おもてかた
「よろしくおねがいいたしまーす」
開演63分前あたりにやってくるヒト。憧れのキャビンアテンダント的コスを身にまとい、ピンク色の分厚いファイルを小脇に抱えるアナウンス担当。時間的な都合でおおかた筆者たちがオリジン弁当とかカップラーメンかっこんだ直後あたりにいらっしゃいがちなのでごめんなさい。そんなんあたしだってお腹すいてんのに系な香り漂う部屋でヤな顔ひとつせずに“アナウンステスト”する彼女の所属しているチームこそが職場の最前線おもてかただ。
開場前。ホントは明るいはずの客席バタンバタンタイムは、薄暗かったり時間通りに始められなかったりでも完璧にこなすなんて当たり前。もうすぐ二十年戦士の椅子がバタン……しかしない時には間髪入れずに設備さんに内線しないと死亡だから結構ヤバい。数刻後、ホワイエで円陣組んで、演目の概要や客席演出の有無、障害者席の使用状況や本日の団体さんの感じ、開演直後の客止めとか緊急時の対応手順などといったコト全般を、昨日まで全然いなかったメンバーとか、今日しかいないメンバーとか交えて短時間に過不足無く打ち合わせ。
昼公演だったら一人じゃ運べないよ的重量の遮光板一人で配置するし、ドアストッパー(員数の確認も大変なほどの員数)の準備とか、二階席用のクッションとかオペラグラスとかルーティンだけど地味に大変。
で、貸しとかだと忘れ去られがちな開場確認とれたら開場。冬場のクローク対応なんかけっこうヤバいけどヤバくない。ビュッフェでご購入されたお飲み物ひっくり返すお客様なんかレアキャラだから問題なし。トイレの場所を聞かれながら“なんでこんな配置&設置数(長蛇の列の原因はココ)なのよ”とかは考えたら負け。今日のオーロラ姫は……なんて聞かれてダンサーの氏名くらいは即答できますけど、終演したあと何時くらいに帰宅できるのかについてはお客様が一番ご存知のハズでございますよね。
1ベル入ってアナウンスが流れると勝負の時間。一気に雪崩れ込むお客様。今さらトイレ行こうと滝登りに挑むお客様。遅れ気味デフォの京王線から送り込まれる開演時間に来ればいいと信じこんでるお客様。もぎりも物販も、空港なんかメじゃないくらいになってるけどそんなの日常茶飯事だから気にならないつもり。
開演。客止めしながら、なんでいれてもらえないのよ的雰囲気っていうか圧力を感じつつ、マネージャーからGoでたら二重ドアオペレーション。外側開けてお客様入れて閉めて内側開けてお客様入れるだけのコトなんだけど、理解できないお客様の醸し出す、もったいぶらずにいれなさいよ的雰囲気は一瞬で終わるからまぁスルー。
で、当然まっくらだから何も見えないワケで、それなりの大きさの声で“何もみえないわよ”などと発言される前に必須アイテムNo.1ペンライト(減光処理済み)でお足元を照らし、他のお客様の目線を遮らないけど、オカシク見えない程度の中腰でご案内。
上演中。トイレに立つお客様の対応やトイレからお戻りになられたお客様の対応。物音激しい系のお客様対応や、あれほど申し上げたのに電源を切らなかったスマホであろうことか撮影に臨まれるお客様対応。演目の内容に憤慨して途中でご帰宅される類のお客様の去り際の罵詈雑言をなだめつつ足音お控えあそばせくださいとか言えないからって涙目とか言えない。
休憩時間。女子トイレの長蛇の列の件はもう長年変えてないデスクトップの壁紙みたいなもんだからといって長年変わらないのはなんとかして。旧知の知り合いに会ったからって後方確認もせずに進路急変更からの衝突とかってフラグじゃなくてお客様トラブル。喫煙所はあちらのもぎりの外の外です、って丁寧にご案内してるのにヤな顔されるなんて喫煙者ならわかるかもね。で、1ベル入ってからのなじみの展開。
終演しても、アンケートにご記入されるわけでもなくなかなか帰ってくださらないお客様とか、演目の内容についてのご意見を延々と述べられるお客様とか、緞帳の端からチラ見してくる奴らの雰囲気察して欲しいの感はわからないでもないけれど、毎日ここにいる奴らと違って一年とか数年に一回とかのスパンでここにおいでのお客様の前で機材トラブルとかで公演止まるとか始まらないとかの際に一番喰らってるのはお客様!!
以上、私達が昼公演と夜公演でメンバー入れ替わる理由、でした。
※取材の類を一切しておりません。完全な妄想フィクションですので事実と異なった場合の責任は筆者は負いません。
※誠に申し訳ございませんがこの話だけ小一時間かかってしまいましたことをお詫び申し上げます。




