S1:エマ・ボルドー:タイムスタンパー:check pointD-2:20080817(17:15~19:30)
閉鎖空間、突入です! そして、さっそくリセットボタンに手が伸びる主人公! ただ、もうちょっと頑張ってもらいます。
S1:エマ・ボルドー:タイムスタンパー:check pointD-2:20080817(17:15~19:30)
「エ、エマさん? これって、これって、あれですか? これが、閉鎖空間ってやつですか? それで、それで、その人は・・・・・・」
どもるヒッキー、不在のビッチ。そして、眼前のラスボス。
なんともまぁ、酷い世界だ・・・・・・やり直すか?
「ふふふ、なんともまぁ、ピクニックにでも行くのかいね? そんな大風呂敷まで掲げてなぁ?」
ゆらゆらと揺れる異国の衣服・・・・・・kimonoーーーだったかな?
ともかく、あでやかな紫の衣に身を包む異形の存在、「こっくりさん」が、目の前にいた。
彼女の外見は、成人女性のそれに近い。けれど、顔立ちは中性的。長い黒髪が無ければ、美男子でも通るかもしれない。
もともとほっそい目をさらに潜めて、ヒッキーが抱きかかえる大風呂敷ーーーもとい、私らのこれからの命綱兼武器の食料を、彼女は見つめている。
・・・・・・この状況を打破する方法が無いことは無いけど、どうしよう? やっぱり、やり直した方が良いのかな・・・・・・?
※
もはや、無駄な二日間だった。
本当に文字通り、「無」「駄」な、二日間だった。
まず、あてにしてたビッチに何故か接触できなかった。あのくそアマが一体どこをほっつき歩いているのか分からないけれど、家にもスクールにも姿が無い。やつがいなければ、私のパーティーには攻撃担当の人間がいないことになる。
攻撃は最大の防御というのは本当で、ビッチが居るのと居ないのとでは、まるで話の進め方が変わってくるんだのよね・・・・・・
まあ、それはそれでいいよ。もう、仕方ない。
それで、はい、これですよ。はいはい、閉鎖空間に放り込まれました。
もちろん、理由は分かりません。ヒッキーといろいろ調べて回ったけれど、なーんも分かんないままです。
世界の英知、ウィキペディアにも限界がある!!! それくらいかな、今回分かったのは!!!
それで、それで、百歩譲っても、それは仕方にとしてもよ!?
なんでダンジョン一層目ってか、入り口でラスボスに出くわすの!??
此処は一応、経験則的に安全地帯なはずなんですけどね!?
「ヒッキー、「あれ」だして。ほら、「あれ」よ! 速く!」
目の前のラスボスこと「こっくりさん」から目をそらすこと無く、背後のヒッキーに小声で指令を出した。
後ろ手にカモンの合図を送り、例のブツを寄越せとヒッキーに催促する。
ただし、能力は起動段階にある。最悪の場合、私はいつでもcheckpointDに戻れるように、身構えた。
タイムジャンプの波動を肌に感じながら、私は次の一手を想定する。
「おお、油揚げじゃないか! なんだいなんだい、良いもの持ってるじゃないかい。お前さんたちよりも、よっぽどおいしそうだよ・・・・・・それを、あたいにくれるのかいね?」
油揚げと同格扱いされながら、私はへらへらと愛想笑いを返した。
もちろん、内心は舌打ちしたけどね。
でも、舌打ちどまり。ほんとにそんなことしたら、殺されそうだし。
「あの、「あれ」です! お、落とさないで下さいよ!!!」
女の背後に隠れて震える男にイラッとしたけど、なんとかこらえる。
でも、パッサパさの手触りと、油揚げを通して伝わる無駄なヒッキーの手ぶれ機能を肌身に感じ、泣きたくなった。
それでも、とりあえずは渡さなければならない。「これで勘弁して下さい」という、気持ちを込めて。
それで駄目なら、ヒッキーには悪いけど、私はトンズラするわ。
だれだって、頭からバリバリ食われたくはないでしょう?ましてや、それが不可避なら、二人よりも一人って、犠牲は少ない方が良いと思うしね?
「こ、これをオオサメ下さい、こっくりさま・・・・・・わたしたち、エマとヒキからの捧げものです」
・・・・・・ヒッキーよろしく、どもってしまった。
なんだか、私らしくもない。でも、仕方が無いのよ!だって、目の前に居るのは神様クラスの化け物なんだから!!!それに、私たちの変わりにこれを食べて下さいってお願いしてるようなもんなんだからね!?
「ほうほう、これはまた上質な「あぶらあげ」だね。まさに、私好みの一品さね!!! お嬢ちゃん、ちゃーんと「覚えてくれていた」んだね! あたしゃ本当に嬉しい限りさね!」
私の震える手からかすめ取るように、「こっくりさん」は「あぶらあげ」をかっさらっていった。
ジャパーニーズ的に言えば、トンビがなんとやらだ。
でもまぁ、作戦は良好らしい。私が「前回の一件」を踏まえて用意した品は、お気に召したようだ。
そして、これまた前回同様に、「こっくりさん」は、私が「繰り返している」ことを知っているようだ。
「あ、あの、それで「こっくりさま」・・・・・・それで、この場は勘弁していただけ・・・・・・ズドーン!!!!」
・・・・・・何も、「こっくりさん」のプレッシャーにトチ狂った私が奇声を発したわけじゃない。
そう、誰ともなく、「そこんとこ、よろしく」と呟く私。そして、播き上がる黒煙・・・・・・方角は、中庭。
前回通りのデータが通用すれば、あそこは「オーク」の出現ポイントだ。無駄に出かいやつで、身の丈は3メートルくらいあるはず。攻撃方法は、純粋な打撃系。ときどき、その辺の街頭を引っこ抜いて振り回す。
ピストルなんかじゃ、まるで歯が立たない。
ショットガンを三発くらいぶち込めば止まるけど、その際の音が「呼び水」になって他の「異形」が集まってくるので、たちが悪い。
そして、爆発物系の能力者といえば、「ハリス・ラインナー」の移民やろうしかいない。
どうやら、特に血の気の多い奴が「異形」との交戦に入ったらしい。
・・・・・・ほんっとに、あの馬鹿野郎がーーーータイミング悪すぎだっつうの!!!
「ふむ、ふむ、たいそうな打ち上げ花火だね。祭りの前座には、もってこいさね。ただ、ちとばかし品がない焰だね。あたいは、あの手合いの灯はあんまり好きになれないんだよ・・・・・・」
ハムハムと油揚げをしゃぶりながら、「こっくりさん」は空を見上げた。
彼女の周りを漂う「青の炎」が、鳴り響く轟音に呼応して、その明かりを明暗させる。
「ヒッキー、チャンスよ。今なら、逃げれる。このまま、一棟に入る。なるべく音を立てずに、私について来なさい」
あの状態ーーー焰の明暗に入った「こっくりさん」は、しばらく周りへの興味がなくなる。
それこそ、自身に必殺の刃が振り下ろされようとも、おかまい無し。そう、おかまい無しなんだよね。
必殺の刃なんて、ほんとうに、ただのペーパーナイフ以下なんだもの・・・・・・さて、それはそれとして、だ。
要は、今がチャンス。とにもかくにも、食料と武器一式を安全な場所に移さないとね!
そして、その後はもちろん————
次回から、不思議空間探検です。




