表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界征服計画  作者: トッシー
第一章『ベリアルの野望』
2/10

第二話『冒険者』





翌日、俺は四天将三人とバフォメットを呼び出して、先日の詳細な報告とその打ち合わせをしていた。テレサにはあの後先に話したから問題はない。急な事だったけど、テレサも納得していたし安心した。まあ・・・その後は彼女からのお説教でしたが。




ベリアル

「以上が先日村で起きた出来事だ。」




村での説明を終えた彼等の反応は少し怒りを露わにしていた。




輝夜

「何とも人間は怖い事をしますな。見せしめに親を殺し、子供に恐怖心を植え付け嬲り殺す。想像しただけで寒気がしますぞ。」




全然同情してないな!流石妖怪!メッチャ面白がってるし!





ヘラクレス

「許されぬ!それで戦士の誇りを振り翳すとは不届き千万!!万死に値する!!」




律儀だな、ヘラクレスは。だけど頭に登りやすいのがたまに傷だ。もう少し冷静に物事を見てくれたらいいけど。




ルシファー

「・・・・・・。」





あれ?ルシファーはノーコメントか。さっきから何も喋っていないな。こっちから話しかけてみるか。




ベリアル

「ルシファー。お前の意見を聞かせて貰おう。」



ルシファー

「輝夜やヘラクレスの言う通り、この人間達のした事は許される行為ではありません。双子悪魔(ジェミニーデビル)が怒り任せで戦うのも無理もありません。」





なんかそれギーラも言ってたな。まああんな事されたら怒るのも無理ないけど、戦闘になったら命取りになりかねないからな。高校の時やってたアプリゲームで相手の戦い方がすごく挑発的だったから、頭に来て力押しでやったら負けた教訓が今でも染み付いている。





ルシファー

「ですが、その者達に三代神聖魔法『金色の破壊神ゴルディオンクラッシャー』を放ったのは良い判断だと思います。十分な粛清と言えるでしょう。」



ベリアル

「そうか。お前もやはりそう考えるか。」



ルシファー

「はい。」




全然思いつかなかった。ただ実験程度でその魔法を使っただけなのに!?

それにしてもやっぱり元気無いな。なんかあったのか?まあそれは後で聞くとして本題に入りますか。




ベリアル

「さてでは早速本題に入るが、輝夜は百鬼夜行を引き連れ『レリック共和国』で情報収集に専念せよ。ルシファーとヘラクレスは東西に位置する集落と交渉し、全軍を引き連れて『ペルーニャ村』に合流せよ。」




ルシファー、輝夜、ヘラクレス

「はっ!」



ベリアル

「それとルシファーよ。東の種族達が纏まり次第、その者等を率いて軍隊を作り、お前にその軍を任せる。」



ルシファー

「・・・・・・・。」




あれ?返事が無い・・・・まさか!?さっきまで元気が無かったのはこの事か!?




ベリアル

「どうしたルシファー。」



ルシファー

「大変有り難いお話ではありますが、辞退させて頂きます。」




やっぱりか。無理もない。ルシファーには軍隊なんて必要なかったから、今まで単独で指示を出していたけど、それがここに来て仇となるとは思わなかった。それにルシファーは俺と立場は全く一緒だから問題はそこだな。




ヘラクレス

「ルシファー様!『王位』の称号を持っている貴方らなら軍隊能力(スキル)を持っていてもおかしく無いはず!何故ベリアル様の有難き行為を無駄にするのですか!!」




ベリアル

「よせヘラクレス。お前も知らない筈はない。彼女が『王位』の称号を持っていると言う事は、私と立場は全く一緒だ。だから拒否権があるし、私もそれを受け入れるしかないのだ。」




ヘラクレスがムキになるのもわかるが、そんな簡単に解決する話じゃない。ルシファーを説得すると言う事は、外交交渉するのと同じ事だ。いくら俺がここの主人とはいえ、彼女には拒否権がある。だから俺も、頭ごなしに従わせる事が出来ない。ここは慎重にいかないと。




ベリアル

「ルシファー。出来れば理由を聞かせては貰えないだろうか。」



ルシファー

「自信がないからです。私には確かに軍隊-能力スキルがあります。ですがそれを指揮する経験が全くありません。況してや、これから大事な戦で計画や作戦に支障をきたし、全ての行いが無駄になる事はしたくありません。なので東の部族を纏め上げた際、全ての者達をヘラクレスにお任せしようと考えております。」



ベリアル

「それはダメだ。」




ルシファーは驚きの表情で俺の顔を見た。やっぱりそう言う事か。今までがそうだったからな。けどこれからは違う。何もわからない世界で、そんな甘えは通用しない。それに感情を持った彼女がもし孤独であるなら、仲間の大切さを知って欲しい。




ベリアル

「ルシファーよ。戦の達人と言われるヘラクレスですらそんな大群を任せるのは無理がある。だからこそお前にも軍隊が必要だ。それが今回の計画にとっても、私にとっても、ガイロスにとっても、そして何よりルシファー自身にも必要な事なのだ。だから頼む。」



ルシファー

「わかりました。ベリアル様がそう仰るのであれば断れない理由がございません。お引き受けしましょう。」



ベリアル

「ありがとう。」





あの表情じゃ納得はしてないけど、引き受けてくれただけ良しとするか!





ベリアル

「ヘラクレスはそのまま西の部族を吸収せよ。お前なら問題ないだろう。」



ヘラクレス

「はっ!短期間で全て制圧してみせます。」




いや別にゆっくりでいいんだけど?どんだけやる気なんだよ!?





ベリアル

「そして全軍を引き連れて『ペルーニャ村』に合流せよ。」



ルシファー、ヘラクレス

「はっ!」




輝夜

「それはそうと我が君。風の噂で耳に入ってしまったのですが、我が君もレリックに足を運ばれると聞きました。」



ベリアル

「そうか。もう知られてしまったか。」




もう情報を掴んでいるとは、これなら王国内部の偵察は任せても大丈夫だな。ちなみに俺には王国に足を運ぶ理由があった。





ベリアル

「『集会所(ギルド)』で冒険者登録をしてくる。」



バフォメット

集会所(ギルド)?確か『冒険者』の称号を持つ人間が集まるところですよね?何故魔王様自らそのような場所に?」



ベリアル

「この世界の仕組みを知るためだ。私達がいた『アークエイル』の魔法や宝具(アイテム)が全く異なるとも限らん。それがもしガイロスの脅威になり得る事態になったとしてもいつでも対処出来るようにしたい。」



バフォメット

「そのような弱気な事を。『アークエイル』最強と謳われた魔王ベリアル様のお言葉には相応しくありません。」



ベリアル

「それは違うぞバフォメット。真の強者とは何事にも油断せず、予想外の状況に対処出来る存在だ。過信や油断は弱者のする事、覚えておくがいい。」



バフォメット

「有難き教え・・・・・・感謝のしようもございません!!」





いや何も泣かなくても!?そんなに嬉しかったのか?





輝夜

「ですが些か妙なお話どすなあ。我が君が都に赴く上『世界の写しワールドマッピングスキャン』で十分に情報を得る事は可能な筈。妾が赴く必要は無いと思われますが。」




気の所為かな、なんかサボる口実のように聞こえるけど!?




ベリアル

「輝夜。お前達にやって貰いたい仕事は、城塞内部と大都市の民家や貴族の屋敷、全ての人が住む建物を周りや中からの情報を得る事だ。」



輝夜

「我が君の心配性には驚かされますな。そんな「屋敷の隅から隅まで埃を取れ」と仰ってるようなものどす。いくら我等妖怪の固有能力(スキル)『霊体化』が有るとは言え、そんな気の遠くなるような作業をやれと申されるのか。」




妖怪の種族が持つ固有能力(スキル)『霊体化』の能力は、相手の感知能力や魔法の効果対象から外す能力。主に遠征での偵察任務で使われるが、戦闘ではその効果が変わる。『悪魔払い(エクソシスト)』や『陰陽師』以外の職業や妖怪以外の種族は、その攻撃対象にならないのだ。輝夜達にはその能力を使って、民家や屋敷、城に潜入して情報を入手して欲しい。





ベリアル

「百鬼夜行の数なら、レリックの大都市の倍以上だ。一日であらゆる情報が手に入る筈だ。特に王国関連の情報は念入りに頼む。」



輝夜

「仕方有りませぬなあ。我が君の命であるならお引き受けしない訳がございせん。」



ベリアル

「それともう一つ頼みがあるのだが。」



輝夜

「ご心配には及びませぬ。『座敷童』は置いていきます故、軍資金調達のため存分にお使い下さい。」





おー!わかってるじゃ無いか!俺が『集会所(ギルド)』に行くのも情報収集ともう一つ軍資金調達のため!それには座敷童の固有能力(スキル)『商売繁盛』の能力(スキル)が必要だ。戦闘や売却で得た資金を倍にしてくれる能力だ。これから動き出す計画に向けて必要になってくる。そのための軍資金だ。





ベリアル

「では四天将よ!己が役目を果たすがいい!」



ルシファー、輝夜、ヘラクレス

「はっ!」





四天将達は、命令を実行に移すため『(ゲート)』を使ってそれぞれ担当の地域に移動した。この魔法は『異界の門(ワールドゲート)』と同じ効果だが、MPを消費する。だから移動中は危険と言ってもいい。もし彼等が感情を持っているなら、アイネとミオと同じ自身の判断で動いて貰いたい。

さて、では玉座の間に行きますか。




バフォメット

「ベリアル様。先程テレサ様から連絡が有りました。戦闘メイド『ワルキューレ』の『アルタイル』と『クトリ』が『骸骨剣士(ワイト)』達を連れて『ペルーニャ村』に到着し、作業を開始したとの事です。」



ベリアル

「そうか。あの二人なら見た目は人間族に近いから、彼等とは親しみ易いだろう。」



バフォメット

「それと玉座の間にて『三体魔神』『鋼鉄魔神ガンダイラー』それと・・・・四天将最後の一人『北の大森林 ワーウルフ』が待機しております。』



ベリアル

「わかった。では行くとしよう。」




俺とバフォメットも『(ゲート)』を使い、玉座の間へと向かった。テレサには城塞の守護者達と四天将の問題児を招集するよう言い渡している。それにしても、ワーウルフが来てるのは珍しいな。








