から約500年前の話エルザことマリア・カデンツァ・レリックはレリック共和国三代国王として国を治めていた。しかも彼女は魔術師の最高上位の『大賢者』の職業に就いていた。
当時、魔物との戦争状態だったレリックは終戦後の復興処理に明け暮れていたが、エルザはそのタイミングで国王に就任しされた言わば当時の官僚供は全部彼女に丸投げだった。だが彼女は自身の魔法や錬金術の知識を他の術者達に提供し、国は復興と同時に大きな経済発展を遂げた。国民は彼女を称え、さらに厄災をもたらすカオスブレイカードラゴンから国を守った英雄と評され、正に歴史に残る女王陛下とされた。
だが彼女の最後は悲惨なものだった。マリアの親戚でもあり、四代目レリック国王『ランドバル・カタストロフ・レリック』が彼女にあらぬ疑いをかけ罪人にしてしまったのだ。そしてマリアを信頼していた国民は何故かランドバルに味方しマリアは『冷酷な魔女』と異名をつけられ、遂には十字架に掛けて火炙りの刑で処刑された。
だが、彼女は死ぬ間際に『賢者の石』を使い蘇生魔法を使って不老不死として復活したが、身体の30%が消失してまい今の少女の身体となってその後姿を消した。そして今日に至るまで彼女の経歴は抹消され名前だけの女王となった。
ベリアル
「昔はあんなにナイスバディだったのに今じゃこんな貧相な体に・・・・。」
エルザ
「燃やすぞ白骨死体!!」
輝夜
「胸も尻もたわわに実っておったのに、今じゃ男かも分からぬ板切れになって・・・・。」
エルザ
「ちょっとはあるわよ!!少しは膨らんでるわよ!!これでも女らしさは持ってるわよ!!」
セレーナ
「どうでもいいから!いい加減会談を進めなさい!!」
はい!!すみませんでしたぁ!!
ベリアル
「さて、セレーナ・レリック。私からの条件なのだが。」
話を戻しますか。彼女と交渉しない事には物語が進まないからな。
ベリアル
「当然、君が女王としてレリックの政権を治める事、それとガイロスとの同盟を希望する。」
セレーナ
「貴方と同盟を?」
ベリアル
「そうだ。その友好的証としてレリックに我が『大使館』の設立を希望したい。」
セレーナ
「タイシカン?」
信長
「なんだそれは?」
そうか、この世界には大使館制度が存在しないのか。
ベリアル
「大使館とは、各国との連絡や入国の手続きなどを行うための使いを、同盟している国同士に滞在させるための施設です。これなら政など、迅速に対応する事が出来ます。」
信長
「なるほど、使者を送るよりかはそっちの方が効率がいい。」
ベリアル
「だが我がガイロスにそちらの大使館は必要ない。」
セレーナ
「何故?」
ベリアル
「我がガイロスは軍事国家の為、全員が兵隊なんだ。もしそちらに何かあれば、我が軍から増援を送ると約束しよう。」
セレーナ
「なるほど・・・・確かに悪い話ではないわ。こちらはそれで構わないわよ。」
よし!後は作戦会議だな!
ベリアル
「では次にレリック居城の襲撃作戦ですが既に我が軍は貴方方との会談で準備は整った。後はそちらの状況次第ですが。」
俺はこの後のこちらの作戦を説明した。セレーナも織田信長も同意してくれたみたいだし後はセレーナがどう出るか。
セレーナ
「なるほど、なら私達は貴方達が突入しやすいよう手筈はしておくわ。ギルドで手紙を送っとくから、その時は呼び出されたと思ってね!」
ベリアル
「では私達はその間冒険者活動でもして時を待ちます。残りは『ペルーニャ村』で待機だ。」
皆んなに「明日の夕暮れ」って言ったけど、もうしばらくかかりそうだな。その間は冒険者活動と目の前の問題も解決しないとな。
ベリアル
「エルザ。明朝カオスブレイカードラゴンとの交渉又は討伐を開始する。封印場所まで案内してくれるか。」
エルザ
「なんの準備も無しに突然ね。カオスブレイカードラゴンは私ですら封印するのがやっとだったのよ?それを貴方が倒すとでも?」
ベリアル
「私ではない。私達で倒すのだ。」
エルザ
「私達?」
ベリアル
「そうだ。こちらは私を含め四天将全員とカオスブレイカードラゴンと一戦交えたエルザと魔法支援に特化したフォスと召喚魔法を得意とするレイ。以上のパーティでカオスブレイカードラゴンを討つ!!」
エルザ
「わかったわ。その時はよろしくね。」
レイ
「魔王の貴方と手を組むのは気がひけるが、国の危機なら私は立ち上がる!」
フォス
「僕はそれでもいいよ。一番危険なのはお前がカオスブレイカードラゴンを仲間に引き入れた後だから。」
ベリアル
「では全員承諾と言う事で!」
何だかんだ言ってるけど皆んな国の危機を見過ごせないんだよな。こう言う所で利害が一致して協力関係が生まれる。漫画の展開みたいになってきたじゃない!!
ベリアル
「では話も纏まったので、質問がある方は挙手をお願いします。」
このままの盛り上がりで質問タイム行っちゃおう!!
信長
「なら俺から質問だ。」
おっ!織田信長さんから質問が来るとは一体何なんだろ?
