夏祭り
おはようございます。
このシリーズにしては一本が長めです。
よろしくお願いします。
「ハル君って、服のサイズどれくらい?お下がりが嫌じゃなければ、知り合いが譲ってくれるって言ってるんだけど」
珍しく隆太から電話が来たと思ったら、嬉しい申し出。
サイズ的にもバッチリだったんで譲ってもらう事になった。
ありがたい。
「これ、マジでもらって良いの?」
翌日、わざわざ持ってきてくれた服は、ほぼ新品同様。中にはタグが付いたままのまであった。
「なんか、子供に着せるものにこだわりがあるらしくって、貰い物で趣味に合わないのは押し入れにしまいっぱなしになってたらしい。着てるのも、義理で一二度袖通しただけみたいだし、勿体無いから着てくれるなら嬉しいってさ」
とりあえず出したコーラを美味しそうに飲みながら、隆太が説明してくれた。
こだわり、スゴイなぁ。
ウチなんか、似合ってれば良いじゃんって感じなんだが。
ま、ハルはなに着ても可愛いしな。
「あ、甚平がある」
ゴソゴソ箱を漁っていると、小さな甚平が出てきた。ミニサイズ、可愛いな。
浴衣生地じゃ無く、綿の柔らかな布で作られたそれは着心地も良さそうだ。
紺に青や水色のさかなが涼し気だ。
「こういうのって普段着でも良いのかな?寝巻き代わり?」
着せるタイミングがイマイチ分からない。
「別にいつでも良いんだろうけど……。じゃぁ、明後日近所の商店街で夏祭りあるし、それに着せてくってどうかな?」
「商店街?」
そういえばやってたな。
小学生の頃は大成と楽しみにしてたけど、最近はすっかり足が遠のいてた。
「そんなに人手も多く無いだろうし、ハル君のお祭りデビューにはピッタリじゃ無いか?」
言われてみれば、そうかも。
のんびり車のオモチャを転がして遊んでいるハルをみながら段取りを頭の中で組む。
うん。行けそう。
「じゃ、久しぶりに行ってみるか」
で、その後たまたま遊びに来た大成まで乗っかって、結局いつものメンバーで出かける事になった。
お祭り当日。
予定通り甚平を着たハルと(甚平姿は可愛かった。写真いっぱい撮ったとも)なぜか予定外に浴衣を着せられた俺がいた。
なんでこうなったかといえば、ハルに甚平を着せて盛り上がってたら母さんが暴走した結果だ。ちなみに俺のは白地に紺や青でストライプに成っている。
「あれ?2人とも似合うじゃん」
早めに迎えに来た大成が目を丸くしている。
だよな〜。近所の祭りで何やってんだと思うよな〜。
だけど、俺一人が恥ずかしい思いをするわけ無い。
「かあさ〜ん。大成来たよ〜。よろしく〜」
玄関から奥に声をかければ、笑顔の母さんが出てきて、大成を奥に引っ張っていった。
「へ?なに?なになに〜〜?!」
疑問符と共に奥に消えていく大成に手を振ると、俺はいそいそと隆太に電話をかけた。
犠牲者は多い方が視線が分散されて良いよな〜。
「もしもし、隆太。突然なんだけどさ〜」
カラコロと下駄の音を鳴らしながら待ち合わせの場所に向かう。
ちなみに今日はハルは普通に抱っこだ。
ベビーカーって、以外に人混みで小回り利かないんだよな。
抱っこ紐も浴衣が崩れるからと使わせて貰えなかったけど、男が3人もいるんだし、交代でなんとかなるだろう。
いつもと違う感じに、ハルの興奮もマックスでアウアウ何か一生懸命喋っている。
だんだんと人混みが多くなる中、ようやく待ち合わせ場所に着くと、珍しく隆太がまだ来てなかった。
直前に無茶振りしたから、ま、しょうがない。
「てか、意外と人多いな?こんなだったっけ?」
記憶の中ではもう少しショボかったイメージがあるんだけど。
「あ〜、一昨年、イコンモールが近くに出来たじゃん?それに対抗して客寄せ兼ねてちょっと派手になったんだよ。舞台の方に結構有名なタレント呼んだりしてさ」
……どこも、生き残りに大変だなぁ〜なんて、世間の世知辛さを痛感してると隆太がやってきた……ん、だが。
「ごめん。遅くなった」
うん。キラキライケメンだ。笑顔が眩しい。
てか、浴衣姿がいつもの3割増しでイケメンだね。帰っていいかな。
「いや、帰るなよ!お前が浴衣着るように通達したんだろ」
声に出てたらしく、大成が小声でツッコミを入れてくる。
「いや……そうなんだけどさ。眩しいって言うか、周りの視線が痛いっていうか……」
ボソボソと返せば、呆れ顔でため息つかれた。見られんの苦手なんだよ。しょうがないだろ?
