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こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第四章 護衛依頼
47/210

36 14日目

「驚いたな」


 先ほどの青年がそう呟いた。


「Eランクとはとても思えない腕だな。あっ、俺はサウリだ」

「サウリさんですね。そんなことないですよ。私、近接戦闘はそれほど得意ではないので」

「あれで⁉」


 サウリは目を剥いた。


「どう考えてもCランク並みの腕はあるよ。ランクアップ試験を受けなかったのか?」

「Eランクに上がったばかりと言いましたよね? 依頼達成数が規定回数に足りないんですよ」

「これでもFに上がる時にはギルマス権限で無試験で上げてもらったしね~」

「こればっかしはしょうがないよ」

「それはどう考えても10歳児が言う言葉じゃないぞ」

「今に始まったことじゃないでしょう?」


 サウリは語られた内容に少し固まっていたが、すぐに気を取り直したように言った。


「そ、そうか。だが、その見た目じゃ毎回絡まれるだろ?」

「そうですけど、毎回返り討ちにあって頂いています」

「⋯⋯苦労しているな」

「? そうでもないですよ。皆さん弱いですから」

「毎回マリアが相手しているわけじゃないしな」

「寧ろマリアじゃなくてエリザベートが相手した人の方が可哀そうだよね。色々と」


 そんなことを話しているうちにマリアたちの順番が回ってきた。

 取り敢えず行って来いとアーティスがエリザベートに押されるようにカウンターまで行った。


「ところでお前らはどこを拠点にしているんだ?」

「私たちですか? 王都です」

「王都、か」


 サウリは何か考え込んでいるようだった。


 カウンターの方で何か騒ぎが起こった。

 そちらを見やると丁度アーティスがオーガの素材を出し始めたところだった。


「「「どうしたのかな~(かしら)(んだ)」」」


 3人が誰からともなしにそう呟いた。


「3人とも何を言ってるんだ! オーガだぞ? この辺じゃオーガなんてヨルの森にしか出ない。それが複数となるとオーガキングがいる可能性も「それなら倒しましたよ」ある⋯⋯えっ?」