俺達が玉座の間に着いた時には、既に呼び寄せた『三体魔神』『鋼鉄魔神ガンダイラー』『北の大森林 ワーウルフ』が平伏しながら待機していた。玉座の側にいたテレサと双子悪魔(ジェミニーデビル)もお辞儀をして待機していた。





ベリアル

「表を上げよ。『レイアース』『セレス』『ウィンダム』『ガンダイラー』『ワーウルフ』。」





そう言うと皆んな一斉に頭を上げた。





レイアース

「『三体魔神』『炎の魔神 レイアース』。御身の前に。」




『三体魔神』の一人『炎の魔神 レイアース』。

レベルは250。属性は『炎』。種族は『獣人』。職業は『魔法剣士(マジックナイト)』。

見た目は女子高生くらいの少女で、赤色のポニーテールを紫色のリボンで結っているのが特徴。さらに狼の耳が付いている。瞳の色はオレンジ色。服装は軍服のような赤い上着の上からシルバーの甲冑を着けている。赤い色のスカートからは尻尾が出し易いよう穴が空いている。

性格は強気だが、冷静な判断力を持っている上、固有能力(スキル)に『絶対音感』も持ち合わせているため、感知能力(スキル)が非常に高い。





セレス

「『三体魔神』『水の魔神 セレス』。御身の前に。」





二人目の『三体魔神』『水の魔神 セレス』。


レベルは250。属性は『水』。種族は『竜人』。職業は『魔法剣士(マジックナイト)』。

レイアースと同じく見た目は女子高生の少女。サイドテールの青い髪と頭に小さな竜の翼が付いてるのが特徴で、水色のシュシュをつけている。瞳の色は髪の色と同じ青色。服装は青い軍服の上着の上からシルバーの甲冑を着けていて、竜の翼が出し易いよう左右に穴が開いていて、そこから青い翼が出ている。ルシファーと同じで青いスカートの中から尻尾を出している。

性格は、冷静な頭脳派で分析力にも優れている。口癖が「穏やかじゃない。」と言うらしい。





ウィンダム

「『三体魔神』『風の魔神 ウィンダム』。御身の前に。」





最後の『三体魔神』『風の魔神 ウィンダム』。

レベルは250。属性は『風』。種族は『ハーピィ』。職業は『魔法剣士(マジックナイト)』。

見た目はレイアースやセレスと同じ女子高生くらいの少女で、赤茶色のストレートなロングヘアが特徴しているが、偶にポニーテールを紫色の蝶の形のリボンで結った髪型にしている。瞳の色は紫色。服装は緑の軍服をした上着にシルバーの甲冑を着ていて、セレスと同じで翼が出し易いよう穴が開いて、そこから緑の翼が生えている。スカートの色は緑。

性格は冷静沈着で、高い集中力を持っている。その為目付きが鋭く、二つ名は『美しき風の刃』と呼ばれている。



ちなみにこの三人のモンスターは、元々は一体のモンスターで今は分離している。レベルや服装が一緒なのもそれが理由だ。三人が一つになると『三体魔神 レイアース』となるが、それはまた今度紹介しよう。






『鋼鉄魔人 ガンダイラー』。

レベルは238。属性は『光』。種族は『鋼鉄石像(スチールゴーレム)』。職業は『剣士(セイバー)』。俺が作ったNPCだ。

見た目はゴーレムとは程遠い、ロボットアニメでもよく見るような形のゴーレム。両腕、両足、胴体、肩アーマーは青。肘から肩、太もも、胴回りは白。顔は白色のフルフェイスで、目の色は黄色。頭の兜部分は青で、額にには金色の『愛』の文字を三日月に乗せた物を装飾にしている。

普段は人間サイズに身体を縮めているが、戦闘になると30メートルくらいの大きさになる。

性格はちょっと勇者ロボっぽくなっている。





ガンダイラー

「『愛』の文字を三日月に乗せて!!守れ僕等の『ガイロス帝国』!!鋼鉄魔人ガンダイラー!!月に代わって只今到着!!」





自分で設定しておいて何だけど恥ずかしぃぃぃぃ!!!





ワーウルフ

「『北の大森林』を縄張りにしてます!ワーウルフ。親父(おやっど)!遅うなった!!」





四天将最後の一人『北の大森林』を守護に持つ『ワーウルフ』。

レベルは5。属性は『魔』。種族は『獣人』。職業は『凶戦士(バーサーカ)』。テレサやルシファーと同じ時期に作成したNPCなんだが、いろいろ訳ありである。

狼が二足歩行していて、短パンを履いている。毛並みがボサボサしていてまるで寝癖みたいだ。

性格はだらしない上、豪快だ。何故か薩摩弁で喋る。オマケに図々しくって何を考えてるか作った俺にもわからない。しかも俺の命令を無視して勝手な行動をする。





テレサ

「その態度は何ですかワーウルフ!!」



バフォメット

「全くだ!前回の招集には応じず、ベリアル様に対して反省の色も謝罪も無しか!!」



ワーウルフ

「何じゃあ、久しぶりに顔見に来たかと思ったら文句の連発か!相変わらず頭の固い連中じゃの!!」



レイアース

「ちょっと!少しは反省したらどうなんだ!!」



ワーウルフ

お前(おまん)もか!同じ『獣人族』の仲じゃろ!少しは手助けしたらどうなんじゃ!」



レイアース

「お前と一緒にするなぁ!!」



ガンダイラー

「いい加減にしたまえワーウルフ!!君に『正義』の心は無いのか!!」



ワーウルフ

(おい)にそんなもんは無か!!そんなんはお前(おまん)の腹ん中だけじゃあ!!」





こいつ四天将なのに何で皆んなからこんなに舐められてるの!?





ミオ

「あのベリアル様?ワーウルフ様って四天将何ですよね?」



ベリアル

「そうなんだが?」



アイネ

「なんか下っ端扱いされてません?」





アイネもミオも小声で聞いて来たんだけど!?二人に何て言えばいいんだ!?





テレサ

「アイネ!ミオ!」



アイネ、ミオ

「はいっ!」



テレサ

「ワーウルフに『様』付は必要無いから呼び捨てで結構!!」






ちょっとテレサ!?二人になんて事教えるの!?どうしたらいいか困ってるじゃないか!?もう収集つかないから黙らそう!!





ベリアル

「そこまでだ。」





俺の一言で全員平伏し、話を聞く態勢になってくれた。やっと本題に入れる。





ベリアル

「お前達に集まって貰ったのは、ある命令を下す為だ。」



セレス

「命令ですか。」



ベリアル

「そうだ。そこでお前達に確認しておきたい事がある。現在のガイロスの現状と方針は聞いているか。」



ワーウルフ

「おお!親父殿(おやっど)が天下ば名乗り上げた事か!!」



ベリアル

「概ねそんな感じだ。現在計画進行の為、四天将三軍が出撃している。そこでお前達には不在中の四天将の各エリアを守ってほしい。」





まあ、この『ガイロス帝国』の領内に侵入できる者達がいるかどうかわからないけど念のためだ。『ペルーニャ村』を襲って来た兵士達は、間違いなく『アークエイル』の魔法を使っていた。なら奥義や宝具(アイテム)を持っていてもおかしくない。ガンダイラーと三体魔神の三人がいれば何とかなるが、問題はワーウルフと連携が取れるかだ。





ワーウルフ

「そげな事なら(おい)は戻って寝るとするかの。」





早速自由行動に出たよこいつは!?





セレス

「待ちなさいワーウルフ!!これから貴方の大森林も含めて連携が取れるよう作戦会議を!」



ワーウルフ

「そんなもん(おい)には必要無か!誰かと一緒に戦うなんて芸当なんぞ(おい)には無理ぞ!お前(おまん)等と一緒にいても(おい)のレベルが低すぎて足手纏いになる!どんな雑魚が攻めて来ても、悪知恵の働く奴がおったらそんだけで(しま)いじゃ!だったら一人で戦った方がマシじゃけ!」



ベリアル

「ワーウルフよ、これは命令だ。ガンダイラーや三体魔神と共闘してガイロスを守れ!」



ワーウルフ

「いくら親父殿(おやっど)の命でもそれは聞けもはん!(おい)は一人でやらせてもらう!」




そう言ってワーウルフは玉座の間を退室した。こういうところはゲームの時と一緒なんだな。でも間近で話してみてると、アイツもちゃんと考えて反抗してるんだな。まあそれを考えた上で強くなって欲しいけど。




レイアース

「全く!アイツは何考えてるんだ!!」



セレス

「ホント!協調性が無いと言うかなんと言うか。」



ウィンダム

「どっちにしろ北の大森林はあいつの担当なんだから放って置いてもいいんじゃないか?」





それを言われると、あいつを招集した意味が無くなるし、「じゃあ何しに呼んだんですか?」ってなるんじゃない?まあ呼んだの俺なんだけどね。





バフォメット

「ベリアル様。良い機会なのでご提案があります。」



ベリアル

「なんだ。」



バフォメット

「ワーウルフを四天将から除籍させ、なん等かの作戦で捨て駒要員として戦死させてはいかがでしょうか。そうすれば、創造主たるベリアル様が奴を処分出来なくても、抹消する事は可能な筈です。」





何故バフォメットがこんな事を言うかと言うと、本来プレイヤーが作成したNPCは自分達で削除する事が出来ないのだ。だが一つだけ方法がある。必要のないNPCを難易度の高いステージのボス戦かプレイヤー同士のバトルで捨て駒要員として使う事だ。そうすれば戦闘中に戦死したNPCは蘇生系の能力(スキル)か魔法でなければ復活出来ない。つまりNPCを戦死状態にしておけば削除したのと同じ事になる。

バフォメットの提案は正しい。ワーウルフは言う事は聞かないし、勝手な行動はする。そして協調性もないし、レベル1の『スライム』に負けるくらい弱い。これが会社なら戦力外通告でクビになってるレベルだ。






