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こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第六章 王都への帰路
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「⋯⋯お会いになるそうです。ついてきてください」


 戻ってきた受付嬢は忌々し気に言った。

 6人は無言でギルドマスターの執務室までついていった。


「それで用件は? ヨルの森の関してとは聞いたけど」


 6人が執務室に入ると、ステラは開口一番にそう切り出した。


「⋯⋯ヨルの森で魔物が大量発生していました。溢れてくるのも時間の問題かと」


 アルフォードは普段からは想像できないほど丁寧な口調で答えた。5人は普段を知っているだけに、吹き出さないように必死に堪えた。


「大量発生? 具体的には?」


 ステラの眼差しが厳しいものに変わった。


「⋯⋯倒した魔物を解体する時間が、次に襲われるまでの三分の二ほどを占めていました。それと下で最近ヨルの森から戻らない冒険者が増えていると伺いました。先ほどこちらまで案内してくださった方です」

「マリーか。あの子の情報なら確かね」


 ステラは大きく頷いた。


「それであなたたちは原因が何か心当たりがある?」

「⋯⋯原因⋯⋯と言われましても、この前の大量買取ぐらいしか⋯⋯」


 アルフォードは言葉を濁した。


「⋯⋯どう考えてもそれが原因だと思うわ。あれにはアースドラゴンやワイバーンと言った竜種も混じっていたもの。生態系が崩れているんだわ。⋯⋯すぐに緊急依頼を出すわ。あなたたちの見立てで良いから、最低でも何人ぐらい必要か教えてもらえる?」

「⋯⋯Bランクが100人以上、もしくはCランクならその数倍は。Dランクはよっぽどの腕利きでなければ死にます。Eランク以下は話にならない」


 アルフォードは今まで出会ってきた冒険者たちの実力を思い出しながら、慎重に答えた。


「ハッキリ言ってあそこで単独パーティーで丸一日生き残れるのは僕らぐらいだと思っているぐらいです」


 アーティスも珍しくバッサリと言い切った。


「⋯⋯あなたたちがEランクだとはとても思えない腕を持っているのは知っているけど、他所でそういうことは言わない方が良いわよ」


 ステラは呆れた目で6人を見た。


「ご忠告ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。王都ではこれでもBランク以上の実力を持つパーティーだと認識されていますから」

「⋯⋯それはなぜかしら?」

「ランクが低いと大した依頼も受けられないですよね? ランクを上げる時にゴブリンやスライムと言った魔物の討伐しか受けられなかったので、しょうがなく王都一帯のF、Gランクの魔物を一掃したことがありまして。そうしたらどこから漏れたのかGランクに上がる時にBランクのベテランを倒したという噂が流れまして」

「⋯⋯その真偽は?」

「ベテランかどうかは知りませんが、Bランクの方を倒したのは事実です」


 アルフォードはニッコリと笑った。


「⋯⋯そう」


 ステラはそれ以外に言えることがなかった。


「僕らの方からも1つ訊いても良いですか?」

「⋯⋯何かしら?」


 ステラは少し警戒気味に言った。


「確か最初に会った時と話し方が違ったと思うんですが、なぜです?」


 その言葉に、他の3人も記憶を手繰った。


(そういえば⋯⋯)

(最初会った時は⋯⋯)

(もっと尊大な物言いだったわね)


 3人が当時を思い出したところでステラも思い至ったらしい。


「ああ、それはね、私まだギルド長になって日が浅くって、ギルド長らしい喋り方を模索していたら迷走してしまってね。結局似合わないと言われてやめたんだけど⋯⋯」


 そう言ってステラは照れくさそうに笑った。


「⋯⋯そうなんですか」


 アルフォードは迷走した結果があれかと突っ込みたかったが、寸前で思い留まった。


「緊急依頼を出さないといけないのだけれど、事後で良いから領主様の印が必要なのよ。片付いたら王都まで書類に印をもらいに行ってくれるかしら? 勿論指名依頼にするわよ」

「領主様、ですか?」

「ええ、今は王都にいる筈よ。畏れ多いかもしれないけど、スノーウェル男爵は気さくな方だから大丈夫よ」


 ステラは微笑まし気に言ったが、マリア、アーティス、エリザベート、アルフォードの4人は内心で他のことを思っていた。


(エリザのお父さんかぁ。どんな人かな?)

(指名依頼でパーティーメンバーの親に会いに行くって、どんな依頼だ⋯⋯)

(依頼でお父様に会いに行くって、変なシチュエーションね)

(スノーウェル男爵か。確か質素倹約という言葉が似合う人だったな)


 流石にステラも、そのようなおかしな状況になっていることには気づけなかった。


(誰かの知り合いなのかなぁ?)


 リオナも4人の態度からそう思ったが、まさか領主の娘が隣にいるとは夢にも思わなかった。


「もし領主様に会えなかったら、領主様の家族の誰でも良いから家紋の印とサインをもらってきて頂戴。最悪魔術学園にお嬢様が通っているから」

「⋯⋯わかりました」


 エリザベートは書類を受け取ったらすぐに自分でサインして押し返したい衝動にかられた。


「緊急依頼はCランク以上と一部のDランクに指名という形で出すけど、あなたたちも受けたいのだったら出しておくわよ」

「お願いします!」


 アルフォードは周りの意見も聞かずに即決した。

 指名依頼。それ自体にランクの指定はなく、誰でも指名されさえすれば受けることができる。しかも通常よりもギルドポイントは高く、難易度によってはさらに加算される。まさに今の6人、特にリオナにとって、おいしい依頼だった。


「わかったわ。準備ができ次第ヨルの森に向かって頂戴。今回は事後依頼という形にするから」

「「「「「わかりました「わかった」」」」」」


 1つだけ尊大な言葉が混じったが、6人は返事をすると、部屋から出ていった。

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