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こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第三章 魔術の授業
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16

 次の日の放課後、マリアは学園長室に呼び出されていた。


「困ったことにあやつの父親が横槍を入れてきてのぅ。このままでは御咎めなしになってしまいそうなのじゃ。幸いあやつは決闘の結果なら受け入れると言っておる。誠に心苦しのじゃがマリア、あやつと決闘をしてくれんかのぅ?」

「それだと私に得がないと思うんですけれど⋯⋯」


 学園長の頼みにマリアは間髪開けずに訊いた。


「それもそうじゃのぅ。⋯⋯勝っても負けても授業を好きな方法にするでどうじゃ?」

「⋯⋯えっと、つまり?」


 マリアには学園長の言いたいことがわからなかった。


「つまりじゃ、今は授業が理論と実技で分かれておるじゃろう? それを自由に、例えば1つの授業にしてしまうとかじゃな」

「⋯⋯それって授業内容も変えていいんですか?」

「大概のことならOKじゃよ。完璧授業とは呼べないものでなければな」


 そう言われてマリアは閃いたことがあった。


「あの、ちょっと考えたことがあるんですけれど耳を貸してもらえますか?」

「なんじゃい」


 そう言いながらも学園長はマリアに耳を近づけた。


「あの、⋯⋯⋯⋯ってできますか?」

「細かく考えなければならないが大丈夫じゃぞ」


 学園長の返答にマリアはニッコリ笑って言った。


「じゃあ、決闘します」

「うむ、それではあやつにもそう伝えよう。⋯⋯先ほどの件じゃが、恐らく来週以降になると思うぞ」

「わかりました。楽しみに待っています」

「決闘の詳細は後ほど伝える。立会人は私の予定じゃ」

「わかりました」


 マリアは上機嫌で部屋から出ていった。


「さて、どうなるかのぅ」


 一人残された部屋の中で学園長がそう呟いた。


「昨日呼び出された時は何事かと思ったが面白いことになりそうじゃな」


 昨日、青い顔をした生徒に碌な説明もなく食堂に連れていかれたが、こうなるとは想像もしていなかった。


 次の日の放課後、マリアは学園長室に呼び出されていた。


 週末、マリアは演習場に来ていた。これからフェリシーとの決闘だ。

演習場には人が溢れていたが、フェリシーを応援している者は誰もいない。その辺りからフェリシーの今までの所業が窺い知れる。ちなみにもしマリアが負けた時を恐れて直接マリアを応援している者は半分ほどだ。

この決闘が週末になってしまったのはマリアができるだけ大勢の前でフェリシーを倒したいと希望したこともあるが、何よりも学園長が忙しく、時間を取れなかったためだ。


「む、無理しちゃダメだよ?」


 エリザベートが心配そうにマリアを見ていた。


「大丈夫だよ」

「駄目だと思ったらすぐに降参するんだぞ」

「⋯⋯心配しすぎだと思いますけど」


 アルフォードの言葉にマリアはどういった態度で接せばいいのか一瞬考えてから他のクラスメートと同じように答えた。

 ちなみに決闘のことは決まったその日のうちに手紙で知らせた。


「なんであなたがここにいるのよ。この変態が。⋯⋯でもその意見には賛成だわ」


 アルフォードとエリザベートが仲が良いのか悪いのかよくわからない応酬をした。その様子にマリアは自然と笑顔になった。


「それでは間もなく時間になる。両者位置につきなさい」


 学園長が珍しく普通にマリアとフェリシーに告げた。


「それじゃあ行ってくるね」


 マリアは明るく2人に言うと演習場の真ん中の方に歩いていった。

 既にフェリシーは位置についており、手には鈍く銀色に光るレイピアが握られていた。それに対してマリアは何も手にしていない。


「フン、庶民には武器を買うお金もないようね。それともわざわざ負けに来たのかしら」


 マリアの姿を見てフェリシーは勝ち誇っていた。

 マリアはフェリシーを睨んで言った。


「それは勝ってから言うことですよ?」


 フェリシーは何か言い返そうとしたがその前に──。


「用意は良いようじゃな?それでは始め!」


 マリアが位置についたのを確認した学園長が開始の合図を出した。


「せいぜい足掻いて見せなさい。『樹木よ、蹂躙せよ、《ウッドスピア》』」


 フェリシーの声とともに地面から木で出来た槍がいくつも生えてきてマリアに迫った。


「遅いです!『《強化》』!」


 マリアは自身の身体を強化することでその攻撃を後ろに跳んで避けた。


「『火よ、燃え盛る炎の球となりて敵を焼き払え、《ファイアボール》』」


 マリアの手から真っ直ぐフェリシーに向かって青い炎の球が打ち出された。

 激しい音とともに炎の球はフェリシーに当たり爆散した。


「やったかな?」


 マリアは勝利を確信していたが火が消えるまで油断はしなかった。

 やがて火が消えるとそこには無傷のフェリシーが立っていた。


「これぐらいで倒せると思ったら大間違いですのよ」


 フェリシーは当たる寸前に《マジックシールド》を使っていた。


「あれで倒せないなんて⋯⋯」


 マリアはフェリシーのことを少し甘く見過ぎていたと反省した。そして次に何が来ても良いように身構えた。


「今度はこちらの番ですわ。『《ファイアストーム》』」

「っ!?」


 しかし詠唱を省略されて放たれた魔術にマリアは反応しきれなかった。今度はマリアが火に包まれる番だった。


「初級魔術の《ファイアストーム》ですわ。炎に焼かれて醜く死になさい!」


 フェリシーは勝ち誇った笑みを浮かべた。

 次の瞬間炎からマリアが飛び出してきた。


「『《ダークボール》』!」

「っ!?」


 強化された脚力で瞬時に無防備なフェリシーに近づくと、そのまま詠唱を省略した魔術を放った。

 フェリシーは避けきれないことを悟るとマリアに向かってレイピアで切りつけた。

 どちらもほとんど同時に相手に当たった。

 数瞬後──。


ドサッ


 フェリシーが崩れ落ちた。

 マリアも怪我をしているがそれも治癒の魔術を掛ければ治る程度だった。


「勝者、マリア!」


 学園長の宣言の後一瞬置いて歓声が上がった。


(この人どれだけ好き放題していたんだろう?)


 マリアはそんな生徒たちを見てそんな疑問を持った。


「マリア、勝者としてフェリシーに望むことは何じゃ?」

「この前の謝罪と罰則を受け、金輪際私に近づかないことです」


 マリアは学園長の問いかけに予め決めてあった答えを返した。


「うむ、謝罪の方は気がつき次第させ、近づかないことを契約書に書かせよう。勿論罰則もきちんと受けさせよう」


 学園長の言葉に再び歓声が上がった。フェリシーに迷惑を被った人も少なくないのかもしれない。


「マリア、おめでとう!」


 エリザベートがマリアに抱き付きながらそう言った。

 そんな貴族らしくない姿にエリザベートの後ろでアルフォードが苦笑いを浮かべた。


「「ありがとう!」


 そんな2人の姿にマリアは自然と笑顔になった。

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