エスケープ1
エスケープ
プロローグ
時空間制御者の私をここまでコケにするなんて、良い度胸してるじゃない。
……思い知らせてやる。で、後はジャパニーズ土下座よね。そのあとは、どうしてくれようか。
まあ、それも兎に角、この閉鎖空間から抜け出せたらの話なんだけど。
第一話:エマ・ボルドー:タイムスタンパー:check pointD-20080815-14:00
グニャリと歪んだ空間が引き延ばされ、再生される。
後は、いつもの嘔吐感。
ウッぷとなるのを必死でこらえながら、私は学校のロッカーに背中をもたれかけさせた。
後は膝が崩れるのに従って、ずるずると床に尻餅をつく。
ひんやりとした廊下のタイルを肌に感じ、息が思わず漏れた。
そして、押し寄せてくる安堵感と、のしかかる無力感。そして、膨れ上がる憤怒の感情。
「あああああああああ、うざい!うざい!うざい!
もう、何回目よ!てか、あのくそビッチ、私売りやがったし!」
怪訝な顔で私に注目する「その他大勢(学生及び一部教師)」を無視し、私は目を閉じた。
奴らからすれば、それまで普通にしていた私が、急に崩れ落ちたように見えるのだろう。
実際、良心と親切心を持ち合わせた希有なバカども近づいて来て、余計なおせっかいを掛けてくる。
そういうのは、はっきり言って、うざい。
わたしは連中に「大丈夫」とだけ返し、すぐに立ち上がった。
翻って逃げるようにその場を後にし、直であの女の元に向かう。
「check pointBが一日目の20:00で、CとEが二日目の16:44と23:37。あと、Dが今日のこの時間。
……どうする?Cの時間帯に戻るか?でも、Eも捨て難い……なにしろ、あのヒッキーが覚醒してるしな。
でも、所詮はヒッキー。結局、あの根性のなさに挫かれて、私はこのD pointに戻って来てるわけだし」
そこまで考えた所で、私は周囲を見渡した。
視界に入るのは寂れた廊下と、薄暗い光をはなつ電灯だけ。
幸いなことに、誰もいない。学校の昼間にしては、めずらしいシュチュエーションだ。
「……D point、上書きしとくか。また戻ってきたとき、さっきの連中がまた寄って来たら、殴り飛ばさないとも限らないしね」
この時間帯に「また戻ってくる」可能性を考えている自身の腑抜けっぷりに、私は再び唇を噛み締めるはめになった。
そして、人生三度目の20080815-14:00の世界の空気をおもいっきり肺に吸い込み、再び絶叫。
だれも居ないことを良いことに、私は気が済むまであの女への不平不満をぶちまけた。
そして、自分の能力についての、不満もついでに。
「セーブポイントが少なすぎるでしょうが!
ジャパゲーじゃセーブポイントなんて百超えることもあるのに、なんで私は、私は、ああああああああ!!!!!
片手で数えられる数しかキャパがないのよ!?」