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風華のえ

 SIDE:のえ


 昔からはなちゃんには恥ずかしがりやなきらいがある。

 だから最初に彼女がアイドルになりたいなんて言ったあの日、『SHINE』のライブ中は私も興奮していたからそんなに気にならなかったんだけど、あとで冷静になってみてかなり驚いた。

 でも同時に、あんな素敵なライブを観てアイドルに憧れてしまうのは、至極当然のことだと思っている私もいた。

 私もそうだったから……。

 そんな私たちは、あれからすぐにダンスと歌のレッスンを始めたんだけど、私は中学に上がったときにやめてしまった。それは端的にいうとアイドルになることを諦めたからだ。

 アイドルに憧れる気持ちは今でも持ち続けてるし、もしなれるのならば今すぐにでもなりたい。でも私の一番の願いははなちゃんが夢を叶えることだからね。

 多分、多くの女の子は小さい頃にアイドルに憧れた経験があると思う。でもそのほとんどは、それを諦めてしまう。

 だって、アイドルってほんの一握りの人間にしかなれないものだし、もしなれたとしても、その中でさらに一握りのアイドルしか生活していくこともままならない、見た目以上に過酷な職業だから。

 アイドルに憧れた女の子たちはそれを知って、成長とともにアイドルを諦めていくのだ。……私もその一人。

 でも、私が諦めちゃったからこそ、親友のはなちゃんには夢を叶えてほしい。いつまでも憧れを追い続けてほしい。

 だから私は彼女を応援し続ける。もし失敗しちゃったときには私が責任を持って、はなちゃんを養っていく覚悟もできている。


 すっかり寝る準備が整った夜9時、まだ最近の女子中学生が寝るにはかなり早い時間だ。それは私も例に漏れずで、部屋の窓から身を乗り出して正面の窓をノックした。


「はなちゃん、もういる?」

「うん、いるよ。今開けるね」


 鈴の音のようなきれいな声が窓越しに聞こえて、数秒の後に窓が開いて出てきたのははなちゃんだった。年齢のわりに小柄な彼女の、少し栗色のふんわりショートカットが風に揺れる。


「どうぞ、入って」


 はなちゃんが窓から離れたところで、私はいつも通りひょいっと軽く跳んではなちゃんの部屋に移動する。


「今回は残念だったね」


 私は先に座っていたはなちゃんの、小さな丸テーブルを挟んだ正面に腰をおろす。

 振った話題はオーディションについてだ。


「ごめんね、毎日付き合ってもらったのに……」


 申し訳なさそうにしゅんと体を小さくする姿は、小動物のようでかわいらしい。


「気にしなくていいってさっきも言ったでしょ。次はがんばればいいんだしね」

「うん……、でもさっき調べたら、次まで、どこのオーディションも結構長いみたいなんだ」

「そうなの? 一応、私もあとで調べてみるね」


 そこで、この話はおしまいとでも言うかのように、はなちゃんは少しもじもじしながら話を変える。


「今日ね、のえちゃんと一緒に食べなさいって、お母さんがクッキー買ってきてくれたの」


 たしかに机の上にはおいしそうなクッキーが置いてある。


「ありがと」


 私がクッキーを1枚とって食べる。そのタイミングを待っていたかのように、はなちゃんは言いづらそうに新たな話を切り出した。


「あのね、お願いがあるんだけど……」


 私はクッキーなんかで餌付けされなくても、はなちゃんのお願いなら何でも聴いてあげるつもりだ。それは彼女もわかってるだろうに、わざわざこんな遠まわしなことしてくるということはよっぽど言いにくいことなのだろうか?


「……明後日の日曜日に緊急の用事だとかで、叔父さんがうちにくるらしいの。そのときにのえちゃんも呼んで欲しいんだって」


 なるほど、はなちゃんが言いにくそうにしていた理由がわかった。でも、それなら、それだからこそ私はこの誘いを断るわけにはいかない。


「絶対に来させてもらうよ」

「そんなに即答。のえちゃん、うたちゃんのこと苦手だから断られちゃうと思ったんだけど……」


 そう、問題なのははなちゃんの叔父さんではなく、彼の娘で一緒に来るであろう人物、雷戸らいとうただ。あいつは私の宿敵だ。あいつは無邪気なふりをして、いつもいつも私のはなちゃんにベタベタとくっついている。私の大事なはなちゃんに。

 許すまじ雷戸 うた!

「そ、そんな怖い顔しないで……」

「ご、ごめん。とにかく私も来させてもらうからね」

 つい、はなちゃんを怯えさせてしまった。でもそれくらい雷戸 うたという人物は危険なのだ。

 あいつの無邪気なふりは逸品で、純粋なはなちゃんはすぐに騙されてしまう。はなちゃんをヤツと二人っきりになんてさせられない!

 どうやったらこんな天使のような姪を持つあんな聖人みたいな父親から、あいつのような悪女が生まれてくるのか、それは昔から私の中にある人生最大の謎だった。

3話は風華のえちゃんの回です。はなちゃんのことが大好きで小さい頃からずっと一緒にいます。

次回は新しいキャラクターが登場します。ちなみに今回会話に出てきたうたちゃんの登場はもう少し先になります。


更新等の報告はTwitter等でしています。https://twitter.com/haru_akami?s=09

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