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異世界征服計画  作者: トッシー
第一章『ベリアルの野望』
1/10

第一話『魔王降臨』







所詮この世は『弱肉強食』。強者は富、名声、力、正義、信頼を獲得し、弱者はゴミとして扱われる。抵抗や反抗も許される事も無くただ虐げれ、差別され、痛めつけられ、最後はボロ雑巾のように捨てられ死んで行く。そんな息苦しい世の中で俺たちは暮らしている。




そして俺はそんな社会で生きている弱者だ。学生時代はいじめられ、会社では避けられ、軽蔑され、家族からは俺の事なんて完全に忘れ去られていた。




そんな俺にも唯一の居場所があった。携帯アプリゲーム『アークエイル』。誰もが参加できる

RPGゲームで、四年も続いている大人気ゲームだ。その人気の秘密は、このゲームの変わった設定である。





例えば多種多様の種族と職業があること。種族だけでも400種、職業は1000種くらいある。ちなみに一番プレイヤーに人気が高い職業が『魔術師(キャスター)』類の職業だ。特に『魔法剣士(マジックナイト)』は魔法が使えるだけでなく近接戦闘も出来るから『勇者』や『冒険者』の称号を持つ人達には人気の高い職業だ。




次に注目すべきは、自分が勇者にもなれば、魔王にもなれる。つまり、この世界でラスボスになって迎え撃つプレイヤーと戦ったり、ギルドや個人プレイヤーが国を持って王様になる事もできる。俺もその悪役プレイヤーの一人だ。『ソロモン帝国』を納る魔王『ベリアル』。属性は『魔』種族は『アンデッド』。だから見た目は鎧を着た骸骨の姿をしている。騎士みたいな格好をしているが、職業は『死霊魔術師(ネクロマンサー)』なのだ。ギルドについては入った事ないから、俺も説明出来ないな。




そして一番注目すべきは、オリジナルのNPCやアイテムをプレイヤー自身で作成する事が出来る。俺もいくつか作ったが、レベルは150から350までのキャラクターが多い。






ベリアル

「エリア内に侵入者・・・・またこの人か。懲りないな。ヘラクレスに応戦させるか。」






因みに俺の Level(レベル)は368で一般的な上級者ですら平均200未満である。つまり

俺はこの世界で最強の存在なのだ。そんな現実(リアル)から目を背け、ゲームに高揚感を味わっていた。




だが長くは続かなかった。大人気ゲームは運営側の勝手な都合で閉鎖された。しかも、何の予告も無く急にだ。今までの努力が全て無駄になってしまった。居場所も奪われた俺はいじめと疎外感に耐え続けて生活しなければならなかった。




だがそんな事考える暇も夢も見る事無く、俺は交通事故でこの世を去った。しかもひき逃げだった。これで良かったかもしれない、そう思っていた。











???

「・・・・ル様。・・・リアル様。」





誰かが俺を呼ぶ声がする。女の人の声だ。そうか、ここは天国なのか。やっぱり死んだんだな。






テレサ

「ベリアル様!!」






隣でいきなり大声を出されたので、俺は思わず振り向いてしまった。だがそこにいたのは俺のよく知る人物だった。






ベリアル

「テレサ・・・なのか?」






『テレサ・ヴァーミリオン』。レベルは328。属性は『魔』種族は『ヴァンパイヤ』。金髪のポニテールに瞳の色はブルースカイ。清楚でお淑やかな美人に見えるが、職業は『凶戦士(バーサーカ)』なのだ。最初に俺が作ったNPCで普段はこんな感じだが、戦闘モードに入ると目が赤くなり、人が変わったかのように敵を蹂躙する。今では戦闘メイド『ワルキューレ』のメイド長も務めていて、さらに魔王ベリアルの秘書官も務めている。確かそんな設定だったかな。



そんな彼女が目の前にいる。けど問題はそこじゃない!!NPCは声の設定は出来ないはず。いや、何故意思を持っている!?






テレサ

「ベリアル様!!」



ベリアル

「え!?」






何故か彼女はいきなり俺に泣きながら抱きついてきた。まるでもう二度と再会出来ないと思っていた娘のように泣きじゃ組んでた。理由は何となくわかっていた。






テレサ

「よかった!もうお会い出来ないかと思ってました!!」






そう『アークエイル』が閉鎖されたため、彼女も不安だったんだ。自分達が消されていく恐怖に、誰が耐えられる者か。それを運営は何も考えていない。






テレサ

「ベリアル様。」



ベリアル

「テレサ。私もお前達と再会出来て喜ばしい限りだ。」






辺りを見渡すと、俺を主人のようにひれ伏す部下たちの姿があった。テレサ率いる戦闘メイド『ワルキューレ』や『悪魔参謀バフォメット』の姿もあった。






ベリアル

「お前達も心配をかけた。」






テレサもこんな感じだから、バフォメット達も同じ状態の筈だよな。






バフォメット

「いいえ。我々よりもベリアル様がご無事で何よりでした。」






『悪魔参謀バフォメット』。レベルは256。属性は『魔』。種族は『獣人』。職業は『魔術師(キャスター)』。頭がヤギの姿をした獣人の悪魔だ。軍隊の参謀役を務めている知恵者だが、執事の服装をしている。





これで確信が言った。ここは異世界『アークエイル』。そして居城『ガルバトロス』だ。なら()()もいるはず。






ベリアル

「バフォメット。各エリアで待機中の将達に緊急招集。この『玉座の間』に来いと伝えろ。」



バフォメット

「彼等を・・・ですか。」



ベリアル

「そうだ。『四天将』を招集せよ!」






ガルバトロス最強の四大勢力『四天将』。その高レベルとステータス、またデタラメな能力(スキル)を持つNPCから選ばれた最強の戦士達だ。だが一つ問題があった。






バフォメット

「御言葉ですがベリアル様。『ワーウルフ』もお呼びになるおつもりですか。」



ベリアル

「何か不満か。」



バフォメット

「いいえ。承りました。」






うわぁ・・・バフォメットの不服そうな雰囲気がこっちまで漂って来る。無理もない。ワーウルフは四天将の中でかなりの問題児だからな。






ベリアル

「テレサ。ガルバトロスの警戒レベルを最大限まで引きあげろ。万が一に備え、ワルキューレ達には第一戦闘配備で待機させよ。」



テレサ

「厳重警戒ですか!?」



ベリアル

「そうだ。今現在、このソロモンは正体不明の現象が起きている。すぐに取りかかれ。」



テレサ

「はっ!」






何故NPC達が意思を持っているのかも気になるが、この国の外が気になる。先ずは作戦会議だ。














テレサ

「では皆さん。我等が王に忠誠の儀を。」






数分後、各方面に待機していた四天将が玉座の間に集結し、それぞれ跪いた。






ルシファー

「『東の天界』。守護を司る四天将が一人『摩天竜王(まてんりゅうおう)ルシファードラゴン』。御身の前に。」






摩天竜王(まてんりゅうおう)ルシファードラゴン』。レベルは350。属性は『魔』『神』『竜』。種族は『竜人』。職業は『錬金術師(アルケミスト)』。テレサの次に作成したNPCだ。

