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どうしてこんなところに!?

 SIDE:こい


「よろしくお願いします」


 あたしは直前にネットで読んだマナー通りにあいさつして椅子に座る。

 あのおじさんの隣にいる女性って、まさか『SHINE』の天野あまのひかりじゃないだろうか。

 茶色がかった黒髪のロングを後ろ髪を残しながら二つ結びにしている、少し子供っぽい髪型。スーツ姿は始めて見るけど、決してグラマーではないものの、バランスのいい体格。

 似ている。

 ……いや似てるなんてレベルじゃない。あれで本人じゃなかったらドッペルゲンガーか何かだろう。


(なんでこんなところにいるのよ……)


 でも、それで心を乱すわけにはいかない。今は面接中だ。


「では、まず志望動機はなんですか?」


 この澄んだ声間違いない……。

 あの天野ひかりが今目の前にいて、なんでだかは知らないけどあたしの面接をしているのだ。言い知れぬ恐怖に襲われる。


「は、はい、小さい頃から周りに元気を与えられる存在であるアイドルに憧れていて、あたしもそういう存在にないたいと考えて、こ、今回このオーディションを受験させていただきました」


 よし、なんとかちゃんと答えられた。案外これならいけるかもとさっきまでの緊張は少し和らいでくれる。でも、あの天野ひかりがあたしを見てるっていうのはやっぱり落ち着かない。


「容姿は似てるのに性格は全然違うんだね。お姉さんと」

「は、はあ。よく言われます」


 唐突な本題からそれた質問に、あたしは首をかしげる。


「もっと肩の力抜いても大丈夫だよ。緊張しないで」

「は、はい!」

「うーん、まだちょっと固いかな。これから歌ってもらおうと思ってたんだけど、そんなに力入れてたら歌えないよ……」

「ははっ、無理もないって、お姉さんは気づいてないみたいだったけど、元国民的アイドル・天野ひかりに面接されるなんて、夢にも思ってなかっただろうからね」


 面接に入ってから、初めておじさんは口を開いた。その感じのいい声は実に愉快そうだ。


「でも、彼女の言う通りそんなに固くならなくていいよ。これは言うつもりはなかったけど、基本的にこのオーディションで落ちることはないからね。気軽にやってもらって構わない」

「……へ?」

「そういうことだから、もっと気軽に、ね」

「は、はあ……」


 なんだか拍子抜けだ。絶対に合格するなんて……まさか人数が少なくて定員割れを起こしたのだろうか?

 ―――いや待てよ、たしか受験票と一緒に入っていた紙に書いてった定員は5人。

 部屋の前に置いてあった椅子は5個……定員ちょうどだ。

 まさかこれは定員割れじゃなくて、もうすでにエントリーの時点で5人厳選されているのでは? それなら受験票が届くのが遅かったのにも合点がいく。

 つまり……あたしは選ばれたんだ。あいちゃんも一緒に!

 たしかにそれならば緊張する必要があるだろうか、いや無い。

 勝手に盛り上がったあたしは上がるテンションを無理やり抑えつけて、平常をよそおう。


「うん、だいぶ表情が柔らかくなったね。じゃあ歌ってもらうんだけどいいかな? 曲は『SHINE』の『かがやき』ね」


 天野ひかりさんが歌詞カードを渡してくれたけど、この歌は好きだからもう何百回と聴いた。歌詞を見なくても十分に歌える。

 おじさんが手元のリモコンをいじると、スピーカーから音楽が流れだした。


「~~~♪」


 あたしが歌い終わると、二人して拍手してくれる。なんだか照れくさい。


「お姉さんとよく似た声なのに、歌い方は全然違うんだね」

「それは、姉は合唱クラブで練習してたのに対して、あたしがポップスの曲で練習していたからだと思います」

「なるほどね……」


 天野ひかりは手元の紙に何かを書き込む。


「じゃあこれが最後の質問になるんだけど、こいさんはアイドルになったら何がしたいかな?」

「周りの人たちみんなを元気にしたいです。ファンになってくれた方々はもちろん、あたしたちのことを全然知らないような人たちも、みんなに元気を与える―――『SHINE』のようなアイドルになりたいです」


 あたしの回答には二人ともうんうんって感じに頷いてくれて、後半には天野 ひかりは嬉しそうに頬を染めた。


「真面目な答えだね。これでおしまいだから、部屋の前の椅子でちょっと待っててね」


 天野ひかりが言うのに続いて、おじさんも「お疲れさま」なんて声を掛けてくれて、私は301号室から退室した。

 手ごたえはばっちしだ!

 椅子の並び的に次はこのショートの子か……。すごく緊張してるみたいだけど、大丈夫なのかな?


「こいちゃん、お疲れさま。どうだった?」

「ふふん、バッチシよ」

「さすが、こいちゃんだね!」

 いったん閉じた扉がまた開いて、面接官のおじさんが出てくる。


「次、はなちゃんだよ」


 彼が親し気に声をかけるとショートカットの子が立ち上がり、301号室に入っていった。右手と右足、左手と左足が一緒に出ている。

こいちゃんは自分の書くキャラクターの中でもお気に入りの一人です。ただアスピラシオンの五人の中で推すならうたちゃんだと思います。

いや、でもみんな好きですけど。


更新報告等Twitterでしています。

https://twitter.com/haru_akami

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