正直なところ、俺は『社会に貢献できない人間』『いじめられている人間』『何の才能もない人間』『いくら努力をしても成長出来ない人間』は罪人として死刑にしてしまえばいいと言う考え方だ。そう、所詮この世は『弱肉強食』弱い人間は、死んでくれた方が世の中の為になるし、強者こそが生きるに相応しい存在だ。残酷で卑劣だがそれが現実だと俺は思っている。それは今でも変わっていない。そしてそれが『ガイロス帝国』の理念だ。そんなワーウルフは正にその弱者であり裏切り者だった。だから処分しようとした事があったのも覚えている。





ベリアル

「バフォメット。お前の提案を拒否する。」



バフォメット

「何故ですか!?皆が心のそこから願っております!!それに主人に刃向かうあの態度!それにあの弱さ!ガイロスの理念に反していると思われます!!」



ベリアル

「それを決めるのはお前ではない。私が決め、私がそれを実行する。それでいいな。」



バフォメット

「はっ!わかりました!」




バフォメットには悪いが、実は既に実行済みなのだよ。そして見事に失敗しました。その時だ、俺がワーウルフの本当の力を知ったのは。





ベリアル

「北は引き続きワーウルフに任すとして、レイアース、セレス、ウィンダム、ガンダイラーで東西南のエリアを分担して配置に着け。」



レイアース、セレス、ウィンダム

「はっ!」



ガンダイラー

「了解!!」



ベリアル

「それとバフォメット。セレスにいろいろアドバイスを頼む。彼女は知恵者だが、まだまだ未熟だ」



バフォメット

「わかりました。」




その後、三体魔神とガンダイラーとバフォメットは、玉座の間から去って行った。それじゃあ俺達も集会所(ギルド)に行きますか。おっと!その前に『ペルーニャ村』に寄らないとな。アルタイルとクトリの様子も見に行かないとな。




ベリアル

「ではテレサ。私は予定通りレリック本国に向かうが、途中『ペルーニャ村』に立ち寄っていく。」



テレサ

「わかりました。アイネとミオをよろしくお願いします。」



ベリアル

「うむ。私からも礼を言わせてほしい。不在の間良く二人を育ててくれた。申し分ない実力だ。」



テレサ

「ありがとうございます。それともう一つお願いがあります。」



ベリアル

「なんだ。」



テレサ

「ワーウルフを処分しろとは言いません。ですが四天将の除籍は御考え下さい。これでは他の配下の者達に示しがつきません。」





まあ、そうかもしれないけどそう言う訳にもいかないんだ。





ベリアル

「もしかしたら、近々お前も知るかもしれないな。ワーウルフの本当の実力を。」



テレサ

「ワーウルフが本気を出していないと?」



ベリアル

「そうだ。奴が本気を出せば・・・・四天将一いやこの私ですら敵わぬ相手かもしれん。」





テレサはその後何も言わなかった。彼女が何か思い詰めてる様子だったがその間、俺は『宝物殿』から『凶鳥の鎧(ヒュッケバインアーマ)』を装備し、双子悪魔(ジェミニーデビル)のアイネとミオも『炎帝の鎧』と『水神の鎧』を装備して準備は万端だった。





ベリアル

「では行ってくる。」



テレサ

「はい!行ってらっしゃいませ。」





俺は『異界の門(ワールドゲート)』を発動させた。テレサはワーウルフの話で驚いていた。信じられないのも無理ないけど、嫌でも知る事になるから放ってもいいか。





テレサ

「私達の知らないワーウルフの力・・・・。」










『ペルーニャ村』は現在、モンスターや王国軍の軍勢から身を守る為、木造で出来た壁を建造中だった。俺が派遣した複数の『骸骨騎士ワイトゴーレム』達と戦闘メイド『ワルキューレ』の二名が、現地でターシャやギーラと打ち合わせをしながら作業していた。





ターシャ

「クトリさん!」



クトリ

「何、ターシャ!」




『クトリ・コロナロス』。

レベル218。属性は『風』。種族は『アークエイル』では珍しい『黄金妖精(レプラカーン)』。職業は『魔法剣士(マジックナイト)』。俺が作ったNPCで、戦闘メイド『ワルキューレ』の戦闘員だ。

青空の髪、凪の海のような眼を持つ少女で、歳は三体魔神達と同じくらいだ。服装は黒いドイツ軍の軍服にスカートを履いたようなものだ。

妖精族が持つ固有魔法『属性魔法(エレメントマジック)』と、最強の精霊剣『セニオリス』を装備している。

性格は真面目で見栄っ張りだけど面倒見がいい。仕事も出来る委員長タイプの女の子だ。





ターシャ

「ここの中央広場に花壇を作りたいんですけどいいですか?」



クトリ

「いいわね!華やかになるし、村も明るくなると思うわ!」





クトリとターシャは村の再興に専念していたんだな。大変だと思うけど、これから前へ進まなきゃ行けないんだ。自分達が生きていく為にもね。





ギーラ

「しかし僅か短時間でもう村が壁に覆われるなんて!」



アルタイル

「まあ、これだけの『骸骨剣士(ワイト)』を動員しているからな。即席とはいえそれなりの物は出来るはずだ。」





『アルタイル・ウラジオストク』。

レベルは217。属性は『光』。種族は『天使兵(エンジェルソルジャー)』。職業は『召喚術師(サモナー)』。こいつも俺が作ったNPCで、クトリと同じ戦闘メイド『ワルキューレ』の戦闘員だ。

白銀のロングストレートに軍帽を被っていて、赤い瞳をしている。服装はロシアの軍服だがタイトスカートに白いストッキングを履いている。

戦闘時には、日露戦争で使われていたロシアの銃をバイオリン代わりにし、弓は軍刀を持って弾くような構えを取る。

固有能力(スキル)『第二式世界大戦楽章』の使い手で、召喚魔法『軍隊召喚』を使い、召喚攻撃を行う。

そう、彼女もギルド連合を壊滅する程の力を持っているのだ。

ちなみに性格は常に真顔で冷静沈着、冷徹で残虐な指揮官だ。





サラ

「アルタイルお姉ちゃん!」





ターシャの妹サラがアルタイルに抱きついた時だった。





アルタイル

「おい、小娘。」






アルタイルは、サラの小さな頭を片手で握り潰すかのように掴んだ。






アルタイル

「人間の分際で親しく私の名を呼ぶとはいい度胸だ。これからは私の事をこう呼べ。」






さらにサラを睨みつけながらこう言い放った。





アルタイル

「「かわいいアルタイルお姉ちゃん!」と呼べ。さもなくば『シベリアの牢獄』送りにする。」



サラ

「はーい!かわいいアルタイルお姉ちゃん!!」





だが何故かサラはアルタイルに怯えるどころか、笑顔でアルタイルを「かわいい!!」と呼び始めた。





アルタイル

「お〜よしよしいい子だな!愛い奴め!貴様には勲章を授与しよう!」



サラ

「わーい!褒められた!!」





アルタイルは機嫌よくサラを撫でていた。これもアルタイルの性格らしくて、自称『かわいい』って呼ばれたいお茶目な内面も持っているらしい?





ギーラ

「あの人怖いのか可愛いのか、よくわからない人だな。」





ギーラがアルタイルを疑うような目で見ている時、俺達は『ペルーニャ村』に到着した。するとアイネがサラと同じミスをしてアルタイルを怒らせた。





アイネ

「クトリセンパーイ!アルタイルセンパ・・・・イ゛!?」



アルタイル

「お前は今ここで死にたいのか?双子悪魔(ジェミニーデビル)アイネ。」





サラと違いアイネには厳しい対応でアイアンクローを食らわせた。






アルタイル

「貴様には指導が必要だな。マイナス1500℃の『シベリアの牢獄』で「世界一かわいいアルタイルちゃんセンパーイ!!」を死ぬまで叫び続けろ。」



アイネ

「嫌だぁぁぁぁ!!」





アイネが泣き叫びながらジタバタしていたが、アルタイルの腕力が強すぎて無意味な抵抗になっている。





サラ

「ダメだよアイネお姉ちゃん!「かわいいアルタイルお姉ちゃん」って呼ばないと怒られるよ!!」



アルタイル

「そうだぞ!サラを見習えこの愚か者!!」



アイネ

「わかりました!世界一かわいいアルタイルちゃんセンパーイ!!」



アルタイル

「ふむ。今日の所は許してやろう。」





満足したのかやっとアイネから手を放したか。てかアルタイルってこんなキャラだったっけ?





アルタイル

「ところでアイネよ。そちらの御仁は誰だ?」



アイネ

「はい!こちらは・・・・。」



クトリ

「なになに何の騒ぎ?」



ターシャ

「アイネちゃん!ミオちゃん!また来てくれたんだね!」



ギーラ

「この人すごい鎧だな!もしかしてベリアル様の部下?」





あのすいません。ぞろぞろ集まって来て何で誰も気づいてくれないの?俺の存在そんなに薄いのか?この鎧か?この鎧の所為なのか?ならフェーイス!オープン!!