桃色のグラデーションがかかった黄色の髪をツインテールにしていて、向かって右側にピンク色の大きなリボンを付けている。瞳の色はオレンジだ。服装は白と紫のドレスの上に甲冑を着たものだが、スカートは彼女が動きやすいよう膝くらいまで短めにしている。スカートの中からは、甲冑のような竜の尻尾が生えている。

見た目は中学生くらいでキュートな少女に見えるが、言動は大人っぽく礼儀正しい。

作成した当初は『宝石竜王レインボードラゴン』と呼ばれていたが、あまりに弱かったため、いろいろ種族やスキルを追加していく内にこうなって、今では四天将の中では最強のNPCである。世間で言うところの「混ぜすぎ危険!」である。






輝夜

「『西の都』の守護を司る大妖怪。四天将の『輝夜姫(かぐやひめ)』。御身の前に。」







輝夜姫(かぐやひめ)』。レベルは318。属性は『魔』。種族は『妖怪』。職業は『暗殺者(アサシン)』。全身が白色の肌をしていて、身体のあちこちにオレンジ色をした傷跡のような模様がある。目の色もオレンジ色をしている。着物も真っ白でまさに白のイメージしかない。

貴族のお姫様みたいな振る舞いをし、天真爛漫な性格をしている。

『百鬼夜行』の長をしていて、出陣すればギルド連合を一夜にして壊滅する事も可能だ。てか壊滅させた。






ヘラクレス

「『南の領地』。守護の四天将。『昆虫軍団総大将こんちゅうぐんだんそうだいしょうヘラクレス』。御身の前に。」







昆虫軍団総大将こんちゅうぐんだんそうだいしょうヘラクレス』。レベルは320。属性は『魔』。種族は『昆虫族(インセクター)』。職業は『剣士(セイバー)』。本当は武士なのだが、それも剣士(セイバー)の部類に入ってしまうのだ。

見た目はもちろん『ヘラクレスオオカブト』が二足歩行していて、武士の甲冑をつけている。

四天将一番の力持ちで、頭の二本の角は自分より大きい相手を軽々と持ち上げる。

とても律儀で真面目な性格で真向から向かってくる相手に正々堂々立ち向かう武士の心を持っている。頑固なのがたまに傷だが、そこも彼の良さなのである。

輝夜姫の百鬼夜行と同じ昆虫軍団もギルド連合を壊滅する戦力を保有している。てかこっちも壊滅させた事がある。






ルシファー、輝夜、ヘラクレス

「我等四天将!ベリアル様の呼びかけに応じ、馳せ参じました。」






あれ?ちょっと待てぇ!!四天将一人いないけど!?アイツどうした!?





ベリアル

「バフォメット。ワーウルフはどうした。」



バフォメット

「それが「めんどくさいから行かない」と言って寝ました。」



ヘラクレス

「なんだとぉ!?」



輝夜

彼奴(あやつ)阿呆(あほう)か?」






やっぱ設定は『アークエイル』のままか!!コマンドで指示出しても命令無視が多かったたんだよ!!てか緊急事態なのに呑気だな!!







ヘラクレス

「ふざけてるにも程がある!!ワシが無理矢理にでも起こして連れて来る!!」



ベリアル

「待てヘラクレス。時間の無駄だ。放って置け。」



ヘラクレス

「しかし!」



ベリアル

「捨て置けヘラクレス。奴の事だ。私達を信じて任せているのだ。奴抜きで始めよう。」



ヘラクレス

「はっ!」






まあ余計面倒な事になるからもうアイツは無視でいいや。

さてと、本題に入りますか。








ベリアル

「現在このソロモンに異常な現象が起きている。そのため現在ガルバトロスは厳重警戒態勢が強いられている。」






そう感じているのは俺だけなのかもしれないけど。






ベリアル

「そこで外の状況を確認したい。ヘラクレスよ。昆虫軍団の忍び衆『黒光(くろびかり)』にソロモン国周辺を探索を命じよ。」






『黒光』とは、皆さんご存知『ゴキブリ』の事です。ちなみにこの事を知っているのは、昆虫軍団と俺だけ。






ヘラクレス

「ご心配には及びません。既に我が忍び衆はベリアル様の命を受け取り、出立されました。」



ベリアル

「何?」



ヘラクレス

「黒光は万が一に備えて、ベリアル様の命令をいつでも受け取れるようこの『玉座の間』に待機しておりました。」






って事はこの部屋ゴキブリいたの!?






ベリアル

「そうか・・・仕事が早いなヘラクレス。」



ヘラクレス

「お褒めの言葉を預かり、有難き幸せです。」






まあこれで情報が早く入手出来るなら有難い。後はこの国の守りを強化しないといけないな。






ベリアル

「以下の者は東西南北のエリアの守りを固めよ!昆虫軍団の忍び衆が戻り次第方針を決める!」



ルシファー、輝夜、ヘラクレス

「はっ!」



ベリアル

「それとテレサ。ギルドスキル『迷宮の霧(ダンジョンミスト)』を発動させる。ワルキューレ達にも至急伝達してくれ。」






『ギルドスキル』とは、施設の防衛システムのような物で『迷宮の霧(ダンジョンミスト)もそのスキルの一つだ。その効果は侵入してくるモンスターやプレイヤーが入るとまた入口に戻す効果がある。今はこれで守りを固めるつもりだ。






テレサ

「わかりました。ですがワーウルフは如何致しましょう?」



ベリアル

「先ほども言ったが捨て置け。奴なら言わずとも異変に気づいているはずだ。」



テレサ

「あの『駄犬』にそんな頭があるとは思えませんが?」



ベリアル

「かもしれないな。もしかしたら本能で嗅ぎつけてるかもしれん。」






そうだ。アイツならこの異変に気づいているはずだ。『北の大森林』の守護獣『ワーウルフ』なら。






ワーウルフ

「なんじゃこりゃ?こんな山今まで見かとなか!」






そして俺の予想通り彼は気づいた。






ワーウルフ

「まあ、ベリアル様(親父殿)の事じゃ。何かやっとるじゃろ。さてもう一眠りじゃ。」






こうして俺たちは黒光の帰りを待ち、厳戒態勢のまま待機していた。














黒光が帰還するまでの間、防衛強化のため各自解散し、準備を始めていた。ちなみに俺は『応接間』と呼ばれる部屋に一人いる。いろいろと試さなきゃいけない事もあるし、『宝具(アイテム)』や『装備能力(スキル)』も確認しなければならない。






ベリアル

「コンソールの使い方は、携帯のタッチ画面と同じ。だがNPCへの指示系統は口頭でなければダメか。」






そうだ。一様ここの世界地図を見ておこう。俺たちのいた『アークエイル』と同じなのか確認しなければ。






ベリアル

「『反則能力(チートスキル)』『世界の写しワールドマッピングスキャン』発動!」






反則能力(チートスキル)』。レベル300以上になると保有できる能力。名前の通り、発動条件無し、ノーコストで強力な能力を発動できるまさに反則技だ。

この『世界の写しワールドマッピングスキャンもその『反則能力(チートスキル)』の一種だ。本来なら『生成宝具(レクリエイトアイテム)』でマップを作るのだが、この能力があれば読み込むだけでマップが見る事ができる。






ベリアル

「なんだこれは!?」






なのに俺は甘かった。もっと早くにこの能力を使っていれば対処できたはずなのに!!






