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こうして少女は最強となった  作者: 松本鈴歌
第七章 それぞれの過ごす日々
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後半説明回です。

 マリアが空いていた一番後ろの席に座ると、ベルが机の上に飛び下りた。その拍子に深緑のフレアスカートの裾がふわりと広がった。

 興味津々といった様子で見ていた皆はそれにほっと息を吐いた。いつ頭から落ちるのかと気が気ではなかったのだ。


「それじゃあ授業を始めるぞ」


 パトリオットのその言葉に、皆慌ててノートを広げた。


◇◆◇


 1時間目の王国史の授業が終わるや否やアーネスト、アナベル、アグナ、そしてカルロの4人はリオナの席に群がった。


「ねぇ、どこから来たの?」


 机に手をつき、身を乗り出してそう問いかけたのはアグナだった。


「エ、エイセルっていう街から。第四王子様の直轄領にある街なんだけど⋯⋯」


 いきなりの質問にリオナは若干引いた。


「⋯⋯エイセルっていうと交易都市って呼ばれてるところだよね?」


 アグナはそのことに気がつかなかった。


「うん。生まれは別の街らしいんだけどよく知らないんだ」

「へぇ~。一般教養はほぼ満点って言っていたけど、何を受けたの? 推薦なんでしょう?」

「うん。受けたのは⋯⋯」


 アグナの後ろではアナベルとアーネストが顔を見合わせていた。そして──。


「ていっ!」


 アナベルはアグナの頭に手刀を振り下ろした。


「痛っ! 何するの、アナベル⁉」


 不意の一撃に頭を押さえてアナベルを振り返ったが──。


「よっと」


 それに合わせて背後に回ったアーネストに首筋に手刀を食らい、声もなく崩れ落ちた。


「⋯⋯なんかごめん。驚いただろう?」

「まったくよ。いつまで経っても人様の迷惑を考えないんだから」


 カルロが代表して謝り、アナベルがそれに追従した。


「⋯⋯ううん、大丈夫だよ」


 アナベルたちの動きはは何かの、それもかなり手慣れた流れ作業のようで一瞬のことだった。そのためリオナは今の状況にいまいち理解が追いついていなかったが、なんとかその言葉を絞り出した。


「そう、良かった。きっとアグナは歳が近い子が来て嬉しかったのよ」

「えっ? でもマリアもいるでしょう?」

「⋯⋯マリアは、入学した時に色々あったから声がかけ辛かったんじゃないかな? アグナは意外とそういうところを気にするし」


 そう言ってアグナを見下ろした。


「⋯⋯普段からそういったことをもっと気を回すことができればなお良いんですけどね」

「⋯⋯仕方ないよ。アグナは不器用だから」


 アーネストは若干呆れたような顔をしていたが、アナベルに諭され渋々と頷いた。


「⋯⋯それもそうですね。私はようやく最近アグナの感情が理解できて来ましたよ」

「んっ。アグナ基本空回りしている」

「⋯⋯でもちょっとした我が儘もかまって欲しい表れなのよ。アグナは⋯⋯その⋯⋯昔から天才と呼ばれて同年代の友達って1人もいなかったらしいから」


 アグナについて語るアナベルの語調はどこか優し気だった。


◇◆◇


 2時間目は魔術理論の授業だった。


「⋯⋯というわけで、基本属性の上には複合属性ともいえる上位属性があるわけだ。火と水で氷、風と木で雷みたいにな。⋯⋯ここまでで何か質問があるやつはいるか?」


 遠慮がちにリオナが手を挙げた。


「おっ、リオナ。何だ?」

「⋯⋯上位属性ってつまりは2属性以上を組み合わせた魔術属性ってことですよね?」

「ああ、そうだな」

「それでは基本属性、6属性を組み合わせた属性もあるんですか?」


 そう口にした次の瞬間騒めきが起こった。


「静かに。⋯⋯そうだな。あるかなしかで言われればあると言われている。だが何分全属性に適性がある者はほとんどいない。したがって研究もほとんど進んでいない。それを専門に研究している者の中には全てを組み合わせた属性は時に干渉するんじゃないかって言っている者いる。まあ平たく言えばわからないっていうのが答えだな」

「⋯⋯そうですか。ありがとうございます」

「着眼点は面白かったと思うぞ」


 肩を落としたリオナをそう慰めた。


「⋯⋯それでは属性についての話がひと段落したところで皆が楽しみにしていたであろう魔法陣についての話に移る」


 その瞬間誰からともなく歓声が巻き起こった。


「ちょっとお前ら、嬉しいのはわかるが落ち着け。誰か魔法陣について説明できるやつは⋯⋯そうだなアルフォード、説明してみろ」


 指名されたアルフォードは黙って立ち上がった。


「えっと、まず魔法陣の種類ですが、魔術を使用した際に勝手に現れるものと、予め紙や地面に描く、またはものに刻み込んで使用するものと2種類あります。それから魔法陣の役割についてですが、大きく分けて2つあります。1つは魔術の補助。召喚などで出てくる魔法陣がこれにあたります。2つ目が魔力の変換。つまりは魔法陣を通して適性属性以外の魔術を使用可能にするということです。ただデメリットとしてかなり精巧な魔法陣を少しのも歪みなく描かなければならないことと、1つの魔法陣でできることが限られていることです。メリットとしては安定した魔術を長時間使用可能ということと、通常の魔術が使えない者でも魔力さえあれば使用可能という点です」

「そこまでで良い。座れ。⋯⋯今言ってくれたように魔法陣とはかなり精巧なものだ。少しでも歪みがあれば正しく発動しない。加えてかなり複雑だ。お前たちには基礎、そのさらに基礎から教えていく。わからないところがあればすぐに言え。くれぐれもわからない部分がある状態で使用するんじゃない。わかったな?」


 その声は硬く、ひどく真剣なものだった。


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


 だから皆も固い表情で頷いた。


「よし、それじゃあまずは魔法陣に使われている魔術文字と魔術記号から説明する。覚えることが多いからちゃんとついて来いよ」

学園についての豆知識

推薦の場合は入学する時は試験が免除になるが、途中からの編入の場合はきちんと試験がある。その場合は一般教養教科(王国史、算学、地理、基本魔法知識)の中からどれか1つと魔術の実技、もしくは一般教養教科からどれか2つを受ける必要がある。難易度的には入学試験と変わらない。合格点は6割。

なお、推薦がない場合は一般教養教科を全教科と実技を受ける必要があり、合格点も8割となる上、問題の難易度もワンランク上がる。


☆★☆


次回更新は月曜日です。

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