信長
「お前さんと初めて会った時、倭の国のお殿様の話をしてくれただろ?似たような事を俺もやった事があったんだ。そんで『アークエイル』の話を聞いた時もしやと思ったが・・・・お前さん俺達と同じ世界の人間だろ?」
どんだけ勘が鋭いんだよ!!セレーナ達もかなり驚いてるし!?メッチャ自白しづらいんですけど!?
土方
「どう言う事だ。この白骨死体が元は人間だったとでも言いたいのか。」
信長
「そう言ってるんだよ。しかもお前より更に先の時代から来た人間だ。」
セレーナ
「待って!今はどう見てもリッチよ!?」
ジャンヌ
「それにお告げでは確かに『魔王』と神は仰っていました!彼が人間とは考え難いです。」
信長
「何を言うか戯け。人間は心に魔を持っている。それが色濃く出てる奴は、目的の為なら人道を外した事も平気でやるし、恥も誇りも捨てて人を殺める。俺とこいつがそうだ。」
ベリアル
「私は見ての通り人間とは程遠い。それでも貴方が私を人間として見る根拠は何です。」
信長
「腹の探り合いが出来るからだ。だがお前さんはまだ甘っちょろい。その時代の技術や戦略を猿真似してるに過ぎない。本物の戦を知らない奴のやり方だ。」
この人に小細工や隠し事は通用しないか。正体を明かしたくは無かったが相手が悪すぎた。流石は織田信長、聞いた通りの御仁だった。なら『サリン』の悪魔祓いも伝えなきゃな。
ベリアル
「貴方の仰る通り、私は土方さんより先の時代からやって来た人間でした。」
信長
「人間だった?なら今は何だ?」
ベリアル
「見ての通り、今の私は貴方方が言う白骨死体です。そう私は既に死んでいるのです。気付いた時には、『アークエイル』のこの姿で転生していました。人間だったあの頃の感情はもう失われています。」
いや・・・・その前から失っていたのかもしれない。俺の人生、子供の頃からばい菌扱い、社会人になった途端邪魔者扱い、そして車に引かれて死んだら虫けら扱い。誰も俺を人として認めてくれなかったからそりゃ感情も失う訳だ。
その原因は俺が無能な間抜けだったのもある。そんな奴はいくら死に物狂いに努力しても成長する事も何かを成す事など無かった。無能者こそ真の罪人であり、悪人であり、生きる資格も権利も無いクズだと言う事だ。
信長
「で、お前さんの世はどんなものになったのだ?」
ベリアル
「土方さん亡き後、時代は他国と戦争状態に突入し、最後は欧米大国と大戦して敗北。日本はその傘下に入りました。そこからは戦争も無く長い平和が続きましたが、私には息苦しい時代でしたが。」
信長
「平和ボケした時が長く続いたのなら時代に変化が無いつまらぬ浮世だったと言う事か。」
全く変化が無いわけじゃないんだけどね。ならあの組織の事を話して置かなきゃな。けどその前に、セレーナから聞かなきゃいけない事がある。
ベリアル
「では今度は私から質問させて貰おう。セレーナ姫よ。国家直属の宗教団体組織『サリン』の存在は知っているか。」
セレーナ
「いいえ。聞いた事も無いわ。ただ・・・・。」
ベリアル
「なんだ。」
『サリン』は知らなくても、それに近い人物を知っているって顔だな。心当たりがあるかもしれない。
セレーナ
「祖父がまだ国王だった頃の話だけど、兄が旅人だった神父様を王宮に連れてきた事があったの。」
セレーナの話によると、その神父と関わって以降、マグナードは祖父である国王を暗殺し、更に自分の両親に国王暗殺の容疑で罪人にして処刑させて国王の座についたと言う。セレーナ自身も邪魔者扱いされるかのように市長として城から遠ざけた。そこから五年の間で国の政治体制は滅茶苦茶になった。先代が進めていた『カルディア帝国』と『カバラン公国』の停戦交渉も全て破棄した。当然両国は激怒して戦争は更に激化した。その『徴兵制度』が何よりの証拠となり、同時にそれはレリック軍がかなり不利な状況まで追い込まれているという事だろう。神父がマグナードにいろいろ吹き込んでる見たいだな。
話を聞く限り、恐らく神父の目的は『レリック共和国』を占領する為の弱体化だろうな。国王に接触しやすい宗教関係者なら潜入もできる。そしてその神父は間違いなくカルディアかカバランどちらかの密偵だ。普通なら警戒するけど、マグナードの馬鹿さにはほとほと呆れる。完璧にお間抜けな詐欺の手口に引っかかってるぞ。けど、その神父が『サリン』の関係者なら見過ごす訳にはいかない。それに連中の動きに関しても気になることがある。
ベリアル
「輝夜。『サリン』について何かわかったか。」
輝夜
「申し訳ありません。何一つ、それらの情報を得ていません。」
ベリアル
「何一つ?神父の情報もか?」
輝夜
「はっ!マグナードを一時も漏らさず監視しておりましたが、奴等は尻尾どころか頭すら出さなかったのです。」
