表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/35

3

つぶらな瞳は琥珀色。

日に透ける茶色の髪は柔らかくカールして、プニプニのほっぺを柔らかく彩り……。


こうして描写してみれば文句無く可愛いのに。

黙っていれば真一文字の口が不機嫌さを醸し出し、笑えばたくらみ系。


初めて会った甥っ子は、なんというか残念な赤ちゃんだった。


いつもより早く帰ってきた父親は、山の様な赤ちゃんグッズを抱えてきた。

そんで俺は、部屋の隅で、与えられた車の玩具でおとなしく遊んでいる姿をなんと無く眺めている。


少し丸まった背中になんだか哀愁を感じるのは気のせい?


「姉貴も何考えてるんだか」

「ありゃ〜本能で生きとるからなぁ」


着替えた父親が、ビール片手にやって来る。

「にしたって、1歳ならない赤ちゃん置いてくか?」


寛容な父親の言葉にイラっとする。

好きな人が出来たと言えば、相手の迷惑顧みず追いかけ回し、恋人だと13の頃に30歳自称小説家(ニート)連れてきたり、昔からハチャメチャな姉貴だった。


物心ついた頃からかけられた迷惑は数知れず。正直、家出した時なんかこれで平和が訪れるとホッとしたもんだ。


まぁ、結局面倒事は降りかかってきたんだが。流石姉貴。歩く厄災の名は伊達じゃない。

命名俺だけどな!


どこで何やっててもなんと無く幸せになってそうなバイタリティー溢れる人だったから心配はして無かったけど、コレはダメだろう。

親になってまで、あのままとは。


「まぁ、アキのする事だしねぇ」

台所からオヤジのツマミを持ってきた母親にさらにイライラが募る。


「2人とも、姉貴に甘すぎる」

イライラのままに言い捨てると、2人は顔を見合わせて苦笑した。

「まぁ、ストーカー化した男に刃物振り回されたり、爆発物送りつけられるよりは平和だしなぁ」

「中東の紛争地帯に赤ちゃん連れて行かれても、ねぇ」


「そんな事あったの?てか、姉貴そんな所に追いかけて行っちゃったの?!」

新たな情報に悲鳴をあげる。

どっちも初耳だぞ?


「まだ小さいお前に言えなかった事もいろいろあったんだよ」

「もぅ、他人様に迷惑かけずに命があるならそれでも良いかな?って、悟っちゃったのよねぇ」

遠い目をする父親にケラケラ笑いと飛ばす母親。

何があったのか、詳しく聞きたい様な聞きたくない様な。


「まぁ、可哀想だけど、命の危険に晒されるより日本で平和に暮らす方が良いでしょう」

「まぁ、…そうかも、だけど」


ニュースで見る紛争地帯の映像は俺の感覚からすると余りにも現実味がなく、姉貴がそこに居ると言われてもイマイチ実感は沸かない。けど、まぁ、あんなちっこいの連れてける環境じゃ無いのは確かだよな。


しかし、姉貴。

好きって気持ちだけで、あんな所まで追っかけてっちゃうんだな。

その行動力だけは評価してやるよ。

まぁ、きっと向こうでも誰かに迷惑かけてるんだろうけど。


「しっかし、静かだな。大人しすぎないか?」

こっちに背中を向けたままジッとしている背中が、やっぱり物悲しい。


「わかってない様に思うけど、赤ん坊ってのは、意外と周りの大人をよく見てるし、色々感じ取ってるもんだよ」

ツマミの枝豆を口に放り込みながら父親が、同じくその背中を眺めながら呟く。


あんな何にも考えてなさそうな顔で、やっぱり色々複雑なのかな?

「お前も厄介な親の所に産まれちゃったな」


なんと無く、あれを姉に持つ俺と相通じるものを感じ、同情を込めてポンっと小さな頭に手を置いた。

「う?」

それに返事をするように振り向いた顔には……。


「かぁさん、こいつマッキーでイタズラしてる!!てか、食ってる?!」


ニヤリと笑う顔には、見事に黒いヒゲが描かれてましたとさ。

やっぱり、こいつはなにも考えてないと思います。



てか、マッキー何処から持ってきた?






赤児あるある。誰もが一度は通る道だと思います……。気のせい?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