「なに?2人してどうかした?」
顔は笑顔で隆太に向けたままボソボソと会話してたら、近寄ってきた隆太が怪訝な顔をした。
「いや、なんでもない。悪かったな、急に浴衣とか」
「いや、母さんが毎年縫うから着る機会があって丁度良かったよ。なかなか着ないから拗ねて困るんだよな」
サラッと返されたけど、毎年浴衣縫う家庭って……。
「うちの親、和裁の先生やってんだよ」
微妙な顔をしてたのか、苦笑とともに補足がついた。
「あだだダァ」
ハルが、隆太に挨拶してる。
この間水族館に行ったばっかりだから、顔覚えてたのかな?
「やぁ、ハル君。甚平、よく似合ってるね」
ハルに目線を合わせて挨拶する姿も爽やかだ。周りの女の子が色めき立っている。
「そろそろ移動しようぜ。腹減った」
屋台からはいい匂いが誘ってくる。
赤ちゃんガードがあるとはいえ、逆ナンに捕まる前に動くのが妥当だろう。
何より、本当に腹減った。
イカ焼き、焼き鳥、たこ焼きにフランクフルト。思い思いに買い込んでベンチに座り込む。
無理言ってソースを一部ソースをつけなかったたこ焼きをハルの口に運んでやりながら、俺は満たされる腹に満足なため息。
最近の屋台はレベル高いな。
商店街主催だからか値段も良心的だし。
次はトルコアイス食べよう。
「ハル、美味いか?」
しっかり冷ましたたこ焼き(白焼きバージョン)は、ハルのお気に召したらしい。
持参のお茶入りストローマグ片手に必死に食べる姿が可愛い。
しかし、たこ焼きってだし汁使ってるからか意外とそのままでも味があるんだな。
「次どうする?」
「小腹も満たされたし、遊び系行ってみる?ヨーヨーとか射的とかあったけど」
食べ終われば、行動開始だ。
流石に腕が疲れたのでどちらかにハルを抱いてもらおうとしたら、隆太に指名が入った。
少しぎこちない抱き方が夏休み前の自分を思い出してチョット懐かしいな。
「まずは定番行ってみよう!」
大成の誘導で、ヨーヨー釣りのプールの前にしゃがみこむ。ハルが隆太の腕の中から身を乗り出すようにしてカラフルな水風船を興味深そうに眺めている。
おじちゃんの手でボンボンと弾む水風船に目が釘付けだ。
「ハルは何色が好きかな?」
隆太に聞かれたハルが、水に浮かぶたくさんのヨーヨーに目を向け、そして。
「よっし、これがいいんだな!」
ぽよんっと青系の水風船が浮かんできたところを速攻で掴み取る。
見てない?誰も、気づいてないよな?!
「おじちゃん、切れたから、これ。これもらうね!」
丁度、他のお客さんを相手していて見ていなかったおじちゃんに声高に主張してから、ヨーヨーをハルに渡す。
1個も取れなかった場合の救済措置で、好きなの1個貰えるのだ。
「あう!」
ハルが嬉しそうに声をあげ、ヨーヨーを両手で掴んでブンブンと振り回した。
「………なあ、今、ヨーヨー「あ〜、俺、射的行きたい。行こうぜ、隆太!」
何か言おうとした隆太を強引に止め、腕を引いて立たせると斜向かいにある射的へと引っ張っていった。
「俺苦手だから、隆太やって。あれ、取って!」
お金を払い、ハルと交換に強引に射的の銃とコルクを押しつける。
勢いに押されて面食らいつつも受け取り、素直に指示された景品を狙っている隆太の背中をジッと見る。
ヤバい。冷や汗半端ない。
「ユキ、あのごまかし方は無い」
遅れてやってきた大成が呆れたように囁く。
「やっぱり?」
「あれじゃ、何があるって自白してるようなものだろ?」
だって、焦ってとっさにやっちゃったんだよ。このまま、知らん顔してたら誤魔化されてくれないかな?