ベリアル

「この世界は、私の知る『アークエイル』ではないと言う事か。」






そこに写っていたのは『アークエイル』とはまた違ったマップが写し出されていた。つまりここは『アークエイル』でない。ならここはどこなんだ。






ベリアル

「これまで以上に事態が深刻だったとは、自分の無力さを呪いたいくらいだ。ん?」






その時、マップに凸のマークが動いていた。このマークは、チームや軍隊を表すものだ。村に近づいている?






ベリアル

「ズームアップ。リアルタイムで状況確認。」






村が襲われている?しかも野盗じゃない、正規軍か。どこの世界でもあるのだな。弱者が強者の手によって蹂躙される光景は。

でも・・・・それでも。納得できないよな。弱者がいつまでもゴミみたいに扱われるのは納得できない!それにこんな事する連中は強者なんかじゃない!!






ベリアル

「ただの汚物だ!」






さっきの場所は『ペルーニャ村』か。城のみんなは防衛強化で忙しいし、仕方ない俺が行くか。






ベリアル

「『宝物殿』解放!まず宝具(アイテム)から『レリックの指輪』と『勇気の証』『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を装備。さらに反則能力(チートスキル)幻想殺し(イマジンブレイカー)』と補助能力(サポートスキル)瞬間移動(テレポーテーション)』を装備。さらに反則魔法(チートマジック)異世界の門(ワールドゲート)』『強化魔法(ビルドマジック)』『天国と地獄(ヘルアンドヘブン)』と『最終魔法(ファイナルマジック)』『金色の破壊神ゴルディオンクラッシャー』装備。こんなものか。」




けどこれはいい機会かもしれない。この世界で能力や魔法、奥義がどのように発動するのかこの目で見て見たいし、体で感じてみたい。そう考えれば『ペルーニャ村』の襲撃は実験するには打って付けだ。






ベリアル

「そうと決まれば実験開始だ。補助能力(サポートスキル)瞬間移動(テレポーテーション)』発動。』







俺がいた『応接間』から移動して俺が出た先は『ソロモン国』を出た城壁の外、しかも正面の南門の前だった。この能力は低レベルのプレイヤーでも装備できる能力だが、レベルによってその移動距離が変わってくる。






ベリアル

「私のレベルではここまでが限界か。まあ低レベル能力(スキル)だから、いくら感知能力(スキル)が高いテレサやルシファーでも私を捉えるのは難しい。」




それにしても城壁の外には出たものの目の前は氷山か。本当なら大森林の中だぞ。嫌な予感は的中してたか。






???

「ベリアル様!」






あれ?誰か呼んでる?てか二人こっちに来る。






???

「ベリアル様!こんなところで何をしているのですか?」



ベリアル

「お前達は何をしていたのだ。」



??

「はっ!四天将の方々がいつでも出陣できるよう雪かきをしていました。」






よく見たら辺りは雪景色だもんな。兵を出撃させるには足場が悪すぎる。改善すべき点だな。てかこの二人って・・・誰だっけ?見た目は人だし、身長はルシファーと同じくらいだから中学生くらいか?






ベリアル

「そう言えば見ない顔だが、新入りか?」



???

「はい!私達『双子悪魔(ジェミニーデビル)』!!」



??

「二人で一体の悪魔です!」






双子悪魔(ジェミニーデビル)』?あっ!『アークエイル』が閉鎖される前に最後にやったあのイベントの報酬モンスターか!!ほとんど絡みがなかったからすっかり忘れていた。






ベリアル

「すまない。私はお前達を軽視していたようだ。」



???

「そんな!気にしてません!!」



??

「私達が未熟なためです!ベリアル様が忘れるのも無理はありません!」



ベリアル

「それは違うぞ。ここにいるソロモンの兵士達は、私が必要だから入手した。お前達もその中にいる。」






そうだ。こいつらは決して無用な存在なんかじゃない!






ベリアル

「ちょうどいい。お前達もこのソロモンの兵士だ。ここにその証となる装備をお前達に渡そう。」






そうこの時のために用意したんだ。追加属性を得られるあの装備ともう一つ。






ベリアル

「そう言えば、お前達一人一人には名前が無かったな。この私がそれぞれ名を授けよう。」



???

「いいんですか!!」



??

「そんな!恐れ多いです!!」



ベリアル

「気にするな。ではそれぞれ名と装備を与える。」






まあ最初から来たら渡すように決まってだんだけどね。






ベリアル

「先ずは『双子悪魔(ジェミニーデビル)アイネ』。お前には『炎帝の鎧』と『煉獄剣テオテスカトル』を与える。」



アイネ

「ありがとうございます!!」






双子悪魔(ジェミニーデビル)アイネ』。レベルは・・・150!?そう言えば、二人の教育係はテレサに任せてたっけ。よくここまで育てたな。

属性は『魔』それと先ほど装備した『炎帝の鎧』の効果で『炎』と『竜』の属性も追加された。種族は『悪魔』。

職業は『炎帝の鎧』を装備した事で『魔術師(キャスター)』から『魔法剣士(マジックナイト)』に変わった。

彼女の見た目は、黄色のグラデーションがかかった桃色のロングヘアで、水色のリボンカチューシャがトレードマーク。瞳の色はアンバー。服装はメイドの格好から『炎帝の鎧』に変わって全体的に黒だが、炎をイメージした赤のラインが通っている。動きやすいよう短めのスカートを履いている。形はドラゴンの鎧に近い。

性格は活発で友好的だが、彼女とはあまり接した事がないからわからないな。戦闘に関しても未だ未知数だ。






ベリアル

「そして『双子悪魔(ジェミニーデビル)ミオ』。お前には『水神の鎧』と『氷帝剣ヒャダルダオル』を授けよう。」



ミオ

「ありがとうございます!!」







双子悪魔(ジェミニーデビル)ミオ』。レベルはアイネと同じ150。こちらも属性は『魔』だが『水神の鎧』を装備した事で『水』と『神』が追加された。種族は『悪魔』。

職業はアイネと同じ『水神の鎧』を装備した事で『魔法剣士(マジックナイト)』に変わった。

紫色のグラデーションがかかった水色のボブヘアーの一部を編み込んでハーフアップにした髪型をしていて、黄色い星が二つ連なった形のヘアピンで前髪を留めている。瞳の色はパープル。服装に関してもアイネと同じだ。メイドから『水神の鎧』に変わって全体的に黒が目立つが青いラインが掛かっている。動きやすいよう短めのスカートにしている。こっちも形はドラゴンに近い。

彼女は真面目なのか知的っぽいところはあるけど、やっぱり交流がないからよくわらん!