「だからオーガキングなら倒しました」

「オーガキングを倒した?」

「はい!」

「そう言えばあいつお前らの仲間だもんな。オーガの数が少なくて4人で戦えば何とか倒せる、のか?」


 サウリは自分で自分の言葉に首を傾げた。


「あ~。何か期待しているところ悪いが、今ここで買い取ってもらっているのは個人で倒したものだけだぞ?パーティー分は今倉庫の方で査定してもらっている」

「えっ?」

「いや、だからここに来る途中オーガの群れに囲まれてな。一人一方向を担当したんだ。その時倒したものだな。っと、マリア空いたみたいだから行って来い」

「は~い」


 マリアは足取りも軽く、カウンターに歩いていった。


「次の方~ってあら可愛らしいお客さんね。ご用件は何ですか?」

「素材の買い取りをお願いします。あっ、これギルド証です」


 マリアは少しムッとしながら答えた。


「えっと、Eランク冒険者なの?」

「はい。買い取りの品ってここに出せば良いですか?」

「ええ、お願い」


 マリアはアイテムポーチに手を入れると、順にオーガの素材を取り出し始めた。


「えっ? これオーガよね?」

「はい。全部で12体分あります」

「12⁉」

「はい」


 マリアは手を止めずに答えた。


「えっと、同じパーティーの人と倒したの?」

「違います」

「えっ? じゃあ──」

「これは私一人で倒したんです」


 マリアはハッキリと言い切った。


「えっ? 一人で倒したの?オーガを? この数だとオーガキングもいたよね?」


 受付嬢は矢継ぎ早に質問した。


「はい。オーガさんなんて、攻撃さえ避けちゃえば防御力低いですから、倒しやすくて良いですよね~」


 マリアはさも当然のことのように言った。

 周囲で聞き耳を立てていた人の中で騒めき声が起こった。


「確かにそうだけど⋯⋯。オーガキングは?」


 もしまだ倒していないなら緊急依頼として出さないといけないと、そしてその確率は極めて高いと、受付嬢は気を引き締めた。


「キングさんなら倒しましたよ? これがキングさんの角です」


 ゴトリと、マリアがカウンターにオーガキングの角を置くと、再度騒めきが起こった。


「た、確かにオーガキングの角ですね。えっ? これも一人で倒したの?」

「はい。流石王と呼ばれるだけあって、オーガさんたちと比べてかなり強かったですよ。あっ、これで全部です」

「⋯⋯今確認するので少々お待ちください」


 オーガ12体分とオーガキングの査定が終わるまで数分かかった。


「えっと、まずオーガの討伐が1体大銀貨5枚。これが12体分で金貨6枚。オーガキングが金貨2枚。魔石の方が特に傷などもなかったのでオーガの魔石が1個大銀貨8枚。12体分で金貨9枚と大銀貨6枚。オーガキングの魔石が金貨1枚。オーガの革が1体分金貨1枚で計金貨12枚。オーガキングの革が金貨5枚。オーガの眼球とオーガキングの眼球は一律で大銀貨5枚。計金貨6枚と銀貨5枚。オーガキングの角が金貨15枚になります。全部で金貨57枚と大銀貨1枚。57100エルになります」


 受付嬢が震える声で金額を告げた。


「思ったよりも角が高かったですね~」

「槍などの材料として人気がありますから」

「そうなんですか。あっ、お金は全てギルドカードに入れてください」


◇◆◇


 4人とも思わぬ高額収入にほくほく顔で先ほどの倉庫に戻った。


「おや、丁度良いところで戻ってきたな。今査定が全て終わったところだ」


 ギルマスの視線の先をたどると、ギルド職員たちが疲れた顔で座り込んでいた。


「内訳は、シルバーウルフの討伐36体分で3600エル、毛皮が1枚大銀貨2枚で7200エル。シルバーウルフの魔石が21,600エル。計32,400エル。ブラックウルフが27体。金額はシルバーウルフと同じで全部で24,300エル。アッシュウルフ32体、こちらも同じで全部で28,800エル。シャドウウルフの討伐が1体金貨1枚。これが17体だから17,000エル。毛皮が全部で34,000エル。魔石が8500エル。計59,500エル。ライトウルフも基本は同じだが毛皮が1枚2500エルで全部で23体分で92,000エル。ファイアーウルフ16体、ウォーターウルフ21体も同様の価格で148,000エル。ゴールドウルフ8体が32,000エル。オーガ67体で187,600エル。オーガキング3体で70,500エル。ワイバーンが12体。討伐が金貨3枚、羽が一対金貨4枚、革が金貨10枚、魔石が金貨1枚。肉が1キル金貨1枚。肉が全部で150,000キルですので計150,216,000エル。アースドラゴンが4頭。討伐で金貨5枚、革が金貨20枚、魔石が金貨4枚、計116,000エル。全部でえっと、151,007,100エル、白金貨15枚に大金貨10枚、金貨7枚、大銀貨1枚になります。⋯⋯あなたたち一体どうやってこんなに倒してきたの?」


 ギルマスが声に呆れの色を滲ませた。


「えっと、一晩待っていたら、かな?」

「そんなところじゃない? まさかこんな馬鹿げた金額になるとは思わなかったけど」

「これだったら目標だった4級のアイテムポーチを買っても十分お釣りが来るな」

「今回結構容量がギリギリだったからね」

「っていうか1級買ってもお釣り来るよね? マジックテントでも買っちゃう?」


 予想外な大金に4人とも嬉し気に話す。

 論点を外し、詳しいことは何一つ語らない4人に、ギルマスは口を開いた。


「⋯⋯わかりました。あくまで方法は話せないのね?」

「「「「はい」」」」


 ギルマスの質問に4人は声を揃えて答えた。


「まぁ、ぶっちゃけ言えないというよりは、言ってもできる人がいないだけなんだけどね」


 エリザベートが苦笑した。

 ギルマスは一体どんな方法なのか気になったが、その言葉は口に出す寸前で飲み込んだ。

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