「幸人、あれ、無理だわ。他のにして?」
困ったような声で呼ばれて、隆太の方に向かう。
とっさに指差したのは、いかにも重そうなクマのぬいぐるみだった。
あれは、見るからに無理だろ。
律儀に試してくれてありがと&無茶振りゴメン。
「あれを後ろに倒すんだぞだぞ。行くぞ〜、ハル」
突然、割って入ってきた大成がおっちゃんからコルクを受け取り、ハルに一声かけて銃を撃った。
コルクはまっすぐクマの額に当たり、一瞬後、クマがコロンと後ろ向きに倒れた。
「お、出来た」
俺たちどころかテキ屋のおっちゃんまで唖然としてるところを見ると、なんか細工してたな?
てか、重量的にも、普通コルクくらいじゃ倒れないか。
とゆうか、ハルに倒させるとか、何してるんだよ大成。
おっちゃんが苦笑と共にクマを渡してくる。
唖然とした顔の隆太に、大成はニヤリと笑いながらクマを押し付けた。
「種明かししてやるから来いよ」
「大成!」
ささやきは俺まで届いて、思わず大声で呼ぶと大成は宥めるようにポンポンと頭を叩かれた。
「信じろよ。隆太は味方だよ」
連れ立って、商店街から少し離れた公園まで歩いた。
ベンチと砂場があるくらいの小さな公園は7時を過ぎればもう人気は無い。
「で?それが浮いたように見えた事とか、これが落ちた事が、ハル君と何の関係があるんだ?」
ハルが楽しそうに振り回しているヨーヨーやクマを示す隆太に、少し迷った後、覚悟を決める。
ここまできたら、もうごまかしようも無いしな。
「隆太、クマ、そこのベンチに置いて」
唐突な指示に不思議そうな顔をしながら、隆太がクマを置いたのを確認して、次にハルにクマを見せた。
「ハル、クマさんハルにあげるってさ。取っていいよ」
「あっ、あっ」
ハルが嬉しそうな声をあげ、ぬいぐるみに向かって手を伸ばす。
クマがふわりと宙に浮き、ハルの所まで飛んできた。
「きゃうっ」
もふもふのクマをハルが嬉しそうに抱きしめる。
「って、訳なんだけど」
隆太は、目の前の光景が信じられ無いのか呆然としている。
口開いてるぞ。こんな顔、初めて見たかも。
「間抜け顏になってんぞ〜」
ぷぷっと笑いながら大成が容赦なく突っ込むとようやく我に返ったらしく、口が閉じた。
「え?コレって超能力ってヤツ?ハルがしたの?」
「あう?」
クマに手を伸ばす隆太に取られると思ったのかハルがイヤイヤをする。
「アァ、ごめん。取ら無いよ。大丈夫」
ハルのイヤイヤに隆太が慌てて手を引いて、ホールドアップしてみせる。
それから、にっこりと破顔した。
「そっか。ハル君はすごい特技を持ってるんだな」
「は?特技?」
あまりに意外な言葉に、今度は俺が間抜け顏を晒す事になった。
隣で大成が爆笑してる。
「あれ?特技、ダメ?まぁ、あんまり人には言え無いかもだけどな」
「……そんなんでイイのかよ」
あっさりとした反応にこっちの方が拍子抜けだ。どうやってやり過ごそうかと、真剣に悩んだのに。
「あ〜、まぁ、みんなに周知する必要はないし、隠して当然だけどさ。誤魔化さずにちゃんと教えてくれたのが嬉しかったから、共犯者にして欲しいかな?」
そういうと、ハルの頭を優しく撫でた隆太に肩の力がストンと抜ける。
チラリと見れば、大成がしたり顔でコッチを見ていた。
はいはい。
人を見る目はお前の方が数段上だよ。
なんとなく力が抜けて、ヘニャリとした笑顔が浮かぶ。
あ〜〜、この感じ、この間も味わったなぁ。
「じゃ、秘密保持って事でよろしく」
「了解」
頼もしい返事に、コッソリ友人からもう1つランクアップしてもイイかなぁ、なんて、勝手な事を考えたのは俺だけの秘密だ。
こんな感じで隆太君にはバレました。
浴衣男子良いですよね。さぞかし目立つ集団だっただろうと(笑)
読んでくださりありがとうございました。




