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いよいよだね

 SIDE:うた


 この一ヶ月と半分の練習で、歌もダンスも、それからトークなんかもみんなが完璧にこなせるようになったように思う。

 最近ではイベントの後に出すというCDアルバムの収録曲の練習を始めてしまうほどにはできあがってる。

 ていうか、シングルも出してないのにいきなりアルバム出しちゃうんだ……。

 ちなみにこのアルバムの曲の一部は『MIRAI』の発売記念にゲーム内で披露することになってて、ゲーム内とはいえ振り付け等もしっかり練習しろとのことだ。


「……いよいよだね」


 うたとのえさんに挟まれているおねえちゃんは、まだ移動の車の中で、もっと言えばまだ出発したばかりなのに、もうカチコチに緊張している。


「はなちゃん、今からそんなに緊張してたら本番前に倒れちゃうわよ」

「本番は夕方からだから、まだ10時間くらいあるよ」


 パパの準備と、それからうたたちも最終確認とか、リハーサルとかをしなきゃいけないから、会場に入る時間はかなり早くなきゃいけないらしい。


「そ、そうなんだけど……」

「緊張することないわよ。ただ歌って踊るだけよ」

「そんなこと言ってぇ、こいちゃん昨日はソワソワしちゃって寝られなかったじゃん」

「ち、違うわよ。あれは……そう、楽しみ過ぎて眠れなかったの」


 うしろの座席には火美姉妹が座っている。


「あら、こいさん小学生みたいね」

「誰が小学生よ!」

「仲がいいのはいいが、危ないから車内ではあんまりはしゃぎすぎないようにな」


 盛り上がってきたところでパパが注意を入れる。

 でも、このいつも通りの会話のおかげでおねえちゃんの緊張も少し解れたみたいでよかった。


「そういえば、最初にいきなり出すっていうアルバムはいつ発売になるんですか?」

「7月の中旬だよ。『MIRAI』発売の2週間後だな」

「『MIRAI』の発売翌日にはゲーム内でライブするんですよね」


 「結構大変だなぁ」なんて呟くのえさんに続いて、うたも前から気になってたことを質問してみることにする。


「ねえ、パパ。ゲーム内でライブってどんな感じになるの?」

「あ、それあたしも気になってたわ」

「うーん、そうだなぁ。現実でやるのとそんなに変わらないな」


 なんか感覚がどうこうで、現実に近い感じにはなるって前々から聞いてたけど、「そんなに変わらない」ってレベルだとは……パパってもしかしてすごいもの作ってるのでは?


「たしかに、何も分からなきゃ不安だよな。明日辺りに実際に試してみるか?」

「ぜひお願いしますっ!」

「わぁ、たのしみだねぇ」

「まあ、明日の話はともかく今日の初めての本番を頑張ってくれ」

「「「「「はい!」」」」」



 会場に到着したうたたちはまず更衣室に着替えに行ったんだけど、用意してくれていた衣装のカラーはこいちゃんはオレンジ色で、うたのは黄色だった。

 それぞれササッと着替えて、ステージのあるホールに入った。


「ずいぶん大きいのね……」

「のえさんが弱気なんて珍しいわね」

「そういうわけではないのだけど、ただやっぱりここで大勢の人が集まると思うと、さすがに緊張するなって」

「それにしてもよ、はなさんはちょっと緊張しすぎなんじゃないかしら?」


 あいちゃんの視線の先にいるのは、口をあわあわさせながら目に涙を溜めて立ち尽くすおねえちゃんだった。


「だ、だだっだ大丈夫らよ……」


 本人はこう言ってるけど、きっとこの姿を十人がみたら、十人全員が大丈夫ではないと判断することだろう。


「おねえちゃん落ち着いて。はい、しんこきゅー」


 スー、ハー、スー、ハー。

 うたがやると、それに合わせておねえちゃんだけでなくみんなが、深呼吸を始める。

 うたは全然平気だけどみんなそれなりに緊張しているみたいだ……と思ったけどあいちゃんは深呼吸はしてるけど、かなり余裕そうに笑っている。

 手に人の字を書いて吸い込んでみたり瞑想っぽいことをしてみたり、いろいろな緊張を和らげる方法を試して、やっとおねえちゃんがちゃんと喋れる状態になったときにちょうど、


「セッティング等完了したので、午前中……と言ってもあと1時間程度ですがステージを『アスピラシオン』さんに使っていただいて大丈夫です」


 との通達がスタッフさんから来て、うたたちはステージに上がった。


「ステージに立つとアイドルらしいよ!」


 客席の方から両手でメガホンを作ったひかりさんが叫ぶ。

 あいかわらずひかりさんの声はよく通るなぁ。


『ひかりさんいつの間に来たんですか』


 のえさんの声がスピーカー越しの大きな音で聞こえる。

 ちなみにマイクはカラオケなんかでよく使うハンドマイクなんだけど、もちろんカラオケなんかよりもよさげなものだ。それぞれ衣装に合わせたカラーリングになっている。


「今来たとこだよ! さ、時間もそんなにあるわけじゃないから早く始めちゃおう!」

「じゃあ、入場のところからやっていきましょうか」

「そうね、あたしもまず通してやってみるのがいいと思うわ」

「じゃあ、いったんみんな幕の外に出ないとだね」



 『アスピラシオン』のデビューライブのリハーサルのデキは、かなり良かったとうたは思うんだけど、ひかりさんからは「全体的に緊張のせいかちょっと、動きが硬いかな」との言葉をもらった。

 本番はもっと緊張しちゃうだろうから、もっと頑張らないと!


よろしくお願いします。

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