表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/24

えんじん

SIDE:はな


 世界中の時計が壊れているんじゃないかと思ってしまうほど、時間が経過するのは早かった。

 午前中は5人でダンスとかの練習して、お昼を食べたあとには『ライツ』の社員さん達と今日のイベント全体の流れを合わせた。

 ……はずだったんだけど、それらは全部早送りのようだった。

 気付けばもう夕方で、イベントはもう始まっている。今は叔父さんがステージ上に立って『MIRAI』の機能について熱く語っているところだ。

 私たちの出番は『アスピラシオン』がサプライズで発表される、イベント終盤。


「ねえ、私たちちゃんと受け入れてもらえるかな?」


 控室のモニターにはステージの様子とともに、満員の観客席の様子が映し出されている。

 彼らはゲームの詳細発表を楽しみに来たのに、突然に「アイドルが――」とかってやっぱり微妙な雰囲気になってしまうのではないか。そんな不安がふと頭によぎる。


「たしかに、そう言われるとちょっと考えちゃうわね」

「それは心配しなくていいと思うわよ」


 スマホをいじりつつのえちゃんはニコッと笑う。


「どーしてぇ?」

「私もちょっと前にそれが気になって調べてみたら、ネットではもうだいぶアイドルが出るってことがバレてるみたいなの。しかも大歓迎ムード」


 のえちゃんがスマホで見せてくれた掲示板サイトでは、今日の『ライツ』の発表でアイドルがどうとかって盛り上がっているのが見て取れる。


「え、なんで? 今日の発表ってサプライズじゃないの?」


 言葉に出したのはうたちゃんだけど、首をかしげたのは全員だ。


「い、いや、なんでかまではさすがにわからないよ……」

「まさか、どこかに情報を洩らすスパイが?」


 あいちゃんは鋭い目つきでゆっくりと一同を見回して、扉の方でピタッと動きを止めた。


(ま、まさかほんとにスパイが?)


 私もあいちゃんの視線をたどると、いつの間にやら室内にはひかりさんがいた。


「えぇ、まさかひかりさんがスパイだったのぉ?」


 笑顔で「そんなわけないでしょ」とひかりさんはあっさりあいちゃんの推測を否定してから続ける。


「情報が洩れてるのはわざとらしいよ。それこそ、君たちの言う通り突然アイドルなんかが出て来たらびっくりしちゃうでしょ。だからわざと少しだけ公式じゃないところでバラしちゃうの」

「それってつまり、ステm―――」

「はなちゃん気付いても、あんまりそういうことは言っちゃダメよ」

「ステ? なにそれぇ」

「あいちゃんも家に帰ったら教えてあげるから、ね」


 こいちゃんは人差し指を口元に当てて、シーとジェスチャーしている。


「そうそう、こんなこと話してる場合じゃなくてね。もうちょっとで出るから、準備しといてねって言いに来たの」

「もう、そんな時間ですか……」


 楽しさに紛れていた緊張や不安がまたドッと襲い来る。


「ほら、はななん硬くならないで。リラックスだよ!」

「みんなもだよ、ひかりさんの言う通りリラックスね」

「そうだ、うた円陣やってみたい!」

「あら、うたもたまにはいい案を出すわね。やりましょうか」


 のえちゃんはスッと開いた手を前に出す。「たまにはですか……」なんて言いながらそこにうたちゃんも手のひらを重ねる。

「あいもいーれてっと。ほらこいちゃんも早く!」

「わかってるわよ」


 あいちゃんとこいちゃんも手を重ねるのを見てから、私もさらにその上に手を乗せる。そして「じゃあ、私も」とひかりさんは嬉しそうに続く。


「私は直接は関係ないけど、応援してるからがんばってきてね! はい次、はななん。何かひとこと」

 あまりに唐突に始まったひとことコメントに戸惑いつつも私は口を開く。

 そういえば『SHINE』では、ライブ前にみんながひとことずつ何かを言っていくというルーティーンがあると、ドキュメンタリー番組で言っていた。それで本番前に結束を確かめ合うのだとか。


「正直、すっごく不安なんだけど、今日のは私たちのスタートだから、絶対に成功させようね」

「ちょっと、あんまりハードル上げないでよね」


 流れ的に次に何か言うべきこいちゃんは、そう前置きしてから、


「これは通過点に過ぎないわ。ここで一人でも多くのファンを獲得するわよ!」

「あいはみんなで楽しくできればいいなぁ。がんばろうね」

「うたは……えーと、ファイトだよ!」

「もっとマシなコメントはできないの?」

「適当すぎよ!」


 のえちゃんと、こいちゃんからバッシングを受けて「うぅ、ごめんなさい」と縮こまってしまったうたちゃんは、いつも通り数分もかからずに復活するだろうからとスルーで、バッシングした本人が話し始める。


「最後に、正直最初にこのメンバーで集まったときはどうなることかと思ったけど――」

「あら、のえさんも思ったのね」

「あはは……、個性的だしね」

「えぇ、そうなのぉ?」


 私たちは話の途中にも拘わらずつい、三者三様の感想を述べる。


「――とりあえずここまでこれてよかったわ。でもはなちゃんが言った通り、まだスタートでしかないの。だけど、だからこそ絶対に成功させなきゃいけない。今日は一人でも多くの人を楽しませて、一人でも多くの人の記憶に残れるようにしましょう」

「……のえちゃん、さすがリーダーだね」

「ありがと、はなちゃん。では、ファイト!」

「「「おぉ!」」」

「「いっぱーつ!」」

「がんばろー!」


 のえさんの掛け声に合わせて、みんなで一斉に手を振り上げたわけだけど、イマイチ声がそろわなかった。


「いや、そこは「おぉ!」が正解でしょ。火美姉妹はそろってボケなくていいのよ」

「ボ、ボケてないわよ。普通「ファイト!」ときたら「いっぱーつ!」でしょ。それにそれを言うならひかりさんの「がんばろー!」ってなんなんですか」

「え、わ、私?」

「次までにちゃんと決めとこうね」


 「まあまあ」とおねえちゃんは仲裁に入る。


「そうだねぇ、次はみんなで「いっぱーつ!」って言おうね」

「それはちょっと……」


 本番前の控室は笑いで満たされた。

投稿できなかったので2話分まとめて投稿します。

ちなみに次の回が最終話になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