表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第六章 王都への帰路
89/210

78

「⋯⋯まだ2階を案内していなかったね」


 どこか重くなった空気を変えようと、フェジーは普段よりも若干明るい声を出した。


「あっ、そう言えば⋯⋯」

「コレですっかり忘れていたわね」


 というわけで階段まで戻り、階段を上った。


「2階は大きめの部屋と応接室になっているよ」

「⋯⋯ちなみに3階は?」


 そう、このテント、2回で終わりではなかった。


「それは見てからの楽しみじゃ」


 フェジーはそう言って答えなかった。


「まずここが応接室になっておる」


 そう言って案内されたのは寝室よりも一回り小さい部屋だった。立派なソファーセットが置かれている。


「⋯⋯ちなみにこの階のお手洗いは?」

「この部屋のすぐ隣じゃ」


 お手洗いは素通りした。


「こっちがホールになっておる」


 そう言って見せられたのは正確な広さがわからないぐらい広大なホールだった。


「⋯⋯前々から思っていたんだけど、このテントを注文した人は何を考えていたのかしら?」


 エリザベートが呟いた疑問は6人全員の疑問だった。


「さぁな。私が知りたいくらいだよ」

「⋯⋯もうテントと言うよりは見た目が普通のテントの移動可能なお屋敷だよね」

「⋯⋯そうじゃな」


 もうテントではなくちょっと変わった屋敷だと思おうと、全員が決心した。


「2階は以上だよ」

「⋯⋯結局3階は?」

「⋯⋯言うより見た方が早いよ」


 首を傾げながら部屋を出て階段を上った。


「えっ?」

「⋯⋯本当に何を考えていたんだ?」

「ひろ~い」

「よく見たらかなり強固な結界が張ってある⋯⋯」

「私、これを注文した人が何者なのかわからなくなってきたわ」

「⋯⋯僕もだよ」


 そこにはワンフロア丸々を使った演習場が広がっていた。


「⋯⋯このテントは空間の拡張その他諸々の値段よりも、お風呂場とここにつけた結界類の値段の方が高くついているんだよ」

「⋯⋯お金をかけるところがおかしくない?」

「⋯⋯私に言われても困るよ」


 色んな点で驚くことが多かったが、無事に見終わり支払いを済ませた。


「次はいつになるかわからないけど、また来ますね」

「その時には何か買っておくれよ」

「え~、でも必需品は買い終わっちゃいましたよ?」

「なぁに、別に買うものは必需品だけじゃないだろう?」


 フェジーは朗らかに笑った。その笑顔はどこか晴れ晴れとしていた。


 翌日6人はブルメルの街を発った。


「ああだこうだ言って結構長いしちゃったよね」

「2人のアイテムポーチもあったし、仕方ないわよ」

「流石に森の魔物の大量発生は予定外だったがな」

「⋯⋯それはふつう予定には入れないと思う」

「えっ? そうなのか?」

「そうですよ。魔物の大量発生なんて普通予測もできません」


 何の因果か行きに護衛依頼を受けたアレキスたちも一緒だった。


「それにしても驚きましたよ。偶然とは言えこんなにすぐにまたお会いするとは思いませんでしたから」

「僕たちもですよ」


 アレキスたちとはブルメルの門で遭遇した。マリアたちを発見した時のアレキスの目は怖いぐらいに爛々と輝いていた。


「ダメもとで頼みましたが、受けてもらえて嬉しいです」

「⋯⋯断る理由がありませんでしたから」


 にこやかに答えたが内心では違うことを考えていた。


((((((い、言えない。目が怖くって断れなかったなんてとてもじゃないけど言えない))))))


 そんな6人を元々護衛依頼を受けていた冒険者たち2人は同情に溢れた眼差しで見た。


「⋯⋯俺らもお前たちのことは散々聞かされていたんだ」


 青い髪に緑の目の冒険者、トレークはどこか疲れたように言った。


「えっ? どんな風にです?」


 マリアは興味深気にトレークを見た。


「料理が美味い無茶苦茶強い魔術師の嬢ちゃんがいるパーティーがあったてな」

「⋯⋯そう言ってもらえて嬉しいです」

「他の奴らも強いんだってな?」

「⋯⋯まぁそれなりには」


 マリアは言葉を濁した。


「謙遜するなって。聞いたぞ、嬢ちゃんたちはオーガの群れを単独で倒せるだけの腕があるってな」

「⋯⋯ただのまぐれですよ」


 そんなマリアを灰色の髪に薄いグレーの瞳の男、スコッチはトレークの傍らでジッと何かを探るように見つめていた。


「まぐれでも倒せるってのはスゲぇよ」

「⋯⋯そんなことないですよ」

「それに聞いたぜ。この前のヨルの森の魔物の大量発生、嬢ちゃんたちも参加したんだって?」

「⋯⋯ええ、まぁ」


 会話をしながらマリアは内心涙目だった。


(追及が終わらないよぉ~。いい加減終わらないかな)


 他の者たちも下手に会話に入れず、助けたくっても助けられなかった。


(頼む、マリア。情報流出は最小限に収めてくれ)


 何分下手にばらすことができない秘密が多すぎた。アルフォードたち3人が王侯貴族だということ、グレンの正体が紅龍だということ、リオナ以外が属性魔術が使えてリオナも《身体強化》が使えること。最悪魔術のことはばれてもさほど問題はないが、芋づる式に他の秘密が漏れる恐れがあった。


(誰か助けて~!)


 トレークの追及はそれから1時間以上続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