アイネ

「ところでベリアル様はどちらへ行かれようとしてたんですか?」




ベリアル

「いっ・・・・いやっ!」






やっぱ勝手に外出しようとしてる事に気付いている!?仕方ない何とか誤魔化そう。






ベリアル

「いや。そこの山を越えた辺りまで散歩を・・・。」



ミオ

「まさかそのままお一人で何処かの集落まで行くつもりじゃないですよね?」






バレてるし!!ダメだ完全に本当の事を言うしかない。






ベリアル

「ダメか?」



ミオ

「ダメに決まってます!!ましてやお供も連れずに一人で出歩くなんて以ての外です!!」






何かこの子すごくしっかりしてるな。けどこれじゃ村に行けそうにない。今がチャンスなのに。そうだ!






ベリアル

「なら護衛兵が付けばいいんだな。」



ミオ

「そうですけど?」



ベリアル

「ちょうどいい。お前達の実力をこの目で確かめたい。これより私の動向を許そう。」



ミオ

「え?えぇぇぇ!?」






そんな驚く事!?なに・・・・俺ミオに嫌われてるの!放置してたのが不味かったかな?






ベリアル

「そんなに嫌か?」






ミオ

「恐れ多いです!!私達みたいな若輩者がベリアル様の護衛なんて無理です!!」






本当に真面目だなー。嫌われてなくて良かったけど遠慮しなくていいのに。






アイネ

「あのー私達まだ雪かきの途中なんですけど?」



ミオ

「そう言う問題!?」






逆にアイネはマイペースで遠慮がないと言うか緊張感がない。ちょっと不安だな。






ベリアル

「アイネ。試しに『テオテスカトル』を振ってみよ。」



アイネ

「この剣をですか?」



ベリアル

「そうだ。城門から真っ直ぐ縦に振ってみよ。」



アイネ

「こうですか?えいっ!」






アイネ振り下ろした剣から衝撃波のように炎が吹き荒れ、一瞬にして城門から続く雪道を一気に溶かして、元の道がその姿を現した。除雪作業はこれでお終いかな。






ミオ

「すごい!地面まで乾いてる!」



アイネ

「ミオ!この剣すごく扱いやすいよ!」






気に入ってくれたみたいだな。アイネは早く剣を扱えそうだし安心した。さて二人を連れて『ペルーニャ村』へ行きますか。






ベリアル

「二人とも私に掴まれ。」






そう言われて二人は俺に掴まった。これから何をするかと言うと『反則魔法(チートマジック)』『異世界の門(ワールドゲート)』を発動させるからだ。効果は各エリアを自由に移動できるごく単純な魔法だが、MP使用しない。魔法と言うより能力に近いかな。それを発動させるのだが何故か二人が頬を赤くしているのは気のせいだろうか?






ベリアル

「では行くぞ。」



アイネ、ミオ

「はい!」



ベリアル

「『反則魔法(チートマジック)』『異空間の門(ワールドゲート)』発動!」






発動と同時に何も無い何処から渦を巻き始め、まるで空中に何か穴でも開いたような光景だ。まあ本当に門が出るわけではない。その場で空間が開き、好きなエリアへ移動できる。けど強力な魔法なため、魔力を感知されやすい。テレサ達にバレなきゃいいけどな。
















ベリアル

「二人共着いたぞ。」






今度は逆に異空間から外に出る穴が開いた。多分『ペルーニャ村』の近くの筈だけど、なんか森林みたいなとこに出たな。成功したんだよな?






ミオ

「ここは何処ですか?」



ベリアル

「『ペルーニャ村』の近くだ。そこで実験を始める。」



アイネ

「実験?なんの実験ですか?」



ベリアル

「この世界で宝具(アイテム)、能力、魔法の使用実験だ。『ペルーニャ村』は現在正規軍に襲われている。その正規軍を対象に実験をするが、同時にお前達二人の実力テストも行う。それとこの世界の情報収集だ。」



アイネ

「テストか〜。」






うわぁ、すごく嫌そうな反応だ。アイネはやっぱりテストが苦手な子

か。性格からして、アイネは体育系女子かな。






ミオ

「ちょっとアイネ!私達の実力を見てくれる機会を、ベリアル様が作ってくれたんだから、頑張りなさい!」






その点、ミオはしっかりしてるな。学校の委員長っぽいや。こっちはガリ勉女子かな。

二人の性格は真逆だけど、自分達の足りない部分を補ってるように見える。昔やってた幼女アニメであったな。この二人を主役にしたら『ふたりはジェミニーデビル』・・・なんか怖いな。






ターシャ

「誰か助けて!!」






なんだ?女性の悲鳴か?こっちに近づいて来ている。もう一人小さな女の子を連れて・・・・逃げている!?






小隊長

「逃すな!終え!!」






後から兵士っぽいのも来た。もしかして彼女達『ペルーニャ村』の住民か。






ターシャ

「お願いです!助けて下さい!!」






勇気あるな!こんな恐怖の骸骨に助けを求めるなんて普通しない筈だけど。






ターシャ

「私の命はどうなっても構いません!どうか妹だけは助けて下さい!!」



サラ

「お願い!助けて骸骨さん!!」






ですよね〜!やっぱりそう言うイメージだよね!おっかない魔王にしか思ってないよね!






兵士A

「小隊長!あれ魔族ではありませんか!?」



小隊長

「バカな!『シャガの大森林』の悪魔供は先日殲滅したのではなかったのか!?」



兵士B

「確か、国家直属の宗教団体組織『サリン』の『悪魔祓い(エクソシスト)』によって滅ぼされた筈です!?」






何か騎士みたいなの三人来たぞ。やっぱりこの姿だと驚くよな。なんか『シャガの大森林』の悪魔ってのと勘違いしてるみたいだけど違います。ちょうどいい、次の実験に取り掛かろう。






ベリアル

「アイネ!ミオ!早速テストを始める。あそこの兵士二人を魔法を使わず通常攻撃だけで倒してみよ。」



ミオ

「お任せ下さい!」



アイネ

「なんかごちゃごちゃうるさいからさっさと殺っちゃおう!」



ベリアル

「ただしあそこの指揮官は殺すな。そして私の元に連れて来い。」






『シャガの大森林』の悪魔達が気にかかるし、何より情報が欲しい。騎士達(こいつら)が『ソロモン国』の脅威になるなら、何らかの対策を立てないといけない。






兵士A

「なんだこの小娘供は?」



兵士B

「構わん見られた以上殺すしかあるまい。」






いやもうそれ死亡フラグでしかないって、言ってる側から駆け出しちゃったよ!?






