36 14日目
「驚いたな」
先ほどの青年がそう呟いた。
「Eランクとはとても思えない腕だな。あっ、俺はサウリだ」
「サウリさんですね。そんなことないですよ。私、近接戦闘はそれほど得意ではないので」
「あれで⁉」
サウリは目を剥いた。
「どう考えてもCランク並みの腕はあるよ。ランクアップ試験を受けなかったのか?」
「Eランクに上がったばかりと言いましたよね? 依頼達成数が規定回数に足りないんですよ」
「これでもFに上がる時にはギルマス権限で無試験で上げてもらったしね~」
「こればっかしはしょうがないよ」
「それはどう考えても10歳児が言う言葉じゃないぞ」
「今に始まったことじゃないでしょう?」
サウリは語られた内容に少し固まっていたが、すぐに気を取り直したように言った。
「そ、そうか。だが、その見た目じゃ毎回絡まれるだろ?」
「そうですけど、毎回返り討ちにあって頂いています」
「⋯⋯苦労しているな」
「? そうでもないですよ。皆さん弱いですから」
「毎回マリアが相手しているわけじゃないしな」
「寧ろマリアじゃなくてエリザベートが相手した人の方が可哀そうだよね。色々と」
そんなことを話しているうちにマリアたちの順番が回ってきた。
取り敢えず行って来いとアーティスがエリザベートに押されるようにカウンターまで行った。
「ところでお前らはどこを拠点にしているんだ?」
「私たちですか? 王都です」
「王都、か」
サウリは何か考え込んでいるようだった。
カウンターの方で何か騒ぎが起こった。
そちらを見やると丁度アーティスがオーガの素材を出し始めたところだった。
「「「どうしたのかな~(かしら)(んだ)」」」
3人が誰からともなしにそう呟いた。
「3人とも何を言ってるんだ! オーガだぞ? この辺じゃオーガなんてヨルの森にしか出ない。それが複数となるとオーガキングがいる可能性も「それなら倒しましたよ」ある⋯⋯えっ?」
「だからオーガキングなら倒しました」
「オーガキングを倒した?」
「はい!」
「そう言えばあいつお前らの仲間だもんな。オーガの数が少なくて4人で戦えば何とか倒せる、のか?」
サウリは自分で自分の言葉に首を傾げた。
「あ~。何か期待しているところ悪いが、今ここで買い取ってもらっているのは個人で倒したものだけだぞ?パーティー分は今倉庫の方で査定してもらっている」
「えっ?」
「いや、だからここに来る途中オーガの群れに囲まれてな。一人一方向を担当したんだ。その時倒したものだな。っと、マリア空いたみたいだから行って来い」
「は~い」
マリアは足取りも軽く、カウンターに歩いていった。
「次の方~ってあら可愛らしいお客さんね。ご用件は何ですか?」
「素材の買い取りをお願いします。あっ、これギルド証です」
マリアは少しムッとしながら答えた。
「えっと、Eランク冒険者なの?」
「はい。買い取りの品ってここに出せば良いですか?」
「ええ、お願い」
マリアはアイテムポーチに手を入れると、順にオーガの素材を取り出し始めた。
「えっ? これオーガよね?」
「はい。全部で12体分あります」
「12⁉」
「はい」
マリアは手を止めずに答えた。
「えっと、同じパーティーの人と倒したの?」
「違います」
「えっ? じゃあ──」
「これは私一人で倒したんです」
マリアはハッキリと言い切った。
「えっ? 一人で倒したの?オーガを? この数だとオーガキングもいたよね?」
受付嬢は矢継ぎ早に質問した。
「はい。オーガさんなんて、攻撃さえ避けちゃえば防御力低いですから、倒しやすくて良いですよね~」
マリアはさも当然のことのように言った。
周囲で聞き耳を立てていた人の中で騒めき声が起こった。
「確かにそうだけど⋯⋯。オーガキングは?」
もしまだ倒していないなら緊急依頼として出さないといけないと、そしてその確率は極めて高いと、受付嬢は気を引き締めた。