ベリアル
「奴等って・・・・まさか他の悪魔祓いもか!?」
輝夜
「さよう。皆それに不気味がっており、警戒を怠らずお役目に勤しんでおります。」
何故だ?悪霊達が潜んでいる国で何故動かない?まさか!?正体を知られたく無いから動かないだけ!?こちらの出方を伺っているのか!?厄介だな。百鬼夜行にはまだ仕事が残ってるから引き下がらす訳にもいかないし、かと言ってあまり長居させる訳にもいかないし、一刻も早く作戦を開始しないと。
セレーナ
「それでその『サリン』って何者なの?」
それじゃあ説明しますか。俺が現実世界の時代で起きたあの事件の事を。
ベリアル
「そもそも『サリン』は組織名では無い。毒物兵器だ。」
セレーナ
「毒物兵器?それって宝具か何かなの?」
ベリアル
「まあそんな所だ。『ポイズンミスト』と違い毒性が強い宝具の為、まともに喰らったら即死だ。」
エルザ
「ちょっと待って!!そんな危険な宝具が貴方達の世界にあるの!?」
バフォメット
「そのような反則宝具は『アークエイル』では聞いた事がありません!それはベリアル様の世界の宝具なのでしょうか!!」
ベリアル
「そうだ。我々の世界では毒物兵器と言うより化学兵器と呼んだ方が正しいな。」
信長
「ちょっと待て!?そんなあぶねー毒薬聞いた事ねーぞ!!お前等の時代は何か!?戦も無いのに危険な猛毒を作っていたのか!?」
あ〜コイツらメンドクセ〜。
土方
「ベリアル。あんたの知る限りじゃその時代にその毒薬を使った事件ってのはあったんだな。何があった。」
ベリアル
「一般人を無差別に毒殺した『地下鉄サリン事件』です。」
信長
「チカテツって何だ?」
エルザ
「地下に鉄って意味わからないわよ!!」
このおっさんとババアはさっきからうるさいな!!
土方
「おいそこの死に損ないのおっさんに不老不死のババア。あんまり騒ぐと士道不覚悟で切腹にするぞ。」
エルザ
「やれるものならやって見なさいよ!ここら一帯火の海になるわよ!!」
信長
「焼き討ち上等だコラァ!!あとテメーの頭蓋骨を盃にして乾杯したろうかぁ!!」
話進まね〜。
セレーナ
「そこの死に損ないのおっさんに不老不死のババア!いい加減にしないと貴方達の頭蓋骨を盃にワインぶち込んで飲むわよ!!」
痺れを切らしたのかセレーナが恐い顔して恐ろしい事を言ってるんだけど!?
セレーナ
「さあ!ベリアル皇帝陛下!話の続きを!!」
ベリアル
「はい。」
笑顔でこっちに返して来たよ!?恐いんだけどこのお姫様!?
ベリアル
「その事件を起こしたのは宗教団体組織『ウロボロス』です。その事件が発端となり『ウロボロス』は解体、組織の教祖であった『聖林』と言う男は逮捕され、私がこちらの世界に転生する一年前に処刑されました。」
セレーナ
「それはわかったけど、それと兄と関わっている神父と何か関係が?」
ベリアル
「その神父が『元ウロボロス』の信者の可能性がある。」
セレーナ
「まさか!?」
土方
「あんた以外にもこっちの世界に来てる奴がいるのか!?」
そう、『サリン』は俺がいた現実世界にしか存在しない名称だ。つまり『元ウロボロス』の信者が『アークエイルプレイヤー』の可能性が高い。多分彼等は転生じゃ無くて転移して来たと思う。『聖林』本人だとしてもゲームをやってる訳ないがないしな。てか刑務所だからゲーム以前に携帯は無理か。やはり『元ウロボロス』の信者かその関係者として見るしかないな。
ベリアル
「いずれにしてもその神父が『元ウロボロス』の信者なのは間違いない。ですが確たる証拠が無ければ動きようがない。こちらでギリギリまで調べるつもりだが、何も出なかった時は予定通り作戦を実行する。」
セレーナ
「わかったわ。私からも兄からそれとなく聞いてみる。」
ベリアル
「有難い話だが、無理はしないでくれ。我々がこれから行うのは、南方の亜人族達とレリックの市民達双方の平和を掴み取るための戦いなのだから。」
彼女を『ウロボロス』の陰謀に巻き込みたくない。いや彼女だけじゃ無くて、エルザ達冒険者やガイロスの皆んなに危険が及ぶ。特に輝夜達にとっては天敵の様な相手だから、これ以上の捜索はやめておこう。後は俺が冒険者をしながら調べるか。
ローラン
「その『ウロボロス』って連中が、私の仲間を全滅させたのね。」
そう言えば、テレサから報告があった『シャガの大森林』の生き残り、デビルランサーのローランだったか。彼女からも色々聞いてみる必要があるようだな。
ベリアル
「ローランだったな。君は確か『シャガの大森林』の外から星の形をした光を見たそうだな。」
ローラン
「はい。そこで魔術師らしき人影を数人見ました。」
