第一話:ノリトル・マルグス:堅固なる自閉の王:check pointD-2:20080815(15:30~16:30:2)
第一話:ノリトル・マルグス:堅固なる自閉の王:check pointD-2:20080815(15:30~16:30:2)
太陽の下に出るなんて、何年ぶりだろうか。
正直な話、日光(蛍光灯)が眩しすぎて死んでしまいそう……こんなところで死にたくない。
ぼくの死に場所は、あの、小さな僕の王国だと決めていたのに。
それなのに。
「さてと、あとは缶詰類かな?」
それなのに僕は今、スーパーでひたすら、食料品をカートに詰め込んでいた。
ざっとみただけで、5台ぶんのカートが僕の前に並んでいる。
「あ、あの、こ、こん……」
こんだけの食料品を一体どうするつもりなんですかと、エマに尋ねようとしたところ、ものすごい目で睨まれた。たったの一にらみなのに、それだけで、心臓を鷲掴みされた気分なる。
「さっき話したでしょ? 閉鎖空間内では、飲み物も食べ物も、な~んにもないって。ぶっちゃけ、最初に取り込まれた時とかやばっかたわけよ。みんながみんな飢えと渇きに頭跳ばされてて、ご乱心。
三日目とかになると、普通に殺し合ってたね。唯一の水源、自販機(コカコーラ社)を巡って」
テキトウに缶詰をカートに放り込みながら、こちらを見もせずに、エマは言った。
「あんたの「自閉の檻」は防戦一方なんだから、100%三日目には死んでるんじゃない?」と、そういって、僕のことを嗤いもした。
……僕の力に、勝手に名前をつけないでほしいと思う。でも、的を得た表現ではあることは確か。
……先ほどの彼女の話が本当なら、彼女は未来人だ。そして、僕は彼女のパーティーの一人で、「安全地帯」の確保を担っていたらしい。
とはいえ、彼女が僕に望むような力は、「今の僕」にはない。今の僕に出来るのは、部屋に引きこもるだけ。引きこもり、自分以外の誰もその部屋に侵入できないよう、結界を張るだけなんだ。つまりは、自分以外のすべてを拒絶する、僕だけの世界を作り出すこと―――それが、今の僕の力。
彼女の話だと、何らかの条件を満たせば、僕はその一歩先へと至ることが出来るらしい。要は、自分の世界に他人を受け入れることが出来るようになるらしいんだ。そうなれば、確かに僕は彼女にとっての安全地帯となるのかもしれないけれど。
「何か知らないけど、あそこに喚ばれるのは異能者ばっかりっぽいからね。味方につけると心強いけど、敵に回すと最悪よ?
だから、味方に引き込まなきゃいけないわけよ。そのための、エサよ、これは。
ちなみに、前のあんたはポテチで、ビッチは水だったかな?」
カートの上に積み上がっていく食料品を前にして、僕はげんなりする。
今はカートがあるからまだいいけれど、これを素手で運ばなきゃならないと想うと、死にたくなる。そしてたぶん、ここから学校までこれらを運ぶのは「僕だけ」で、彼女は手伝ってくれなさそう。
「さて、これでおしまいかな。
んじゃぁ、会計済ませてくるから。タクシー呼んでててね。あんた、面と向かってなければ話すくらいは出来るはずでしょ?」
代金は、僕持ちらしいく、さきほど銀行で結構な額をおろさせられた。
受付のオネェさんに「助けて」とアイコンタクトを送ってみたけど、キモイと言われただけだった……声に出して、「キモイ」と言われた。
……僕は、二重の意味で悲しくなって、お金を下ろした。あのとき、心の大事な柱が音を立てて、へし折られたように思う。
次回は、視点がビッチに移ります。




