零の夢
皆様こんにちは。
六興九十九です。
過去の作品を読んでくださった方、お久しぶりです。
初めての方、初めまして。
今作は連載という形での投稿ですが、完全に思い付きです(笑)
雑談はさておき、それでは本編をお楽しみください。
感想、評価は随時受け付けておりますのでよろしければお願いします。
たった一瞬の出来事だった。
まばたきをするよりも短い時間だった。
しかし、その一瞬は一時停止した映画の場面の中にいるような、永遠とも思える一瞬だった。
サクッ――。
ナイフが背中へと少しずつ刺さっていく。
白いシャツが徐々に血によって赤く染まっていく。
――――温かい。血ってこんなに温かかったんだ。
傷から溢れ出る鮮血はシャツのシミをどんどん大きくしていき、ついに白かったシャツは綺麗な赤に姿を変える。
シャツが吸いきれなかった血が冷たい地面に池を作っていく。
「なん……で……?」
「■■■■、仕方なかったんだよ……? 許して……くれるよね……?」
足から力が抜け、地へと膝をつく。鮮やかな赤はさらにその池を大きくしていく。
■■■■はこの世の終わりを目にしたかのような、深い絶望をその瞳に映していた。
「どうして……? なんで……?」
ナイフが音を立ててアスファルトに落ちる。
月の光を浴び、血に濡れたナイフが光沢を放つ。
頬を温かいものがつたっていく。
ああ、意識が途切れる……。
…………………………。
この光景を見ている者は無し。
夜を照らす冷たい月だけが見ていた。
何もせずに、ただ、ただ、見ていた……。