間違いない『六芒星の陣』だな。となるとパーティで発動させたな。
ルシファー
「ベリアル様。その件に関してお聞きしてもよろしいでしょうか。」
ベリアル
「『六芒星の陣』か。」
ルシファー
「はい。あれはレベル300以上のMPが無ければ発動出来ません。『ウロボロス』の魔術師にその様な方がいらっしゃるですか。」
ベリアル
「その可能性は低いな。アークエイルプレイヤーにもレベル300越えは私だけだ。そんな奴がいるなど聞いた事もない。」
ルシファー
「では彼等はどうやって『六芒星の陣』を発動させたのでしょう?」
ベリアル
「そうか。お前は知らないのだな。」
『六芒星の陣』は五つ星クラスで威力の高い魔法だが、詠唱の時間が長いのと莫大なMPの消費から『アークエイル』ではこの魔法を使うプレイヤーはあまりいなかった。だがこの魔法には発動の仕方が二つあって、一つは個人単体で発動するのともう一つが六人のパーティで発動する方法だ。『アークエイル』ではパーティで発動する魔法もあって『六芒星の陣』もその内の一つだ。だがその発動方法はこの世界にもあるのか?そこで俺はエルザに聞いて見た。
エルザ
「儀式ならまだしもそんな無駄な魔法の発動なんて聞いたこともないわよ!」
ですよね〜。『アークエイル』ってどことなく無駄なシステムが多い気がしてたけどやっぱりそうだよね〜。レベルの基準値だって無駄に高いし。
まあそんな話はいいとしてローランには同族達の仇を打たせてやらないとな。
ベリアル
「ローランよ。実行犯が見つかり次第、お前にその者たちの始末を任せる。」
ローラン
「ありがとうございます!!『ウロボロス』はこの私が必ず殲滅してみせます!!」
ベリアル
「それはダメだ!!連中は何を考えてるのか分からない危険な組織だ!迂闊な行動に出ればお前自身にも危険が及ぶのだぞ!始末するなら実行犯だけだ!!肝に命じておけ!」
ローラン
「失礼しました!!」
ベリアル
「セレーナ姫もお分かりですね。迂闊に『ウロボロス』には手を出さない様に。」
セレーナ
「わかったわ。では本日の会談は以上ですね。」
ベリアル
「最後にもう一つ!」
セレーナ
「何?」
ベリアル
「何故無関係なコーイチさんまで連れて来たのですか?」
セレーナ
「それはこの村に侵入する偽装工作の為に薬剤師として雇ったのよ?」
コーイチ
「それだけの為に!?」
ベリアル
「なんと言う金の無駄遣い!!」
そして俺とセレーナはこの場で仮同盟の証として結束の握手を交わした。良く考えたらまだレリックを手に入れてない現状正式な同盟は結ばれないからだ。だから今は仮同盟で話を終えたのだった。
そしてセレーナ達一行と冒険者達はレリックに帰って行った。カオスブレイカードラゴンに関してエルザは納得していなかったけど了承はしてくれた。レイはアイネとミオには謝ったけど俺の事は許してくれなかった。まあ当然そうなるよな。それとギーラとターシャはセレーナに何も言わなかったけど、不満とか無かったのかと尋ねたら。
ギーラ
「いいえ。ベリアル様の言ってた通り、レリックにも不満のいる人がいて安心しました。これで心置きなく戦えます。」
それが彼の返答だった。他のみんなも不満も無く、納得行く会談になった。まあバフォメットとレイアースは別としてね。けど油断は出来ない。これから先どうなるか誰も予想出来ないけど南方の亜人族やレリックの民衆と冒険者の為にもマグナードの暴走を止めないといけない。セレーナの知らせをただゆっくりと待つのみだった。
だがその翌日の朝、俺達はカオスブレイカードラゴンの封印場所に向かうため、エルザ達と集会所待ち合わせる予定だった。だが行ってみるとエルザ達やレイを含め皆んな葬式みたいに沈んだ顔をしていた。見るとテーブルの上には開封した一通の封筒と手紙が置いてあった。その手紙を読んでみると戦死を告げた内容で、俺達が知る冒険者二名の名前が上げられていた。
アイネ
「ダハードさん、バックさん。」
エルザ
「どうしようもなかったけど憎めない連中だったわ。」
レイ
「そうだね。」
ダハードさんとバックさんの戦死が書かれた内容だった。彼等の乗っていた船はレリック連合水軍の一隻でその船は撃沈し海の底に沈んだ。この国は本格的に『第二次世界大戦』と同じ道を歩んでいるんだ。一刻も早くなんとかしないといけないな。けど先ず先にやるべき事がある。
レイヴン
「ここか。」
四天将と合流した後、エルザの案内でカオスブレイカードラゴンが封印されている場所までやって来たが、ここは俺達が冒険者を始めて最初に訪れた『パンジャドラムの大森林』で、しかも桃央と戦った場所の近くだった。こんな遺跡があるなんて気がつかなかった。
桃央
「いやー偶然ってわからないものですね。」
