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こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第六章 王都への帰路
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 それから2週間後、特に何事もなく王都の外壁が見えるところまで戻ってきていた。ただし、何回も数十頭単位の魔物に襲われたことが何事もなくと言えるかどうかは人によっては微妙だろうが、怪我人が誰一人として出なかったのだから何事もなかったと言って良いだろう。


「こうして見ると王都って大きいね~」

「そうね。エイセルも大きい街だと思ったけど、比べ物にならないわ」

「そうだな」

「王都ってこんなに大きかったんだな」


 元々の王都組4人はしみじみと王都を見ていた。


「⋯⋯」


 リオナはただ無言で呆然としていた。


「⋯⋯オウト、オオキイナ」


 グレンは片言だった。


(流石に僕だって気づく。龍の里の方が大きいなんて絶対に言っちゃ駄目なやつだ)


 段々と空気を読む術が上がっていた。


「⋯⋯話には聞いていたが大きいな」

「⋯⋯ああ」


 王都は初めてのDランク冒険者の2人の反応が一番普通だった。

 ちなみに行商人たちは王都に来るのもこれまで数え切れないほどあったため自然体だった。

 ある者は唖然として、またある者は極々普通に、ある者は固まったまま他の者に引っ張られて、13人は王都に入る審査待ちの列に並んだ。


 30分ほどで順番が回ってきた。


「⋯⋯兵士が変わっていますね」

「⋯⋯2か月も経っているんだ。顔ぶれぐらい変わるだろう」


 アレキスは首を傾げたが、アルフォードの言葉にどうにか納得した。


(忘れていたな。ここの兵士の悪事を伝えたんだった。自分に関係がなかったから⋯⋯)

(へ、兵士さんが変わるのは普通だよね!?偶々前の兵士さんたちが休みの可能性もあるし!)

(待って! この前手紙を送るところを見られていたはず⋯⋯忘れてくれていると良いけど)

(なんで皆して忘れていたのかしら? 商人は記憶力が良いとは聞いていたけど、忘れていることを願いましょう⋯⋯)


 事情を知っている4人は冷や汗ダラダラだった。


 特にアレキスたちから何かを突っ込まれるようなことはなく、兵士たちから通行料を取られるようなこともなく無事に王都に入ることができた。


「それではギルドに行きましょうか?」


 トレークとスコッチは報酬を受け取るため、マリアたち6人は依頼の事後報告と報酬の受け取り、および素材の買取のため、アレキスはその証明のために連れ立ってギルドへ向かった。


「おっ、マリアちゃん久しぶりだな! 帰ってきたのか。そっちの嬢ちゃんは初めて見るな」


 ギルドに入ったところでマリアは顔見知りのCランク冒険者たちに声をかけられた。


「あっ、おじさんたち久しぶりですね。この子はリオナっていうんですよ。新しくパーティーに入ったんです」

「⋯⋯そっちの坊主もか?」

「はい。グレンっていうんです」


 冒険者たちのリオナとグレンを見る目には、子どもだからといって侮るものはない。それはギルドにいる冒険者たちの大半がそうだった。

 中には話している冒険者たちが去ってから絡もうとした低ランク冒険者たちも少なからずいたが、顔色を変えた他の冒険者たち複数人にどこかへ連れ去られていった。


「そうか。リオナちゃんにグレン、俺はCランクパーティー、《氷雪の嵐》のリーダー、剣士のギルガルドだ。よろしくな」


 ギルガルドは厳つい顔で笑った。その顔は幼い子どもなら泣き出してしまいそうなほど怖かった。


「は、はじめまして、リオナです」


 リオナの声が少し震えていたことも仕方がないことだろう。


「グレンだ」


 グレンはどこ吹く風といわんばかりに堂々としていた。


「俺は弓使いのフェルトだ」

「僕は剣士のダスケルだ。よろしくな、2人とも」

「は、はい」

「ああ」


 Cランクパーティー《氷雪の嵐》、そのパーティーメンバーは皆揃って厳つい顔をしていた。そして同時に子ども好きだった。⋯⋯いつも子どもに話しかけようとして泣いて逃げられるというある意味報われない者たちだった。だからこそ普通に話してくれるマリアのことをかわいがっていた。

 ちなみに泣かせてしまった子どもの親には後日菓子折りを持って謝りに行く律儀さを持っており、親たちからの評判はなかなか良かった。冒険者たちからも影では『どこまでも報われない男たち』と呼ばれており、応援している者までいる。


「マリアちゃん、噂は聞いたぞ」

「えっ? どんなですか?」

「《魔術姫》ってマリアちゃんのことだろ?なんでもCランク推奨のヨルの森でCランク以上の魔物を倒しまくったって聞いたぞ」

「俺も大規模な結界を張ったって聞いたぞ」

「もう! 大袈裟です!」

「おっ、じゃあどこまでが本当だ?」

「私がやったのはちょっとウルフさんたちをいっぱい倒したぐらいです!」

「⋯⋯マリアちゃんのちょっとってどれぐらいだ?」


 ギルガルドはちょっと多く魔物を倒したぐらいでは異名などつかないことをよく知っていた。


「ちょっと千単位で⋯⋯」

「「「「「「「それはちょっととは言わねぇよ!」」」」」」」


 《氷雪の嵐》のメンバーと、その話に聞き耳を立てていた者たちの声が綺麗に揃った。


「え~、でもエリザもリオも同じくらい倒していましたよ?」


 マリアは納得がいかなかった。


「「「「「「「「「「自分のパーティーを基準にするんじゃねぇよ!」」」」」」」」」」


 冒険者たちは涙目だった。


「リオ、私の基準おかしいかな?」

「えっ? あ~、うん、ちょっと一般的とはいえないかな」


 冒険者たちはちょっとどころじゃないと叫びたいのを必死に我慢した。


「えっ? じゃあ一般基準だとどれぐらい?」

「⋯⋯いっぱい? かな」


 冒険者たちはかなりを頭につけて欲しかった。


「⋯⋯そうなんだ。おじさんたちごめんなさい」

「⋯⋯いや、わかれば良い」


 まだ突っ込みどころが満載だが、とりあえずそれで良しとした。


「⋯⋯ところでリオナちゃんだっけ? 嬢ちゃんが《死神姫》なのか?」

「う~ん、そうなるのかなぁ?」

「? どうしてだ?」

「だってその名前を知ったの、ブルメルの街を出た後なんだもん」

「⋯⋯そ、そうか」


 色々と突っ込みどころが多い会話は、アルフォードたちが手続きを終えて戻ってくるまで続いた。なお、《撲殺女王》の名はここでも出ることはなかった。

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