ベリアル

「私だ。」





俺は兜の部分だけ武装を解除し、いつもの素顔をさらけ出した。それを見た部下達は一斉に跪いた。





アルタイル

「ベリアル様!?」



クトリ

「申し訳ありません!!御身とは知らず無礼な振る舞いをしました!!」



ベリアル

「良かろう。お前達の行いを許すとしよう。」



ギーラ

「ところでベリアル様。本日はどのようなご用件で?」



ベリアル

「クトリとアルタイルがこの村に打ち解けているか様子を見に来た。だが問題ないな。」



アルタイル

「はっ!御身の為に誠心誠意働かせていただいております!!」



ベリアル

「それと、お前達に伝える事がある。数日後に、ルシファーとヘラクレスが周辺部族を連れてこの村に集まる。持て成しの準備をして置け。」



ターシャ

「ここ一帯の部族達がこの村に!?」



ベリアル

「そうだ。何か問題があるか?」





まあ概ね部族達に差別されないかだと思うけど。





ギーラ

「ベリアル様達は俺達を認めてくれたけど、他の部族が受け入れてくれるかどうか。」



アルタイル

「心配ない。お前には知識がある。村の者達には知能がある。武力や魔法だけが力ではない。誇りを持てば、お前達を同志として認めてくれるだろう。」





彼女は強い眼差しでギーラに訴えた。彼を安心つかせ自身を付けさせるために。それを見せられた俺も安心した。なんとかうまくやっていけるようだな。





ベリアル

「では私達はレリック本国へ赴く。後は任せたぞ。」



アルタイル

「御言葉ですがベリアル様。先程の発言に対して意見があります。」





え?俺なんか変な事でも言ったか?いや可笑しな事は一言も言っていないげどな。





ベリアル

「申してみろ。」



アルタイル

「はっ!ここは「かわいいかわいいアルタイルちゃんよ!誠心誠意務めるがいい!!」の方がよろしいかと!?その方が皆の士気も高まると思います!!」





はい?





ベリアル

「すまない、言っている意味がわからないのだが?」



アルタイル

「私のかわいいさをベリアル様がアピールすれば、皆の士気が高まると仰っています!!」







全然意味がかわからないんですけど!?しかも真顔で何言ってるの!?本当にこんなキャラだったっけ!?俺が設定したのは『冷徹で残虐の指揮官』だった筈だけど!?しかもアルタイルの発言でみんな微妙な顔しかしてないし!!ギーラとターシャは誤魔化すようにさっきより頭を深く下げてるし、クトリはイラついた顔をしてるし、アイネとミオはジト目だし、俺はこの状況でお前に何て答えたらいいの!?





ベリアル

「アルタイルよ、それでは自分だけ士気が高まるのではないか?」



アルタイル

「そのような事はございません!!このかわいいアルタイルちゃんの良さを、御身であるベリアル様がアピールしていただければ、皆喜ぶと思われます!!」



クトリ、ギーラ

「そんな訳ないでしょ!!」






等々ツッコミ入りました。何だろうな、これは此れで打ち解けてると言ったらいいのかな?まあ短時間でここまで仲良くなれるんだからコミュニケーション力は素晴らしいと言っていいか。





アイネ

「先輩アホですか?」



アルタイル

「おいバカ『シベリアの牢獄』にブチ込むぞ。」





アルタイルとアイネに変な因縁が出来ないよう即刻退避しよう!





ベリアル

「では我々はもう行く。後は任せたぞ。」



クトリ、アルタイル

「はっ!」





俺達は『異界の門(ワールドゲート)』を使ってレリック本国に赴いた。『ペルーニャ村』は思ったより心配ないな。ただアルタイルがあの性格なのが不安だが、その件は後回しにしますか。











『レリック共和国』本国は四つの大都市に分れていて、それぞれが代表貴族達によって統治下されている。俺達は国王のいる大都市『カデンツァ』に来ていた。




アイネ

「すごく賑やかだね!」



ミオ

「そうね!古い建物が多いけど大昔からこんな感じかしら?」





俺達が歩いている場所は市場だった。辺りを見渡せば、果物や野菜、装飾品や衣服を扱っているお店が多い。だがミオの言う通り、此処には古い石造り建物が多い。70年とか100年前じゃない、崩れている建物からして1000年くらい前の物か。ここは古代都市だった場所を有効活用して新たな都市を築いたのか。まるでイタリアだな。





アイネ

「あのベリアル様!」



レイヴン

「はぁ・・・。アイネよ、この街に着いた時にも言った筈だぞ。私は『レイヴン』。そしてお前達はモンスターに村を襲われ親を亡くした双子の姉妹をこのレイヴンが引き取って育てている『弟子』達とな。」





実は一旦国の国境前で、お互い冒険者としての設定をあらかじめ決めていた。これから多くの人と関わりを持つから、今は『魔王 ベリアル』の名は出したくないし、目立った行動はしたくない。それをもう忘れるとは、アイネらしい。





アイネ

「ごめんなさい。ついいつもの癖で。」



ミオ

「ですが、御身であるベリアル様をそのように呼ぶのは無礼に値するかと。」



レイヴン

「私が構わないと言っているのだ。それを受け取らない方が無礼でもあるぞ。遠慮せず受け取る事も作法だ。」



ミオ

「しかし!」



レイヴン

「冒険者の時はレイヴンかレイヴンさん!それ以外は認めん。」



ミオ

「わかりました・・・・レイヴンサー・・・・ん。」





抵抗しているのかなんか変な呼び方になってるんだけど!?




アイネ

「じゃあ『先生』はどうかな!」



レイヴン

「先生?」



アイネ

「私達ベリアル様の弟子って事になってるんですよね?なら先生の方がいいと思うんです!それならミオも呼びやすいし!」



ミオ

「うん!気軽に呼べるかも!」





アイネにしては中々良い事を思い付く!それ採用!




レイヴン

「いいだろう。そう呼ぶがよい。」






これなら二人が間違って呼ぶ事はないだろう。





レイヴン

「ではアイネ、ミオ。我等の仕事を果たすとしよう。」



アイネ、ミオ

「はい!先生!」





市場を抜けた後、民家の建物が密集しているところに出た。この街の集会所(ギルド)はさらに奥の突き当たりにあった。見た目は宿屋みたいな建物をしている。扉を開けるとそこには人で賑わっていた。依頼待ちをしている人や昼間から飲んでる冒険者もいた。だが全員こっちを睨みつけていた。





ダハード

「なんだあいつ?」



バック

「御大層な鎧なんか着やがって。何処の金持ちだ?」



ダハード

「けど後ろの子達可愛くないか。」



バック

「言われてみれば!」





周りの連中がいろいろ言っているが、俺達は無視してカウンターに向かった。





レイヴン

「すまないが冒険者登録を頼む。後我々のランクにあった依頼も見繕ってくれ。」



受付係

「畏まりました。ではこちらの書類にサインと職業を記入し、しばらくお待ち下さい。」





ちなみに今俺の職業は『剣士(セイバー)』だ。当然『魔王』の称号も外してきたし、問題はない。

そう言えば、アイネとミオは字なんて書けたのか?子供の落書きみたいな字になってなきゃいいけど・・・・って!?二人とも俺より綺麗だし!!




アイネ

「先生?」



レイヴン

「いや!何でもない。」





何か無能な上司に思えてきた。とりあえず書類を書いて提出した俺達は、テーブル席で二人に冒険者に関しての説明をした。俺も昔『冒険者』の称号を持っていたがこの世界じゃ使えない。だから新たに新規で登録する必要があった。





レイヴン

「もし『アークエイル』とシステムが一緒なら、最初は『ブロンドクラス』からだろうな。」



アイネ

「えー『プラチナクラス』じゃないのー!!』



レイヴン

「生意気言うな。今のお前がプラチナクラスなど100年早い!」





冒険者のクラスには下から順に『ブロンド』『シルバー』『ゴールド』『ダイヤモンド』そして『プラチナ』というランクにクラス分けされている。冒険者がレベルに合わせてそれぞれの見合ったクラスに分けられている。功績を積めばクラスはランクアップする仕組みだ。ただし、これはあくまで『アークエイル』の世界での話なので、こちらの世界がどうなのかは不明である。





ダハード

「ねえお嬢ちゃん達初心者だよね?お兄さん達がいろいろ教えてあげようか!」



バック

「俺達こう見えて教えるの上手いからさ!」






いやどう見てもただのナンパ野郎なんだけど?さっき俺達を見て何か言っていた奴等だな。一人はチリ毛の茶髪ロングヘアーともう一人は短足デブか。アイネとミオも嫌がってるだろうしここは上司として漢として止めてやらないとな。





アイネ、ミオ

「・・・・・・・・・。」





必死に怒りを抑えながら我慢している!?やばい!やばいぞ!これ!『ペルーニャ村』の時と同じ、いやそれ以上の憎悪と怒りを感じる!!二人が暴走する前にこのナンパ野郎二人を止めないと!!





レイヴン

「いい加減にしろ。私の連れにちょっかいを出すな。」



ダハード

「なんだとテメー?」



バック

「俺達は『ゴールドクラス』だぞ!初心者が偉そうにしてんじゃね!!」



レイヴン

「待て待て!それ以上は!!」





頼むからアイネとミオを怒らすような発言はやめてくれぇぇぇぇ!!





レイ

「ダハード!バック!」





後ろの方から女性の声が聞こえた。このナンパ野郎二人の名前を呼んでたけど知り合いかな?





レイ

「初心者相手にナンパや喧嘩はするなと言った筈だ!」



ダハード

「ちっ!エルフの分際で偉そうに!!」



レイ

「『プラチナクラス』の私に偉そうな態度が取れるのか!」





プラチナクラスだって!?見た目からして中学生か高校生くらいの歳だろ!?しかもあのドレスみたいな鎧は『白金の姫(プラチナプリンセス)』!!レベル200以上のプレイヤーしか装備出来ないレア宝具(アイテム)だぞ!?





ダハード

「覚えてやがれ!」



バック

「クソっ!」





そんなセリフを言ってナンパ野郎共は集会所(ギルド)を出た。よっぽど人望の厚い人なんだな。





レイ

「あの二人が失礼した。新規の冒険者にはいつもあの調子なんだ。」



レイヴン

「こちらこそ、お止め頂いて感謝しております。危うくあの二人の命が無くなるとこでしたので。」



レイ

「はい?」





彼女は首を傾げているが、いやマジ危なかったって!あの二人の血が飛び散るとこだった。






ミオ

「あの!助けて頂いてありがとうございました!」



レイ

「いや、悪いのはこちらの方だ。ギルドの者が迷惑を掛けてすまなかった。」



アイネ

「本当ですよー!危うく五体バラバラにして犬の餌にするとこでした!」



レイヴン

「こらこら、女の子がそんなこと言うんじゃないの!」





種族が悪魔なのか怖い発言が出てくるな。まあ本当に殺ろうとしていたんだけどね。





レイ

「わかるなー。私も彼等に絡まれた時、三昧に下ろして猫の餌にしようとしたよ。」





お前もか!?エルフ族なのに残虐な考え方するな!?つーか人間の肉を犬猫にあげるな!!