レイヴン
「それはそうとなんでお前達ここにいるの?」
何故か知らないけど、俺達以外に双子悪魔のアイネとミオに桃央、さらにエルザのところのキララとシラヌイ・カズマまで着いて来ていた。
エルザ
「貴方達分かってるの!カオスブレイカードラゴンは並大抵のモンスターじゃないのよ!?」
カズマ
「けど戦力は多い方がいいだろ!皆んなのサポートくらいは出来る!!」
輝夜
「阿呆か貴様は。」
カズマ
「何だと!!」
輝夜
「カオスブレイカードラゴンはお前達が敵う相手ではない。レベル300の上にそれ以上のステータスを持ち合わせている。能力も魔法も五つ星クラスの物が多い。貴様等が束になっても即全滅だろうな。」
カズマ
「それじゃあ聞くが何でそこの狼男は一緒にいるんだ!レベル5だろそいつ!!」
輝夜
「仕方なかろう濃奴も四天将の一角なのじゃから。」
あぁ・・・・後ろで輝夜がカズマの質問に苦悩で答えてるけどやっぱりそこ突っ込まれるか。
フォス
「僕も気になっていた。何で低レベルの君がこの戦力に加わっているのか?」
レイ
「そもそも何で四天将なんて幹部にいるのですか?」
ヘラクレス
「それがワシ等にも理解できぬ。テレサ様やバフォメット達の話では四天将の座に相応しい力を持っていたとか?」
レイ
「いや、そう見えませんが?それとヘラクレス将軍はもう開放されたのですか?」
ヘラクレス
「一時釈放だ。戻れば再び『生きた剥製』だ。」
レイ
「そうですか。」
キララ
「でもやっぱり納得出来ない!!こんな狼よりキララ達の方が強いのに!!」
桃央
「そうだそうだ!!こんなの贔屓だ!!」
エルザ
「やっぱり彼外した方がいいんじゃないの?誰がどう見ても戦力外なんだけど?」
ルシファー
「私も皆さんに同意見です。やはりワーウルフは外すべきと考えます。」
ワーウルフ
「何だ!?わい等文句ばっか抜かしやがって!!そげん俺が邪魔か!?」
輝夜、ヘラクレス
「ああ邪魔だな。」
って皆んな言うけどワーウルフの能力を知らないもんな。いざという時の奥の手だから取っておかないといけない。仕方ない誤魔化そう。
レイヴン
「いい加減にしろ。私の選定したパーティに変更はない。それ以外は安全な場所で待機していろ。」
桃央
「じゃあワーウルフは!!」
レイヴン
「ただの『捨て駒要員』だ!!」
ワーウルフ
「要は殿ぞ!!」
まあそんな感じ。
レイヴン
「では始めるとしようか。」
と言うわけで今回二度目の換装!!
ベリアル
「能力『透視眼』。」
『透視眼』と言う能力を使って中の状況を探った。でもあれ?可笑しい。封印はされているのにどう言う事だ!?
ベリアル
「本体が見当たらない?」
エルザ
「どう言う事!?」
レイ
「まさか封印が破られてた!?」
ベリアル
「いや封印自体は機能しているが肝心の本体だけが抜け出している。まるで密室脱出した様な感じだ。」
エルザ
「そんな有り得ない!!」
フォス
「内部と外部から強力な結界を張っているんだ!そんな事出来る訳がない。」
ベリアル
「二人の言う通りこの封印は私ですら破る事は出来ない。だがカオスブレイカードラゴンは結界を破る事なく外へ出た。それに封印が機動している限り奴は完全では無い。」
だけど封印されてる状態でどうやって自由に行動できる。
???
「あのー。」
すると後ろから誰か声を掛けてきた。振り向くとそこには長身で金髪頭の目付きの悪い男が買い物をしてきたのか紙袋を抱えて俺達の前に現れた。
???
「家に何か用ですか?」
え?今家って言った!?まさかこいつって・・・・。
ベリアル
「付かぬ事をお聞きしますがもしかしてカオスブレイカードラゴンさんでいらっしゃいますか?」
カオスブレイカードラゴン
「確かに俺がカオスブレイカードラゴンですがお宅等何なんです?」
やっぱりかぁ!!人間に変身してたらそりゃ分からない訳だ!!皆んな唖然としてるし。
エルザ
「仮に貴方がカオスブレイカードラゴンだとしてどうやってこの結界から出られたの!?」
カオスブレイカードラゴン
「いや普通にステータス全部下げて人間に変身したら出られたが?」
ステータスを全部下げただけで出られるって・・・・まさか!?
ベリアル
「『ステータスコントロール』を使ったな。」
カオスブレイカードラゴン
「よくわかったな。」
だよな!ただ人間に変身してるだけなら巨大な気配を感じとってもおかしくない。だがステータスを下げればそれは分かりにくい筈だ。となると使った封印は!!
ベリアル
「エルザ。お前封印の一部に『神聖な聖域』を使ったな。」
エルザ
「それが何よ?」
やっぱりかぁぁぁぁ!!なんか可笑しいと思ったらそりゃ不完全でも脱出出来るわ!!
