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こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第六章 王都への帰路
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「⋯⋯そう言えば嬢ちゃんたちの武器は何だ? 見たところ何も持っていないようだが」


 ようやく話が変わったことに、6人は安堵の息を吐いた。


「私は魔術が主で近接戦闘の時は短剣を使っています」

「⋯⋯近接戦闘もできるのか」

「一応ですよ」

「そっちのちっこい嬢ちゃんは?」

「⋯⋯私は言うより見せた方が早いかな?」


 リオナはちっこいと言われたことで何とも言えない表情になったが、アイテムポーチからデスサイズを取り出した。


「⋯⋯ちょっと持ってみて良いか?」

「はい」


 トレークは受け取ったデスサイズとリオナを見比べて目を白黒させた。


「⋯⋯嬢ちゃんはよくこんな重いものが使えるな」

「そう? 大した重さじゃないと思うけど⋯⋯」

「そりゃあ鉄製のものとかに比べたらな」


 トレークは呆れた目でリオナを見た。


「それによくこんな扱い辛い武器を使えるな」

「えっ? そんなに難しくないと思うけど?」

「⋯⋯」


 その言葉にトレークは固まった。

 半ば無意識に差し出された手にデスサイズを返すと、ようやく口を開いた。


「⋯⋯嬢ちゃんはちっこいのに凄いな」


 そう言ってリオナの頭を撫でた。


(((((あっ、まずい)))))


 リオナの大っ嫌いな小さい子ども扱い。今度はマリアたちが固まる番だった。


「? どうしたんだ?」


 トレークとスコッチは揃って首を傾げた。


「⋯⋯私は⋯⋯私は⋯⋯じゃない」

「「えっ?」」

「私は小さな子どもなんかじゃない!」


 リオナは手に持ったままだったデスサイズを横薙ぎに振るった。一瞬遅れて淡い紫の髪が弧を描いた。


「うぉ⁉ あぶねぇ」


 至近距離にいたトレークはバックステップすることでなんとか回避を果たした。

 そこへ一歩踏み込んだリオナの追撃が来る。


「訂正しろ!」


 一方的に放たれる死の斬撃をトレークは必死で避けていた。


(何なんだよ⁉ 俺が何したって言うんだ⁉)


 トレークは完全に混乱していた。トレークからしてみればリオナにしたことは極々普通のことだった。


「トレーク! 謝れ!」


 そこへ相棒から声が飛んできた。


「な、何をだよ⁉」


 どこに謝る要素があるのかトレークには理解できなかった。


「その子を小さい子扱いしたことだ!」


 スコッチの隣ではマリアたちが必死に頭を縦に振っていた。


「お、俺が悪かった! ちッこい子扱いしたことは謝るから!」


 するとリオナの動きがピタリと止まった。デスサイズの刃はトレークの喉元すれすれだった。


(こぇ~)


 トレークは生きた心地がしなかった。そしてリオナを小さい子ども扱いしてはいけないと胸に深く刻んだのだった。


「⋯⋯そっちの嬢ちゃんの武器を見て思い出したんだが、もしかして《死神姫》か?」


 リオナの怒りが収まったところでスコッチがそう尋ねた。


「《死神姫》?」


 リオナは聞いたことのない言葉に首を傾げた。


「違うのか? ブルメルで大鎌片手に次々と魔物を屠っていった女の子がいるって話しているのを聞いたんだが⋯⋯」


 スコッチは訝し気にリオナを見た。


「えっ?」

「ブルメルで⋯⋯」

「武器が大鎌で⋯⋯」

「女の子で⋯⋯」

「魔物を次々と倒していくって⋯⋯」

「⋯⋯リオの気がする」


 本人以外の5人全員の考えが一致していた。


「えっ? えっ⁉ なんでそうなるの?」


 リオナだけが理解していなかった。


「リオ、よく考えてごらんなさい。ただでさえ女性の冒険者の方が人数が少ないのよ?その中で女の子と呼べる人間がどれだけいるかしらね。それもブルメルという1つの街の中で」

「⋯⋯」

「加えてあなたの武器の大鎌。使っている人間は少ないわ。そして何よりも魔物を次々と魔物を屠っていったってことはこの前の大量発生の時に参加したということだと思うわ。それもかなり活躍したってことになるわ」

「⋯⋯」

「⋯⋯以上の条件で自分以外に心当たりがあるのかしら?」

「⋯⋯ないね」


 リオナは負けを認めた。


「⋯⋯俺もその噂は聞いたが、《死神姫》は《魔術姫》とパーティーを組んでいるって聞いたんだが⋯⋯その嬢ちゃんがそうか?」

「「「「「「えっ?」」」」」」


 皆は頭をフル回転させた。そして出た結論は──。


「⋯⋯そういうことになるのかなぁ?」


 肯定だった。ただマリアは釈然としない表情で首を傾げた。


「⋯⋯でも不思議なんだよね」

「何がです?」


 アレキスは不思議そうにマリアを見た。


「私、この前の魔物の大量発生の時はほとんど接近戦で魔術なんて数えるほどしか使っていないんだよね」

「いや、お前粗方終わった後に解体する時にわざわざ結界を張っていなかったか?それもかなり強力なやつ」


 グレンから突っ込みが入った。


「え~、でも使わないと魔物が寄ってくるじゃない」

「それはそうだけど、普通結界を張れる魔術師なんてほとんどいないんだからね」

「えっ? そうなの?」

「よくよく考えてみようか。魔術が使える人の大半がお貴族様なんだよ? 一般庶民のうちの何人が結界を張れるほどの魔術を使えると思ってるの? マリアは一般常識が欠けているよ」


 リオナは涙目だった。


「⋯⋯そんなことないと思うよ」

「その妙な間はなに?」

「⋯⋯ごめんなさい。私が常識を持っていなかったです」


 そんな会話を耳にしながらトレークとスコッチは考えていた。


(⋯⋯あの子が《撲殺女王》と呼ばれているのは黙っておこう)

(俺らだって命が惜しいんだよ!)


 教えたらどうなるのか。それを薄々察した2人だった。

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