受付係

「お客様。」





あっ!さっきの受付係の人だ。登録終わったみたいだな。





受付係

「登録手続きが完了しました。レイヴン様、アイネ様、ミオ様はブロンドクラスの依頼が引き受けられます。」



レイヴン

「ありがとうございます。」





やはりブロンドクラスだったか。そこは『アークエイル』と変わらないか。





受付係

「ですが今ブロンドクラスの依頼が無く、お客様に提供できる依頼はございません。」



レイヴン

「そうですか。わがままを言って申し訳ありませんが、シルバークラスの依頼は提供出来ないでしょうか。」



受付係

「申し訳ありませんが、規則ですので受付できません。」



レイヴン

「そうですか。大変失礼しました。」




嘘だろー!!早くランク上げてプラチナクラスに昇格しなきゃいけないのに、登録だけして終わりなんて、そんな時間の無駄になる事はしたくないぞ!!




レイ

「では私達の依頼を手伝ってはいかがでしょう。」



レイヴン

「貴方方の依頼をですか。」



レイ

「丁度ブロンドクラスなので良かったらご一緒にどうぞ。内容は『薬草採取の護衛』です。」




あんたエルフじゃなくて天使だよ!女神だよ!こんなに有難い話はない!さっそく引き受けよう!!




レイヴン

「ではお願いします。」



レイ

「はい。では彼等のメンバー登録もお願いします。」



受付係

「畏まりした。」




受付係の人は戻り、手続きしてくれた。




レイヴン

「わざわざ申し訳ありません。」



レイ

「いいえ。貴方方も流石に登録だけして終わりと言うのも納得いかないでしょう。」



レイヴン

「お陰で助かりました。そう言えば貴方のお名前をお聞きしていませんでしたね。」



レイ

「これは失礼した。私はレイ。『レイ・ラナフォード』と申します。」





『レイ・ラナフォード』。

レベルは250。属性は『光』。種族は『エルフ』。職業は『召喚剣士(サモンナイト)』。

ブロンドのロングヘアで、瞳の色は緑色、正にナイトを思わせるようなイメージだ。そのため性格は紳士で礼儀正しい。

服装は先程も話したが、レベル250以上のプレイヤーにしか装備出来ない『白金の姫(プラチナプリンセス)』を装備している。プラチナカラーのドレスだがスカートは動きやすく短めで、全体にシルバーの鎧がつけられている。

『アークエイル』では普通エルフ族は命中率が高いため『弓兵(アーチャー)』か『魔術師(キャスター)』を選択するが、『剣士(セイバー)』関連を職業にするエルフ族はいなかった。彼女の話ではどうも弓は苦手で剣の方が扱いやすかったらしい。

召喚魔法『円卓の騎士』の使い手であるようだ。





レイヴン

「それで、今回の依頼者は?」



レイ

「こちらの方です。」



コーイチ

「初めまして。薬剤師の『コーイチ・アルトランド』と申します。今回はよろしくお願いします。」





『コーイチ・アルトランド』。

レベル50。属性『森』。種族は『グリーンエルフ』。職業は『回復術師(ライフマジシャン)

白いローブを身に纏い、髪はボサボサでちょっと頼りない青年に見える。性格はごく普通である。てかコーイチって日本の名前だよな?





レイヴン

「ところで今回薬草を採取するエリアはどこでしょうか?」



コーイチ

「ここから東の国境近くにある『パンジャドラムの大森林』があります。」



レイヴン

「パンジャドラム!?」



コーイチ

「え?何か?」





え?パンジャドラムってあれだよな?第二次世界大戦時にイギリスが開発した無人の海上特攻兵器だよな?テレビの終戦記念番組で見た事ある。でもあれ敵味方関係なく無差別に襲ってくるから、欠陥兵器として使われる事は無かったけど大丈夫なのかその森?




レイ

「レイヴンさん?『パンジャドラムの大森林』に何か?」



レイヴン

「いいえ、何でもありません。では行きましょうか。」





「何もありませんように何もありませんように何もありませんように何もありませんように何もありませんように!!」と祈りながら採取場所の『パンジャドラムの大森林』に向かった。無事に帰って来られるといいけど。











だが俺達の知らないところで、ある集団が動き出そうとしていた。

『カデンツァ』の中央にある強大な建造物に、レリック共和国国王『マグナード・レリック』の妹『セレーナ・レリック』の姿があった。彼女はある人物達を招き入れていた。





セレーナ

「兄様には今回の『シャガの大森林』を含め、これ以上の南の進軍は止めるよう伝えてきたわ。」





『セレーナ・レリック』。

『レリック共和国』国王の妹で『カデンツァ』の領地を治めている。

腰ほどまである紫色の長いポニーテールが特徴。瞳の色は明るい紫色で、頭にはティアラをつけている。

性格は大人しそうなに見て実は行動派。自ら率先して部下を引っ張り、時には指示を出す。更に欲が深いチャレンジャーだ。






信長

「まあお前のバカ兄貴の事だ、聞いちゃいないだろうな。」





『織田信長』。

かつて尾張の領地を治めていた戦国大名で天下の覇者に近づいた男とされている。本能寺の変で『明智光秀』に討たれ、その生死は不明とされていた。今の服装は着物ではなく寝間着のような略服を着ていた。

性格は正にうつけのような豪快な男だ。





土方

「これじゃあ行先は幕末と同じだな。」




『土方歳三』。

元新撰組副長で隊士達を率いていた人物だ。しかし新政府軍との戦いで函館戦争で戦死した幕末の英雄である。服装は当時着ていた西洋の黒い制服に新撰組の証となる羽織を来ていた。

かなり生真面目な性格で曲がった事が嫌いだ。





義経

「さて、これからどうしましょうか。恐らく南の村々は『シャガの大森林』の事は耳に入っている筈です。近々一揆が起こる事も考えなければなりません。」





『源義経』。

平安時代の武士で『源頼朝』の弟だ。源平合戦で源氏が勝利を収め、鎌倉幕府を立ち上げた時、兄頼朝に追われ行方が分からなくなった人物である。一説では義経は清へ渡り『チンギスハン』と名を変え新たな歴史を作った人物とも呼ばれているが、彼の姿は当時旧名であった『牛若丸』の格好をしていた。

落ち着いて物事を見る判断力も優れている。





セレーナ

「ジャンヌ。貴方の掲示では「空から恐怖の魔王が降りてくる。」と告げられたのよね。」



ジャンヌ

「はい。ですが明確な時は告げられいませんでした。やはり神は私をを見放したのでしょうか。」





『ジャンヌ・ダルク』。

フランスの英雄にして革命の乙女。宗教信者あり、神のお告げを聞く能力を持っていて、その力で祖国を救った。だが最後は王の命令で若くして『火炙りの刑』によって処刑されてしまった。

ブロンドのショートヘアーに紫の瞳をしていて、服装は紫のドレスにスリットスカートを履いていて、その周りにシルバーの甲冑が付いている。あの服は装備品で『オルレアンの礼装』と呼ばれる。

とてもお淑やかで真っ直ぐな女性だ。





四郎

「いや、流石に異世界なら祈る神様が違うのでは?」





『天草四郎』。

戦国時代のキリスト教信者だったが、徳川幕府に攻められ、多くの信者達と共に城ごと燃やされ若くして亡くなった。

黒髪の短髪に若々しい色白の肌をした少年だが、格好は現代の牧師が着るような服装をしている。

こちらも義経と同じで落ち着いているが、意外と頑固なところがある。




彼等が何を企み、何をしようとしているのか、俺達が今後関われば明かされるだろうけど今は不明だ。






セレーナ

「『ペルーニャ村』がモンスターに襲われたのも気になるわ。未だに助けに行った兵士は帰ってこないし。それに元々彼処はモンスターも出ない平和な村よ。」



信長

「だとしたら逆だな。」



セレーナ

「逆?」



信長

「出陣した兵士供は村を助けに行ったんじゃない。村を攻めに行ったんだ。」



セレーナ

「何ですって!?でも軍部ではモンスター討伐に兵を向かわせ戦死したと報告されている!それにあの村が攻められる理由なんてない!」



信長

「恐らくバカ兄貴の仕業だろ。南部攻略には『ペルーニャ村』は拠点に相応しい場所だ。ワシならそうする。当然村人は退去させればいいがそれが出来ない。」



セレーナ

「『農村補助条約』に指定された村だったから。でもモンスターが村を襲ったとなれば、それは条約に記載されていないから、罪に問われる事はない。」



信長

「それどころか戦死した兵士供は名誉の死を遂げた。更に条約も見直され、指定されている村々に護衛が付けば、民も村人も御門(みかど)を称えるだろうよ。無能な癖に悪知恵だけは立派だ。」





この組織は『ペルーニャ村』の真実を知らなかったらしい。それどころか国王自らが内密にしようとしていた。





義経

「何れにしても、村を調べる必要がありますね。」



ジャンヌ

「それに魔王の件も気掛かりです。今は情報が欲しい所です。」



信長

「であるな。情報が欠落しすぎている。何とかバカ兄貴を御門の椅子から引き釣り下ろし、姫さんを新たな王にする。だから決め手になる情報が欲しい。」



セレーナ

「わかっているわ。だから皆さん。貴方方『異神(いじん)』の知識と経験を私に貸してください!」





異神(いじん)』正体は、俺達の世界の歴史の英雄達だった。今後彼等とどう関わるのかはわからないが、敵に回せばかなり厄介だ。そして彼等は知らないだろう。そこに俺が送り込んだスパイがいることを。





輝夜

「どうであった。」




建物の薄暗い路地で輝夜姫が待機していた。すると二人の女性が霊体化を解いて現れたのだ。彼女達は輝夜姫の固有能力(スキル)『写し』によって作られたトークンだ。




竹姫

「ベリアル様が気になられた『異神(いじん)』なる者達を見つけました。」





『竹姫』。

輝夜姫の分身体の一人だ。レベルや属性、種族は輝夜姫と同じだが、ステータスは彼女の半分しかない。戦闘においては通常攻撃しか出来ない。因みに竹姫が戦闘不能になった場合、輝夜姫のHPが削られる。だから主に偵察任務でしか彼女を使用しない。