ベリアル
「そりゃ脱出されるわこのアホ魔術師!!」
エルザ
「何よいきなり白骨死体!!この私に何か落ち度でもあったの!?」
ベリアル
「ありまくりだ!!いいか『神聖な聖域』はな!!」
レベル250以上の魔属性モンスターを封印する事が出来る魔法だか、これを打ち破る魔法が『ステータスコントロール』と言う魔法である。この魔法は自分の全てのステータスだけでなくレベルも好きな数値に変更する事が出来るのでレベルを250以下の数値に設定すれば『神聖な聖域』を無効化する事が出来る。
ベリアル
「他の封印魔法が施してあったから完全解放には至らなかったがその魔法が奴を500年間も自由にしていたんだぞ!!」
エルザ
「なっ!?」
エルザはショックでしばらく動かなかったが今度は別の質問をカオスブレイカードラゴンに投げ掛けた。
エルザ
「貴方があの時レリックに来た目的は何!!」
カオスブレイカードラゴン
「観光。」
だが返答は呆気無く、エルザは唖然するだけだったが懲りずに言い掛かりな質問を投げ掛けた。
エルザ
「破壊と殺戮が貴方の目的じゃないの!?」
カオスブレイカードラゴン
「そんな訳ないだろ?そんな事したら俺が他の竜王共にボコられる。」
だが返答は至って普通でエルザも段々と涙目になって来た。そんな彼女に追い打ちをかけるように今度はカオスブレイカードラゴンから仕掛けて来た。
カオスブレイカードラゴン
「お嬢さんどっかで見た事あると思ったらマリアに似てるな。もしかして彼女の子孫か?彼女も昔あんたみたいに「滅びの竜王」だ変な言い掛かり付けられていきなり攻撃してきた挙句一方的にこの場所に封印されたからな。その後何度かここをウロウロして帰った後直ぐに出られたが、封印されていたから力もでず他所の国に行く事もできなかった。全くあんたのご先祖様の誤解には迷惑したよ。だからこの封印を解いて欲しい。」
ベリアル
「あのー・・・・彼女がそのマリア・カデンツァ・レリック本人なんですが?」
カオスブレイカードラゴン
「え?でもあんた今『エルザ』って呼んでなかったか?」
ベリアル
「まあ君を封印した後いろいろあって今は『エルザ・フォルテ』として名乗ってるけど、彼女は当時と同じ『マリア・カデンツァ・レリック』本人なの。」
カオスブレイカードラゴン
「マジか。あれから500年も経つけどまだ生きていたんだな。もしかしてずっと独身だったのか?」
その一言でエルザはショックのあまり座り込んでしまい遂には小さな子供みたいに泣いてしまった。
エルザ
「だって・・・・誰だってあんな不気味なドラゴンが出たら誰だってそう思うでしょ!!私悪くないもんっ!!」
ガキかお前は!?駄々っ子みたいに泣き出したんだけど!?
ベリアル
「ほらほらエルザちゃん!泣いてないでカオスブレイカードラゴンさんの封印解いてごめんなさいしよう?」
エルザ
「全部あんたが悪いのよ白骨死体!!」
ベリアル
「俺の所為なの!?」
駄目だ完全に駄々っ子だ。
カオスブレイカードラゴン
「俺が悪いのか?」
フォス
「いや完璧エルザが悪い。それと僕もだ。」
カオスブレイカードラゴン
「あんたも?」
フォス
「当時エルザから君の話を聞いた時、僕達の種族の魔法技術を使って君が二度と解放出来ないよう封印を厳重にする手助けをしてしまった。本当に申し訳ないと思っている。」
カオスブレイカードラゴン
「いや・・・・元を辿れば元凶は俺の本来の姿があまりにも不気味だった事が原因だ。マリアが勘違いするのも無理はないし、他の奴が見たらそう言うのも納得がいく。鏡で自分の姿を見てそう思ってしまったくらいだし今回の件は俺の落ち度でもある。だからマリアもあんた等も悪くない。もう気にすることは無いんだ。」
フォス
「なら何故それをエルザに言わなかったの?」
カオスブレイカードラゴン
「話す前に抵抗虚しく一方的にやられた。」
フォス
「ならそれはエルザが100%悪い!!」
完全に自業自得かい!!
フォス
「それが分かれば充分だ。もう君の封印を解くね。」
ベリアル
「待てフォスフォフィライト!それは私の交渉が終わってからだ!」
フォス
「まさか封印を解く代わりにお前の仲間になれとか言うんじゃ無いだろうな!?彼はエルザの無責任な勘違いで500年も封印されてきたんだぞ!!そんな彼の気持ちを考えた事があるのか!!」
ベリアル
「彼にどんな事情があろうと私には関係ない。交渉材料として使える物は使うまでだ。」
フォス
「やっぱりお前は・・・・最低の魔王だよ。」
ベリアル
「何度でも言うがいい。」
フォスの話を無視して俺はカオスブレイカードラゴンに交渉を持ちかけた。
ベリアル
「早速だがカオスブレイカードラゴンよ。封印を解除してやるが条件がある。私の配下となれ!」
カオスブレイカードラゴン
「あんたの?」
ベリアル
「そうだ。断れば今度は二度と外に出られないよう一生閉じ込めてやるがどうする。」
カオスブレイカードラゴン
「おっかない魔王だがそれだけあんたが本気だって言うのはわかった。だが今は無理だ。仕事がある。」
ベリアル
「何だと?」
カオスブレイカードラゴン
「あの国から人の悲しみや憎しみと言った憎悪が溢れかえっている。原因はあの王様からだ。奴を止めなければ取り返しのつかない事になる。」
そうか竜王の使命か。しかも目的は俺達と同じだ。なら尚更だ。
ベリアル
「なら話は早い。実は私達も同じ事を考えていた。どうだろう。君の使命とやらを私達にも手伝わせてくれないか。」
カオスブレイカードラゴン
「なに?あんたも同じ事をやろうとしているのか。」
ベリアル
