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きっとそれは仕組まれていた。
ー史上最悪の携帯ゲーム
ー妙に教室が騒がしかった。
だが誰もこの異変に気づいていない。
いつも何かと世話を焼く学級委員長も、平然と自席に腰を下ろし本を読んでいる。
何かおかしい、そう指定する人も現れない。
「なあなあ修司、これ見ろよ!超ヤバくねぇ?」
突然、藤原修司に声が掛かった。
寝だるそうに修司は体制を起こす。
「………起こすんじゃねぇよ」
「その低血圧、治したら?」
「いつも休日昼まで寝てる奴に言われたかねーよ」
「お互い様だっつーの」
はあ、と修司は溜め息を漏らす。
目の前の男は軽く微笑して修司を見る。
「礼二、何用があって此処に来たの」
「あ、そういう、これだよ」
篠田礼二は手に持っていた雑誌を修司の前に差し出す。
“流行りの携帯ゲーム「リンク」“
雑誌の内容はそれだった。
どこかで聞いた事のある名前。
だけどいくら思考回路しても明るい扉は見えて来ないらしい。
修司は諦めて雑誌に目を通した。
“このゲームはクラスメート全員が登録して初めて成り立つものです“
“一般の携帯ゲームとは違い、携帯でも3Dを体感できる新開発されたゲームです“
“尚、登録したクラスメートの皆さんは携帯の電源を切ったり、ゲーム自体を止める事は禁止されています“
“登録費:クラスメート全員の×ד
最後は分からなかった。
文字が薄くて読み取れなかった。
「ど?やりたくねぇ?」
「………別に」
「3Dを体感?実際動くわけじゃ無いだろ」
「おま…最後まで読めって!」
修司は礼二に言われた通りに雑誌の一番最後の行を見る。
“このゲームは
実際に自分達が体験するゲームです“
修司は言葉を詰まらせた。
というより息が上手く続かないといった所。
実際に体験できるゲームなんて、この世の中にあるのだろうか。
「で、どうするよ」
「……」
やりたくないと言ったら嘘になるだろう。
修司は意外に冷静だった。