見た目は輝夜姫と同じで白い肌にオレンジ色をした傷のような模様がある。髪型はショートヘアーで、無愛想な顔をして殆ど表情を変えない。いつも『月姫』と行動している。





月姫

「その者等が謀反を企ている事も確認が取れました。」





『月姫』。

輝夜姫の分身体の一人だ。こちらもレベルや属性、種族は輝夜姫と同じだが、ステータスは彼女の半分しかない。戦闘においては通常攻撃しか出来ない。だが月姫が戦闘不能になった場合、こちらは輝夜姫のMPが削られる。なので偵察任務でしか彼女を使用しない。

見た目は輝夜姫と同じで白い肌にオレンジ色をした傷のような模様がある。髪型はロングヘアー。こちらは竹姫とは違い、お淑やかなで笑顔で接して来て安らぐ感じだ。いつも『竹姫』と行動している。



二人は輝夜姫に中の状況を詳しく説明したが、それを聞いていた彼女はまるで子供のように心を躍らせながらワクワクしていた。





輝夜

「それは重畳(ちょうじょう)。我が君から受けたお役目は、退屈この上ないと思っていたが愉快愉快。楽しくなって来たの。」



月姫

「おやおや。ここまで機嫌が良い姫様は初めて見ました。それでこれから如何致しましょう。」



輝夜

「お前達二人はこのまま監視を続けよ。特にセレーナと言う小娘と異神達から目を離すな。」



竹姫

「姫様は?」



輝夜

「妾は『レリック城』へ向かうとしよう。下らぬ企てをしている『大うつけの馬鹿殿』の面白可笑しな余興を楽しんでくる。」



竹姫

「遊びは程々にして下さい。痛い目を見ますよ。」



輝夜

「つまらぬ奴よの。そんなお主等に褒美をやろう。『悪魔祓い(エクソシスト)』には気を付けろ。でなければ死ぬと思え。」



竹姫、月姫

「はっ!」





さっきまで楽しんでいた輝夜の表情が強張った。やはり、妖怪達から見て悪魔祓い(エクソシスト)は要注意人物なんだな。まあ輝夜達が負けるとは考え難いが、相性が悪いから撤退するだろう。そんな輝夜の報告を俺は待ち望んでいた。










その頃俺達は、『パンジャドラムの大森林』付近まで来ていた。その道中、レイとコーイチからレリックについて色々教えてもらっていた。そこで俺達も『ペルーニャ村』の騒動を聞かされたが、事実とは全く違った内容だった。





ミオ

「『ペルーニャ村』がモンスターに襲われた!?」



レイ

「どうもそうらしい。救援に向かった兵士達も未だに帰還していないらしいが。」





やはり一般人には嘘偽りの情報を流していたか。当然だ、真実を話せば反感を買われるからな。かと言って俺達が真実を話しても信用しないしな、どうしたものか。





アイネ

「違うよ!!『ペルーニャ村』はこの国の兵士達に襲われたの!!」



ミオ

「ちょっとアイネ!?」





ちょっ!?アイネはまた話をややこしくしようとする!!ん?でも待てよ。信じらせる事は出来なくても、不審がらせる事は出来るか。なら、このまま話してしまおう。





レイ

「どう言う事だい?」



レイヴン

「実はこの都市に入る途中、その『ペルーニャ村』に立ち寄ったのですが、何故か王国軍の兵士達に襲われたので止むを得なく正当防衛と言う形で戦闘になり、全員返り討ちにしました。」



コーイチ

「そんな!?大丈夫なんですか!?」



レイヴン

「問題があるなら、王都に報告しても構いません。如何なる罰も受ける覚悟です。」



コーイチ

「いいえ。正当防衛なら仕方ありません。ですが何故王国軍がそんな事を?」




レイヴン

「村の者達に聞いた話では、多額の税金を短期間で払えないから『非国民』扱いされたと言っていました。」



コーイチ

「何故そんな事に!?」



レイ

「わかりませんがこれで辻褄が合いました。元々『ペルーニャ村』はモンスターがいない平和な村です。それがなんの前触れも無く急に襲撃されるなんて考えられない。」





効果覿面(てきめん)!この情報が王都の住民に広まれば、不満が増大してクーデターを起こしやすく出来る。まあこれだけじゃ全然足りないけどね。何か引き金になる事件が起きればいいんだけど。それはまた後で考えるとして、今は目の前のクエストに集中しますか。





レイヴン

「話はこれくらいにしてそろそろ着いたのではありませんか。」




話に夢中になっている間に、『パンジャドラムの大森林』に到着した。見た目は至って普通の森だが、名前が名前だけに俺はビビってしまっている。だが警戒していて正解だった。





レイ

「待ってくださいコーイチさん!!」



コーイチ

「はい?」




レイも気付いたか。この森には間違いなくモンスターがいる。しかもかなりのレベルだ。





レイヴン

「モンスターがいます。」



コーイチ

「そんな!?この森にも『ペルーニャ村』と同じでモンスターは生息していませんよ!?」



レイヴン

「いえ間違いありません。この森から異様な気配を感じます。」





感知能力(スキル)からして魔力か?いや覇気か!なら相手は『狂戦士(バーサーカ)』か。





レイヴン

「レイさん。貴方はコーイチさんと一緒にここで待ってて貰えないでしょうか。私とアイネとミオの三人で行きます。」



レイ

「危険です!この気配は私も感じた事がありません!かなりレベル高いモンスターですよ!」



レイヴン

「ご安心を、危なくなったら直ぐに撤退します。」





レイにはそう言って、俺達は『パンジャドラムの大森林』の中に入って行った。頼むから『パンジャドラム』みたいなモンスターは出ないでくれよ。

それからしばらくして森の中心部分まで来たが、モンスターの姿は見当たらない。だが気配は近づいているのかさっきより強くなってる。ここで待機するか。






レイヴン

「止まれ、この辺りの筈だ。」



アイネ

「なんか緊張してきた。」



ミオ

「大丈夫よ!『ペルーニャ村』の時だって王国軍の兵士を倒せたんだもん!」





そうか、二人は実戦経験が薄いからまだ戦場に慣れていないのか。どちらにしても今回は見学だけなんだけどね。





レイヴン

「お前達は下がっていろ。敵う相手ではない。」





その時、森から声が聞こえた。まるで威嚇をしているようなそんな声だった。





???

「出て行け。この森に入る事は許さぬ。」





すると森から巨大な影が現れた。その影は、こちらに近づいて来るたび正体が現れ、その白い姿を現した。





レイヴン

「これは一体どう言う事だ。」





見た目は白い獣だが、俺は驚くしかなかった。何故なら俺はその獣の事を知っていたからだ。





レイヴン

「一つ聞いていいか?お前の種族は『チワワ』ではないか?」



???

「なんで僕の種族知ってるんすかぁ!?」





その正体は誰もが知っている『チワワ』と言う犬だったがかなり大きかった。大体3メートルはあるんじゃないか。




レイヴン

「それで、お前がこの森の主でいいんだな。」



白き魔獣

「そうだ。森を荒らす不届き者よ、この『白き魔獣』が成敗してくれる。」





何が『白き魔獣』だよ、ただの『デカくてかわいいチワワ』じゃないか。俺はこんな相手に警戒してたのか。





ミオ

「この目玉が飛び出た獣、正しく魔獣だわ!」



アイネ

「ベリアル様気をつけて下さい!こいつ只者じゃありません!!」



レイヴン

「お前達それ本気で言っているのか?」



ミオ

「本気も本気です!」



アイネ

「ベリアル様は怖くないんですか!?」



レイヴン

「いや、ただのデカくてかわいいチワワにしか見えないのだが?」



白き魔獣

「ちょっと待てぇ!!これでも自慢じゃないけど『ドラゴン族』や『魔族』は僕にビビって一切近寄らないんだぞ!!」





いや、明らかに捕食される側だろ!?まあ確かに覇気から見てレベルはかなり高いとは思うけど!

アイネもミオもテンパっていつもの感じになってるし!もういいや、さっさと倒そう!!





レイヴン

「まあいい。貴様がいては薬草採取の邪魔だ。倒させてもらう。」





俺は白き魔獣に戦線布告するかのように剣を向けた。因みに装備していたのは『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』だった。念のため、自分より手強い相手に対抗できるよう持ってきていたのだ。



白き魔獣

「僕・・・いやワシ相手に人間如きが牙を剥くかこの愚か者。」



レイヴン

「あー、キャラ作りしなくていいぞ!本性バレバレだから!」



白き魔獣

「上等だこの野郎!!八つ裂きにしてやるぅ!!」





白き魔獣は怒っていたのか、毛を逆立てて唸り声を上げていた。その方がこっちもやり易いし、さてどう来る。





白き魔獣

強化奥義ビルドアップアクション!!」





奥義(アクション)』とは、戦士系の職業や獣系の種族が扱う『魔法』とはまた別の戦闘方だ。肉体強化の奥義(アクション)でステータスを上げ、攻撃奥義(アクション)で戦うのが基本だ。





白き魔獣

「『能力解放』!『能力超解放』!『瞬足』!『身体向上』!『身体超向上』!『玉砕覚悟』!『熱血』!『必中』!『集中』!『魂』!『一撃必殺』!『瞬殺』!」





攻撃力と素早さに命中率、さらにクリティカルや貫通のステータスをどんどん上げてきたか。




白き魔獣

獣王奥義(ビーストアクション)本能覚醒(ワイルドブラスト)』!!」





さらにステータスを上げて、攻撃体制に入った。そろそろ仕掛けて来るな。




白き魔獣

獣王奥義(ビーストアクション)!『ファングクラッシャー』!!」





強靭な牙と強力なアゴで敵を噛み砕く『ファングクラッシャー』を俺は剣を蔵い右に避けた。直進的な攻撃技なので左右どちらかに避ければ問題はない。だが防御すればかなりのダメージを喰らう。なので防ぐのは愚策な行為だ。





白き魔獣

「『ストライクレザークロー』!!」




なに!?ターンして『ストライクレザークロー』!?五本の爪が閃光に切り裂く!なら後ろに跳ぶ!