「そうだ。レリックの今の現状は私も無視できない所まで来ている。早急に片付ける必要がある。力を貸してくれるか。」
カオスブレイカードラゴン
「断る理由が無い。協力させてもらう。」
よし!では雇用契約の説明に入るか。
ベリアル
「では早速我が社の雇用形態について説明すると!」
と俺はカオスブレイカードラゴンにいろいろ吹き込む・・・・いや!親切丁寧な説明をする家に彼は段々とその魅力にはまっていった。
カオスブレイカードラゴン
「何だと!?こんなに待遇されているのか!?」
ベリアル
「我が社は社員一人一人が働きやすい環境作りを手掛けているのだよ!どうかねカオスブレイカードラゴン!君も我々と一緒に夢を作っていこうではないか!!」
カオスブレイカードラゴン
「はい!これからお世話になります!!社長!!」
ベリアル
「こちらこそ!君の働きに期待しているよ!!」
見事にカオスブレイカードラゴンが仲間になりました。
レイ
「本当にカオスブレイカードラゴンを仲間にするとは・・・・。」
フォス
「やばい・・・・あいつは僕の想像以上に危険な奴だ!!」
なんかレイとフォスはやたらと警戒していたけど、俺はただサラリーマン時代の交渉術を披露したに過ぎないが?まあ放っといてもいいだろ。
ベリアル
「では復活せよ!!カオスブレイカードラゴン!!」
遺跡の前に小さな祭壇みたいなのがあってそこに竜のエンブレムと同じ形をした窪みがある。そこに鍵となるエンブレムをはめ込んで見ると遺跡が光り出して直ぐに消えた。意外とあっさり終わったな。そして肝心のカオスブレイカードラゴンはドラゴンの姿になっていた。
カオスブレイカードラゴン
「久しぶりにこの姿で外に出たから妙な感覚だ。」
ベリアル
「少しずつ体を慣らして行けばいい。」
カオスブレイカードラゴン
「ああ、だがその前にやる事がある。」
え?何?
カオスブレイカードラゴン
「『ヘルバースト』!!」
ベリアル
「何の!!」
ワーウルフ
「へ?」
いきなりカオスブレイカードラゴンが攻撃して来た。俺は近くにいたワーウルフを担ぎ上げ盾にした。てか本当いきなりだな!?ビックリしたよ!!
ワーウルフ
「ア゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんかワーウルフには申し訳ないけどね。
カズマ
「あの野郎本当に捨て駒にしやがった!!」
キララ
「自分の仲間を盾にするなんて最低!!」
そりゃあ部下を効率よく使ってるからね。
ヘラクレス
「カオスブレイカードラゴン!!貴様なんのつもりだ!!」
カオスブレイカードラゴン
「無能な社員だったらガッカリでしょ。なら実力を直接見てもらわないとな!」
ベリアル
「早速新人研修か!!仕事熱心でいいぞ!!」
カオスブレイカードラゴン
「それにしても自分の部下を盾にするとはあんた容赦ないな!」
ベリアル
「甘いぞ!ただ自分の部下を盾にするだけで終わりと思ったか!!」
カオスブレイカードラゴン
「なに?」
カオスブレイカードラゴンのブレスが終わった途端、今度はワーウルフの体から黒いオーラが出始めた。彼の能力『荒ぶる強靭』が発動していたからだ。
ワーウルフ
「イキナリケンクヮウットハイイドキョウシチョッナ!!」
カオスブレイカードラゴン
「効いていないだと。」
勿論驚いていたのはカオスブレイカードラゴンだけじゃない。四天将やフォス達もワーウルフを見て驚いていた。
ヘラクレス
「なっ!?ワーウルフのあの姿、それにこの気配はなんだ!?」
輝夜
「まるで狂戦士じゃの?野犬が暴れ回っとる。」
カズマ
「いや笑ってる場合じゃねーだろ!?大丈夫なのかあれ!?」
輝夜
「我が君が近くにおるから問題ない。それよりもあの阿保犬がどんな曲芸を見せてくれるか楽しみだの!」
ごめん輝夜、多分一発で終わりそう。
ワーウルフ
「コンダコッチノバンジャキ!!カクゴセェイ!!」
ワーウルフはそのままカオスブレイカードラゴンの顔まで飛び上がって殴った。
カオスブレイカードラゴン
「ブヘェ!?」
そしてそのまま気絶して倒れた。てか倒しちゃダメでしょ!!
ベリアル
「ヒール。」
ちなみにワーウルフが発動させている『荒ぶる強靭』は回復すると停止する。
ワーウルフ
「何すっんだ親父殿!?」
ベリアル
「その辺にしておけ。カオスブレイカードラゴンを倒してしまったら折角のチャンスが無駄になるぞ。」
ワーウルフ
「おお!うっかいとしちょった!!」
ワーウルフの能力を止めるには回復しか手段がないからな。でも発動中でも理性はあるみたいだし問題ないか。
それにしてもカオスブレイカードラゴンがタフで助かったよ。あのまま倒しちゃったらもう入手出来ないからな。昔やった育成ゲームで間違って伝説のモンスターを倒してゲット出来なかった黒歴史があるから危ない危ない。さて!カオスブレイカードラゴンが起きたら四天将達に『ペルーニャ村』に案内させるよう言っとかないとな。
ヘラクレス
「あれが・・・・ワーウルフなのか。」
輝夜
「あの魔竜を一撃で・・・・。」
フォス
「嘘・・・・だろ。」
レイ
「魔竜と恐れられていたカオスブレイカードラゴンが・・・・あんなザコモンスターにやられた?」
エルザ
「もう何がどうなってるの。」
桃央
「あの今何が?」
アイネ
「ワーウルフ様すごい!!」
ミオ
「四天将と呼ばれるだけの事はあるわね。」
カズマ
「なあカオスブレイカードラゴンってレベル5のモンスターに負けるほど弱いのか?」
キララ
「そんな訳ないじゃん!!アイツズルしたんだよ!!」
皆んなの方を振り向いたら大騒ぎしているし!?あれワーウルフの強さにそんなにびっくりしたの!?
