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赤ちゃんと高校生男子の日常。  作者: 夜凪


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入学式〜隆太視点

隆太にはこんな風に見えてたんだよ、という話。本当に蛇足的な。読み飛ばしても本編になんら影響はありません。


高校の入学式。

初めて教室に入った時、自然に目が惹きつけられた。

少しの緊張とこれから始まる新しい学園生活に対する期待とで騒めく教室の中、そいつの周りだけが静謐な雰囲気に満ちていた。


1番後ろの窓際の席。


頬杖をついてぼんやりと外を眺めているそいつのサラサラの髪を窓からの風が揺らしている。

少し長めの前髪を時折邪魔そうにかきあげる横顔は、まるで人形のように整っていて、どこか近寄りがたい空気を醸し出していた。


現に周囲の人間もその空気に押されて、気になるのに声をかけられずにいる様子だった。

かくゆう俺もその一人だ。

気になる、のに、もし声をかけて迷惑そうな顔をされたら立ち直れなくなりそうな気がして、どうにも足が向かない。


らしくない自分の気持ちになんかイラっとして、負けるもんかと、足を動かす。

「ここ、いい?」

おそらく空いている、そいつの前の席にカバンを置きながら声をかければ、外を眺めていた視線がスッとこっちに向けられた。

切れ長の黒い瞳に真っ直ぐに射抜かれ、俺の心臓がドクンッと1つ跳ねる。


「どうぞ」

自分の体の不可解な反応を訝しんでいるうちに、あっさりと視線は再び窓の外。

素っ気ない対応に挫けそうな心を奮い立たせて、再び声をかけようとした時、担任が入ってきた。


タイミング悪いよ、先生。



入学式、ホームルームが終わり、後は帰るだけになって、俺の周りに同中の友人達が集まってくる。

このまま、クラスの親睦兼ねて行けるやつみんなでカラオケでも行こうかと話が盛り上がり、一瞬迷う。

後ろの席のあいつにも声をかけるか、どうか。


悪友共が、「誘え」と目線で指示を飛ばしてくる。

やっぱ、みんな気になってんだな。

思い切って声をかけようとした時、そいつの名前を誰かが呼んだ。


「幸人、お待たせ」

教室のドアの所で、茶髪のチャラそうな奴が立っていた。

何気なく、視線を後ろの席に戻し、俺は無意識に息を飲んだ。

俺だけじゃなく、周りの奴らも同じだったと思う。


整っているが故に冷たく見えていた顔が、ふわりと柔らかに微笑んだ時の衝撃を未だに覚えてる。

「遅いよ、大成」

友人、なのだろう。

嬉しそうな声でいそいそと立ち上がると、スルリとなめらかな動作で扉へと向かう。

そうして、仲よさげに会話しながら去っていく後ろ姿を俺たちは惚けたように見送った。


「すっげ。本物の美形って初めて見た。なんか迫力」

感嘆のため息と共につぶやかれた言葉に頷くと共に、悔しさが込み上げてくる。


せっかく誘おうと思ってたのに。

2人の会話から最初から約束がなされていたのをわかった上で、子供じみた感情に我ながらおかしくなる。

だけど。


(明日こそ、ちゃんと話そう)

かつて無い執着の意味を考える事なく、俺はそう心に誓った。





そうして。

次の日のホームルームで手に入れた委員長という免罪符を手にしつこく話しかける事数ヶ月。どうにか友人としての地位を手にいれ、名前を呼ぶ権利を手にいれた。


昔からの悪友共には涙ぐましい努力とからかわれるが、知った事か。

なりふり構って出遅れるのだけは御免こうむる。

まぁ、幸人は『孤立しそうな自分が放って置けなかった面倒見のいい奴』認定されてるっぽいけどな。


幸人と仲良くなるにつれ、入学式に迎えに来た大成って奴とも一緒に居る機会が増えた。

人見知りの幸人とは正反対の、要領良く世の中渡っていくタイプ。

話してて面白い奴だけど、時々俺と幸人のやりとりを見てニヤニヤしてるのが訳わからんがムカつく。


もうすぐ、夏休みだし、みんなで遊ぼうと計画も立てた。

なんでかキャンプが大人数になったけど、まぁ、幸人が楽しそうだし良いか。

夏休みが、楽しみだ。




そして楽しみにしてたのにあっさり反故にされて拗ねる、という。


読んでくださりありがとうございました。

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