白き魔獣

「まだだ!『螺旋餓狼撃(らせんがろうげき)』!!』





更に身体を回転させてドリルのように貫く『螺旋餓狼撃』。空中でのこの状態はまずい!なら身体を逸らして避ける!宛らマトリックスの様に!!





白き魔獣

「なに!?」





白き魔獣は驚きながら着地した。かなりあれだけの攻撃を避け切ったのだから、そんな紙一重だった俺も転げながら着地した。





白き魔獣

「まさか全て避けるとはな!」



レイヴン

「当然だ。私にとっては子犬と戯れてるのと一緒だからな。」



白き魔獣

「強がらなくてもいいんだぞ!紙一重で避けたのバレバレだったからな!」





もう頭に来た。容赦しないからな・・・・アホ犬ゥゥゥゥ!!





白き魔獣

「次で終わりだ!」





次で終わり?『最終奥義(ファイナルアクション)』か!?





白き魔獣

最終獣王奥義ファイナルビーストアクション!『獣王咆哮波(じゅうおうほうこうは)』!!」





この青い螺旋状の球は空気の塊じゃなくて超音波、つまり声の波動の塊が放たれた。これは避けられないな。ならあの奥義(アクション)を使いますか!





レイヴン

強化奥義(ビルドアクション)!」




その奥義(アクション)を発動した瞬間、奴の奥義(アクション)が消えた。俺が発動した強化奥義(ビルドアクション)は、ステータスの向上だけでなく、攻撃を打ち消す効果もあったのだ。しかし、その分HPを代償に支払われなければならない。





レイヴン

「『"(せい)" "(どう)"合一(ごういつ)』!!」




俺の身体が"静"を表す青いオーラと"動"を表す赤いオーラに包まれた。この奥義(アクション)を発動させた時、何故か白き魔獣は驚いていた。確かにレベルの高い奥義(アクション)だけど、そんなに驚く程でもないんだけどな。





白き魔獣

「ばっ・・・バカかお前ぇ!?」



レイヴン

「なに?」



白き魔獣

「その奥義(アクション)はステータスを上げる分自分もダメージを受けるんだぞ!死にたいのか!!」



レイヴン

「ああ、心配してくれてたのか?ならその甘さは捨てた方がいい。」





すっかり忘れてた。『"(せい)" "(どう)"合一(ごういつ)』は全てのステータスを100倍にしてくれるが、その代償として毎回ターン終了時に70%のダメージを受けなければならない。しかも発動させたら戦闘終了かHPがゼロになるまで発動し続ける。つまり一撃で相手を倒せなければ次のターンで留めを刺されるか、2ターン目のターン終了時の代償の効果でHPがゼロになって自爆で終わる。普通に使っていたらそうなるが俺はある宝具(アイテム)を装備していた為気にしていなかったのだ。





レイヴン

「私に『"(せい)" "(どう)"合一(ごういつ)』の代償効果は効かない。この宝具(アイテム)を装備しているからな。」




俺はその宝具(アイテム)を首から下げていたので、それを取り出して白き魔獣に見せが彼は知らない様子だった。





白き魔獣

「なんだその緑の石ころは。宝石か?」



レイヴン

「こいつは『勇気の証』と言ってな。代償効果を引き受けてくれる効果がある。使用回数はあるがな。」





『ペルーニャ村』の時も付けていた『勇気の証』だ。こいつはHPを支払って発動する効果を受けてくれる能力がある。回数制限は5回で毎ターン効果が発動するたびに使用する。正直長期戦で使用するのはお勧めできない。一緒に装備していた強化魔法(ビルドマジック)天国と地獄(ヘルアンドヘブン)』も同様に代償効果を持っていたが、結局使う事は無かったな。その宝具(アイテム)をまさかここに来て使う事になるとはな。





白き魔獣

「そんな宝具(アイテム)が実在していたなんて!」





やはり知らないみたいだ。この世界には『アークエイル』の宝具(アイテム)が存在してない物もあるのか?不味いな、この世界に『アークエイル』の宝具(アイテム)を知られる訳にはいかないな。さらにこっちの世界の宝具(アイテム)も調べなきゃならないしな。城に戻ったら『クリスティーナ』に頼むか。





レイヴン

「さてネタばらしも済んだところで続きを始めようか。」





そろそろ一撃で終わらせよう。





レイヴン

「ここからは私のファイナルターンだ!!」





そのころ、アイネとミオは木に登って上から俺達の戦いを伺っていた。二人は俺達の戦いにただ驚くしかなかった。





アイネ

「あの魔獣かなりステータス上げて最終奥義(ファイナルアクション)まで出してる。このままじゃベリアル様やられちゃう!」



ミオ

「いいえ。この勝負ベリアル様の勝ちよ。」



アイネ

「どうして?ベリアル様追い込まれてるのに?」



ミオ

「わからないの?魔獣があれだけステータスを上げてるにもかかわらず、ベリアル様は基本の数値だけで回避していた。いくらベリアル様でも、あそこまでステータスを上げらたら敵うはずがないのに、奥義(アクション)どころか能力(スキル)も使わない。いいえ、使う必要がなかったのよ。」



アイネ

「ごめん。ミオの言ってる事よくわからないんだけど?」



ミオ

「私も何を言いたいのかわからないわ。でもこれだけは言える。全てはベリアル様の手の内の中ってことよ!」





ミオも観察力が上がって来たな。じゃあ終わりにしますか。





白き魔獣

「やらせるか!獣王奥義(ビーストアクション)『ファングクラッシャー』!!」



レイヴン

「遅い!最終奥義(ファイナルアクション)無拍子(むびょうし)』!!」





俺の拳が、奴のおでこに直撃した。『無拍子(むびょうし)』は一撃必殺の為、HPを一瞬にしてゼロにする。この世界のなら普通の人間やモンスターは死んでいるが、こいつは気絶で済んでいるから大丈夫だな。





ミオ

「やりましたねベリアル様!!」



アイネ

「心配したんだから!!」



レイヴン

「それはすまなかった。」





木の上で様子を見ていたアイネとミオが降りて来た。アイネは泣きながら俺の所に来たが余程心配してたんだろうな。ミオは俺の勝利を喜んではいたがなんか浮かない顔だな。





ミオ

「ベリアル様。無礼を承知でお聞きしてもよろしいでしょうか。」



レイヴン

「なんだ?」



ミオ

「何故ベリアル様は、御自身よりステータス上回ってる相手に勝てたのでしょうか。既に能力(スキル)宝具(アイテム)を使用していたのでしょうか。」



レイヴン

「いや、私が使ったのはこのバカ犬の曲芸が終わった後の『"(せい)" "(どう)"合一(ごういつ)』とその代償効果を防ぐ為の『勇気の証』だけだ。」



ミオ

「ではどうやってあの魔獣の猛攻を避け切ったのですか!?」



アイネ

「私も知りたい!!」





二人とも無邪気にはしゃいで、まるで子供だな。まあ子供なんだけどね。それなら魔王ベリアルのゲーム攻略講座を始めますか。





レイヴン

「より強い相手と戦う時こそ、最初は力を使うな。」



ミオ

「何故ですか?それでは簡単に相手にやられます。」



レイヴン

「だからこそ逃げる事に集中しろ。先ずは相手の情報を得ることが重要だ。」



ミオ

「情報?」



レイヴン

「そうだ。相手の弱点や動きの癖を見抜く事が重要だ。そうすれば回避もしやすくなる。それによって自分の持っている手札を最小限に選択できる。」




ミオ

「なるほど!」



アイネ

「でも相手がこちらの情報を得ようとして、動かなかった時はどうしたらいいですか?」



レイヴン

「そう言う時はこちらから仕掛けて、相手の情報を引きずり出す。」



アイネ

「え?でもそれじゃあ自分の手の内もバレちゃうんじゃ?」



ミオ

「こちらからは嘘の情報を相手に与えるのですね!」



レイヴン

「その通りだ。」



アイネ

「どう言う事?」



ミオ

「例えば、自分の苦手な事をやって相手にそれが得意だって事を認識させる。すると相手はこっちが得意な事を苦手と錯覚してそこを狙ってくる。そうなれば相手の不意を突く事が出来るのよ!」



アイネ

「そうなんだ!」





ミオはよく観察して理解しているな。教育している俺としては、こんなに嬉しい事はない。娘の成長を喜ぶ父親の心境ってこんななのかな。まあ、結局子供どころか結婚はおろか彼女も出来ず、童貞のまま死んじゃったけどね。

それにしてもこの戦術どっかのアニメで見たような気が?今回の『白き魔獣』のシチュエーションもそのアニメで見たような気がするんだけど気のせいかな?





白き魔獣

「イテテ・・・・一体何が?」




あっ!バカ犬が起きた。それにしてもタフだな、結構ダメージ与えた筈なのに。





レイヴン

「やっと起きたかバカ犬。」



白き魔獣

「そうか、僕は負けたのか。勝ったと思ったんだよな。」



レイヴン

「そんな事より、何故この森に入ってきた。貴様がいる事は誰も知らなかったみたいだが。」



白き魔獣

「そりゃあ、昨日からこの森に居座ったばかりですよ?」





なるほど、そりゃ誰も知らないわけだよな!でもこいつの実力ならモンスターのいるエリアでも普通に暮らせたんじゃないか?





白き魔獣

「実は僕が住んでた山なんだけど、『三幻獣(さんげんじゅう)』の奴等に追い出されてこの森に来たんだけどね。」





嘘だろ!?こいつを追い出す『三幻獣(さんげんじゅう)』ってどんな連中なんだ!少なくとも『アークエイル』にはそんなモンスターは存在していない。まあそれは後回しにするとして、今はこいつをどうするかだ。『パンジャドラムの大森林』に置いとく訳にもいかないしな。一層の事、俺が引き取るか?いやテレサがなんて言うか・・・・ってあいつは俺のおかんか!!