アイネ

「えいっ!」



ミオ

「はっ!」






あー。呆気なく終わったなあの騎士達。それにしても二人供カウンター上手だな。ちゃんと避けて上手く相手の懐に入っている。相当鍛えられてるな。






小隊長

「馬鹿な・・・・彼等は王国軍主力部隊の兵士だぞ。それをたった二人の小娘に!」






え?あれで王国軍主力部隊?弱すぎじゃね!?双子悪魔(ジェミニーデビル)は入って来てそんなに月日は経ってないぞ!?なんだこの実力差!?






小隊長

「潮時か。」






不利になった途端逃げ出すか。退き際を見る限りじゃ、王国軍主力部隊は本当らしいな。






ミオ

「待って!」



小隊長

「何!?」






まあ逃げられるわけ無いんだけどね。ガッツリ襟首掴まれてるし。






ミオ

「ベリアル様は貴方に聞きたい事があるの。大人しく同行して。」



小隊長

「ふざけるな!あんな化け物に話す事などない!!」



アイネ

「おじさん!いい加減にしないと斬り殺すよ!!」



小隊長

「退路を断たれた!?いつの間に真ん前に!?」






そして可愛い顔して何物騒な事言ってるの!?それにしても、この二人のコンビネーションは完璧だ。これならしばらくは俺の護衛役に着かせても問題ないな。






ミオ

「ベリアル様!人間を連れて来ました。」



ベリアル

「跪かせろ。」






さてと、相手も座らせたし取り調べを始めますか。






ベリアル

「いくつか質問させてもらうぞ。死にたくなければ答えるが良い。」



小隊長

「わかった。出来る限り答える。だから命だけは取らないでくれ。」



ベリアル

「良かろう。先ずお前達が言っていた『シャガの大森林』の悪魔達だが、殲滅とはどう言う事だ?」



小隊長

「我々も噂でしか聞いてないから詳しくはわからないが、先日帰還した国王軍直轄の『悪魔祓い(エクソシスト)』達がそう話していた。だが聞いた話じゃ戦闘した筈の『|悪魔祓い《エクソシスト』達は無傷だったらしい。」






無傷って事は、悪魔達は一方的にやられたって事か。でも彼等も抵抗した筈だ。無傷なんて有り得ない。






ベリアル

「わかった。では『ペルーニャ村』の襲撃はどう説明する。」



小隊長

「当然の事だ。奴らは税金を滞納していたのだぞ。もはや『非国民』であるあの村に生きる価値など無い!それが国王の決定だ。」



ベリアル

「そうか・・・。」






俺は、腰に刺してあった『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を引き抜いた。そして殺意と憎悪を立ち込めて、俺はその男に剣を向けた。






小隊長

「ちょっと待て!!話が違うぞ!!見逃してくれるのでは無かったのか!!」



ベリアル

「見逃す?何か勘違いしていないか?」



小隊長

「何!?」



ベリアル

「私は、お前から情報を聞き出す為に長生きさせてやったに過ぎない。その行いに感謝して欲しいくらいだ。」



小隊長

「何を勝手な!!」



ベリアル

「それと!村娘を追いかけ回す貴様に生きる価値など無い!!」






俺はその剣を振り下ろし兵士を殺した。だが不思議と恐怖や罪悪感は起きなかった。人間の情を無くしたみたいだ。そうか・・・俺はもう人間じゃないんだな。






アイネ

「ベリアル様?元気ないですけど大丈夫ですか?」



ベリアル

「そうか。そうかもしれないな。このような人間を斬り殺す愚かな私自身を知ってしまったのだからな。」






でも、こんな奴を許す訳がない。許しちゃいけないんだ・・・許しちゃ・・・ダメなんだ。






ターシャ

「あの!お願いがあります!」






あっ!そう言えばこの二人を忘れていた。『ペルーニャ村』がどうなったのか聞かないと。






ターシャ

「私の命はどうなっても構いません!!ですから村を!村の者たちを国王軍から助けて下さい!!」






あれ?こっちから聞こうとしてたのに何かあっさり向こうから頼んできた。しかも自分の命を差し出してまで。そうまでして魔族に頼って来るとなると余程の事態か。






ベリアル

「娘よ。お前達の名は。」



ターシャ

「『ターシャ・リベリオン』と申します。こっちは妹の『サラ・リベリオン』です。」



ベリアル

「私の名は『魔王ベリアル』。」



ミオ

「ベリアル様の護衛役をしている『双子悪魔(ジェミニーデビル)』のミオよ。」



アイネ

「同じく『双子悪魔(ジェミニーデビル)』のアイネだよ!よろしくね!」



ベリアル

「これからお前達の村へ行く。その様子を見る限り想像は出来る。今の内に対処しよう。私に掴まれ。」






ターシャとサラは怯える事なく、俺に掴まってくれたが、アイネとミオは何で顔を赤くしているのかは分からなかった。この『異世界の門(ワールドゲート)』単体にしか効力を発揮しないから、あんまりくっ付かれると窮屈だから嫌なんだよな。まあいいや。急いで『ペルーニャ村』に向かおう。













だが俺は馬鹿をした。座標位置の設定を村の中にしたため、俺達は偶然敵が民家を包囲しているど真中に出てしまったのだ。






ベリアル

「まあ大して問題はない。」



ミオ

「囲まれていますけど?」






それは言わないで恥ずかしいから!!






兵士C

「魔族だと!?」



兵士D

「『シャガの大森林』の残党か!まとめて葬り去ってくれる!!」






そのやり取り2回目だから無視するとして、既に村人は斬り殺された後か。情報が少ないから後手に回りっぱなしだな。やっぱり黒光を待つべきだったか。







サラ

「お父さん!お母さん!」



ターシャ

「そんな・・・・。」






嘘ッ!?この子達の親までいたの!?そう言えば辺りを見渡せば大人の死体ばかりだ。子供が見当たらないけど・・・・まさか!?兵士達が囲んでいたのは後ろの民家か!村の子供達はあの中か。






ターシャ

「こんな・・・こんなの酷すぎます!!私達が一体何をしたと言うのですか!!」



部隊長

「愚問だぞ小娘!貴様等は税金を滞納していた『非国民』だ!!もはや反逆に等しい!」



ターシャ

「無茶言わないで!!あんな金額を毎週払って行ったら私達は生活できない!!」



部隊長

「それが!その泣き言が!我が祖国に対する反逆の意思だと言っているのだ!!『非国民』として祖国の敵と知れ!!」






こいつ等無茶苦茶だ。多額の税金を付加っけといて、いざ払えなくなったら村人を『撫で斬り』にする?まるで村を滅ぼす口実じゃないか!!






