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こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第六章 王都への帰路
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「やっと来たかい」


 それが店に入ったマリアたちへのフェジーの第一声だった。


「注文の品はできているよ。まったく、どこから知ったのか知らんが、1級のアイテムポーチを出せと金持ちのボンボンどもがうるさくってかなわない。代金は前払いでもらっていると言っても聞きゃぁしない。これで気が楽だ。お前たちも気をつけるんだよ。あの手の輩は何をしてくるかわからない」


 余程気に食わなかったのか、フェジーはいつもより饒舌になっていた。


「言われなくてもそれはわかっています」

「私たちにとって今更な話ですよ?」

「本当よね」

「えっ? いまさらって?」

「嫌と言うほど思い知っているからね」

「? それぐらいなら全力で回避すれば避けられるんじゃないか?」


 マリアの脳裏にはフェリシー・ベルジュラックの姿が浮かんでいた。リオナだけが話について行けず、目を白黒させていた。


「⋯⋯わかっているのなら良いんだよ。これが注文のアイテムポーチだ」


 普段なら奥にしまってあるのに、カウンターの下から取り出したことにアルフォードは不思議そうな目を向けた。

 フェジーはそんなアルフォードは不敵に笑って見せた。


「奥は前に入られたからね。ここに移動させておいたんだよ」


 フェジーは普段は安いマジックアイテムの在庫を仕舞っているのだと言いながら、グレンとリオナに真新しいアイテムポーチを渡した。


「それで今回はアイテムポーチの受け取りもあったんですが、これはどちらかと言うとついでです」

「⋯⋯それで何が欲しいんだい?」

「⋯⋯この間のマジックテントを売ってください」

「金は?」

「現金で持ってきました」

「⋯⋯⋯⋯わかった。少しお待ち」


 フェジーは覚悟を決めるように軽く目を閉じると立ち上がった。

 1分もかからないうちに戻ってきたフェジーの手にはこの間のマジックテントが入った箱があった。


「これが売れる日が来るとは、昔は考えたこともなかったよ」

「昔は?」

「お前たちと出会ってからは売れると信じていたけどね。だけどこんなに早く来るとは思っていなかったよ」

「⋯⋯そうですか」


 6人は何とも言えない顔で苦笑いした。


「貴族のボンボンどもも大事に仕舞ってあったこれを欲しがったが、値段を言ったら大人しくなった。あの手の輩には良い薬かもしれんね」

「⋯⋯そうですね」


 アルフォードは苦笑いしながらお金の入った袋を取り出した。


「お待ち」


 お金を払おうとしたアルフォードをフェジーは押し止めた。


「そういうものは現物を確認してから払うものだよ」


 そう言うとテントを張り始めた。


「前回は大まかにしか案内しなかったね」


 張り終わるとフェジーはそう言って一室ずつ案内してくれた。まずフェジーは玄関ホールのすぐ左手の部屋に入った。


「⋯⋯広い」

「こんなに広さがいるか?」


 扉を開けた先には広々とした食堂があった。広さは学園の食堂と同じか一回り狭いくらいだ。真ん中には大きなテーブルが2つ置かれており、周りには誰が座るのかというほど多くの椅子があった。

 呆れたように皆呟いたが、マリアだけは違っていた。


「フェジーさん、台所はどこ⁉」

「っ⁉ ⋯⋯厨房ならそこの右奥じゃ」


 フェジーは少し面食らったようだが、すぐに気を取り直して答えた。

 マリアはそれを聞くや否や駆け出していた。


「わぁ~」


 厨房へのドアを開けると、マリアは感嘆の声を上げた。


「アル! 大型オーブンがあるよ! これで料理がしやすくなるよ」


 普段は即席の窯で焼いている料理も、もっと簡単に作れると喜んだ。


「⋯⋯それに喜ぶとは思わなかったよ。ただここの設備は一昔前のものだから、火は薪を使うタイプだが丈夫かい?」

「はい! 問題ないです」


 最近の主流は少し高価だが、火属性の魔石を使ったマジックアイテムのものだった。火力の調節の容易さから、発売が開始されてから10年も経っていないにもかかわらず、中流以上の大抵の家庭にある。だがそれも、火力の調節など魔術で片付けてしまうマリアにとって、あれば便利ぐらいの認識だった。


「あっ、窯もあるんだ。竈も。⋯⋯水道は流石にマジックアイテムか」


 マリアは次々と設備を確認していった。真ん中には広々とした作業台があり、調理設備も一通り備わっていた。


「⋯⋯うん、十分すぎるほどだね」


 一通り見終わるとマリアは満足気に頷いた。


「奥が食糧庫になっておる」

「えっ? あっ、ホントだ。気づかなかった」


 入口は一見わかり辛かったが、そこにあることがわかっていれば簡単に見つかった。


「天井が斜め?」

「そこは階段の下じゃからな」

「⋯⋯マジックアイテムだから、好きにどうとでもなるんだと思ってた」

「その通りだよ。だが造りやすさをを考えるとこっちの方が良いんだよ」

「へぇ~」


 厨房はマリアがはしゃいだだけで、他の者はあまり興味を示さなかった。精々その広さに呆れただけだった。

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