白き魔獣

「どうかしましたか?」



レイヴン

「ああ、行くとこが無いなら私が貴様を引き取ろうと考えていた。ここに居ても迷惑だしな。」



白き魔獣

「本当すか!?ならご主人様と呼ばせて下さい!」





こいつの戦闘力は欲しいくらいだしな。それにこの世界の事を色々聴き出せそうだし、拾って持って帰っても問題はないな。





レイヴン

「良かろう。なら私の真の姿を明かそう。」





と言うわけで、フェイス!オープン!!





ベリアル

「私は、魔王ベリアル。『ガイロス帝国』の支配者だ。」



白き魔獣

「アンデット!?魔族だったんすか!?」



ベリアル

「そうだ。私にはお前が必要だ。今後はガイロスの為に働くがいい。」



白き魔獣

「それは構いませんが、何故ご主人様みたいなお方が人間の真似事みたいな事をしているのでしょうか?」



ベリアル

「それはこっちにも事情があるの!」





俺はそう言いながら『白き魔獣』にまたがった。そうだ!こいつに名前をつけないとな!こいつあのアニメに出てたチワワによく似てるから、そいつの名前から拝借しますか。





ベリアル

「それから今日からお前の名は『桃央(ももお)』だ。」



桃央

「なんすか、そのダサい名前は?」



ベリアル

「主人であるこの私から授かった名前に何か不満でもあるのか。」



桃央

「いいえ!!大変有り難いです!!失礼しました!!」



アイネ

「ダメだよ桃ちゃん!せっかくベリアル様が付けてくれた名前なのに文句なんか言っちゃ!」




ミオ

「そうよ桃ちゃん!こう言うのは有難く貰っとくものよ!」



桃央

「なんか変なあだ名付けられてる!?」





『桃ちゃん』か、こいつにはお似合いのあだ名だな!





桃央

「あの良かったらお嬢さん方も一緒に乗りますか。」



アイネ

「え?いいの?」



桃央

「勿論ですよ!僕女性を乗せるのは大好きなんです!男性と違ってお肉はムチムチしてて柔らかくて気持ちいいし、特にスカートの下に履いている布がまた気持ちよくて!!」



ベリアル

「アイネ!ミオ!お前達にこれを渡しておく!!」





俺は咄嗟に二人にあるアイテムを渡した。





アイネ

「羽のペンダント?」



ミオ

「ベリアル様、こちらの宝具(アイテム)は?」



ベリアル

「『エアーウィング』だ。それを装備していれば飛行能力(スキル)を得る事が出来る。それで森林の外にいる、レイとコーイチに一足先に報告しに行ってくれ。余りにも長いし過ぎた。二人共心配してるだろう。」



アイネ

「え〜桃ちゃんの背中に乗せてくれないんですか〜?」



ベリアル

「ダ!メ!だ!」



アイネ

「そんな〜。」



ミオ

「仕方ないわよアイネ。ベリアル様の命令よ。」





二人は渋々と『エアーウィング』を装備して空から、レイとコーイチの所に向かった。





桃央

「あの、何もあんなに拒否しなくて・・・・も!?」



ベリアル

「次あんな変態発言してみろ!お前の毛皮を刈り取って質屋に売り飛ばすぞ!!」



桃央

「はいっ!!失礼しましたぁ!!」





変態だ・・・・こいつは変態犬だった!!身内を含めて周りの女性には近づかせないようにしよう。そんな決意を改め、俺達も森林外に向かって歩き出した。









俺と桃央は森林の外、レイ達がいる所にようやく出られた。先に行かせたアイネとミオが着いて説明してくれたようだ。だが彼女達は驚いた顔で俺達を見て黙っていた。化け物でも出たような顔だな。




レイヴン

「ご安心を、白き魔獣はこの私が手懐けました。貴方方に危害を加えるつもりはありません。」



桃央

「よろしくお願いします!」





だが二人共何も言わず驚いたまま固まっていた。




レイヴン

「あのー、お二人さん?」



レイ

「これが白き魔獣!」



コーイチ

「初めて見るけどなんて迫力なんだ!!」





え?嘘?お前等も!?





レイヴン

「お二人共、それは本気で言ってるのですか?」



コーイチ

「当たり前です!!冗談では済まされません!!」



レイヴン

「なんかすいませんでした。」



レイ

「アイネとミオから聞きました。奥義(アクション)を、たった二回使っただけで倒したとか、かなりの実力者とお見受けしました。」



レイヴン

「ありがとうございます。」



レイ

「では早速薬草採取に取り掛かりましょう。」





こうして『パンジャドラムの大森林』で起きた、モンスター出現事件は無事解決し、薬草を採り終えて王都に帰還した。





レイ

「レイヴンさん。よかったら夕食をどうでしょうか。ご馳走しますよ。」



レイヴン

「いいえ。それでしたらアイネとミオをお連れください。私はこの魔獣の登録が終わった後、用事がありますのでまたの機会に。」





レイから食事に誘われたが、そこはアイネとミオに任せた。なんせ鎧の中身が骸骨(ガイコツ)だから食べた物が漏れ出すしな。それにこの後輝夜と報告会もあるし、断るしかなかった。集会所(ギルド)でクエストの報酬の受け取りと桃央の登録を済ませ、終わった後に皆んなと別れて俺と桃央は人気のない路地裏まで来ていた。





ベリアル

「まさかお前のお陰でここまでの功績を挙げられるとは思いもしなかったぞ。」



桃央

「よかったじゃないですか!念願のプラチナクラスまで一気に昇格出来たんですから!」



ベリアル

「少々複雑な気分だ。何故こんな可愛いチワワを皆恐れるのだ?」



桃央

「なんか酷い言われようですね!少しは感謝してくださいよ!」





集会所(ギルド)で桃央の登録をした時、何故かブロンドクラスからプラチナクラスに昇格していた。どうやら白き魔獣である桃央を手名付けたのが過大評価されたらしい。俺は一躍有名になってしまったが、目立たつ行動したかったな。





桃央

「ところでなんでこんな人気の無いところに来たんすか?」



ベリアル

「人と会う約束をしている。」



桃央

「もしかして彼女っすか!!ご主人様も隅に置けないっすね!」



???

「中々嬉しい事を言ってくれるではないか魔獣よ。」



桃央

「え?」



ベリアル

「もう出て来ていいぞ輝夜。」




誰もいない路地裏から、不気味な雰囲気をただ寄せながら『輝夜姫』が姿を現した。桃央は警戒しながらその様子を伺っていたが、輝夜はそれを面白がるように桃央を見ていた。




桃央

「霊体化の能力(スキル)!?『和の国』の妖怪か!?」





『和の国』?もしかして日本の事か?まあそれは桃央から色々聞き出すとして、輝夜との報告会を始めよう。





ベリアル

「では早速報告会を始める。先ずは私からだ。冒険者登録を済ませた後『パンジャドラムの大森林』にて薬草採取のクエストを受けたが、薬草だけでなく魔獣も入手した。そいつを紹介しよう。」



桃央

「今日からお世話になります!白き魔獣こと桃央って言います!よろしくお願いします!」



輝夜

「ガイロス帝国軍『四天将』の一人。『百鬼夜行』の長、輝夜姫と申す。良しなに頼むぞ。」



桃央

「はい!輝夜姫様!!」



ベリアル

「桃央が我が軍に加わる事になったわけだが、お前はこの魔獣をどう思う。」



輝夜

「中身はあまり知的ではありませぬが、闘争心だけは持ち合わせているようです。我がガイロス帝国に相応しい魔獣かと思います。」



ベリアル

「そう・・・か?」





あれ?俺だけか?桃央を可愛いチワワだと思っているのは?





輝夜

「では我が君、そろそろ妾の方からお耳に入れたき知らせがあります。」



ベリアル

「話してみよ。」





俺は輝夜からこの街での初めての情報を色々聞いた。だが『異神(いじん)』の情報を聞いた時、俺は驚きを隠せなかった。まさかあの英雄達がこの世界に転生しているなんて思いもしなかったからだ。




ベリアル

「それは本当か!?」



輝夜

「はい。竹姫と月姫が間近で確認しておりますし、二人を通じて妾にもその光景が観えたため、間違いないでしょう。しかも彼等はその小娘と謀反を企てている事も確認が取れました。」




なんて事だ。源義経に織田信長に土方歳三。さらには信仰信者の天草四郎にジャンヌダルクだって!?時代は違えど、歴史の英雄達がこの世界に転生した!?しかもそいつらを従えてるセレーナって何者なんだ!?




輝夜

「我が君がここまで取り乱すとは、その異神達を脅威に感じるくらいご存知なのですか。」



ベリアル

「まあな。信じられないかもしれないが、奴等は私のいた世界の先導者達即ち大昔の英雄達だ。」



輝夜

「信じ難い話ではありますが、もし我が君の話が嘘偽りの無い(まこと)の事なら我がガイロス帝国軍の脅威なる存在、我が君が命じてくだされば亡き者にしますがいかが致しましょう。」



ベリアル

「敵にすると厄介だ。出来れば友好関係を築きたいが難しい所だ。引き続き竹姫と月姫には異神達とセレーナの監視と伝えよ。絶対に目を離すな。」



輝夜

「御意。」



ベリアル

「それと危険な任務になるかもしれないが、調べて欲しい事がある。」



輝夜

「何なりと。」



ベリアル

「宗教団体組織『サリン』について調べて欲しい。」



輝夜

「サリン?聞いた事もない名ですが承りました。」





これほどの偉人達が集まっているとすれば、サリン絡みは奴だけだ。だけど彼は偉人なのか?だって平成の時代の人間の筈だぞ?もしこの世界にいるとすれば放って置く訳にはいかない。戦力を直ぐに『ペルーニャ村』に集結させないと、偉人達に勘付かれる危険性が高い。ルシファー、ヘラクレス早く連れて来てくれ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