部隊長

「この娘二人を斬り殺せ!!そして魔族諸共民家に隠れている子供を一人残らず殲滅せよ!」



兵士達

「おぉぉぉぉ!!」






兵士達の勢いが強まったのを見て、俺がとっさに動き出そうとしたその時だった。






兵士C

「ぐわぁ!!」



兵士D

「ぎゃぁ!!」






双子悪魔(ジェミニーデビル)の二人が俺より先に動いたからだ。しかも、俺の命令がないままに、自分達の意思で動いたのだ。






ミオ

「申し訳ありませんベリアル様。勝手な行動をしてしまって。」



ベリアル

「構わん。双子悪魔(ジェミニーデビル)よ!己の心に従い、己が意思で戦ってみよ!!」



アイネ、ミオ

「はっ!」







これはもしや!?NPCの新たな成長かも知れない!この世界で彼等は意思を持ち始めたんだ。自分達で考えて行動する事だって出来るはず。双子悪魔(ジェミニーデビル)を連れて来て正解だった。これはかなりの成果が期待出来るぞ!!






兵士E

「魔族が人間の味方をするだと?どう言うつもりだ!」



アイネ

「何が?」



兵士E

「貴様等だ!人間を下等種族しか見ていない貴様等が、何故人間の味方をする!!」



アイネ

「何か都合良すぎ。」



兵士E

「何?」



アイネ

「こっちの世界の魔族がどうかは知らないけど、私達はこんな無駄な事はしない。」






向こうの戦力は兵士二人と『魔術師(キャスター)』がらしき人物が四人、さっき偉そうにしてたのが部隊長か。二人には兵士と『魔術師(キャスター)』だけ倒してもらって、部隊長は俺が相手をしよう。ただ何か二人の様子がおかしいような?






魔術師A

「もはや話すだけ時間の無駄です。その小娘は種族は『悪魔』ですが属性は『火』と見ました。対処はしやすい。」






ほー。観察力と分析力だけは長けているようだ。ならお手並み拝見としますか。






魔術師A

「アクアスプラッシュ!!」



魔術師B

「アクアストーム!!」




魔術師二人による攻撃がアイネに直撃した。だが一つだけ疑問がある。






魔術師A

「やはり火属性でしたか。効果は抜群です。滅せられたと見て間違いないでしょう。」




その自身はどっから出てくる!?『アクアスプラッシュ』も『アクアストーム』も、二つ星クラスの低レベル魔法だぞ!?いくら150が弱いからって出だしから()()()し過ぎだろ!?




アイネ

「もー!冷たい!!」



魔術師A

「バカな!?我々の最大魔法が効かないだと!?」



魔術師B

「相性は悪い分効果抜群の筈だぞ!?何故平気でいられる!?」






お前等どんだけ弱いんだよ!!






魔術師C

「こうなったらこっちの青い小娘だ!!」



今度はミオを狙って来たか。けどやっぱり魔法は。



魔術師C

「サンダーボルト!」



魔術師D

「サンドストーム!」






やっぱり二つ星か。アイネでダメージがそんなに出てないから、ミオも効かない筈だけど。






ミオ

「ねえ。痺れるし、砂塗れなんだけど?何これ?嫌がらせ?」






ただミオを怒らせただけだった!!散々偉そうな事言っといてこのレベルって酷くないか!?






アイネ

「ねえミオ。もうこの人達殺しちゃおう。」



ミオ

「そうね。こんな人達に生きてる価値なんてないし、殺しましょう。」



兵士E

「まっ・・・待ってくれ!!私は!私は!!」



アイネ

「『地獄の炎(ヘルフレイム)。」






地獄の炎(ヘルフレイム)』。小隊規模にダメージを与えられる全体攻撃魔法の一種。相手を必ず『火傷』の状態にする効果があり、毎ターン相手の攻撃前にダメージを受ける。まあこの世界はゲームじゃなくて現実だから痛みに耐えながら戦う事になるけどね。






兵士E

「アァァァァァァ!!!」



魔術師A

「熱い!熱い!誰かぁ水をォ!!!」



魔術師

「いやダ・・・・ジニダグナァァァァイぃぃぃぃ!!!!」






そして説明通り、兵士と魔術師は炎に包まれ燃えた。それにしても何だ?アイネはやけに殺気が強いような?







ミオ

「『氷の刃(アイスランサー)』。」



兵士F、魔術師C、魔術師D

「アァァァァァァ!!!」






氷の刃(アイスランサー)』。無数の氷の刃を放つ水属性の魔法。『地獄の炎(ヘルフレイム)』同様、全体攻撃魔法の一種であり、相手を『凍傷』と言う状態異常にする効果がある。まあ、あいつ等は一発て終わりだろうけど、ミオも殺気が強すぎる?






部隊長

「バカな。主力部隊が全滅した。こんな事が・・・・我々はこの村の討伐に来た筈なのに。」



アイネ

「討伐?いじめの間違いじゃないの?」



ミオ

「ハッキリ言うけどあなた達悪魔より酷いことしてるわよ?」






何だ?この二人の異様な空気は?まるであの二人から憎悪と怒りを感じるんだが・・・・まさか!?






アイネ

「まあいいや。あなたには両腕両足を斬り落とした後。」



ミオ

「同時に心臓と脳を潰してあげる。」



部隊長

「待ってくれ!!命だけは!!」



アイネ、ミオ

「見せしめよ。」



ベリアル

「そこまでだ双子悪魔(ジェミニーデビル)!!」



アイネ

「ベリアル様?」



ミオ

「お願いです!!最後までやらせて下さい!!」



ベリアル

「退け!!この私の命令が聞けないのか!!」



アイネ、ミオ

「はっ!」






危なかった。俺の声が届いていなかったら一次はどうなっていたか。あの二人の中で怒りと憎悪が膨れ上がり、精神が暴走していた。確実に二人供目が死んでいたからな。考えられる原因としては、王国軍の兵士達の行いだ。村人を遊び程度で残虐し、アイネとミオに対しての弱小魔法を浴びせて来た後、魔術師の低レベルの事実を目の当たりにした。その状況を見て怒らないわけがない。今は正気に戻ってるから良かったけど、あのまま続けていたらどうなっていたか。






部隊長

「ハハハハハ!あのまま殺しておけばよかったものの!!」






突然部隊長の態度が変わった。しかも、魔法を発動させている?こいつ『魔法剣士(マジックナイト)』か!?






