不安な三人
新年のテーテ相談所は大声で指示を出さないと他の職員に聞こえない。いたるところで騒ぎや喧嘩が始まり、男性職員が止めにいっており、受付の所でも同じような喧嘩があったりする。
リファインは何でも課を一時的に就職受付に変えてやっている。そこに集まって来るのは女性がなぜか多く、こちらは比較的静かになっている。
時々、リファの事を知らない女性が女の子が働いていることに驚いていたが、周りがきちんと説明してくれるおかげで驚きが微笑ましい顔に変わる。何て説明しているか分からないけど…
一応、これもテーテ相談所の恒例行事だ。マスコットみたいな存在で、女性や男性のファンがいる。
ある女性がリファの前に来て紙の書類を出してきた。初めて来るのか、とても緊張しているようだ。
「よ…よろしくお願いします…」
「ん…ん!?これギルドのやつだよ。ここは『相談所』、ギルドはここから出て右2つ隣に行った所だよ?」
「…ああ!す、すみませんでしたー!」
こういう間違いも一年に一回あるかないか位ある。指摘された女性は一目散に相談所を出て行った。あれが冒険者になるのかと考えたが、ああいうのが意外と有名になったりする。
「ジェーン!これお願い!」
「はやっ!リファさん、就職登録課に入りませんか?」
「断る!ここがいい。」
いつもの断りを言い、仕事に戻る。ジェーンはリファが仕事をしている時にいつも隙を狙ってこういう風に誘ってくる。
「もうすぐ、約束の時間じゃないですか?」
「ん?ああ、ありがとう。」
本当にジェーンには助かっている。リファは時間を忘れて作業をするので、遅刻する事がたびたびあった。
リファは黒を基本としたゴスロリの服装に着替え、ポニーテールにして相談所を出た。なぜゴスロリを着ているのかは、それしか持っていないからである。他の服装だとおかしいと言われ、それ以来ゴスロリを着ているが未だに恥ずかしい所がある。
…ツインテールは出来ない。
ギルドは相談所を出て右2つに行ったところにある。すぐそばなので、歩いて一分以内で行く事ができる。
ドアを開けて四人の視線がリファに向く。もう他の新人は行ったのか、三人とギルド職員がカウンターで待っていた。
「やっと来たと思ったら女の子か~指導してくれる人まだ来ないの?」
「くそ!このままじゃ置いて行かれてしまう…」
「職員さん、まだなんですか?」
男二人に女一人。最初に言った人からジェフ、レン、リーナ。全員、14歳で他の町からここのギルドにやって来た。そのため、リファの事を知らない。
ギルド職員が助けて欲しいような目でこちらを見ているので、そろそろ名乗り上げる。
「あー、ちょっと遅れたがお前たちを指導する事になった『テーテ相談所』のリファインだ。」
「「「ええ!?」」」
三人とも、それぞれ思うことがあるのか違う反応を見せている。
ジェフはあり得ないという顔で苦笑いだ。
レンは綺麗な二度見をして、「冗談だろ…」とささやいている。
リーナはリファの力量を確かめるかのようにこちらを見ている。
三人が職員の方を見るとその職員が頷く。
「「「ええぇぇぇぇ!?」」」
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「なぁ、ジェフ。あれ本当に信じていいのか?どうみても女の子にしか見えない。」
「俺に言われてもわかんねーよ…リーナ、何か分かったか?」
「う~ん…まだ分からないかな?今の所、普通じゃ無いってことしか…」
「「普通じゃないなのは分かってる!」」
リファイン達はクエストの『薬草を採って来る』を達成するために、薬草がよく採れる場所に向かっている。
後ろの三人がうるさい。俺の姿を見て反応するのは分かる。しかし、そんな大声で言わなくても…
自覚している所はあるが、300年経っても慣れない。
…いろいろな所がな。
よく、こういう所で普段では見かけないモンスターが出て来て、俺が倒すという事はない。そういう話は聞く事はあっても実際に倒したという話は無かった。
あっても、信憑性がないものと、有名になりたくて金で広めるかのどちらかだった。普通ならば逃げてギルドや相談所、国に報告が行って対策してくれる。
もちろん、相談所の俺の所へその依頼が来る。まあ、倒すのだけれども…
さて、そうこうしている間に目的地に着いた。
「着いたぞーここが『薬草の楽園』。」
『薬草の楽園』
そこは毒や実際に効果のある薬草がある。ここに来れるのは冒険者と相談所で許可された者しか入れない場所だ。
ここで、危険な草や安全な薬草との違いを学ぶ。いろいろ混ざっているので分かりやすく、教えやすい。
「ここで、好きな草を持って来て。」
「「「はい!」」」
三人はなぜこんな事をするのか分からないが、とにかく言われた通りに目についた草を採っていく。
「好きな草?なんでこんな事を…」
「モンスターを倒して来いなら、良いけどな~」
「何か目的があるのかな?」
疑心暗鬼のまま、リファの所へと持っていく。
そこからリファが言った。
「その中から一つ選んで食べてみて。」
三人は驚いた。毒があるかもしれないのに食べさせるのかと動揺した。
「食べられないですよ!毒かもしれないのに!」
「じゃあ、無理やりでも食べさせてあげる。」
リファインは高速で移動し、三人の元へ接近し、それぞれ持って来た中から一つ選んで無理やり食べさせる。
「「「ぎゃあああああああ!」」」