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ようやく本筋に入りました。
ハルは食べる事が大好きだ。
この小さな体の何処に入っていくんだ?と疑問に思うくらいよく食べる。
その中でも、最近大好きなのがバナナであげるだけ食べてしまうため、1本を4つくらいに分けてあげているのだが、どうも、ハルはそれが不満だったらしい。
「あっ、あっ」
ハルがカウンターの上のバナナを指差しておねだりしている。
ダイニングテーブルの脚に捕まり爪先立ちして手を伸ばすハルは可愛いけど、ここは心を鬼にして。
「さっきご飯食べたばっかだろ?もうチョットしてからなぁ〜」
そうして、ハルから逃げるみたいにキッチンで洗い物を開始する。
ハルは諦めきれ無いみたいで、俺の後を追ってきて足にすがりつき「あぅあぅ」言ってたけど、無視だ無視。
ねだられるまま与えてたら腹壊す。
しばらく「NO」の姿勢を貫いていると、やっと諦めたらしいハルはリビングへと戻っていった。
ちょっと可哀想だったかな?とか思いながら食器を洗い終わって、ハルを探すとダイニングテーブルの陰に座り込んでた。
「ハァ〜ルおま…た……せ?」
後ろから声をかけると、小さな背中がびくりと飛び上がった。
なんかデジャブが。
確か、前このリアクションした時は、おれのスマホがヨダレまみれにされてたっけ。
覗き込んで見れば、丸ごとのバナナが1本握られていた。
皮ごとのそれをどうにか食べようと頑張ったらしき小さな歯型がたくさん付いていた。
とっさにさっきまでバナナがあったカウンターの上を確認する。
……1本少なくなってた。
なんで?どうして?
こんなの、こじつけで説明つけるはず出来ない。
だって、バナナは房のまま置いてあったんだ。都合よく1本だけ、落ちてくるわけが無いし、今、この家に居るのは俺とハルの2人きりで、ちぎって渡す人が居るはずも無く……
「ハル?」
混乱したまま、ハルからバナナを取り上げると「うぎゃぅ〜!!」と猛抗議。
やっと手に入れた好物を取り上げられたらそうなるよな。だけど、気遣う余裕なんて無く、俺は歯型だらけのバナナを見つめた。
うん、本物のバナナだ。
「うぇ…、うえぇ〜〜ん」
ついにハルが泣き出した、その時。
「あぁ?!」
手の中から、バナナが消えた。
そして、泣きじゃくりながら俺に向かって「返せ」と伸ばしたハルの手の中にバナナが現れたのだ。
ようやく戻ってきた好物にハルは目を瞬かせた後、ぎゅっと腕の中に抱きしめた。
「………うそ。……マジで?」
目の前で起きた不思議現象にたっぷり固まること数十秒。
また取り上げられるかと警戒してたハルは、動か無い俺に大丈夫と判断したのか、再度バナナの皮と戦い始めついに中身を取り出すことに成功。
半ば握り潰されたそれを満足そうに食べ始めた。
「戦利品は美味そうだなぁ、ハル」
幸せそうに半分ほど食べたハルは、こっちに向かって「食べる?」とバナナを差し出してきた。
ごめん、ハルは好きだがぐちゃぐちゃの食べかけバナナは遠慮したい。
「ハル食べて良いよ」
「あぅ?」
美味しいのに、と続きを食べるハルの顔はバナナでドロドロだ。手や服にも被害は甚大だし、いっそシャワー浴びせたほうが……。
………ダメだ。
現実逃避してる場合じゃ無い。
「バナナが瞬間移動した……よな。コレってハルがやったのか?」
脳裏に浮かぶのは、届くはずのなかったスマホやスーパーのバナナ。
ハルが『そういう事』が出来るのなら、モヤモヤしていた疑問はすっきり解決だ。
ただ、別のデッカい問題が浮上するけど。
「こういうのって、なんだっけ?超能力?すごいなぁ、ハル」
さすがに1本は多かったらしく、食べきれなかったバナナを握りつぶして遊んでるハルの頭をそっと撫でる。
他に何か出来るのか。
そもそも、姉貴はこの事に気付いていたのか。
疑問は尽きる事は無いけど、とりあえず。
「風呂はいろっか、ハル」
本格的にバナナまみれになってきたハルを、俺はため息とともに抱き上げた。
「あう?」
この後、赤ちゃんがスーパーパワーで世界を救います。嘘です。ごめんなさい。