部隊長

「これで終わりにさせてもらう!受けるがいい!!神聖魔法『天使の裁きエンジェルジャッジメント』!!」






天使の裁きエンジェルジャッジメント』。三つ星クラスの神聖魔法の一つで、巨大な光の槍を相手向けて放つ攻撃魔法。その効果は魔属性モンスターの攻撃力を低下させる能力だ。だが効果は抜群で大抵の魔属性モンスターは一撃で倒されてしまう。俺のレベルならそんなにダメージはないが、アイネとミオはまた別だ。ここはあれで対処させてもらう。






ベリアル

「『反則能力(チートスキル)』発動!」





放たれた光の槍は俺の右手が触れた瞬間突然消えた。部隊長は何が起きたかわからないまま動揺していた。





部隊長

「不発だと!?バカな!?詠唱は完璧だった筈!何故途中で消えたのだ!!」




ベリアル

「答えを教えてやろう。『反則能力(チートスキル)』『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を発動させ、『天使の裁きエンジェルジャッジメント』を無効化したのだ。」



部隊長

「『反則能力(チートスキル)』だと!?何だその能力は!?」






幻想殺し(イマジンブレイカー)』。相手の発動させた能力、魔法、奥義、宝具の効果を無効にする能力だ。使用回数の制限なし。MPの使用なし。まさに反則極まりない能力だ。






ベリアル

「冥土の土産にこいつも見せてやろう。三代神聖魔法『金色の破壊神ゴルディオンクラッシャー』発動!」






金色の破壊神ゴルディオンクラッシャー』。三代神聖魔法の一つで、五つ星クラスの魔法だ。その威力はギルド施設もろとも破壊する事ができるがその分MPの消費も激しく、何より『王位』の称号を持つ者にしか装備出来ない。金色に輝く巨大な金槌が出現し、相手を一撃で粉砕するまさに最強の魔法と言えよう。






部隊長

「そんな・・・・あの伝説の三代神聖魔法を何故魔族である貴様が使える!!」




ベリアル

「貴様が知る事はない。光となって消え失せよ!!」



部隊長

「アァァァァァァ!!」






彼は金色の光に飲み込まれるように消えていった。とりあえず村の一件は何とかなってないか。何日かしたら王国軍が異変に気付く筈だ。さてどうしたものか。






ギーラ

「すげぇ。レリックの兵士達を全部倒すなんて!」



アレイン

「すごい!すごい!」






あれ?民家に隠れてた村の子供たちが出て来た。






ターシャ

「ギーラ!アレイン!」






知り合いか。なら都合が良い。この世界の現状を知るには、ここで情報収集するしかないか。



ベリアル

「ターシャ。お前達に聞きたい事がある。この村の現状とこの世界の事についていろいろ教えてくれ。」



ターシャ

「わかりました。とりあえず中へどうぞ。」







ターシャの案内で俺達は子供達が避難していた民家に向かった。さてゆっくりと話を聞かせて貰いますか。てかこの子達俺の事怖くないのかな?















ギーラ

「じゃあとりあえずここの地図だけでも説明します。」







彼の名前は『ギーラ・カテドラル』。『ペルーニャ村』の村長の息子で子供たちの面倒を見ている少年だ。

彼の話によると、この世界ので三つの大国が領土争いのため、戦争をしている。東の海を越えた大陸が『カルディア帝国』。西の大山脈を越えた高原地帯が『カバラン公国』。そして『ペルーニャ村』を含めた北の大都市が『レリック共和国』である。

だが南は様々な種族の村はあるが国と呼べる統治社会は存在していない。因みに『ソロモン』があるのはさらに南を行った『ガングート山脈』と呼ばれる山脈地帯だそうだ。そう、あの雪山が密集している場所だ。その山脈のから南南東に50キロ程行った場所が兵士達が言っていた『シャガの大森林』がある。







ギーラ

「あんな南の山脈に住んでるんですか?寒くないですか?」






南って暖かいイメージしか無いけど寒いの!?まさか暑いのに冬ですとか言わないよな!?この世界の春夏秋冬はどんな周期で回ってるんだ?






ベリアル

「まあいい。ではこの村の現状を聞かせて貰おう。」






さっきの戦闘で、ターシャとあの部隊長が話していたから概ね理解はしているが、どうも『ペルーニャ村』は先月まで月々多額の税金を国に支払っていたが、何ヶ月か滞納していたらしい。だが、それも先月何とか滞納金も収めかに見えたが、国は今月に入って急に税金の値上げと、月一の支払いから週一の支払いに変わったのだ。当然、払える訳がないので今回のような事態になっているのだ。






ギーラ

「そういえば彼奴ら『異神(いじん)』がどうのこうのって言ってました!」



ベリアル

「異神だと?」







何だ『異神(いじん)』って?訳のわからないワードが出て来たな。問題が山積みになってく一方だよ。







ギーラ

「それとベリアルさん!いやベリアル様!!お願いがあります!!」



ベリアル

「何だ。」



ギーラ

「俺達に魔法を教えて下さい!!」






なんか変な事を言いだしたぞ。もし無茶な話なら断らないといけないな。






ベリアル

「何故魔法を習いたいと?」



ギーラ

「レリックの騎士や国王にこれ以上村を好き勝手させてたまるか!!レリックの国王軍と戦う!!殺された俺達の両親や仲間達の仇を討ちたいんだ!!」





やっぱりそう言う事か、ちょうどいい機会だ。アイネとミオにも厳しく言わないといけないしな。






ベリアル

「そんな下らぬ理由でこの私に魔法を教えろ?この愚か者共がぁ!!」






俺の怒号が響き渡り辺りは静まり返った。アイネとミオもそこにいたターシャも怯えていた。サラようなまだ小さい子供達は今にも泣き出しそうだった。だがこれもこの子達のため、心を鬼にしろ俺。






ベリアル

「ちょうどいい。アイネ。ミオ。お前達も聞け。」



アイネ

「はい。」



ミオ

「わかりました。」





これでみんな聞く姿勢が出来たか。じゃあ始めよう。魔王ベリアルのゲーム攻略講座だけど。





ベリアル

「戦場で早死にする戦士はどんな人間かわかるか。」



ギーラ

「運が悪い人や弱い人でしょうか?」



ベリアル

「戦場に感情を持ち込む者だ。」



ギーラ

「感情・・・・ですか?」



ベリアル

「そうだ。感情を持ち込めば冷静な判断が出来なくなり、決断力を鈍らせ、そして最後は突撃しか出来なくなってしまい、無様に散っていく。」



ギーラ

「けどそれって無理ですよね。感情がある俺達には。」



ベリアル

「難しいかも知れぬが、それが戦場で生き延びる為の秘訣だ。ギーラ。お前の今の考えは無謀と言ってもいい。もう少し冷静になって考えてみよ。」



ギーラ

「だけど・・・・。」



ベリアル

「それと双子悪魔(ジェミニーデビル)!!」



アイネ、ミオ

「はい!!」



ベリアル

「私の命令無しに状況を見て行動した事は評価するが、その後の始末はなんだ!!私は「己が心に従い、己が意思で戦ってみよ!!」と命じた筈だ!!「怒りや憎しみの感情で戦え!!」とは一言も言っていない!!」