ルシファー
「驚きました。貴方にこんな力があったとは知りませんでした。」
ワーウルフ
「なんじゃ姉上は驚らんのか?」
ルシファー
「ベリアル様が貴方を四天将にしたのはそれなりの実力があったから。だから私は口を出さなかったのです。」
ワーウルフ
「姉上には敵わんな!」
ルシファーは何となく予想してたみたいだな。相変わらずリアクションが薄い。それにしてもこの騒ぎをどう納めたらいいだろうか。
カオスブレイカードラゴン
「一体・・・・何が・・・・。」
丁度いい。カオスブレイカードラゴンも目を覚ましたし今回はこれでお開きにしますか。
ベリアル
「気づいたか。あの攻撃を食らってまだ立っていられるとはな。」
カオスブレイカードラゴン
「あの狼の旦那只者じゃないな。」
下手したらガイロス最強かもしれない。さてとでは帰りますか!
ベリアル
「四天将はカオスブレイカードラゴンを連れて『ペルーニャ村』へ帰投し、セレーネの合図があるまで待機せよ。」
ルシファー、ヘラクレス、輝夜、ワーウルフ
「はっ!」
ベリアル
「それ以外は解散!今日もお疲れ様でした!!」
ルシファー、ヘラクレス、輝夜、ワーウルフ、アイネ、ミオ、桃央、カズマ、キララ
「お疲れ様でしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エルザ
「私の500年の努力は・・・・。」
レイ
「エルザしっかりして!!明日を向いて歩こう!!」
フォス
「500年の間にいろんな魔法を学べたんだから無駄じゃないよ。」
なんかエルザには悪い事をしたな。レリックの一件が終わったら何かお詫びでもするかな。
こうしてカオスブレイカードラゴンの件は呆気ない形で幕を閉じた。ルシファー達四天将はカオスブレイカードラゴンを連れて『ペルーニャ村』に向かい、俺達は集会所に戻ったが道中エルザを慰めるのに大変だった。着いた頃には皆んなその場で現地解散したが、俺はアイネとミオには同行せず一人で人気の無い路地裏まで来ていた。何故ならもう一つ仕事が残っているからだ。
レイヴン
「いい加減ストーカー行為はやめて頂こうか!!」
俺が声を上げた途端、いきなり何も無い路地裏から四、五人のローブの男達が現れた。そう、彼等はマグナードの会見の後ずっと俺の後を着けていたのだ。だが昨日のセレーナの会談時にはいなかったが何故だ?
導師
「よく我々の尾行に気づきましたな。流石は冒険者レイヴン殿。それとも・・・・魔王ベリアル殿と読んだ方がいいかな。」
はい!魔王ベリアルと言われて正体を隠す訳がない!!と言うわけで今回三度目の衣装チェンジ!!オーブンゲート!!
ベリアル
「てっきり私のファンかと思ってずっとサインの準備して待っていたけど中々出てこないからこっちから声を掛けてしまったよ。」
導師
「残念ながらこの身に貴方の名前をナイフで刻まれるのは勘弁したくお伺いしました。」
ベリアル
「あれバレてた?だがストーカーしていたにもかかわらず「伺いました」は変では無いか。」
導師
「いえいえ。何もおかしくありませんよ。ずっとこの時を待っていましたから。」
すると突然結界魔法みたいなのに覆われてしまった。術を発動させたのは奴の部下みたいだがこれって『守護領域』だったか?魔族を封じ込める為の結界だったが確か星三つの魔法だったような気がする。俺でも破れる結界だぞ?
導師
「挨拶が遅れて申し訳ありません魔王ベリアル殿。私達は宗教団体組織『サリン』の導師です。我等の神を崇拝していただいているマグナード様が貴方を連行しろとの事で実行に移させて貰いました。」
ベリアル
「これはこれはご親切にどうも。私は『ガイロス帝国軍』皇帝陛下魔王ベリアルと申します。貴方方の申し出お引き受けしましょう。」
こうして流れで捕まってしまった俺ベリアルの運命や如何に!!って言ってもワザと捕まったんだけどね。せっかくサリンと接触出来たチャンスだし逃す手は無いよね!
でもその頃集会所では予想外の事態が起きていた。
レイ
「離せ!!私が何をしたと言うんだ!!」
近衛兵
「黙れレイ・ラナフォード!!不法入国並びに不法滞在の容疑で逮捕する!!」
何故かレイも捕まっていたからだ。多分あれだな、亜人族入国禁止令が出されていたから滞在している亜人族もその対象に即刻国を出なきゃいけなかったのかな。
だがそれでも計画は順調に進んでいた。