「キングさんなら倒しましたよ? これがキングさんの角です」
ゴトリと、マリアがカウンターにオーガキングの角を置くと、再度騒めきが起こった。
「た、確かにオーガキングの角ですね。えっ? これも一人で倒したの?」
「はい。流石王と呼ばれるだけあって、オーガさんたちと比べてかなり強かったですよ。あっ、これで全部です」
「⋯⋯今確認するので少々お待ちください」
オーガ12体分とオーガキングの査定が終わるまで数分かかった。
「えっと、まずオーガの討伐が1体大銀貨5枚。これが12体分で金貨6枚。オーガキングが金貨2枚。魔石の方が特に傷などもなかったのでオーガの魔石が1個大銀貨8枚。12体分で金貨9枚と大銀貨6枚。オーガキングの魔石が金貨1枚。オーガの革が1体分金貨1枚で計金貨12枚。オーガキングの革が金貨5枚。オーガの眼球とオーガキングの眼球は一律で大銀貨5枚。計金貨6枚と銀貨5枚。オーガキングの角が金貨15枚になります。全部で金貨57枚と大銀貨1枚。57100エルになります」
受付嬢が震える声で金額を告げた。
「思ったよりも角が高かったですね~」
「槍などの材料として人気がありますから」
「そうなんですか。あっ、お金は全てギルドカードに入れてください」
◇◆◇
4人とも思わぬ高額収入にほくほく顔で先ほどの倉庫に戻った。
「おや、丁度良いところで戻ってきたな。今査定が全て終わったところだ」
ギルマスの視線の先をたどると、ギルド職員たちが疲れた顔で座り込んでいた。
「内訳は、シルバーウルフの討伐36体分で3600エル、毛皮が1枚大銀貨2枚で7200エル。シルバーウルフの魔石が21,600エル。計32,400エル。ブラックウルフが27体。金額はシルバーウルフと同じで全部で24,300エル。アッシュウルフ32体、こちらも同じで全部で28,800エル。シャドウウルフの討伐が1体金貨1枚。これが17体だから17,000エル。毛皮が全部で34,000エル。魔石が8500エル。計59,500エル。ライトウルフも基本は同じだが毛皮が1枚2500エルで全部で23体分で92,000エル。ファイアーウルフ16体、ウォーターウルフ21体も同様の価格で148,000エル。ゴールドウルフ8体が32,000エル。オーガ67体で187,600エル。オーガキング3体で70,500エル。ワイバーンが12体。討伐が金貨3枚、羽が一対金貨4枚、革が金貨10枚、魔石が金貨1枚。肉が1キル金貨1枚。肉が全部で150,000キルですので計150,216,000エル。アースドラゴンが4頭。討伐で金貨5枚、革が金貨20枚、魔石が金貨4枚、計116,000エル。全部でえっと、151,007,100エル、白金貨15枚に大金貨10枚、金貨7枚、大銀貨1枚になります。⋯⋯あなたたち一体どうやってこんなに倒してきたの?」
ギルマスが声に呆れの色を滲ませた。
「えっと、一晩待っていたら、かな?」
「そんなところじゃない? まさかこんな馬鹿げた金額になるとは思わなかったけど」
「これだったら目標だった4級のアイテムポーチを買っても十分お釣りが来るな」
「今回結構容量がギリギリだったからね」
「っていうか1級買ってもお釣り来るよね? マジックテントでも買っちゃう?」
予想外な大金に4人とも嬉し気に話す。
論点を外し、詳しいことは何一つ語らない4人に、ギルマスは口を開いた。
「⋯⋯わかりました。あくまで方法は話せないのね?」
「「「「はい」」」」
ギルマスの質問に4人は声を揃えて答えた。
「まぁ、ぶっちゃけ言えないというよりは、言ってもできる人がいないだけなんだけどね」
エリザベートが苦笑した。
ギルマスは一体どんな方法なのか気になったが、その言葉は口に出す寸前で飲み込んだ。