アイネ

「ごめんなさい!ベリアル様!!」



ミオ

「もう二度とあのような失態は致しません!!どうかお許しを!!」






二人が深々と頭を下げてるのを見る限り、反省しているのは確かだろう。これに懲りて、次はまともな戦闘が出来る筈だ。






ギーラ

「なら・・・・どうしたらいい?」



ベリアル

「何?」



ギーラ

「どうしたらいいんだよ!近い内に彼奴らはまた攻めて来るはずだ!!魔法も力も無いのにどうやって村を守っていけばいいんだよ!!」






「どうしたらいい。」ギーラは泣きながら俺にその問いを投げ掛けた。それはこっちが聞きたいよ。俺達だってこっちの世界に来たばかりなのに、今必死になって情報集めしてこの世界の事を知ろうとしている。

でもそれが終わったら今度は何をしよう。何か欲しい訳でも無いし、何かしたい訳でもない。なら一層の事・・・・。






ベリアル

「お前達が戦う必要はない。」



ギーラ

「じゃあどうしたらいい!!」



ベリアル

「我等の配下となれ!」






その発言を聞いて、子供達も双子悪魔(ジェミニーデビル)もかなり驚いていた。当然だよな。魔王の配下になるなんて人間としては何をされるからわからないから警戒しても当然だよな。







ギーラ

「イヤイヤ!!アンタ何考えてるんだ!?俺達みたいな力の無い人間がアンタらの何の役に立つ!?」



ミオ

「そうですベリアル様!彼等に何が出来ますか!?ソロモンの利益になる事など何もありません!!」






えぇぇぇ!?自分達の身の安全より利用価値で驚いてるのぉ!?俺からしたら「アンタ等が何考えてるんだ!?」だよ!!てかミオもそう言う考え!?もうこっちが驚いてるよ!!






ベリアル

「そうか・・・・。だが、お前達が何も出来ない訳ではない。利用価値があるから言っているのだ。」



ギーラ

「一体何をする気だ?」



ベリアル

「これより()()()を始める。我等で『レリック共和国』を手に入れるのだ。」







そう。やりたい事がないなら見つければいい。ギーラから聞いた話じゃレリックの政治は余りにも乱れている。いつ内乱が起こってもいいくらいだ。なら我等ソロモンが手に入れるまでだ。






ギーラ

「国取りって・・・レリックを支配する気か!?」



ベリアル

「そうだ。お前の聞いた話が本当なら、レリックの都内にいる人間も不満を持ってる者はいるはずだ。それに村の住民を見捨てるような国だ。容易く手に入るだろう。そうなればお前達の悲願も達成されるのではないか。」






そうだよな。レリックの王宮貴族を押さえれば国が手に入ったのと同じだ。それなら『ペルーニャ村』の無念も晴れるだろう。






ターシャ

「ベリアル様。私達『ペルーニャ村』一同は貴方様『ソロモン国』の配下となり、忠誠を尽くします!!」



子供達

「忠誠を尽くします!!」



ギーラ

「忠誠を尽くします!!」






子供達は、覚悟を決めたかのように俺に跪き忠誠の証を立てた。全く立派な子供達だ。魔王に恐るどころか救世主のように崇めている。人を見る目があるのは見習わなきゃいけないな。






ベリアル

「では明日。私の部下達を派遣する。その者たちと共に砦の工事と農業活動に勤しむがいい。」



ギーラ

「はい!!」



ターシャ

「ありがとうございます!!」






こうして俺達は『ペルーニャ村』を出て転移した場所まで向かった。辺りはすっかり暗くなっていた。そう言えば、ここに来て一日しか経っていないんだよな。何か三日くらい経ったような気がする。早くガルバトロスに帰りますかな。






ミオ

「ベリアル様。」






ミオ?何だろ?元気ないな。もしかして怒られたのまだ引きずってるのか。






ミオ

「先程の戦闘は大変申し訳ありませんでした!!ソロモンの兵士として無様な戦いをしてしまいました!!」



アイネ

「もうあんな事二度としません!!ですから見捨てないでください!!」






アイネも!?やれやれ、そこまで怒ってなかったけどな。






ベリアル

「怒鳴りつけてまでもお前達に伝えたかったのだ。それだけ私は二人の事を大事に思っている。だから私の前から勝手に居なくなる事は許さん!!」



アイネ、ミオ

「はい!!ありがとうございます!!」






元気になって何よりだ。さてガルバトロスに帰りますか・・・・あれ?念話?






アイネ

「どうかしましたか?」



ベリアル

「いや。誰からか念話で通信して来ている。」






でも念話ができるのはプレイヤーだけなんだけど。まさかNPC!?でもそんな事が可能なのか!?






テレサ

[こんな夜遅くまで何をしているのですか?]





テレサぁぁぁぁ!!嘘!?念話できるの!?しかもメッチャ怒ってるし!!





テレサ

双子悪魔(ジェミニーデビル)を連れて早く帰ってきてください!!]



ベリアル

「はい!!すいませんでしたぁぁぁ!!」



ミオ

「ベリアル様!?如何されましたか!?」



ベリアル

「緊急事態だ!テレサがかんかんになって怒っている!!」



ミオ

「テレサ様が!?」



アイネ

「どうしよう!!テレサ様怒ると怖いんですよ!!」



ベリアル

「とにかく急いで戻るぞ!!」




てかテレサにそんな設定入れて無いけどな。『狂戦士(バーサーカ)』だからか?とりあえず俺達は急いで『異世界の門(ワールドゲート)』を発動し、ガルバトロスに戻った。














玉座の間には既にテレサとバフォメット、そして四天将の三人が待機していた。後から来たアイネとミオもさっきまで装備していた鎧からメイド服に着替えて待機していた。うわぁ。上司が遅れてくるなんて恥ずかしい!!






ベリアル

「皆心配掛けてすまなかった。報告は後日するとして、先に発表したい事がある。」



バフォメット

「先程、ベリアル様が視察に行かれていた『ペルーニャ村』の件でしょうか。」



ベリアル

「そうだ。そこを拠点とし、北の国を制圧する。その為の戦準備だ。ヘラクレス。黒光からの報告を簡潔に申せ。」



ヘラクレス

「はっ!山脈の外側に複数の村を発見しました。皆種族は別々です。」



ベリアル

「そうか。なら先ずその村々を制圧し、統合させる。既に『ペルーニャ村』は我が配下となった。後は多種族の村々を纏めるだけだ。」



バフォメット

「ですがベリアル様。『ペルーニャ村』の人間は滅ぼしてもよろしかったのではないでしょうか。その方が早く計画の段取りがついたでしょうに。」



ベリアル

「あの人間達は我等の為にある役割がある。間違っても殺すな。」







まあ、国の仲介役も兼ねる予定だしな。況してやギーラのあの知識量だ。手放すには惜しい。

さてと。計画の狼煙を上げますか。






ベリアル

「それと、我等の新しい世界での門出を祝って国名を改名する。」






そう俺達の新しい国の名前。その名が届く名前だ。






ベリアル

「『ガイロス帝国軍』だ。」






ここから俺の・・・・俺達の新しい物語(ゲーム)が始まる。『異世界征服計画いせかいせいふくプロジェクト』その序章が幕を開けた。





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